動物病院を開業するには? 必要な資格や資金、開業の流れを徹底解説

この記事は専門家 によって監修されました。

執筆者: ドリームゲート事務局

動物への治療に強い興味を持っていたり、勤務獣医師として経験を積んでいたりする人のなかには、「いつかは自分の動物病院を開業したい」と考える方も多いでしょう。

理想の診療方針を実現し、地域に根ざした動物医療を提供する夢を抱く一方で、開業に必要な資格や許認可、資金調達の方法など、わからないことばかりで不安に感じているかもしれません。

動物病院の開業は決してかんたんではありませんが、正しい知識と準備があれば実現可能です。

本記事では、開業に必要な手続きから資金計画、融資や補助金の活用方法まで、動物病院開業の全体像をわかりやすく解説します。

開業への第一歩を踏み出すための参考にしてください。


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動物病院の開業には多額の資金が必要で、融資を受ける際には必ず事業計画書の提出が求められます。また、設備投資や人件費、地域の競合状況など、開業前に検討すべき項目は膨大です。しっかりとした事業計画なしに開業すると、資金繰りで苦労したり、想定していた患者数が確保できずに経営が行き詰まったりするリスクがあります。

そこで、動物病院開業に必要な項目を網羅した事業計画書のテンプレートを無料でご提供します。必要事項を記入するだけで、融資申請にも使える本格的な事業計画書が完成します。


動物病院 開業

- 目次 -

動物病院開業の流れやスケジュール

動物病院の開業は、準備期間を含めて約1年の期間が必要です。

開業準備は多岐にわたり、計画的に進めなければ思わぬトラブルに見舞われる可能性があるため、事前に流れを把握しておきましょう。

 

開業の目標とコンセプトを明確にする

動物病院開業の第一歩は、あなたが目指す動物病院の姿を明確にすることです。なぜ開業したいのか、どのような診療を提供したいのか、地域にどう貢献したいのかといった根本的な部分を整理しましょう。

また、目標とする年間売上や患者数、スタッフ数なども具体的に設定します。

これらの目標とコンセプトは、その後の立地選びや設備投資、スタッフ採用の基準となるため、時間をかけて検討する必要があります。明確なビジョンがあることで、開業準備中の迷いを減らし、一貫した方針で進めることができるでしょう。

資金計画を立てて事業計画書を作成する

動物病院開業には多額の初期投資が必要で、一般的に2,000万円~5,000万円程度の資金が必要とされています。内装工事費、医療機器購入費、薬品在庫費、運転資金など、詳細な資金計画を立てることが不可欠です。

自己資金だけでは足りない場合がほとんどなので、融資を受ける前提で事業計画書を作成しましょう。事業計画書には、開業動機、市場分析、収支計画、返済計画などを具体的に記載します。とくに収支計画では、開業後の患者数予測や診療単価、人件費、家賃などの固定費を現実的に見積もることが大切です。

また、金融機関は事業計画書の内容をくわしく審査するため、根拠のある数字と実現可能な計画を示す必要があります。専門家のアドバイスを受けながら、説得力のある事業計画書を作成しましょう。

診療圏調査をおこない立地と物件を選定する

動物病院の成功は立地に大きく左右されるため、診療圏調査は極めて重要なプロセスです。診療圏調査では、候補地周辺の人口動態、世帯数、ペット飼育率、競合病院の状況などをくわしく調べます。

一般的に動物病院の診療圏は半径2~3キロメートル程度とされていますが、地域の交通事情や競合状況によって変わります。理想的な立地は、住宅地に近く、駐車場が確保でき、視認性がよい場所です。

また、将来的な地域開発計画も確認しておきましょう。物件選定では、診療に必要な面積、設備の設置可能性、賃料などを総合的に判断します。賃貸の場合は初期費用をおさえられますが、購入の場合は資産形成につながるメリットがあります。

複数の候補地を比較検討し、開業コンセプトにもっとも適した立地を選択することが成功への鍵となります。

融資や補助金を活用して資金を調達する

動物病院開業の資金調達では、日本政策金融公庫の新規開業資金や自治体の制度融資が一般的に利用されています。

日本政策金融公庫は開業資金の融資に積極的で、比較的低金利で借入れが可能です。融資申し込みには事業計画書のほか、借入申込書、獣医師免許証などの書類が必要になります。面談では開業への熱意や計画の実現可能性を説明する必要があるため、十分な準備をして臨みましょう。

