人とデータに介在する“ITの壁”を解消し、
デジタルトランスフォーメーションを簡単に!

この記事はに専門家 によって監修されました。

執筆者: 髙橋 光二 編集:菊池 徳行(ハイキックス)

資生堂、良品計画、スバルも利用する
カスタマーデータプラットフォーム

展開している事業の内容・特徴

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Googleの本社があることで知られる米国マウンテンビュー。今回紹介するトレジャーデータ株式会社の本社も同地にある。トレジャーデータ社は、半数近くの社員が働く東京オフィスのほか、ソウルなどにも拠点を展開するグローバル企業だ。

「データ解析の世界をシンプルに、データでより良い世界を」というミッションを掲げる同社が提供している「TREASURE CDP(Customer Data Platform)」は、多種かつ大量のデータを即時に収集・分析し、外部システムとも容易に連携できるクラウド型サービスである。

企業がデジタルマーケティングに使う(潜在)顧客のデータは、スマホアプリやWebサイト、SNS、実店舗、POS、自社の顧客情報DBなどさまざまなソースで、刻々と発生、変化している。これらを有機的に活用することで、特定のターゲットに対してより的確なマーケティング施策を行うことができる。

例えば、車の販売。消費者が一般的に車の購入を思い立ってから契約するまでの平均日数は45日間といわれる。その初期にいる人に「今、当ディーラーに来店すれば何%オフ」とメッセージしても、「まだ妻に相談もしていない……」となるだろう。また、いろいろ調べて意思決定をした頃の人に「マイカーでいいパパに!」というメッセージを送っても意味はない。

こうした齟齬を回避して的確なメッセージを発信するためには、ターゲットの属性情報やリアルタイムな行動情報を1カ所に集め、統合・分析してアウトプットしなければならない。アウトプットするツールは、アドネットワークやSNS、メールマガジン、コールセンター、各種MAツールなど多岐にわたる。それら各種アウトプットツールがすぐに使える最適なかたちで、マーケティング情報を伝達する必要があるのだ。

「この一連の仕組み、流れを、TREASURE CDPが簡単に構築してくれるのです」と、同社の創業者、CEOの芳川裕誠氏は言う。現在、資生堂、良品計画、スバル、リクルートマーケティングパートナーズ、グリー、パルコ、ソフトバンク、電通などの国内大手が導入している。

ビッグデータ解析のコアツール「Hadoop」が
簡単に使える“箱”をつくる

ビジネスアイディア発想のきっかけ

20170706-2Linux大手の米Red Hatで勤務後、三井物産の運用するVCファンドでIT企業向けの投資マネージャーを務めていた芳川氏は、Googleが論文を公開し、2007年にYahooのエンジニアなどが実装してオープンソースとして公開されたミドルウエア「Hadoop」に着目していた。

「Hadoop」は、大規模データの分散処理を行うフレームワークで、“ビッグデータ”ブームを巻き起こしたコアテクノロジーである。2011年に、芳川氏は、株式会社プリファードインフラストラクチャー(PFI社)のCTOであった太田一樹氏と出会う。

ちなみにPFI社は、自然言語処理および機械学習を用いたソフトウェアの研究開発でGoogleも注目する企業として名高い。太田氏は、世界最大級の「Hadoop」ユーザーコミュニティを創設したエンジニアとしてもその名が知られていた。

「太田はエンジニアとして優秀なだけではなく、ビジネスマインドも高い。私とウマが合ったのでしょう、すぐに意気投合して、一緒にやろうという話になりました」(芳川氏)

その後、多言語で通信できる分散インフラ技術「MessagePack」を開発するなどして「日本OSS奨励賞」を受賞した古橋貞之氏も同社への参画を決意。2011年12月、3人が中心となり、アメリカでトレジャーデータを共同創業したのである。

創業時から、事業のテーマは“Transforming Human-Data Interaction”と決めていた。
人間が自然言語で会話する場合、相手の言葉を聞いた瞬間に理解できる。しかし、対話の相手がデータの場合は、そうはいかない。「Hadoop」は、ビッグデータを活用する要素技術として着目されていたが、難易度の高いITを介在させなければ、バラバラの状態で存在しているデータを収集し、瞬時に処理することが難しかったのだ。

「その障壁の解消からスタートしました。一昔前、ネットワークを構築する際にすべてを一から設計する必要がありましたが、シスコシステムズ社がルーターを標準化し、抽象化することでその不便を解決した。同様に、データと人の間に介在するITを抽象化し、リアルタイムにデータを収集・解析できる“箱”をつくろうと。そして、太田と古橋が、さまざまな問題をクリアしながら、サービスを完成させたのです」

デジタルマーケティングからデジタルトランスフォーメーションへ。
あらゆるITの壁を解消し続ける

将来の展望

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「非常にフレキシブルで使いやすく、安全性も高いと、大企業のニーズに合致してユーザー数が広がってきました。2017年6月現在、私たちが扱っているデータ量は約100兆件に達しています

ちなみに同社は、ガートナー社の“Cool Vender in Big Data 2014”に選出されている。「今後はデジタルマーケティングに加え、IoTでデジタルトランスフォーメーションを支援していきたい」と芳川氏は意気込む。

同社のサービスの収集機能を担う「Fluentd」は、データのインプット/アウトプットの双方に外部システムと自由に接続できるプラグインを組み込んだアーキテクチャで構築し、オープンソースとして公開されている。また、収集したデータがシステムダウンなどで失われることがないよう、処理の終了を確認するまでデータを保持し続ける機能も搭載している。

さらにデジタルトランスフォーメーションを見据え、IoT用の「Fluent-bit」を開発した。すでにパイオニア社が行う先進的なテレマティクスのバックエンドなどに活用されている。

また、SQLが使えるデータベース管理者でも“データサイエンティスト”並みの機械学習を適用できる機械学習ライブラリ「Hivemall」を開発。このように人とデータに介在するITの壁をさまざまな形で大幅に下げている。

「創業時の“Transforming Human-Data Interaction”という理念は不変です。これからも、人とデータに介在するあらゆる壁を解消し続けていきます」

トレジャーデータ株式会社
代表者:芳川 裕誠 氏 設立:2011年12月
URL:https://www.treasuredata.com/jp/ スタッフ数:130名
事業内容:多種・大量のデータを即時に収集・分析し、外部システムとも容易に連携できるクラウド基盤の提供

当記事の内容は 2017/08/01 時点のもので、該当のサービス内容が変わっていたり、サービス自体が停止している場合もございますので、あらかじめご了承ください。

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