その時、偉人たちはどう動いたのか? 日清食品創業者 安藤百福 1

この記事はに専門家 によって監修されました。

執筆者: ドリームゲート事務局

エピソード1「チキンラーメンの開発」
「これだ。天ぷらの原理を応用すればいいのだ」 (48歳)

 世界で初めてインスタントラーメンの開発に成功し、「チキンラーメン」を商品化した時のエピソード。

 資産家の家に生まれ、呉服商を営む祖父の影響を受けて、学生時代から織物の販売を手がけ始めた安藤。終戦直後のある冬の日。焦土と化した大阪の街 で、ラーメンの屋台に長い行列をなす人々を見て、ラーメンという食品に対する深い関心と大きな需要への予感を抱く。その後、安藤は栄養食品の開発への取り 組みを通じて、日本人の好むめん類の量産技術や流通ルートが確立されていないことに問題意識を抱くようになった。

 製塩業を起こし、信用組合の理事長にも就任した安藤は、脱税疑惑や信用組合の破たんに巻き込まれて財産を失う。この時、唯一残った大阪府池田市の 自宅裏庭に粗末な小屋を建て、インスタントラーメンの開発に取り組み始めた。「お湯をかけるだけで食べられる簡便性を持ち、工業化され大量生産できる製 品」というイメージはあった。

 めんについては全くの素人だった安藤は、全くの手探り状態。朝5時から夜中の1時、2時まで研究に没頭する生活を1日も休まず丸1年間続けた。め んの原料の配合は非常に微妙で奥が深い。思いつく副原料を次々に練り込んでみたがうまくいかない。製めん機にかけるとぼろぼろになったり、かと思うと団子 状になってへばりつく。つくっては捨て、捨ててはつくる気が遠くなる作業。やっと配合が決まった後は、成型・乾燥でまた苦心。めんにあらかじめスープの味 を染み込ませ、長期保存に耐えるよう乾燥し、熱湯で素早く戻せるようにする製法を探り当てるまでが、試行錯誤の連続だった。安藤は、ある日、夫人が揚げる 天ぷらを見て手がかりを得る。

 「『これだ。天ぷらの原理を応用すればいいのだ』。興奮した私は何度も、めんを1本、2本と油の中に放り込み、パチパチとはじけて浮かび上がる様 子を飽きもせず眺めていた」

 編み出した「瞬間油熱乾燥法」は、インスタントラーメンの基本的な製法特許となった。

私 たちならこうする!

(株)リサイクルワン 代表取締役 木南陽介氏

まず驚いたのは、安藤氏の飽くなき開発意欲です。安藤氏はチキンラーメンという大ヒット商品を開発しても、その手を緩めずカップヌードルや焼きそば、どん 兵衛などを開発している。5年おきぐらいに大型商品を出しています。普通は大ヒット商品が出れば満足してしまいそうですが、そう簡単には満足しない。
天ぷらが揚がっているところを見て、チキンラーメンの開発がブレイクした瞬間は、まさに「発明とは1%のひらめきと99%の汗」ということを思い起こさせ られます。99%の努力が、詰まって、詰まって、臨界点近くに達していたからこそ、天ぷらを見て発想がはじけたのだと思います。考え抜き続けることがいか に大事かということを如実に示していると思います。
話はちょっとずれるかもしれませんが、リサイクルワンでネット上に事業を立ち上げてホームページをアップした時、いきなりあるメーカーの地方の工場から問 い合わせが入ったことがありました。まだサーチエンジンへの登録もしていない時にですよ。どうやって見つけられたのかわかりませんが、この時ふと思いまし た。「あ、このサービスはニーズがあるんじゃないかな」と。そのお客様はよほど困って、ネット上を探し続けて我々のサービスを発見したのだろうと思いま す。今までにないサービスだからこそ、お客様のことを想像して考え抜いて事業化する。また考え抜いたからこそ、ニーズを引き寄せる。そういうものかなと思 います。

(株)カフェグルーブ 代表取締役 浜田寿人氏

観察力に長けていて、見つけたヒントを実践してみる――。安藤氏は根っからの開発者なんだな、と思いました。人は、天ぷらを揚げるシーンなど普段見慣れて いるものに対していちいち疑問を差し挟まなくなりますが、そういう目で探してみると、いろいろなことに応用できる原理が見つかったりするものなんだと思い ます。
私も現場指向を大切にしていて、自分が見たり試したりして納得できないと認められない性格。だから、よく現場で自分のアイデアをスタッフに伝えます。社長 は社員の自主性を尊重してあまり言わないタイプが増えていますが、結局のところトップダウンで成功するケースもある。このワイルドカードを使いすぎず、で も選択肢として常に意識することが大切かなと思います。

(株)ワークスアプリケーションズ 代表取締役 CEO 牧野正幸氏

このエピソードにあるように、「儲かりそうだ」といったビジネスチャンスがあるからではなく、「社会に必要なものがない」という問題意識で事業をスタート させたのはとても重要なことだと思います。利益追求が先ではなく、問題の解決に使命を感じることで、事業を継続発展させることができるからです。すべての ベンチャーはこういう意識でスタートを切るべきだと思います。
ワークスアプリケーションズも、欧米に比べ、日本の企業がERPパッケージの導入・運用に約5倍のコストを払っているのは問題だと感じて、事業をスタート させました。だからこのエピソードには共感を覚えます。

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