また、自治体によっては動物病院開業への支援を対象とした補助金制度を設けている場合があります。これらの補助金は返済不要ですが、申請条件や審査基準が厳しく、採択数も限られています。

融資と補助金を組み合わせることで自己資金の負担を軽減できる可能性があるため、地域の支援制度を積極的に調べて活用を検討しましょう。

設計・内装工事と医療機器を導入する

物件が決まったら、動物病院としての機能を持たせるための設計と内装工事をおこないます。診察室、手術室、入院室、受付、待合室などの配置を効率的に設計し、動物の動線と飼い主の動線を分けることが重要です。

感染症対策として、隔離室や空調設備の配置にも配慮が必要です。内装工事では、床材や壁材に清掃しやすい素材を選び、防音対策も施します。医療機器の導入では、レントゲン装置、血液検査機器、超音波診断装置などの基本的な設備をそろえます。機器選定では、メンテナンス体制や操作性も考慮しましょう。

工事期間中は近隣住民への配慮も忘れずに、開業後の良好な関係構築の第一歩として丁寧な対応を心がけることが大切です。

診療施設開設届など各種許認可を提出する

動物病院を開業するには、獣医師免許以外にも複数の許認可手続きが必要です。

もっとも重要なのは飼育動物診療施設の開設届で、開業予定地を管轄する機関に提出します。この届出には、診療施設の構造設備を示す図面や獣医師免許証の写しなどが必要です。エックス線装置を設置する場合は、放射線防護に関する届出も別途必要になります。

また、薬品を扱うため、動物用医薬品の販売業許可を提出しなければなりません。法人として開業する場合は、事前に法人設立登記を完了させておく必要もあります。

これらの手続きには審査期間があるため、開業予定日から逆算して余裕を持って申請することが重要です。書類に不備があると審査が遅れ、開業スケジュールに影響する可能性があるため、事前に保健所で必要書類や記載方法を確認しておきましょう。

スタッフを採用し研修を実施する

動物病院の運営には、獣医師以外にも動物看護師や受付スタッフが必要です。スタッフ採用では、技術力だけでなく動物愛護の精神や飼い主とのコミュニケーション能力を重視しましょう。

求人方法としては、動物病院専門の求人サイトや動物看護師学校への求人票提出、知り合いからの紹介などがあります。採用後は、病院のコンセプトや診療方針、接客マナー、医療機器の操作方法などの研修を実施します。とくに、動物看護師には麻酔管理や手術助手としての技術も必要なため、十分な研修期間を設けることが大切です。

また、緊急時の対応や感染症対策についても事前に教育しておきましょう。

スタッフが病院の理念を理解し、質の高いサービスを提供できるようになることで、開業後の患者満足度向上につながります。

広告や内覧会などで集患準備をおこなう

開業前の広告宣伝活動は、開業後の患者数に直接影響する重要な準備です。

まず、病院の看板やホームページを制作し、診療内容や院長の経歴、病院の特徴をわかりやすく伝えましょう。地域の新聞や情報誌への広告掲載、チラシのポスティングも効果的です。近年はSNSを活用した情報発信も重要で、InstagramやX(旧Twitter)で病院の様子や診療風景を投稿することで親しみやすさをアピールできます。

開業直前には内覧会を開催し、地域住民に病院内を見学してもらいます。内覧会では設備や診療方針を説明し、飼い主の質問にも丁寧に答えながら、信頼関係の構築を図りましょう。

また、近隣のペットショップやトリミングサロンとの連携も検討し、相互紹介の関係を築くことで患者数の増加につなげることができます。

口コミは動物病院選びに大きな影響を与えるため、最初の患者からよい評判を得られるよう準備を整えることが重要です。

開業直前の最終チェックをして診療を開始する

開業日が近づいたら、すべての準備が整っているか最終チェックをします。

医療機器の動作確認や薬品・医療用品の在庫管理、カルテシステムのテストなどを念入りにおこないましょう。スタッフとのロールプレイング形式での診療シミュレーションも有効で、じっさいの診療の流れを確認できます。

また、緊急時の連絡体制や休診時の対応方法も整備しておく必要があります。

開業初日は予想以上に慌ただしくなる可能性があるため、受付業務や会計システムの操作方法をスタッフ全員が習熟していることを確認します。診療開始後は、患者からのフィードバックを積極的に収集し、サービス改善に活かしましょう。

