FAQ:デザインと進行管理を両立させるための進め方について相談したい

この記事は2025/12/09に専門家 福井 尚紀 によって監修されました。

執筆者: ドリームゲート事務局

課題・悩み

自社のWebサイトのリニューアル(または新しいサービスの立ち上げ)を進めていますが、デザインの制作と全体の進行管理を同時に進めるのが難しく感じています。
限られた期間の中で、経営陣や開発チーム、デザイナー、外部の協力会社など、関わる人が多く、それぞれの意見や作業をまとめるのに苦労しています。
スケジュールの整理や、どの作業を優先すべきかの判断にも迷うことが多いです。

そこで、デザインの仕事をしながら、プロジェクト全体をスムーズに進めるための進め方についてアドバイスをいただきたいです。

たとえば:
・作業の順番や予定をうまく組み立てるコツ
・関係者の間で考え方やゴールをそろえる工夫
・クオリティを落とさずに、スピードも保つための管理の仕方

また、デザインの自由な発想を大切にしながら、チーム全体の生産性を上げる方法についてもお聞きしたいです。

回答:プロジェクト管理とデザインは「柔軟な改善サイクル」で両立する (回答者:福井 尚紀氏)

1. デザイン制作と進行管理の両立における課題
Webサイトのリニューアルや新しいサービスの立ち上げなど、関わる人が多いプロジェクトで、デザイン制作と全体の進行管理を同時に進める難しさは、多くの方が直面する課題です。デザイナーがクリエイティブな部分だけでなくプロジェクト管理まで担う状況は珍しくありません。
この課題の背景には、プロジェクト管理が求める「構造的で論理的な進行」と、デザインに求められる「自由な発想」が、一見すると相反して見える点があります。プロジェクト管理には計画性や整合性が不可欠である一方、デザインには探索的で柔軟な姿勢が求められるためです。
両立のためには、プロジェクト管理とデザイン業務を明確に切り分けることが重要です。「段取り八分、仕事二分」という言葉が示すように、前段階での準備が適切であれば、デザイン工程に集中する余力が生まれ、進行管理との両立が可能となります。
特に、Webサイトのリニューアルのように、開始時点では完成形が明確になりにくい作業では、初期段階で詳細な計画を固めすぎると、手戻りや関係者間の衝突を招きやすくなります。
重要なのは、変化に対応しながら柔軟に進める姿勢です。プロジェクト全体を通じて情報共有を継続し、デザイナーの創造性を尊重しつつ、短い期間で「確認」と「改善」を繰り返すことで、両者の両立が実現します。

2. 関係者の間で考え方や目標をそろえる工夫
関係者間で認識をそろえることは、プロジェクトにおける最も重要な課題の一つです。経営陣、開発担当者、デザイナーでは、立場によって重視する点も使う言葉も異なりがちです。
プロジェクト開始前には、関係者が共通認識を持てるように調整しておく必要があります。プロジェクトの成功とは、計画を予定通りに完了させることだけではなく、創り出した価値を利用者に届けることです。そのため、「なぜ」行うのか、「何」を行うのか、「誰」が行うのかを事前に明確にしておくことが不可欠です。

具体的には、プロジェクトを行う背景や目的、最終的な目標や成功基準、担当者ごとの役割分担などが該当します。これらが曖昧なプロジェクトは、早い段階で迷走を始めます。
さらに、意思決定を効率的に進める手段として有効なのが、定期的に試作品(プロトタイプ)を作ることです。抽象的な議論を避け、可能な限り早い段階で「動くもの」や「目に見えるもの」を提示します。
「もっと斬新でカッコいいものを」「クールでスタイリッシュな感じで」「デザイナーのセンスで」などといった抽象的な意見は混乱を招きます。手書きのスケッチや簡単な画面構成図でも構いません。それらを関係者の「共通言語」として提示し、「確認」をしてもらうことで、抽象的な意見は具体的なフィードバックへと変わり、目指すべきゴールが自然と揃っていきます。

3. 作業順序とスケジュールを組み立てるコツ
主要な関係者を巻き込み、プロジェクトの「最終的な目標」が把握できたら、次に、その目標達成のために必要な項目(デザイン要素、機能など)を「やることリスト」として洗い出します。責任者はそれらをビジネス上の価値に基づき、「優先順位」をつけます。これが、「どの作業を優先すべきか」の明確な判断基準となります。

ここで重要なのは、「ビジネス上の価値」とは何かであり、「Webサイトをつくる」こと自体を目的化しないようにすることです。Webサイトを作ることは、あくまでも「価値」を実現するための「手段」に過ぎません。
実際のスケジュールは、作業内容を短い固定期間(例えば1週間や2週間)ごとに組み立てます。デザイナーや開発チームは、この優先順位の高い順から作業を実行していきます。こうすることで、デザイナーは創造のための時間を確保でき、責任者は期間ごとに目に見える成果物を定期的に確認できるという、良いリズムが生まれます。

4. クオリティとスピードの両立し、生産性を高める方法
一定のクオリティも担保し、作業期間も決まっているという、必ず守るべき制約があるプロジェクトは多くあります。これを達成するには「完成の定義」を明確にしておくことです。関係者間で合意するための「作業完了のチェックリスト」などを用意すると、認識のずれを防げます。

例えば、デザインガイドライン策定という共通ルールを作ることで、デザイナーの「自由な発想」は、この共通ルールを満たす範囲内で最大限に発揮されます。
スピードは、この品質基準を満たした成果物を、短い期間ごとに「少しずつ」積み上げていくことで確保されます。
また、プロジェクト全体の生産性を上げるには、短い作業期間ごとに「何がうまくいき、何が問題だったか」を話し合う振り返りを行い、次の作業期間で「改善」させます。この「確認と改善」のサイクルこそが、チームの生産性向上させる土台となります。

●ステップアップアドバイス
**プロジェクト管理とデザインは「柔軟な改善サイクル」で両立する**

デザイン制作と進行管理は、本来対立するものではありません。むしろ、優れたデザインは、優れたプロセス管理という「良い制約」の中でこそ、最大の力を発揮します。
ご相談者様の悩みは、両者を統合する現代的なアプローチへの移行期にあることを示しているのかもしれません。デザイナーとしての専門性を発揮しながらプロジェクト管理を担うことで、チームが抱える問題を排除し、全体の流れを整える役割を果たすことができます。
プロジェクトが提供すべき「価値」を定め、作業状況を適切に「共有」し、具体的な「成果物」を中心に関係者を巻き込みながら、「確認と改善」のサイクルを粘り強く回し続けることがプロジェクト成功の鍵となるのではないでしょうか。

回答者
福井 尚紀(ふくい なおき)
株式会社フォームズ代表取締役/クリエイティブ・ディレクター/ グラフィックデザイナー/
自己流でプレゼン資料を作っていませんか?ビジネスチャンスを掴む、魅力的で説得力のあるプレゼン資料の作成をプレゼンデザイナーがサポートいたします!
プロフィールを見る>>

起業マニュアル

起業、経営ノウハウが詰まったツールのすべてが、
ここにあります。

無料で始める