シールマニア×ラーメンフリークが熱烈に支持!
ニッチなシールビジネスでマニアの心をつかむ

この記事はに専門家 によって監修されました。

執筆者: 佐々木 正孝  編集:菊池 徳行(ハイキックス)

現代に蘇った「ビックリマン」風シール。
個性豊かなラーメン店を巡る超レアなラリー
展開している事業の内容・特徴

20160823-21980~90年代の少年たちを熱狂させた、シール付き食玩・ビックリマンチョコ。神話をモチーフにした世界観、“キラシール”などのレアアイテムを封入するなど、コレクター心をくすぐる戦略が奏功し、人気が爆発した。復刻版がリリースされたり、元祖シールにプレミア価格がついたり、その予熱はいまだ冷めやらない。

そんなビックリマンシールのデザイン、世界観を踏襲した「はみがきラムネ+シール」が、今、個性豊か、かつ人気のラーメン店で売られている。そして、そのシールを活用した、スタンプラリーのような仕組みの「ラーメンラリー」が、ラーメンファンの間で一種のブームとなっているのだ。

この「ラーメンラリー」を考案し、世に送り出したのが、ネギオコーポレーションの代表兼営業担当・戸倉慈樹氏(左)、デザイナーの根岸たくみ氏(右)のタッグである。

遥か昔、神のラーメンを封印したラーメン神――。彼らのヒミツを探るため、絶品の一杯を探すラーメンくんとアスラくんは、個性豊かな麺職人たちと出会っていく――これが、「ラーメンラリー」の根底に流れる物語である。

1個200円の商品には、「店員さんシール」の「ノーマル」「キラシール」が封入されている。実際にビックリマンシールのデザインを手がけたグリーンハウスが監修しており、ラーメンファンだけではなく、熱烈なビックリマンファンもこの人気を後押し。ブーストするのはソーシャルネットワークへの拡散だ。各店のシール+提供ラーメンを撮影してSNSにアップすると、超レアな限定キラシールがゲットできる特典がついている。

現在、首都圏を中心とした50店舗が販売中で、物語の主人公よろしく、ファンたちは提供店舗への巡礼を続ける。新たな商品がリリースされる店には、固定ファンが行列をつくり、発売初日に250個以上が売れたケースも。店主をコミカルにキャラ化したイラストは、麺オタクにも好評だ。

かくして、「ラーメンラリー」はシールマニア+ラーメンフリークというコアな層の心をわしづかみ! ちなみに、ネギオコーポレーションの収益は、シールを卸したラーメン店から得る広告料となっている。

飛び込み営業では連戦連敗の無限ループ……。
気鋭ラーメン職人の集団に認められてブレイク
ビジネスアイディア発想のきっかけ

20160823-1今や、行列が絶えないラーメン店、人気店主がラーメンラリーに参加している。完全に軌道に乗ったように見えるラーメンラリーだが、2人の試みは最初から順風満帆だったわけではない。2014年11月の事業スタートに際しては、流通スキームの構築、ファーストクライアントの獲得といった難事が待ち構えていた。

「子どものころに大好きだったビックリマンシールで事業化しようと考えた僕らは、グリーンハウスさんに企画のタネを持ち込んで内諾を得ました。そこで、ファン垂涎のシールをつくる道筋ができたんですが、難しかったのはシールを流通させる仕組みです。何の実績もない僕らがいきなりコンビニに卸せるわけもない。すでに30代~40代を迎えているビックリマン世代に響き、なおかつ流通継続できるスポットはないものか……。その時に思いついたのが、どこの街にもあるラーメン店でした」(戸倉氏)

もともとは、同じフィギュア関連の企業に勤務して出会ったネギオコーポレーションの2人。前職在籍時に復刻ビックリマンシールの話題で意気投合、一緒に起業したのちに「ラーメンラリー」のアイデアを思いつく。しかし、当時の2人はラーメンフリークではなく、この業界に何のつながりもなかった。