開業してから経営が安定するまで時間がかかりますが、地域に根ざした信頼される動物病院を目指して、一歩一歩着実に歩みを進めていくことが成功への道筋となります。

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動物病院開業に必要な資格・許認可

動物病院の開業には、獣医師免許以外にも複数の許認可が必要です。診療内容や提供するサービスに応じて必要な手続きが異なるため、事前に把握して準備を進めましょう。

診療行為に必須の「獣医師免許」

動物病院で診療をおこなうには、農林水産省が発行する獣医師免許が必要不可欠です。獣医師免許は大学の獣医学部を卒業後、獣医師国家試験に合格することで取得できます。

この免許は、診療・治療・手術などすべての獣医療行為をおこなうための根拠となる資格で、開業時には必ず獣医師免許証の写しを各種届出書類に添付する必要があります。

また獣医師法により、2年ごとの届出が義務づけられているため、開業後も忘れずに手続きをおこないましょう。複数の獣医師を雇用する場合は、全員が有効な獣医師免許を持っていることを確認する必要があります。

入院施設やペットホテル併設に必要な「動物取扱責任者」

動物病院で入院施設を設ける場合や、ペットホテルやトリミングサービスを併設する場合は、動物取扱業の登録と動物取扱責任者の設置が必要になる場合があります。

動物取扱責任者になるには、獣医師免許を持っているか、愛玩動物看護師の免許を持っているか、一定の実務経験の条件を満たす必要があります。

登録には、施設の構造や設備に関する基準を満たす必要があるため、設計段階から基準を考慮した施設づくりを心がけましょう。

この登録を怠ると法律違反となり、営業停止処分を受ける可能性があるため注意が必要です。

開業時に提出が義務付けられる「診療施設開設届」

動物病院を開業する際には、開業予定地を管轄する機関に診療施設開設届を提出することが法律で義務づけられています。

この届出は、開業から10日以内に提出する必要があり、遅れると開業日に支障をきたす可能性があります。提出書類には、診療施設開設届出書・獣医師免許証の写し・診療施設の平面図・案内図などが含まれます。

診療施設の構造や設備が、獣医療法に定められた基準を満たしているかが審査されるため、事前に確認が必要です。

届出受理後は、保健所による立入検査がおこなわれることもあり、基準に適合していることが確認されてはじめて診療を開始できます。

この手続きを怠ると違法行為となるため、必ず期限内に提出しましょう。

レントゲン導入に必要な「エックス線装置備付届」

動物病院でレントゲン撮影をおこなう場合は、医療法に基づいてエックス線装置備付届を保健所に提出する必要があります。

エックス線装置の設置場所は、放射線防護の基準を満たす必要があり、適切な遮蔽壁や防護扉、警告表示などの設備が必要です。

これらの手続きや管理を怠ると、装置の使用停止命令を受ける可能性があるため、専門業者と連携して適切な管理体制を構築することが重要です。

療法食や予防薬販売に必要な「動物用医薬品販売業許可」

動物病院で医薬品に分類される療法食や予防薬、サプリメントなどを販売する場合は、動物用医薬品販売業の許可を取得する必要があります。

この許可は都道府県知事から受けるもので、申請時には管理者の設置や適切な保管設備の確保が求められます。管理者は薬剤師が務めることができ、動物用医薬品の適正な管理と販売をおこなう責任を負います。

無許可で動物用医薬品を販売すると薬事法違反となり、重い処罰を受ける可能性があるため、販売を予定している場合は必ず事前に許可を取得しましょう。

注射針などを処理するための「医療廃棄物処理手続き」

動物病院から排出される注射針、メス、薬品容器などの医療廃棄物は、一般廃棄物とは異なる特別な処理が必要です。

医療廃棄物の処理には専門の許可業者との契約や自治体への申請などが必要で、適切な分別、保管、収集運搬、処分の手順を守らなければなりません。また、廃棄物の種類に応じた適切な容器を使用することも義務づけられています。

また、医療廃棄物管理票を作成し、処理の流れを記録する必要があります。処理業者の選定では、医療廃棄物処理の許可を持つ信頼できる業者を選び、適正な処理がおこなわれているかを定期的に確認することが重要です。

不適切な処理をおこなうと環境汚染や感染症拡大のリスクがあるため、開業前に処理体制を整備し、スタッフへの教育も徹底しましょう。

動物病院開業に必要な書類一覧

前述のとおり、動物病院開業には複数の手続きが求められ、それに応じて準備すべき書類も多くあります。提出先や期限がそれぞれ異なるため、必要な書類を事前に把握し、漏れなく準備することで、開業を円滑に進めにましょう。

