内科医が立ち上げた投資型医療サービス「ミナケア」

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執筆者: ドリームゲート事務局

治療から、予防へ。ビジネスとして提唱する医療の“新しいカタチ” 展開している事業内容・特徴

minacare-1 東洋医学には「未病」という言葉がある。元来は中国の言葉で、日本語で書けば「未ダ病ニナラザル」。病気未満、疾病予備群の状態を指すが、世界でも類を見ない少子高齢化が進み、医療費が増大し社会保障自体を脅かすようになった現代の日本においては、「病気になってから治療する」のではなく、「未ダ病ニナラザル」状態を疾病に転化させず健康に戻してやる取り組みが、健康長寿や医療費削減のキーポイントとなってくるのではないだろうか。

しかし、本人が病気だと分かっていれば病院へ行くなど対処も出来るが、自覚症状がなく健診でも問題ないと言われればそれも難しい。

40歳以上から74歳までの被保険者を対象に行う、メタボリックシンドロームの予防・改善から生活習慣病やそのリスクを是正するのを目的とした特定保健指導という制度があるが、ある健康保険組合が行った健康診断で何らかのリスクを持つと判定された人の6人に一人は、この特定保健指導の指導対象にならなかったという。

また、生活習慣病の代表格である糖尿病に関しては、自覚症状が出づらく早急に治療が必要な状態であっても病院へ通わず、適正な治療を受けていない人が少なくないという。こうした人は重大な病気になってから初めて医療機関に行って高額な治療を受けることになる。

この2例を考えれば、潜在的な疾病予備群が数多くいることは明らかで、長期的に見れば医療費増大を助長させていると考えてもいいのではないだろうか。

医療は今、疾病予備群に向けた対処が求められているのである。

そして、今回紹介するのが、疾病予備群の人々に健康を促し医療費の肥大にも一石を投じるサービス、投資型医療「ミナケア」だ。

当サービスのビジネスモデルは保険者(健康保険組合など)、事業主を対象としたBtoB。概要は、保険者の「医療費コスト」の削減に繋がり、被保険者に「健康」を促せるデータ解析とプログラムの提供だ。事業は“データヘルス”と呼ばれるが「正確なリスク・コスト解析」、「保健事業戦略の企画・立案」、「継続的な効果検証」の3本の柱からなる。

まず、「正確なリスク・コスト解析」では、保険者が保有している健康診断や医療費のデータを収集し、ミナケアが独自の手法で保険加入者の疾病リスクやコスト情報の解析を実施する。次に「保健事業戦略の企画・立案」では、その結果から各リスク集団に分類し、それぞれにマッチした健康維持・疾病管理プログラムを検討し、個人の健康や生活の向上、医療費の削減を図る保健事業全体の戦略を提案する。そして「継続的な効果検証」では、実施された保健事業の費用対効果の検証から改善策の提案までのサポートを行う。

保険者、事業者のメリットは、データ解析により保険加入者の疾病リスク、コストリスクを具体的に把握でき、個別にケアを促せるということ。また、それぞれにマッチした健康維持・疾病管理プログラムにより、どのような病気になりやすいのか、今からどう対処させるべきなのかなど、保険加入者の健康管理に対しての道筋が明確に分かることである。

そして、健康の足踏みが揃うことになれば、保険者にとっては医療費コスト削減となり、事業主では生産力の向上に繋がり、利益が自ずと創出されることである。健康を主軸にした副次効果の連続、正のスパイラルを形成するサービスとも言えるだろう。「健康」は「利益」の種子なのだ。

現在、社員は10名。サービスインしてからミナケアは4年目を迎えた。山本氏は、「IT関連事業のように勢いのある展開は予想していませんでしたが、当初のマーケティングリサーチより道は厳しいですね。健康が利益に結びつくという概念が浸透していないのが最大のネックになっている」と語る。引き合いは現時点で保険者、事業者、地方自治体含め数十社。従業員の給料などランニングコストを差し引けば、まだまだ事業としては草創期だ。

しかし、対象となる市場は巨大だ。国民健康保険、協会けんぽ、健康保険組合、共済組合の保険者総数は全国で約3,400組合。そのどこもが当サービスの顧客となる可能性がある。更に、総医療費が平成24年度に38兆円を超えさらに増大する一方。ミナケアが目下の対象としている生活習慣病にかかる医療費は、その3分の1程度を推移している。つまり、十数兆円規模の潜在的なマーケットが存在する。

勤務医で感じた医師としての歯痒さと病院への疑問から、アイデアは生まれた。 ビジネスアイデア発想のきっかけ

minacare-1データヘルスケア事業を提供する株式会社ミナケアの代表である山本雄士氏。生粋のベンチャー精神を持った異例の起業家と言える。それは、今まで存在しなかったデータ解析を使ったヘルスケアという概念を世に広めるべく起業したパイオニアであるからというのも、その一つに挙げられるが、何より氏の経歴によるところが大きい。

