本物志向の「薩摩海鮮かつおせんべい」が大ヒット。売れるお土産に隠された秘密とは

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執筆者: ドリームゲート事務局

本物志向のかつおせんべいが大ヒット。枕崎の水産会社が始めた新事業。
展開している事業内容・特徴

katsu-ichi1「薩摩海鮮かつおせんべい」という商品が大ヒットしている。生産・販売しているのは鹿児島県枕崎市にある水産加工会社の中原水産。1948年に創業している鹿児島の老舗企業だが、新しい事業として「薩摩海鮮 かつ市」というブランドを立ち上げた。その最初の商品が「薩摩海鮮かつおせんべい」だ。

「薩摩海鮮 かつ市」は、鹿児島の食文化をワンランク上の商品・サービスとしてお客様に提供するという理念のもと、具体的には「おだし関連商品」などを展開する事業計画で、その第1弾商品の「薩摩海鮮かつおせんべい」を2011年11月に販売を開始したところ、販売開始後から大ヒットしている。

売れ行きは3週間連続で前週比約1.5倍のペースというから驚きだ。鹿児島中央駅の販売店では、開始わずか2週目でNo.1の売上を達成。早くも売り場で最大のスペースを占める人気商品になっており、さらに鹿児島県水産物品評会で県知事賞を受賞している。

かつお味のせんべい、という商品はこれまでも存在したが、実際は「かつお」と名がつくものの、かつおの風味がする程度で、使用素材に占めるかつお使用の割合は低いものが多いという。その点、「薩摩海鮮かつおせんべい」は、枕崎で最高級の「本枯れ節」をふんだんに使用し、「かつおの香り」「ダシの旨味」を味わうことができるのが売りだ。

また、既存のせんべいはビニールパックの簡易な包装なのに対して、「薩摩海鮮かつおせんべい」は、上品な紙包装を用いていることで、高級感のある「お土産」として好評だという。値段も16枚入り(2枚×8袋)の小箱が630円、30枚入り(2枚×15袋)の大箱で1050円という、リーズナブルな価格帯を狙っているのもヒットの要因だ。

水産会社と有名せんべい屋のせがれがコラボレーション
ビジネスアイデア発想のきっかけ

「薩摩海鮮 かつ市」は、製造元の中原水産が実家である中原晋司氏(中原水産 常務取締役)と、兵庫にある播磨屋本店という有名せんべい店が実家という阿野武士氏(かつ市 事業部長)のコラボレーションで生まれた。

中原氏と阿野氏は、もともとは東京にある投資会社で食品関連事業を一緒に立ち上げていた仲間だ。中原氏はその投資会社を退職して実家に戻り、人口減少に悩む地方を活性化すべく、地方産品の高付加価値化・グローバル化を進める仕事をしていた。

一方の阿野氏も退職後は独立してコンサルタントの仕事などをしていた。一旦はお互いに別々の進路をとったものの、個人的に交流を続けていた。そんな中で1つのアイデアが生まれた。

「せんべいにかつお節を混ぜてみてはどうだろう?」

試作をしてみた所、これがとても美味しい。ここで、かつお節の持つ「だしの旨味」を用いたビジネスの可能性に気づいた2人は、この可能性にかけて「薩摩海鮮 かつ市」を立ち上げることになった。

売れるお土産とは? 徹底分析、たどり着いた結論

katsu-ichi2中原氏と阿野氏は、いずれもかつて一緒に事業を立ち上げ経験もあり、特に阿野氏は投資会社時代に年間数百本もの新規事業プランをレビューしていた事業計画のスペシャリストだ。事業計画の構築や市場分析は得意領域、さっそく徹底した市場調査に基づき計画を練っていったところ、ある問題点を発見した。

従来の鹿児島土産といえば、生菓子・さつま揚げなどの「冷たい(要冷蔵)」「重たい」「賞味期限短い」「バラマキできない」という特徴が多い。おおよそ、土産物としては不向きである。

「この問題を解決する商品を作れば売れるのではないか?」

そう気づいた2人は、「常温」「軽い」「賞味期限長い」「バラマキできる(小分け)」ができる「薩摩海鮮かつおせんべい」という回答にたどりついた。

そもそも、枕崎における「かつお(節)」ブランドは、先人の努力である程度築かれていたが、かつお節だけを販売しているだけでは限界がある。かつお節の良さを、もっと手軽に味わえる形、お菓子(せんべい)などに活かして新しいマーケットを生みだせるのではないか。そうして事業計画の骨子が出来上がっていった。

商品の流通経路は卸と直販という2つがあるが、卸はあくまで直接販売への足がかり(認知手段)として割り切ってやみくもに量を追う拡販はせず、まずは鹿児島の一部店舗に限定して販売することにした。営業効率と高い利益率を確保しつつスタートさせる計画だ。
 こうして、準備万端でスタートさせた新事業は、計画以上の反応で船出を迎えた。

「日本人としての誇り」を取り戻せるような、地方活性化に貢献できる事業を創造したい
将来への展望

「薩摩海鮮 かつ市」を立ち上げた中原氏と阿野氏の2人の理念は、「日本人としての誇り」を取り戻せるような、地方活性化に貢献できる事業を創造することだという。

ビジネスを立ち上げる際に決めたキーワードは、「持たざる経営」「消費者への直接販売」「ローカル・グローバル両方の強固なネットワーク構築」「地方貢献の多様な働き方の構築」。

今後は、卸モデル→直販モデル(通販・直営店舗)へのシフトに注力しつつ、「ダシ」を全面に押し出した日常使いのできる商品開発を進めていきたいという。

また、鹿児島にあるいろいろな食品関連企業ともコラボして、地方活性化できるような商品開発、新たな雇用の創出を目指すという。

最終的には「ダシ」の「直販」モデルを世界に展開し、「ダシ」という文化の輸出をするのが夢だと語ってくれた。日本独特のダシ文化を世界に広めたいという夢を応援したい。

中原水産株式会社
代表者:中原 耕司(代表取締役)
かつ市事業責任者:阿野武士(事業部長)
社員:40名
設立:1948年6月 URL:http://www.katsu-ichi.com/
事業内容:節類の販売。産地卸業として枕崎港で水揚げされた魚を仕入れ、 鮮魚・冷凍した形で全国の魚市場などに販売水産加工品の製造・販売
メッセージ:かつ市では、一緒に商品を作っていただけるパートナー企業様、一緒に成長していける仲間を積極的に探しています。鹿児島には、かつお節の最高級品 本枯れ節、日本三大地鶏の薩摩地鶏、鹿児島が誇る黒豚、これ以上ないというくらい、ダシの主役となる素材がそろっています。まだ始まったばかりの「かつ市」ですが、ご興味のある方はぜひ一度お声掛けください。あなたのご連絡から新たな可能性が生まれるかもしれません。

当記事の内容は 2011/12/15 時点のもので、該当のサービス内容が変わっていたり、サービス自体が停止している場合もございますので、あらかじめご了承ください。

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