診療施設開設に必要な基本書類

動物病院を開設する際の基本となる書類は、飼育動物診療施設開設の届出書です。

この届出書は、開業予定地を管轄する機関に開業から10日以内に提出する必要があります。届出書には開設者の氏名、住所、診療施設の名称、所在地などを記載します。添付書類として獣医師免許証の写し、診療施設の見取り図、案内図、開設者の履歴書が必要です。平面図には診察室・手術室・入院室・薬品保管庫などの配置を詳細に記載し、各部屋の面積も明記します。案内図は、最寄り駅や主要道路からの位置関係がわかるように作成しましょう。個人開業の場合は、開設者と管理者が同一人物になることが多いですが、法人の場合は診療をおこなう全員の獣医師の免許証写しも必要です。

これらの書類に不備があると受理されないため、事前に保健所で記載方法を確認することをお勧めします。

法人設立の場合に必要な追加書類

株式会社や合同会社で動物病院を開業する場合は、診療施設開設届に加えて法人関連の書類が必要になります。

まず、法務局で法人設立登記を完了させ、登記事項証明書を取得します。この証明書は診療施設開設届の添付書類として指定の機関に提出する必要があります。

加えて、法人税や消費税の届出を税務署に提出することや、社会保険や労働保険の手続きも必要です。

法人名義での銀行口座開設や印鑑登録も事前に済ませておきましょう。

個人開業と比べて手続きが複雑になるため、司法書士や税理士などの専門家に相談しながら進めることをお勧めします。

 

エックス線装置を設置する場合の提出書類

動物病院でレントゲン撮影をおこなう場合は、医療法に基づく放射線関連の届出が必要です。

届出書には装置の仕様、設置場所の構造、放射線防護設備の詳細を記載する必要があります。設置場所の見取り図には遮蔽壁の厚さなどを詳細に記載し、放射線漏洩線量の計算書も添付します。装置の取扱説明書や性能試験成績書、設置業者の許可証写しも必要な提出書類に含まれる場合があります。

また、エックス線作業主任者の設置届が必要になる場合もあります。装置を廃棄・移設する際にも届出が必要なため、将来的な変更予定も考慮して手続きをおこないましょう。

これらの手続きは、放射線安全管理の観点から厳格に管理されているため、専門業者と連携して確実に進めることが重要です。

動物取扱業をおこなう場合の追加書類

動物病院で入院やペットホテル、トリミングサービスを提供する場合は、動物取扱業の登録申請書を都道府県または政令指定都市に提出する必要があります。

申請書には事業所の名称、所在地、取扱業の種別、動物取扱責任者の氏名などを記載し、動物取扱責任者の資格証明書として、獣医師免許証の写しまたは動物関連学校の卒業証明書と実務経験証明書を添付します。

事業所の見取り図には、動物の飼養施設、訓練場、隔離施設などの配置と面積を記載し、各施設の構造や設備についても詳細に示さなければなりません。

動物取扱業の種別ごとに基準が設けられており、保管業、展示業、貸出業などの区分に応じて必要な設備や管理体制が異なる点は理解しておきましょう。

開設後の変更・休止・廃止時に必要な書類

動物病院を開設した後も、さまざまな変更が生じた場合には届出が必要です。

診療施設の構造や設備を変更する場合は、変更届出書を指定の機関に提出し、変更内容を示す図面や書類を添付します。

管理者や開設者が変わる場合も変更届が必要で、新しい管理者の獣医師免許証の写しや履歴書を提出しなければなりません。

診療を一時的に休止する場合は休止届出書を、再開する際には再開届出書をそれぞれ提出します。診療施設を廃止する場合は廃止届出書の提出が義務づけられており、廃止したあと10日以内の10日前までに手続きを完了させる必要があります。

エックス線装置を廃棄する場合は、装置の廃止届も別途必要です。

これらの変更手続きを怠ると法律違反となる可能性があるため、変更が生じた際は速やかに適切な届出をおこなうことが重要です。

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動物病院を開業するメリットは?