「広告ツールとして営業をかけていきましたが、ラーメン店は広告費に非常にシビア。最初の提携店が見つかるまで数カ月を要しました。その間は、飛び込み営業・門前払いという無限ループです。今にして思えば、前職の意識を引きずりすぎ、中野や下北沢など、サブカルチックな街ばかりをねらっていたのが敗因でしたね」(根岸氏)

ビジネス始動への足がかりがつかめたのは、知人のつてで話を聞いてくれた『ラーメンくれは』(田無市)との契約だった。そこから、店主の紹介をつなげながら、あれよあれよという間に人気店とのコネクションが広がっていく。

それは例えば、ラーメン業界最高権威のアワード、TRY(東京ラーメン・オブ・ザ・イヤー)で2014年の新人大賞を受賞した「中華そば しば田」、ミシュランのビブグルマンに掲載された「ラーメン屋 トイ・ボックス」、ラーメンWalkerグランプリ2014で新人賞部門1位に輝いた「くじら食堂」などなど。

ラーメンラリーの面白さに、SNSやLINEでつながりを持つ気鋭店主の一団が興味を示し、次々と契約を締結。開業してまだ数年の店主たちはネギオコーポレーションの2人と同じく、ビックリマンシール直撃世代だったこともポイントだった。サブカルにも造詣が深く、前例のないモデルに乗ってくれる遊び心があったのだ。

こうして獲得できた第一弾の参加ラーメン店ラインナップが、最高の営業ツールになった。以来、提携店の確保に苦労したことはないという。

東京から北海道、そして全国展開へ。
同世代の共鳴でラリーを伝播させていく
将来の展望

そして今、「ラーメンラリー」は首都圏から地方に広がりつつある。2015年には20店舗と連携して札幌でもスタート。また、長野県、関西圏での展開を視野に、各地元ラーメン店と折衝を続けている。

「首都圏外の第一弾が北海道だったのは、特にねらったわけではありません。僕らがやったのは、ラーメンラリーの公式アカウントを使って、面白そうな発信をしているラーメン店を片っ端からフォローしていくという施策です」(戸倉氏)

そして、フォロー返しをしてくれた店主に直接メッセージを送り「こんなシール、つくりませんか」という直接交渉を続けていった。そこで真っ先に手を挙げたのが、2014年に札幌にオープンした「Q」というラーメン店。プロスノーボーダーとしても活躍する異色の店主で、やはり2人と同世代の人物だったという。

ビックリマン世代の横のつながりはSNSを通じて結ばれ、物理的な距離を軽々と越えた。至高のラーメンを目指して旅をする――「ラーメンラリー」の神話そのままに、ネギオコーポレーションの2人は、各地のラーメン職人と出会っていくというわけだ。

「やはり、ラーメンにもハマってしまいました(笑)。戸倉は1日1麺、時には店舗をハシゴして連食も辞さないほどラーメンにハマっているほどです。だからこそ、僕らはラーメン店として高みを目指すお店と組んでいきたい。札幌でシールを卸すことになった20軒は全店に足を運び、ラーメンを実食しました。実際に食べて、美味しいと納得できた店とだけ組む。それが僕たちの信条になっています」(根岸氏)

スマホという機動力の高いデバイスも後押しし、シールのゲット、ラーメンの実食が瞬時に共有されるソーシャル全盛時代。ネギオコーポレーションと、若手ラーメン店主たち。往年のビックリマンシール世代が世に出した「ラーメンラリー」は、現在のデジタルオデッセイ(神話)として確実にプレゼンスを増していくだろう。

ネギオコーポレーション
代表者:戸倉 慈樹氏 設立:2014年11月
URL:http://ramenrally.blogspot.jp/ スタッフ数:2名
事業内容:・ラーメン店主をイラスト化したビックリマン風シール「ラーメンラリー」の企画・運営

当記事の内容は 2016/08/23 時点のもので、該当のサービス内容が変わっていたり、サービス自体が停止している場合もございますので、あらかじめご了承ください。

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