「微細な感触を伝えられる」手術支援ロボットを、
独自の空気圧制御技術で実現する大学発ベンチャー

ドローン・ロボット

執筆者: 東 雄介  編集:菊池 徳行(ハイキックス)

内視鏡ホルダーロボットを
先行的にリリース 展開している事業の内容・特徴

photo1.jpg リバーフィールド株式会社は、東京工業大学と東京医科歯科大学の研究室による大学発ベンチャーだ。文部科学省STARTプロジェクトの支援を受けるかたちで、2014年5月に創業、空気圧駆動の技術を生かした手術支援用ロボットの開発・販売を進めている。先行製品として、手術支援ロボットの開発過程から派生した内視鏡ホルダーロボット「EMARO(エマロ)」を2015年8月にリリース。販売価格は1台1500万円、現在までに国内7つの医療機関や施設に導入している。

近年、外科手術において、患者の身体に負担の大きい開腹手術に代わり、内視鏡を用いた低侵襲手術の件数が増えている。その際、助手を務める「スコピスト」という医師が内視鏡カメラを持ち、執刀医の指示にしたがって操作するのが通常だ。しかし、手ブレにより安定した映像が得にくい、中小規模の病院でスコピストが不足しているなどの課題があった。EMAROはこれらの問題点を解決してくれる。

空気圧駆動のロボットアームが内視鏡を保持し、センサーを頭部に装着した執刀医が頭を動かすことで見たい方向にカメラを動かせる。空気圧駆動のメリットにより、ロボットの正確さに加えて人間の腕のように柔らかい動きが可能だ。「稼働中に人とぶつかっても力が逃げてくれる」とは同社代表の原口大輔氏の弁。またモーター駆動による従来のロボットに比べて、軽量、コンパクトでもある。

技術的には、東京工業大学の只野耕太郎准教授や東京医科歯科大学の川嶋健嗣教授が長年研究している空気圧を用いた精密制御技術をベースに、東京医科歯科大学の医療分野のノウハウを融合したところに独自性がある。これまで難しいとされてきた空気の流量の連続的な制御を実現し、きわめて精密な制御が必要になる手術関連のロボットをスムーズに動かせるようになったのである。

文部科学省STARTプロジェクトに採択。
これにより事業化する資金を確保 ビジネスアイディア発想のきっかけ

photo2.jpg 東工大と医科歯科大学の連携は2001年頃から複数の分野で始まっていたという。手術用支援ロボットの研究開発は、2003年頃からスタート。こうした大学内での研究開発が事業化されることになったのは、ベンチャーキャピタルのジャフコの後押しを受け、文部科学省のSTARTプロジェクトに応募、採択されたことがきっかけだ。2012年から3年間、ロボット開発に必要な資金を確保することができたのである。

創業者は、只野教授や川嶋教授など4名。現在は、大学教員と兼務していない原口氏が会社の顔を務めている。「もともと私が東工大の博士課程に在籍していた頃、メインで関わったテーマだったのです」。以来、製品開発は社内のみで行われているが、大学発ベンチャーらしく、高度な技術を有する大学との結びつきは強い。継続的に共同研究が進められており、大学のほうで発見があれば速やかに製品に取り込む。また製品のプロトタイプの医学的な評価は、東京医科歯科大学で実施している。

空気圧駆動の技術そのものは、すでに確立されたものがある。創業から3年、試行錯誤を続けているのは、医療の現場における「使いやすさ」だという。「医師のちょっとした使い勝手であるとか、『ここの色がもう少し目立つように』とか、さまざまな声をいただきます。自分の手足のように使う道具ですから、そこには現場のシビアな目があります。これからもそういった細やかなご要望に真摯に対応していきます」

次世代手術支援ロボットを
3年以内にリリース予定 将来の展望

現在も引き続き、同社は「本命」である空気圧駆動による手術支援ロボットの開発を進めている。つまり、執刀医が患者から離れたところにあるコンソールに座り、内視鏡の画像を見ながら遠隔操作で手術する、というロボットだ。同種の手術用ロボットとしては海外のIntuitive Surgical社が展開する「ダ・ヴィンチ」が有名だが、同社が目指している手術支援ロボットが決定的に違うのは、そこに「力覚」があることだ。

空気圧駆動の特徴を生かして、ロボットアームの先端が臓器などに触れたときの感覚を執刀医にフィードバックさせることができる。これにより医者は自分の手で直接手術しているのと変わらない感覚で手術ができ、手術の精度もより高くなると期待されている。またコンパクト・安価なシステムをコンセプトとしており、手術用支援ロボットの浸透そのものを加速させる可能性を秘めている。

次世代型手術用支援ロボットもすでに試作機の段階にきており、現在は動物実験などが進められている。市場投入まで「あと3年」の見通しだ。

「いずれは手術にロボットが今以上に使われる世界がやってくるでしょう。将来的には、一つのロボットだけにとどまらず、手術から得られたデジタルデータを活用したり、手術支援ロボットをコアとしながら、『手術室』という単位で電気メスや照明などのデバイスを統合したり――そんな幅広い展開を考えています」

リバーフィールド株式会社
代表者:原口 大輔 氏 設立:2014年5月
URL:http://www.riverfieldinc.com/ スタッフ数:25名
事業内容: 事業内容: 手術支援ロボット等の先端医療機器研究・開発および販売

当記事の内容は 2017/09/19 時点のもので、該当のサービス内容が変わっていたり、サービス自体が停止している場合もございますので、あらかじめご了承ください。