勤務獣医師から独立して動物病院を開業することには多くのメリットがあります。経済面から働き方、やりがいまで、開業によって得られる利点をくわしく見ていきましょう。

勤務医より収入が大幅にアップする

動物病院を開業する最大のメリットのひとつは、勤務医時代と比べて収入が大幅に増加する可能性があることです。

勤務獣医師の平均年収は300万円~900万円程度とされていますが、開業獣医師の場合は経営が軌道に乗れば年収1000万円以上を目指すことも可能です。

勤務医として働いている間は、どれだけ多くの患者を診ても給与の増減は小さいですが、開業すると診療した数が直接収益に影響しやすくなります。

また、診療報酬だけでなく、ペット用品の販売やトリミング、ペットホテルなどの付帯サービスからも収入を得ることができるため、複数の収益源を確保できます。

ただし、開業初期は設備投資やローン返済などの固定費が重くのしかかるため、収入が安定するまでには時間がかかることも理解しておく必要があります。

長期的な視点で見れば、勤務医時代では実現できない収入水準に到達できる可能性が高いでしょう。

理想の診療方針を自分で実現できる

開業することで、勤務医時代には制約があった理想の診療方針を自由に実現できるようになります。勤務医として働いていると、病院の方針や院長の考え方に従わなければならず、自分が考える最適な治療法を提案できない場面もあるでしょう。

しかし、自分の病院では予防医療に力を入れるか、特定の専門分野に特化するか、インフォームドコンセントを重視した丁寧な説明をおこなうかなど、すべてを自分で決めることができます。

また、診療時間や診療日数、料金設定なども自由に設定でき、地域のニーズに合わせた柔軟な対応が可能です。飼い主と時間をかけて信頼関係を築くことができるので、一匹一匹の動物により深く関われるでしょう。

このように、獣医師として本当にやりたい医療を追求できることは、開業の大きな魅力のひとつです。

夜勤明けの勤務から解放される

勤務獣医師の多くが抱える悩みのひとつが、夜間救急や当直勤務による不規則な生活です。

とくに救急診療に対応している動物病院では、夜勤明けの翌日も通常どおり診療をおこなわなければならず、体力的にも精神的にも大きな負担となります。

開業すると、夜間診療や救急対応をおこなうかどうかを自分で決められるため、ライフワークバランスを重視した働き方を選択できます。家族との時間を大切にしたい場合は平日の診療時間を短縮したり、完全予約制にしたりすることで効率的な診療が可能です。

ただし、地域の動物医療を担う責任もあるため、完全に救急対応を放棄するわけにはいきません。近隣の病院との連携や夜間専門病院への紹介システムを構築することで、無理のない範囲で対応することが可能になります。

地域に貢献し信頼を築ける

動物病院を開業することで、地域の動物医療に直接貢献し、住民との深い信頼関係を築くことができます。勤務医時代は一時的なものになりがちだった飼い主との関係も、開業すると長期にわたって継続することになり、動物の成長や老化を一緒に見守ることができます。

地域密着型の診療をおこなうことで、その地域特有の疾患パターンや飼育環境を深く理解し、より適切な予防策や治療法を提案できるようになります。

また、地域のペット関連イベントへの参加や、動物愛護活動への協力を通じて、獣医師としての社会的責任を果たすことも可能です。飼い主からの「先生のおかげで」という言葉や、治療によって元気になった動物の姿を見ることで、獣医師としての使命感と誇りを強く実感できるでしょう。

地域に根ざした医療を提供することで、単なる仕事を超えた深いやりがいと充実感を得られます。

経営を通じて成長ややりがいを得られる

動物病院の開業は、獣医師としてのスキルアップだけでなく、経営者としての能力も身につけることができる貴重な機会です。

経営計画の立案、スタッフの採用と教育、財務管理、マーケティング戦略など、これまで経験したことのない分野に挑戦することで、人間として大きく成長できます。

また、病院の成長とともに設備を充実させたり、新しいサービスを導入したりすることで、常に新しい目標に向かって努力できる環境が生まれます。スタッフとチームを組んで病院を運営していく過程では、リーダーシップや組織運営のスキルも自然と身につくでしょう。経営が軌道に乗り、地域から信頼される病院に成長していく過程は、勤務医では味わえない大きな達成感をもたらします。

さらに、将来的には分院展開や後進の育成など、より大きなビジョンを描くことも可能になり、獣医師としてのキャリアに新たな可能性を見出すことができるでしょう。

動物病院を開業するデメリット

動物病院の開業にはメリットがある一方で、多くのリスクや困難もともないます。開業を検討する際は、これらのデメリットも十分に理解しておくことが重要です。

初期投資と運転資金の負担が大きい

動物病院開業の最大のデメリットは、膨大な初期投資と継続的な資金負担です。

一般的な動物病院の開業には、2,000万円~5,000万円程度の資金が必要で、内装工事費、医療機器購入費、薬品在庫費などが重くのしかかります。とくに、エックス線装置や血液検査機器などの高額な医療機器は数百万円単位の出費となり、開業前から大きな借金を背負うことになります。

