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独自の技術で3Dデータを10分で作成。1000社のクライアントを抱える3Dプリントベンチャー「株式会社アイジェット」

執筆者:ドリームゲート事務局
更新日:2015年01月22日

まだまだ未知数の3Dプリンティング業界。果たしてどうやって稼いでいるのか? 展開している事業内容・特徴

20150120-13Dプリンターといえば、近年急成長をしている業界の1つだ。2015年には3Dプリンターの国内出荷台数は10,000台を超えるとの予想もあり、2017年までに日本国内で年平均57.2パーセントの成長、グローバルでは年46.2パーセントで成長し、世界での年間出荷台数は32万台に達すると試算(※)もある。
※)…矢野経済研究所「3Dプリンター世界市場に関する調査結果 2014」より
http://www.yano.co.jp/press/press.php/001325

今回は3Dプリント黎明期である2009年から3Dプリンティングビジネスを展開し、2015年1月時点で35名のスタッフを擁し、業界を代表する会社にまで成長したベンチャー「株式会社アイジェット」を率いる同社代表の久米原 勝氏に、同社の成長の軌跡とこれからの3Dプリンティング業界について伺ってきた。

同社の強みは、独自のスキャン技術により、3Dデータをわずか10分で完成させてしまうといった技術力の高さ。これにより、最短で翌日には納品も可能という超速納期を実現した。他にも日本では同社にしかない設備などをそろえ、顧客数も昨年比で倍増。クライアントにはトヨタ自動車(※1)や「映画『相棒』X DAY」(※2)など有名企業が並び、2015年1月時点での取引先は1000社を超え、急成長している。クライアント企業からのニーズは多様で、工業製品の試作需要をはじめ、医療分野や、航空宇宙、建築設計、エンターテイメントなど実に幅広い。
※1 トヨタ自動車「夢のクルマ アートコンテスト」サーチアンドサーチ・ファロン
※2 映画『相棒』X DAY、東京の街並みを3D造形 

まず同社の売上で大きいのは「フィギュア」だそうで、これは日本独特だという。結婚式や子供の成長記録、あるいはゲームのキャラクターやテレビ番組などで芸能人のフィギュアなどの需要があるそうだ。

ちなみに同社では「JET TOUR」という3Dプリントファクトリーの工場見学を実施している。当取材でもツアーを体験してきたので、その様子も記事の後半にてお届けしたい。

他にはテレビ番組や映画などで使う美術パーツや小道具の製造、不動産会社からは建設物や街のジオラマ制作といった注文が入るそうだ。それもデータさえあれば最短で翌日には完成、発送できるというのが3Dプリンティングの強みだ。

日本で初めて「3Dフィギュア」をリリースしたことでも知られる同社。人間“そのまま”のフィギュア化やアニメキャラクター等、エンターテイメント系3Dプリンティングを得意としており、アニメ・音楽業界からのオーダーはひっきりなしだという。TV・映画製作に用いる舞台美術の実績も高く、数々のドラマ・映画に同社の3Dフィギュアやスキャニング技術が採用されている。

さらに、小ロットからの発注ができ、データが揃っていれば最短で翌日には造形品の出荷が可能で、オリジナル製品開発のための試作依頼のニーズも多い。この試作分野においては、金型製作等のフローをなくしたことで短納期・低コストを実現。従来に比べクライアントのメリットは高いといえる。

また、同社の3Dプリントは、フルカラー石膏・デジタルワックス・ナイロン粉末・チタン64・ABSと、素材・出力方法ともに多彩に用意。各業界のさまざまなニーズに対応できる体制を整えている。

ハード・ソフト・サービスともにまったく新しい3Dプリンティング市場。ビジネスとしては、まだまだ未知数である。現在、3Dプリントをビジネスにしている会社は国内に100社以上あるそうだが、ビジネスとしてきちんと売上・利益を上げている会社はそう多くないだろう。そんななか同社では、3Dプリンターへの投資を続け、日本に3台しかないPROX500(3D Systems製)などの高性能設備を保有する。ちなみに同設備で商用稼働しているのは同社保有機のみだそうだ。

