知的財産:Vol.11 立体商標取得のススメ

この記事はに専門家 によって監修されました。

執筆者: ドリームゲート事務局
2006年11月29日知財高裁でお菓子の「ひよ子」に関する商標権を認めるか否かの判決が出されました。新聞紙上でも大きく取り上げられましたのでご存じの方も多いかと思います。この事件の背景となる立体商標を含め、説明します。

事件の背景は

 そもそもの事件の背景は、「ひよ子」というまんじゅう菓子の立体商標が商標登録されたことに端を発します。「ひよ子」とは、鳥形状の菓子のことで、全国的に販売され多くの人が目にしたことのあるお菓子だと思います。テレビCM なども行われ、関東地方だけでなく全国に広く知られているという認識を皆さんもお持ちだと思います。

 一方で、権利を取得したメーカーに限らず、類似の形状のお菓子を何社かがすでに製造販売しているのも事実のようです。すなわち、他社からしてみれば競合他社の1社だけに権利を取得されては困るというわけです。このため、商標登録の無効を求めて特許庁に審判を請求したのが始まりです。

 

立体商標とは

 従来は、平面的な商標しか登録が認められてこなかったのですが、1993年4月以降は立体的な形状についても登録要件を満たせば商標登録がされるようになりました。具体的には、ケンタッキーフライドチキンのカーネルおじさんや不二家のペコちゃんポコちゃんのように、その会社の商品などをイメージ付ける著名な立体的形状に対して商標登録がなされています。

 

なぜ立体商標権を取得したいのか

 知的財産のなかで商品の外形形状を保護する制度として、意匠権があります。しかし、意匠権は権利期間が限られ永久の権利ではありません。それに対して、商標権は、更新を繰り返すことで半永久的に独占権を得られることになるのです。となれば、商標権を取得する方が圧倒的に有利だと考えるのが普通だと思います。

 

立体的な形状であれば登録の対象になるのか?

 立体商標としての出願で一番多い類型は、容器の出願のようです。例えば、ヤクルトの容器などがその典型かと思います。今回の「ひよ子」の形状も商品の外形形状という意味では類するものかと思います。

 

実際の審査・判断の実態は

 正直言って、立体商標の登録は非常に厳しい審査・判断がなされています。まず、特許庁の審査段階では、単なる容器の形状にすぎないようなものは拒絶されます。現に、ヤクルトの容器は、商品の形状を表すにすぎず、他社との識別力を有しないとして拒絶されています。まあ、似たような形状の飲料水がすでにたくさん出回っているのも現実ですが。特許庁の審査段階では、ありふれた容器の形状では、ダメというのが実務の中心です。

 そして、裁判所の判断の方ですが、今回の事件の判決でその辺があきらかになっているかと思います。まず1つは、「ひよ子」という文字商標は確かに宣伝広告で消費者の注目を浴びているが、まんじゅうの形状はそこまではいっていない、という判断です。つまり、形状はたいして著名ではないということです。かなり厳しい判断だと思います。そしてもう一つは、極めて類似した菓子が日本全国に多数存在し、和菓子としてはありふれた形状だ、という判断です。

 

それでも立体商標の取得を目指すべき

 説明してきたように立体商標の商標権の取得は、かなり困難です。しかし、これから新しい商品を世に出すとするのであれば、ぜひ、立体商標の登録を目指し夢見ていただきたいと思います。登録できると言うことは、それだけ世のなかに認められ、他社とは差別化された確固たる商品だという国のお墨付きがもらえるわけで、これ以上の名誉はないからです。

 商品価値の指標として、ぜひ目標としてください。

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