融資を受けた場合、毎月の返済義務が発生し、患者数が少ない開業初期でも一定額の返済を続けなければなりません。

また、家賃・人件費・光熱費・薬品代などの運転資金も必要になるため、売上が安定するまでの間は資金繰りに苦労することが予想されます。

勤務医時代のように、毎月安定した給与を受け取ることは難しく、経営が軌道に乗るまでの数年間は金銭的な不安を抱えながら診療を続けることになるでしょう。

競合が多く集患が難しい

近年、動物病院の数は急速に増加しており、とくに都市部では競争が激化しています。

新規開業の際には、地域に根ざした既存の動物病院との競合を避けられず、患者獲得は想像以上に困難です。既存の病院は、長年の実績と地域住民からの評価を確立しており、新規開業の病院が同等の信頼を得るには相応の時間と努力が必要になります。

また、インターネットやSNSでの情報発信、地域イベントへの参加など、診療以外のマーケティング活動にも時間と費用をかけなければなりません。

さらに、ペットの飼育頭数が減少傾向にある地域では、限られた患者層を複数の病院で奪い合う状況となり、十分な患者数を確保することが困難になる可能性があります。

差別化を図るために、専門性を高めたり特別なサービスを提供したりする必要がありますが、それらの投資に見合う収益を得られるかは不透明な部分が多いのが現実です。

経営スキルが不足すると赤字リスクが高まる

獣医師として優秀であっても、経営者として成功できるとは限りません。

診療技術と経営スキルはまったく異なる能力であり、多くの獣医師が経営面での課題に直面します。売上管理、原価計算、資金繰り、税務処理などの財務管理には専門的な知識が求められ、これらを疎かにすると気づかないうちに慢性的な赤字状態に陥ることもあります。

また、適切な診療報酬を設定できずに利益率が低下したり、経費削減が進まず収益を圧迫したりするケースも少なくありません。マーケティングや集客戦略についても十分な経験がないまま取り組むことが多く、効果的な宣伝方法がわからず患者数が伸び悩むことも危惧されます。

経営判断を誤ると借金が膨らみ、最悪の場合は廃業にいたるリスクもあります。経営コンサルタントや税理士などの専門家に相談することもできますが、そのための費用も経営を圧迫する要因となる可能性があることも意識しておきましょう。

スタッフ採用やマネジメントが大変

動物病院の運営には、獣医師以外にも動物看護師や受付スタッフが必要ですが、優秀な人材の確保は容易ではありません。

動物看護師は慢性的な人手不足のため、経験豊富なスタッフを採用するには相応の給与や待遇を用意する必要があります。

しかし、開業直後の経営が不安定な時期に高い人件費を負担することは大きなリスクとなります。

また、少人数のチーム内で発生する人間関係のトラブルは、病院全体の雰囲気に影響し、サービスの質の低下にもつながります。。スタッフの採用から教育までにも時間と費用がかかり、せっかく育てたスタッフが退職すれば、再び採用と教育をやり直さなければなりません。

さらに、労働基準法の遵守、社会保険の手続き、有給休暇の管理など、労務管理について経営者として責任を負う必要があり、これらの業務に追われて診療に集中できなくなることもあります。

長時間労働や精神的プレッシャーが大きい

開業獣医師は診療だけでなく経営業務も担うため、勤務医時代よりも労働時間が長くなる傾向があります。

診療時間外にも、経営計画の検討、スタッフ面談、業者との打ち合わせ、経理処理などの業務が山積みで、休日返上で働くことも珍しくありません。

また、経営者として病院の将来に対する責任を一人で背負うことになり、常に売上や患者数、競合の動向などを意識せざるを得ません。資金繰りがきびしい時期や、医療事故が発生した際は、精神的負担が非常に大きくなり、不眠やストレス性の体調不良に悩まされることもあります。

