どこにでも設置できるEV充電システムで
EVの普及を後押しする社会インフラ創出へ

この記事はに専門家 によって監修されました。

執筆者: 髙橋光二 編集:菊池 徳行(ハイキックス)

スマートフォンで専用ICカードを不要にし
認証や支払いが簡単にできる利便性を提供

展開している事業の内容・特徴

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ガソリンを使わず、排気ガスも出さず、環境に優しいクルマとして普及し始めている電気自動車(EV)。まだ自動車全体の中でのEVのシェアは0.2%にすぎないが、2020年には累計2000万台に増えるとの予想もあり急速に市場が拡大している。EVの販売台数を増やすためのキーポイントと指摘されているのが、充電スタンドの普及である。

株式会社ジゴワッツは、簡単で便利なEVの充電器と会員認証システムを開発し、社会インフラとして普及させていくことを目指している。日本では、自動車メーカー各社が協調して合同会社日本充電サービス(NCS)を設立し、充電ネットワークの充実を図っているが、その充電スタンドを利用するには事前に専用ICカードを取得する必要がある。

「申し込んでからカードが届くまでに時間がかかったり、運転する時にカードを携帯する必要があります。また、設置されている充電器は急速充電用のものが多く、限られた場所にしか設置できないといった問題も」と代表取締役の柴田知輝氏は指摘する。

そんなハードルを解消するべく、柴田氏は、一般の家屋や商店など、あらゆる場所に設置可能な小型で低価格かつ認証機能を内蔵した普通充電タイプの充電器と、認証や支払いをスマートフォンで簡単に完了できるシステムを開発した。

「例えば、喫茶店にEVで出かけ、1時間ほど友人とおしゃべりしている間に充電すればまた20kmほど走れるようになる。帰りもまったく問題ない。当社のシステムを使うことで、充電器を設置した店舗は集客数のアップも狙えます」と柴田氏はそのメリットを話す。

EVに魅力を感じつつも、充電環境が不安。
手軽に充電できるシステム構築を着想

ビジネスアイディア発想のきっかけ

170803_2柴田氏がこのビジネスを手がけようと考えた端緒は、学生時代、三菱自動車工業が2006年10月に発表したEV・「i-MiEV」に試乗したこと。車好きの柴田氏は、「実際に乗ってみると、意外に加速感があって面白かった」と魅力を感じたそうだ。

しかし、初期の「i-MiEV」の航続距離は160kmほどしかなく、また充電に時間がかかるところに不安を感じざるを得なかったという。そこで、現在のビジネスモデルの母体となる、手軽に認証・支払いができる充電インフラ整備というアイデアを思いつく。

慶應義塾大学在学中、友人が設立したベンチャーにソフトウェア開発担当の取締役として参加し、ビジネスを始めていた柴田氏は、そのアイデアをまとめて母校のビジネスコンテストに応募する。最終選考に残ったものの、デモづくりで徹夜しプレゼンに寝坊して遅刻。この失敗が心残りとなり、「一度始めたことにもっと挑戦したい」と思うようになる。

その後、京都大学の大学院に進学して家庭向け電力供給最適化の研究をスタート。大学院修了後は地方の電気製品メーカーに就職して電気回路設計に従事する。その間、休日を利用しては知人のベンチャー経営者や友人と会いに上京、「刺激を受けて起業意欲が湧いた」と振り返る。そして、2014年5月にジゴワッツを設立し、同年に認証システムと充電器の開発に成功した。

認証システムや通信技術などの得意技で
収益を得つつ“EV充電”に挑み続ける

将来の展望

170803_3しかし、専用ICカード方式を進める大手の壁の高さや、EVの普及率の低さにより、なかなかビジネスにつながらなかった。そこで柴田氏は、認証システムを切り出し、EV充電以外の市場に向けて商品化することに活路を見いだす。

iPhoneに搭載されている近距離無線システム「iBeacon」を利用し、自社サーバーでワンタイムパスワードを発行するカタチで認証するシステムを開発。3G回線などを経由させないため、安価に提供できるところが強みだ。例えば、不特定多数の人が利用するカーシェアリング用の車のキーとして使える可能性がある。スマホがキーとなるため、キーを返却する必要がない点もメリットの一つ。現在、奈良先端科学技術大学院大学の構内および、パーキングシステムメーカーによるマンション内のカーシェアリングシステムに採用するための実証実験が行われている。

また、特定IDの電波受発信デバイスを開発し、財布やカギなどにつけて紛失や盗難時に捜索できる、世界最小クラスの紛失防止デバイス「MAMORIO」に技術提供した。さらに、認知症の老人や子どもなどを見守るための自社ブランドの受発信端末「Beahive」を商品化。この9月から自社ホームページでの発売を開始する。

現在の収益の多くは、通信技術などを利用したデバイスの受託開発が占めている。例えば、2016年11月、7人組のアイドルグループ「アップアップガールズ(仮)」の日本武道館ライブで行った「アイドルの“心臓の鼓動”をリアルタイムにファンへ届ける演出(Heart Sync)」。アイドルは、心拍などの生体情報を取得できる機能素材を活用したウェアを着用する。ステージ上でパフォーマンスする時の心臓の鼓動を信号に変え、振動機能を内蔵したオリジナルガジェットに送信。すると、ガジェットを持つファンはアイドル自身の胸の高鳴りを直感的に体験できる、という仕組みだ。

「特にこちらから営業などはしていません。仕事の依頼は紹介で数多く舞い込んできます」と柴田氏は言う。しかし、同社が一番手がけたいのはEV充電であることに変わりない。「これからEVの車種も増え、国内の普及がいっきに加速すると見ています。そろそろまた本腰を入れて、EV充電システム事業に取り組んでいきたいと思っています」。

株式会社ジゴワッツ
代表者:柴田 知輝 氏 設立:2014年5月
URL:http://jigowatts.jp/ スタッフ数:2名
事業内容:EV用充電システムの開発、受発信デバイスの開発・販売ほか

当記事の内容は 2017/08/03 時点のもので、該当のサービス内容が変わっていたり、サービス自体が停止している場合もございますので、あらかじめご了承ください。

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