起業する以前に山本氏が従事していた職業は内科医。一般的なイメージでは、ビジネスの対極に位置する医療従事者だった。

しかし、「勤務医」であったことと、「経営者」であることは、同一線上であると山本氏は言う。一聴すれば腑に落ちないと感じるかもしれないが、氏よりビジネスアイデアのきっかけと起業に至るまでの経緯を聞き、納得した。

まず、起業までの概略は以下のようである。1999年に東京大学医学部を卒業し、医師として同付属病院、都立病院などで6年間の勤務に携わっている。その後、私費を投じ渡米しハーバード・ビジネススクールへ留学、欧米企業経営者の登竜門であるMBA(経営学修士)を2007年に取得。そして帰国し、独立行政法人科学技術振興機構 研究開発戦略センターでの勤務を経て起業した。

当サービスの誕生のきっかけとなったのは、病院勤務でのことだ。内科医として誇りを持ち、医療に貢献すべく診療にあたっていたが山本氏だったが、日々の診療の通じて次第に歯痒さと疑問を覚えるようになっていったという。

「医師は、病気を治療することは出来るが、これから病気を患うであろう人を助けることが出来ない。また、治療中でも途中で通院を止めてしまった患者さんの場合もこちらからは何もしてあげることが出来ない。病院という施設の中でしか医師が機能しない事実。何かもっと他に出来る事があるのでは? と、歯痒さを感じていました。また一方で、歴史の名の下に患者利益になり得ないシステムや体制が根付く病院の中では自分がめざす医療が行えないという不満と疑問もありました」

山本氏のこのような想いがミナケアの根幹である「健康への投資としての医療」というテーマを誕生させた。そして、このアイデアを啓発し世の中に普及させるべく勤務医を辞することを決め、賛同してくれる企業を探し歩いた。だが、類例のない事業であったため困難を極め、自らで企業することを決意したのであった。

ただ、起業するとはいえ、ビジネスにまったくの免疫を持っていなかった山本氏。そこで、1から学ぶのであれば徹底して学びたいと選んだのが、ハーバード・ビジネススクールだったというわけだ。

「留学試験は突破したものの、在学当初は右も左も分からず、授業についていくだけで必死。まして、ビジネスのことも分からず勉強に勉強を重ねる毎日でした」と、笑いながら氏は振り返る。

見事にMBAを取得し帰国した後は、独立行政法人科学技術振興機構 研究開発戦略センターで大学や研究機関内の医学研究で得た医学的発見を臨床現場へと展開させるための戦略業務、保健事業コンサルティングを行う事業会社で保険者と共にどのようなプログラムを組むことで被保険者の健康を増進させる業務に携わる。そして、2011月2月、貯蓄を資本金に充当し株式会社ミナケアを設立した。

設立当初からミナケアが主事業である。また、平行して医療とマネジメント双方を兼ね備えるヘルスケアセミナーの開講や、新たなヘルスケア事業開発を支援するヘルスケアサービス開発支援事業で収益の一部を稼いでいる。

医療は手法によらず。人々が健康と社会貢献をめざし事業を拡大させていく。将来への展望

「爆発的にではないが、保健事業サービスの中では確たる知名度があり、徐々に多分野でも認知が広まっている実感はある」と、これまでの歩みを山本氏は振り返った。

同社の今後の目標は、啓発と拡充。保険者、事業主に対して、健康=生産力=利益であり、保健事業はコストではなく投資であることを広く発信しながら、全国各地の潜在ニーズに対応し得る営業力の強化を進めていく構えだ。

インタビューの最後に、山本氏は自身のことをこう語ってくれた。

「現在では、白衣や聴診器は持ちませんし、薬も処方しませんが、私は自分がデータ解析という診療技術を用いて病気にならない方法を世に広める医師であると考えています。そして、そうした技術が活かせる場所がビジネスの世界でした。これからも、人々の健康や社会貢献に寄与でき、医療界をも前進させるこの事業を全力で進めていきたい」

“いい医療”を提供すべく医療の壁を越え、起業家に転身した山本氏。氏のミナケアは生活者と医療機関を繋ぐ新たな健康管理システムとして、広く普及していくことだろう。そして、年々深刻度を増す医療費問題にも必ずや打開策として貢献していくサービスだと感じた。

株式会社ミナケア
代表者:山本 雄士 氏 設立:2011年2月
URL:http://www.minacare.co.jp/
事業内容:
保健事業コンサルティング事業
データ解析事業
ヘルスケアサービス開発支援事業

当記事の内容は 2014/2/25 時点のもので、該当のサービス内容が変わっていたり、サービス自体が停止している場合もございますので、あらかじめご了承ください。