勤務医であれば勤務時間外は責任から解放されますが、開業医は24時間経営者としての重圧を感じ続けることになります。

家族との時間を犠牲にしてでも病院運営に専念しなければならない場面も多く、ワークライフバランスの実現は容易ではないでしょう。

動物病院開業に必要な資金

動物病院の開業には多額の資金が必要で、初期投資と運転資金を合わせて数千万円規模の準備が必要です。資金調達方法も含めて、計画的に準備しましょう。

開業資金の目安は2,000〜5,000万円程度

動物病院開業に必要な資金は立地や規模によって大きく異なりますが、一般的に2,000万円~5,000万円程度が目安とされています。

初期投資では物件取得費用が大きな割合を占め、賃貸の場合は敷金・礼金や保証金として家賃の6か月~12か月分が必要になります。

内装工事費は診察室、手術室、入院室などの専門的な設備が必要なため、一般的な店舗より高額になりがちで、500万円~2,000万円程度を見込んでおく必要があります。

医療機器については、基本的な設備だけでも1,000万円以上の投資が必要です。

運転資金では人件費がもっとも大きな要素で、獣医師や動物看護師の給与、社会保険料などを含めて月額100万円~200万円程度を想定しておきましょう。

家賃や光熱費、薬品代、消耗品費なども継続的に発生するため、開業から軌道に乗るまでの6か月~1年分の運転資金を確保しておくことが重要です。

自己資金は全体の2割以上を準備するのが安心

動物病院開業では多額の借入が必要になることが多いですが、自己資金は全体の30%~50%程度を準備しておくことが望ましいとされています。

自己資金が少なすぎると金融機関からの融資を受けにくくなるだけでなく、開業後の資金繰りも厳しくなる可能性があります。

たとえば、総額3,000万円の開業資金が必要な場合は、600万円~900万円程度の自己資金を用意しておくと安心です。自己資金が多いほど借入額を減らすことができ、毎月の返済負担を軽減できるため、経営の安定性が高まります。

また、予想外の出費や売上の落ち込みがあった場合の備えとしても、ある程度の余裕資金を手元に残しておくことが重要です。

自己資金の準備には時間がかかるため、開業を決意したら早めに貯蓄をはじめることをおすすめします。

融資や補助金など資金調達の選択肢も視野に入れる

開業資金の調達方法としてもっとも一般的なのは、日本政策金融公庫や銀行からの融資です。

日本政策金融公庫の「新規開業資金」は比較的低金利で、開業支援に積極的なため、多くの獣医師が利用しています。

融資を申し込む際には、詳細な事業計画書が求められ、開業への熱意と計画の実現可能性を明確に示すことが重要です。

地方銀行や信用金庫の制度融資も有力な選択肢のひとつであり、自治体の信用保証を受けて有利な条件で借入れできる場合があります。

また、一部の自治体では動物病院開業を支援する補助金制度を設けており、これらを活用することで初期費用をおさえられます。補助金は返済不要ですが、申請条件が厳しく採択数も限られているため、早めの情報収集と準備が必要になります。

さらに、医療機器については販売会社のリース契約を利用することで初期投資を分散でき、資金繰りの改善に役立ちます。

複数の資金調達方法を検討し、必要に応じて組み合わせることで、無理のない開業資金計画を立てることができるでしょう。

動物病院開業の成功ポイント

動物病院の開業を成功に導くには、事前の準備と戦略的な取り組みが不可欠です。集患から経営管理まで、おさえておくべき重要なポイントを解説します。

市場調査と立地選定で集患力を高める

動物病院開業の成功は立地選定で大きく左右されるため、詳細な市場調査が欠かせません。

候補地周辺の人口動態、世帯構成、ペット飼育率を調べ、潜在的な患者数を把握することからはじめましょう。とくに、単身世帯や高齢者世帯の割合、新築住宅の建設状況などは、将来的な需要を見通すための重要な判断材料となります。

競合分析では、既存の動物病院の診療内容、料金設定、評判をくわしく調査し、差別化できるポイントを見つけることが大切です。

立地条件では、住宅地からの距離、駐車場の有無、公共交通機関へのアクセスなどを総合的に評価します。

また、将来的な地域開発計画や道路整備の予定も確認し、長期的な視点で判断することが大切です。診療圏は一般的に半径2~3キロメートルとされていますが、交通事情や競合状況によって変わるため、じっさいの動線を考慮した現実的な診療圏を設定しましょう。

堅実な資金計画と不要な投資の抑制を徹底する

開業時の資金計画は楽観的な予測ではなく、保守的な見積もりで立てることが成功の鍵となります。

初期投資では、必要最小限の設備からはじめ、経営が安定してから段階的に設備を充実させる段階的投資を心がけましょう。高額な医療機器については新品にこだわらず、中古品やリース契約を活用することで、初期費用を大幅に削減できます。