3Dプリンターがこれだけのブームになった理由はいくつもあるだろうが、技術的には同分野のリーディングカンパニーであるStratasys社が保有していた造形技術特許のFDM方式(熱溶解積層法)が2009年に期限を迎えたことにより、一般ユーザーが手軽に変える低価格帯の3Dプリンターが続々登場したことがあげられる。さらに、2014年2月には、FDM方式よりも高精度で造形を行えるSLS方式(レーザー焼結法)も特許期限を迎えた。今後、3Dプリンター普及の拡大はエンタープライズ・コンシューマー問わず爆発的に進むだろう。

「造形と色を同時に出力できる!」 3Dプリンターから受けた衝撃で起業! ビジネスアイデア発想のきっかけ

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久米原 勝氏

株式会社アイジェットの創業は2009年5月。代表である久米原 勝氏ともう一人のスタッフあわせて2名で、横浜からスタートしたベンチャーだが、5年間で総勢35名のスタッフを抱え、東京都港区海岸に750平米にオフィスを構える規模にまで成長。2度の第三者割当増資で資金調達にも成功し、資本金は2億円を超える。

その成長の秘訣は業界自体の興隆だけではなく、事業の根幹にユーザーとしての視点と感動があるからだろう。代表である久米原勝氏が会社を立ち上げたのは、ある3Dプリンターに衝撃を受けてのことだった。

もともとデジタル印刷分野の事業を営んでいた久米原氏。仕事の傍ら、趣味で3Dソフトを使っていたこともあり、自然と3Dプリンターに興味を抱いた。その中で、たまたま巡りあったのが造形とフルカラー着色とを同時に行える「ZPrinter」だった。

その当時を、久米原氏はこう振り返る。
「3Dプリンター自体の存在は当時から知っていましたが、ZPrinterの登場によって、それまで、まったく別物だった造形と着色工程の境界線がなくなった事に衝撃を受けました。これは世界が変わるぐらい革新的なものだと感じました。特に印刷業に携わってきた私にとって、“色”へのアプローチが可能であったことは、大きな感銘を受けましたね。おそらく、造形のみだったら3Dプリンターを事業にしようとは考えてなかったと思います」

この出会いから、3Dプリントの魅力と同時に、これまでないモノづくりにチャレンジできるとも直感した久米原氏。さっそく銀行から融資を受けて、1000万円もするZPrinterを購入した。そして、印刷ビジネスで培った色のノウハウと3Dソフトの知見を活かし、事業を開始した。

だが、当時はまだまだ3Dプリントの認知度は低く、確たる市場もないに等しい。事業をスタートしたものの苦戦を強いられ、クライアントを開拓する日々が続く。

まずは3Dプリントと親和性が高く、かつ、既にニーズのあった試作分野を中心に営業やマーケティングを行いながらも、さまざまな業界にPRしてまわった。それが徐々に功を奏し、不動産デベロッパーからマンションのジオラマ製作の依頼があったり、テレビや映画などのエンタメ業界から依頼が入るようになった。

また、同社の成長と並行して、3Dプリントブームがはじまった。ブームのきっかけは2012年10月に発売されたクリス・アンダーソンの著書「MAKERS 21世紀の産業革命が始まる」

また特許の期限切れなどによるコンシューマー用の低価格3Dプリントの発売・普及等により、“3Dプリント”というワードが一気に市民権を得た。こうしたブームから、2013年は「3Dプリント元年」とも言われているが、同社ではこの時期、世界初の3D写真館「OMOTE 3D SHASHINKAN」プロジェクトに参加した。そのイベントの新規性と3Dフィギュアのクオリティにイベントは大盛況。国内外のメディアから取材を受け、同社は日本だけでなく海外からも注目される3Dプリントのベンチャーと認知された。

その後、ベンチャーキャピタルからの資金調達に成功し、拠点も横浜から東京都港区海岸地区に移った。2014年9月からは、同社オフィスに併設されたファクトリーを見学できる「JETTOUR」を開始。快進撃を続けている。

3Dプリンティングをもっと当たり前に! 3Dデータ製作の汎用性が今後の成長の起爆剤になる。 将来への展望

同社は2014年9月に「3Dピポ」というユニークな名前のアプリをリリースした。これはスマホで画像自分の顔を撮るだけで、3Dフィギュアをオーダーできる世界初の3Dプリントオーダーサービスだ。オリジナル・3Dフィギュアのオーダー価格は5,980円と手頃で、プレゼントなどに良い。アプリならではの機能として、着せ替えやヘアスタイルを選択できる。また、自分が3Dキャラクターとなって画面上を動き回るアニメーション機能などもあり面白い。専門的な知識はなくとも、スマホと3Dピポがあれば、3Dフィギュアをつくれるのである。

