その時、偉人たちはどう動いたのか? ソニー創業者 井深 大 2

この記事はに専門家 によって監修されました。

執筆者: ドリームゲート事務局

エピソード2「特許侵害との争い」
「日本の産業界全体にかかわる問題。例え相手がアメリカだろうと絶対に後へは引けない」 (45歳)

 アメリカの在日輸入業者「バルコム貿易」と特許がらみの紛争が発生、勝訴した時のエピソード。

 同社は、民間放送局の開局ラッシュでテープレコーダー需要が急速に広がった日本に目をつけ、アメリカの製品を通産省から許可を得て輸入・販売を始 めた。井深らはさっそくそのテープレコーダーを購入、分解する。その結果、東京通信工業が日本で保有する特許技術でつくられていることが判明(アメリカで の特許申請もなされたが、戦時下でうやむやになっていた)。「ただちに輸入を取りやめよ。そうでなければ特許料を支払え」と同社に再三、警告した。ところ が、バルコム貿易は頭から無視し、アメリカ製品の優位性をPR。井深らが抗議をすると、「敗戦国のくせに生意気な」という態度に出た。井深は告訴する。当 時、東京通信工業は資本金2000万円、従業員数200人弱の規模で、400万円近い供託金を積んでのことであった。特許権を共同で保有していた日本電気 が静観しているのに強硬手段に出た東京通信工業を、周囲は驚きの目で見つめる。バルコム貿易に輸入を許可した通産省の担当課長は、新聞に不快感をあらわに した。しかし井深は「日本の産業界全体にかかわる問題。うやむやにしては悪い先例を残す。例え相手がアメリカだろうと絶対に後へは引けない」と悲壮な決意 を固めていた。

 バルコム貿易は占領軍を使って圧力をかける。井深はGHQに出頭を求められたが、事情を説明するとパテントセクションの大佐は「善処しよう」と発 言。その後、盛田らが奔走し、特許保有を立証する複雑なプロセスを経て証拠を入手。東京通信工業と日本電気は日本で売られているすべてのテープレコーダー について、特許使用料を請求できることになった。

私 たちならこうする!

(株)リサイクルワン 代表取締役 木南陽介氏

資本金の5分の1の供託金を積んでまで争う、というところに凄みを感じました。経営者には、打算ではない決断を下さなければならない時があると思います。 自分の商売を守ること以上に、社会全体への影響を考え、自分の方向性の正しさを貫き通すことも時には必要です。その方向性が社会的に正しければ、いずれは 勝利する結果になるのではないでしょうか。このエピソードには、大局観のある視点を感じます。
私にも似た経験はありましたが、そこまで勝負しきれませんでしたね(笑)。ある行政の判断でリサイクルワンとして参画したい事業が思うように進まないこと がありました。その時、少し理不尽だと感じたのですが、浪費される時間がもったいなかったので、それ以上追求はしませんでした。結果としてはそれでよかっ たと思っていますが、井深さんは大きな障壁を前に、厳しい勝負をして勝った。本当にすごいと思います。

(株)カフェグルーブ 代表取締役 浜田寿人氏

当社も権利ビジネスにかかわっていますので、考えさせられるエピソードですね。この話のように、闘うべき時は闘わなければなりません。しかし、権利関係で トラブルが発生した場合、裁判に持ち込むと、すごく時間がかかってしまいます。往々にしてそのロスのほうが大きいので、いかにトラブルを避けるか、という ことに注意を払うようにしています。例えば、契約書を交わしてしまう前に、契約相手がお金を払えなくなった時にどう債務保証をしてもらうかを詰める。契約 ありきで妥協してしまうのではなく、それがのめないなら契約はしない、というぐらいの姿勢で交渉する必要があると思います。

(株)ワークスアプリケーションズ 代表取締役 CEO 牧野正幸氏

井深氏がすごいと思うのは、さまざまな圧力があったであろう中で、高い交渉力で突破したこと。なかなかできることではないと思います。現代ではこのエピソード のように訴訟を起こすのは難しくなっている側面はあるものの、会社の生死にかかわるトラブルが発生すれば、経営者ならば皆このように闘うのではないでしょ うか。私も当然、そうすると思います。

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