運転資金では、開業から軌道に乗るまでの期間を長めに設定し、最低でも1年分の固定費を確保しておくことが重要です。

収支計画では、患者数や診療単価を現実的に見積もり、競合の影響や季節変動も考慮した慎重な予測をおこないます。

融資については複数の金融機関と相談し、もっとも有利な条件で借入れできるよう比較検討を行いましょう。

経営が軌道に乗るまでは贅沢な設備投資は控え、患者満足度の向上に直結する投資を優先することが賢明です。

質の高い医療サービスと飼い主満足度を重視する

動物病院の成功は技術力だけでなく、飼い主との信頼関係構築にかかっています。丁寧な問診とわかりやすい説明を心がけ、飼い主が安心して治療を任せられる環境をつくることが重要です。

インフォームドコンセントを徹底し、治療方針や費用について事前に十分な説明をおこなうことで、後々のトラブルを防ぐことができます。待ち時間の短縮や清潔な院内環境の維持、スタッフの接客マナー向上など、医療技術以外のサービス面にも配慮しましょう。

また、定期的な健康診断や予防接種の推奨、適切なアフターケアの提供によって継続的な通院を促すことができ、これが安定経営につながります。

飼い主からの意見や要望を積極的に収集し、サービス改善に活かす姿勢も大切です。

地域の特性に合わせた診療時間の設定や、緊急時の対応体制を整えることで、地域に根ざした信頼される動物病院として認知されるでしょう。

スタッフマネジメントで定着率とチーム力を高める

優秀なスタッフの確保と定着は、動物病院運営の生命線となります。採用時は技術力だけでなく、動物愛護の精神やコミュニケーション能力を重視し、病院の理念に共感できる人材を選ぶことが重要です。

新人スタッフには丁寧な研修を実施し、病院の方針や業務フローを徹底的に教育しましょう。定期的な面談をおこない、スタッフの悩みや要望を聞く機会を設けることで、働きやすい職場環境を整えることができます。

また、スタッフ同士のチームワークを重視し、円滑なコミュニケーションが取れる組織づくりを心がけることが大切です。加えて、継続教育や外部研修への参加を支援することでスタッフのスキルアップを図り、病院全体のサービス向上につながります。

労働条件の改善や福利厚生の充実も重要で、働きがいのある職場として認識されることで、口コミによる優秀な人材の紹介も期待できるでしょう。

専門家への相談と地域連携でリスクを最小化する

動物病院の開業と運営では、一人ですべてを判断するのではなく、各分野の専門家と連携することがリスク軽減につながります。

税理士には税務処理や経営分析を、司法書士には法人設立や契約書作成を、社会保険労務士には労務管理を相談し、適切なアドバイスを受けましょう。経営コンサルタントからは客観的な視点での経営改善提案を受けることで、自分では気づかない課題を発見できる可能性があります。

これらの専門家への相談費用は経費として計上でき、長期的には大きなリスク回避効果が期待できるため、開業初期から積極的に活用することをおすすめします。

また、同業の獣医師との情報交換や相互紹介システムの構築により、専門外の症例や緊急時の対応を円滑におこなうことができます。地域の医師会や商工会議所への参加を通じてネットワークを広げ、地域との信頼関係を築くことも重要です。

地域に愛される動物病院を目指して開業しよう

動物病院の開業は決してかんたんな道のりではありませんが、しっかりとした準備と計画があれば必ず実現できます。

獣医師免許をはじめとする各種許認可の取得、診療施設開設届などの書類手続き、そして2000万円~5000万円という大きな資金調達など、多くの課題をクリアする必要があります。

しかし、これらの課題を乗り越えた先には、勤務医時代では味わえない大きなやりがいと充実感が待っています。

開業のメリットとデメリットを十分に理解し、綿密な事業計画を立てて、あなたの夢である「地域に愛される動物病院」の実現に向けて一歩を踏み出しましょう。


動物病院開業の成功には専門家のサポートが不可欠です!

動物病院の開業は資格取得から資金調達、立地選定まで専門知識が求められる複雑なプロセスです。獣医師免許以外にも多数の許認可手続きが必要で、2000万円を超える資金調達では事業計画書の作成や融資交渉が重要になります。また、診療圏調査や競合分析、経営戦略の策定など、医療技術以外の幅広い知識が成功の鍵を握ります。

そこで、動物病院開業に精通した専門家による無料相談をご活用ください。資金計画から許認可手続き、開業後の経営サポートまで、あなたの開業を総合的にバックアップいたします。

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執筆者プロフィール:ドリームゲート事務局

ドリームゲートは経済産業省の後援を受けて2003年4月に発足した日本最大級の起業支援プラットフォームです。
運営:株式会社プロジェクトニッポン
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