「3Dピポ」の狙いを久米原氏に伺ったところ、同社は3Dプリントの“インプット”部分に力を注いでいるという。

「3Dプリントというと、どうしてもプリンターばかりに目がいきがちです。しかし、CADや3DCGソフトがなければデータ自体を製作できませんし、スキャナーも1台あればすべての状況をまかなえるというわけではありません。そして、それらを扱うには特殊なスキルが必要。現在はまだ、3Dプリントは“当たり前”なものではないんです。データ製作から造形までを一貫して行う当社としては、そのインプットの改善にも寄与していきたい。またそれが、今後の命題でもあると考えています」

スキャニングに関しても同社では独自の技術開発を進めている。例えば、わずか数十秒で人体スキャニングを完了しPCに取り込めるシステムを開発。取り込んだデータは10分ほどで3Dプリント用の高精度なデータに変換され、そのままフィギュアなどが出力できる。

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3Dスキャニングの様子

このシステムは持ち運び可能なため、イベント等での出張スキャンも実施しているという。また同社では3Dデータ自体を主軸にした新しいサービスも計画している。例えば、eコマースでのショッピングで洋服や靴、メガネやイヤホン等、自分に合った製品をすぐに判断・購入できるといったもので、リリースされれば、我々の生活に広く“根付く”サービスになりそうだ。

株式会社アイジェットは、「紙からデータ、データから造形へ」といった印刷の系譜の、“新しきフロントランナー”として、最先端のインフラを築こうとしている。同社は、「第3の産業革命」との異名を持つメイカーズムーブメントの、まさに旗手であるといえるだろう。

3Dプリントファクトリーの工場見学「JET TOUR」に行ってきた! レポート

同社の取材と合わせて、「JET TOUR」という3Dプリントファクトリーの工場見学もさせていただいた。その様子を簡単にご紹介したい。

ツアー1:作例

まず見せてもらったのが同社で作成された作品の数々。
超ハイクオリティー!

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自転車のチェーンのような造形も可能。実際に手にすると、ぐにゃぐにゃと動くようになっています。すごい!

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都市のジオラマ
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写真から立体化もできるそうです!
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3D Gyotaku リアルすぎる。。。
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綺麗な照明。これも3Dプリンターで作ったもの
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ツアー-2:3Dスキャン

人体3Dスキャンの様子。数十秒ほど決めポーズのまま。土台がぐるっと一回転して撮影が完了する。

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スキャンした画像はすぐ下記のように3D化される
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撮影して10分後。綺麗に整形された3Dデータ。服の色なども反映される。
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ツアー-3:工場内

日本に3台しかない高性能3Dプリンター。室内には入れないとの事でガラス越しで撮影。ちょっと映り込みがあるのはご容赦

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製造ルームの様子。作りかけのフィギュアがおいてますが、アップでは撮影出来ないとの事で遠景で。こういう現場感にワクワクするのは男の常。

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色付き出力できるそうで、紙のプリンターのように色別のカートリッジが見えます。

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出力後、仕上げの工程。スタッフの方々が黙々と作業中。

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以上、3Dプリントファクトリーのレポートでした。実はもっといろいろあったのですが、本当に納品する制作物などを作っているところで撮影NGが多かったため、詳しく知りたい方は是非ツアーに申し込んでください。

編集部より

最後に余談となるが、久米原氏はドリームゲート「社長ブログ」の人気ブロガーであり、アイジェット創業の2009年から執筆していただいている。久米原氏は「商売っ気のない記事」と笑うが、ランキングは常にトップを維持。記事は製作事例も多数掲載されており、3Dプリントで検索すると同氏のブログが上位に来ることもしばしば。このブログがきっかけで、仕事の依頼や取材の打診等も多いそうだ。

株式会社アイジェット
代表者:久米原 勝氏 設立:2009年5月
URL:
http://www.ijet.co.jp/
スタッフ数:35人
事業内容:
3Dプリンティング事業
3Dデータ事業
3Dスキャニング事業
3Dソリューション事業

当記事の内容は 2015/1/22 時点のもので、該当のサービス内容が変わっていたり、サービス自体が停止している場合もございますので、あらかじめご了承ください。

この記事の執筆者

ドリームゲート事務局
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