国内で2万人が利用するe-ラーニングプログラム「すらら」。海外でも続々導入されるその内容とは

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執筆者: 室賀 文治

注目のゲーミフィケーション学習プログラム「すらら」とは?
展開している事業内容・特徴

surala1「すらら」とは、小学校の高学年から高校生までを対象にした、英語・数学・国語がパソコンで学べるe-ラーニングプログラムである。2013年3月時点で全国2万名以上の生徒に利用されている。

「すらら」のシステムが従来のe-ラーニングとは大きく異なるからにほかならない。まずは従来型のe-ラーニングの特徴を説明してみよう。

1)動画配信型:カリスマ講師のレクチャーなどを視聴するタイプ。理解しやすい半面、反復練習がないので知識が定着しにくいし、一方的な視聴のため集中力の維持に限界がある。
2)問題集型:パソコンで問題を解くことで直ちに結果や分析が提供されるものの、一定以上の知識を有する生徒を前提としており、根本的にわかっていない子どもには向かない。
3)ゲーム型:携帯ゲーム機などを利用した楽しい内容であるが、単語などの暗記系が中心で体系的な学習教材は少ない。

以上のように、従来型のe-ラーニングには一長一短があり、なかなか本格的な普及に至っていないのが現状だ。「すらら」の特徴は、従来型e-ラーニングの長所を相乗効果的に組み合わせ、従来型の短所を補った理想の“次世代教育プログラム”であり、2012年度の日本e-Learning大賞 文部科学大臣賞を受賞している。

もう少しくわしく「すらら」の特徴を説明しよう。

surala2POINT1:スモールステップでわかりやすいインタラクティブレッスン
「すらら」の授業は1レッスン10~15分程度にまとめられている。小さな階段を少しずつ上る感じで構成されており、基礎をしっかりとものにできる。しかもその内容は、カリスマ講師の授業を再現したものでありながら、一方的な視聴ではなく、随所で先生役のキャラクターが問いかけを行い、問題に答えるというインタラクティブスタイルだ。これなら勉強が苦手な生徒も無理なく楽しみながら理解を進めることができそうだ。

POINT2:まるで家庭教師? 難易度調整も弱点診断もできる自動判別システム
問題が解けない理由は「わからないこと」が原因。なぜ「わからない」のかを曖昧にしたまま進んでしまうと、どんどん「わからない」が蓄積され、解けない問題が増えて、勉強がいやになるという悪循環に陥ってしまう。
そうした状況を避けるため、「すらら」は、わからない理由を探る「弱点自動判別システム」を搭載。自分のつまずきや弱点を確認し、改めて学び直すことで着実に弱点を克服できる。
さらに「すらら」のドリルには、一人ひとりの理解度に応じて最適な難易度の問題を出題する「出題難易度コントロールシステム」も。「簡単すぎず難しすぎない」問題が出題されることで、生徒は達成感を感じ自信を深めながら、学習を進めていくことができるのである。

待望のTOEIC克服コースも登場!
「すらら」のシステムは、学校の勉強が苦手な生徒に効果的であることを説明してきたが、TOEICを克服できる「すららeveryday TOEIC」もリリースされている。もちろん英語が苦手な大人にも最適なレッスン内容になっている。
従来のTOEIC対策といえば、TOEIC形式の問題集を基本とした詰め込み型のテキストばかりであったが、このコースは「文法」、「語彙」、「作文」、「リスニング」などがバランス良く学べるようになっており、単なる知識の詰め込みとしてTOEICを勉強するのではなく、英語を運用できるレベルにまで実力を高めてくれそうだ。
しかも月々1050円という格安の価格設定。社内公用語が英語となった企業の会社員におすすめしたいサービスだ。

ゲーミフィケーション学習「すらら」の誕生秘話
ビジネスアイデア発想のきっかけ

surala3  「すらら」を運営する株式会社すららネットの湯野川孝彦社長は、フランチャイズ(以下、FC)支援事業の最大手であったベンチャーリンク(以下、VL社)の出身だ。VL社は、コンビニフィットネスのカーブスを米国から国内に導入し、国内1,000拠点以上に成長させたり、教育事業においては個別指導塾の全国展開も成功していた。湯野川社長は、そのVLで、当時ほぼすべてのFC事業のスタートアップ段階の事業開発を担ってきた担当役員である。 湯野川社長は、個別指導チェーンの事業の立ち上げを行った時に、個別指導塾の経営の実務も行っており、その時の経験に基づいて「すらら」を開発し、eラーニングだけで教える塾を試験的に開校した。

湯野川社長は、その時の生徒の感激の言葉がいまだに忘れられないという。

「私は学校や塾ではわからなかったけど、“すらら”ならわかったの。」

 2010年、湯野川社長は著名ベンチャーキャピタルのグロービスキャピタルパートナーズによる資金支援を受け、すらら事業をMBOにより買収し、独立を果たした。

「すらら」は全国の学習塾に導入されることで急速に広まりつつあるが、最近多いのが、未経験者が「すらら」で独立開業するというパターンである。ほとんどの場合、そのようなケースではFCという形態をとるが、FC事業に精通した湯野川氏は加盟金を前提とするFCの仕組みはあえて取らなかったという。

湯野川氏曰く、塾の開業には相当の資金が必要な一方、運営が軌道にのればスーパーバイザーの支援がなくても運営できる。また個別指導塾がコモデティ化しつつある昨今においてはFCのブランド力はさほど価値がなくなりつつある。塾への「すらら」システムの提供については、初期費用ゼロで月額3~4万円のシステム使用料と低額のID課金程度に抑えているという。

 その結果、現在全国で450か所以上の学習塾の導入が実現しており、まだまだその数は拡大中だそうだ。

すでに海外展開もスタート! 夢は「世界中の教育格差の根絶」
将来への展望

surala4「すらら」の展開は国内だけに留まらない。2013年2月は中国の上海に、また3月には米国のオンラインスクール教育プログラム「Sunflower Academy」に導入され、海外への展開が始まっている。さらに2013年5月には、タイとマレーシアの学習塾にも「すらら」が導入されるそうだ。

インタビューを通じて感じたのは、湯野川社長の堅実な姿勢だ。というのも、筆者である私はベンチャーキャピタリストという仕事柄、これまでにも多くのe-ラーニング事業を見てきた。ほとんどのe-ラーニング事業者は、自らの商品力を過信してCMなど大規模な広告を展開する。結果は説明するまでもなく、事業が成功した試しがない。

しかし「すらら」は例外であった。湯野川社長自身が得意とするFC制度もふえて採り入れず、徹底してユーザーサイドに立った着実な展開を実施してきた結果が、現在の成功につながっているのだ。

2012年には、宮城など震災の被災地で仮設住宅に暮らす生徒さんを対象に「すらら」を無償提供している。

「所得の格差が教育機会の格差を生み、教育格差がさらなる人生の格差を生む。その負のスパイラルが子供の将来や夢を奪っている。世界中の子供たちに、低料金で高品質な教育が受けられる『すらら』を届けることで、この世から教育格差を根絶したい。」

湯野川社長の言葉に私は感動した。今後の活躍を大いに期待したいベンチャーだ。

株式会社すららネット
代表者:湯野川 孝彦 スタッフ数:10名
設立:2008年8月 URL:http://surala.jp/
事業内容:
e-ラーニングによる教育サービスの提供

当記事の内容は 2013/5/14 時点のもので、該当のサービス内容が変わっていたり、サービス自体が停止している場合もございますので、あらかじめご了承ください。

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