ゼロックスのトップ営業マンからIT・経営コンサルタントして独立。コンサルタントして成功までのプロセス、戦略とは。

この記事はに専門家 によって監修されました。

執筆者: ドリームゲート事務局

~ブリッジ・リサーチ&コンサルティング合同会社~
代表社員 阿部 満
事業内容:コンサルタント

ゼロックスのトップ営業マンからIT・経営コンサルタントして独立。
コンサルタントして成功までのプロセス、戦略とは。

ブリッジ・リサーチ&コンサルティング合同会社は、富士ゼロックスでトップセールスマンだった阿部満氏が立ち上げた会社だ。2008年に個人事業主としてスタートし、2012年1月に法人化。「ITと中小企業をつなぐ架け橋=ブリッジになりたい」という、屋号にこめた思いを実現するため起業したものの、「最初は仕事がなかなか取れず苦労した」とのこと。しかし、現在はクラウドソーシングを活用してサービス内容を多角化するなど、ITコンサルタントならではの視点でクライアント企業の経営を合理化。順調に事業を進めています。そんな阿部氏がコンサメタントして成功するまでのプロセス、営業戦略を聞いてきた。

なぜ独立したのか~開業までの道のり

私は、もともとは富士ゼロックスの営業マンでした。営業成績は常にトップクラスで、サラリーマン生活は順調でしたが、いつかはコンサルタントとして独立したいという思いを持っていました。具体的には40歳で独立しようと決めていました。

コンサルタントとして独立したいという思いは、子供のころまで遡ります。私の生まれ故郷は金物系の中小企業がひしめく新潟県の三条市で、父親は工場を経営していました。父の工場だけではなく、周りの工場もどんどん経営状況が悪くなっていく様を見て、子供心ながらなんとかしたいと思っていたのです。今でも町の零細企業、工場などは、戦略的経営や最新のIT活用からは遠く、そうした中小企業を元気にしていきたい、というのが起業を目指した一番の理由です。

30代中盤のころまでトップセールスマンとして活躍していたのですが、独立への思いがどんどんふくらんでいきました。ある時、ブログを手始めに執筆しながら、本を出版する準備を始めました。コンサルタントして独立して世に出る際、自分は何者か、何ができるのかを伝えるために、自著の出版というかたちがベストだと思ったからです。ちなみに、出版までに3年ほどかけました。

結果、40歳ちょうどでコンサルタントとして独立したわけですが、開業に際して供出した自己資金は5万円でした。最初は個人事業でしたので、法人登記の費用は必要ありませんし、コンサルタントは体一つでスタートできる仕事ですからね。オフィスは自宅で、パソコンはもともと持っていたものを利用。とにかく身軽にスタートしました。

開業資金は5万円だけ?

「ブリッジ・リサーチ&コンサルティング」という社名は、ITと中小企業をつなぐ架け橋という意味を込めて「ブリッジ」という言葉を入れました。そして企業の「リサーチ」による調査業務後に本格的な「コンサルティング」を行ってきました。  

独立して1年目の売上目標は800万円ほどに設定しました。これはなんとか達成できました。800万円というのはかなり控えめな数字ですが、個人事業としてはまず手始めにサラリーマン時代の年収は最低限確保したいと考えた結果です。

現在もメインのサービスはITコンサルティング業務と講師業務で、顧客は中小企業に絞りました。企業の経営課題に対してITを導入するだけでなく、しっかりとした事業戦略までを提案する。クライアント企業の身の丈にあった提案内容を策定することが、私の得意とするところです。また、事業で大事なのはヒト・モノ・カネの3つといわれていますが、私はそれに「情報」を加えて、「ヒト・モノ・カネ×情報」として自分のビジネスを説明しています。

独立資金は5万円でしたが、これは本当に独立時に使った費用だけです。当然、事業を継続するには運転資金が必要ですので、資金調達のために20ページほどの事業計画書をつくり、日本政策金融公庫から200万円ほど借りました。この事業計画書づくりのおかげで、独立前の自分と事業の分析ができた。その点はよかったと思っています。

実は蓄えはもっとあったのですが、妻との約束で預貯金には一切手を付けないと決めていたのです。家計の預貯金に手をつけるのは万が一の場合でしょうね。

辛かった1年目を乗り越えられた理由。どうやってコンサルタントの仕事を獲得したか。

独立後はとにかく仕事がありませんでした。そこで、行政機関や商工会などが主催するセミナー講師などさせていただく中で顧客獲得に励みました。

行政機関が予算を出して中小企業の経営支援などをしていますが、そうした相談に対して経営指導などを行うと数万円程度の謝金がいただけます。こういった細かい仕事も当初は取っていきました。初年度はそうした公的な仕事が売り上げの8割を占めていましたね。

コンサルタントというのは、形のないサービスを買ってもらうわけです。「待ち」の姿勢では絶対に仕事がきません。ニーズがないところから仕事をつくり出さないといけない。

しかし、コンサルタントというのは「先生」といわれる存在で、自分自身で積極的に営業もしづらいわけです。箔が落ちるというか、信頼が第一ですから。

なので、コツコツ地道な仕事を続けて実績をつくり、口コミなどで紹介が入るようになるのを待つよりほかないのですが、それでは苦しいですよね。

そこで、最近はクラウドソーシングなどを利用して、顧客になりそうな会社のリストづくりを依頼したり、電話アポイントなどもフリーランスの方に依頼して行っています。理由の一つは自分で営業するわけにはいかないという点ですが、営業コストを安く抑えられるというのもクラウドソーシングを活用しているポイントです。

実は独立して間もない頃、コンサルタントの営業代行の企業に登録をしました。一言でいえばコンサルタントを売る会社で、その会社に講師の案件やコンサルなどを仲介してもらって仕事が入ってきたりもしました。ただ、営業代行なので当然ながら手数料がかかります。そうした費用が結構高いことと自社独自での案件獲得をめざしランサーズなどを活用するようにしました。できれば今後は営業のすべてをアウトソーシングしたいと考えています。

これはほかのビジネスにも適用できるやり方だと思いますし、当社のWebコンサルティングサービスに付随するコンサルティングのメニューの一つにもなりそうです。まず自分がやってみて、成功体験をつくって、初めて人にコンサルティングができるわけですからね。

私がこれまで支援した実績としては、時計の輸入・修理を手がける企業をのIT化やほかにも食品メーカー、精密加工企業、流通業などありとあやゆる幅広い業界でお仕事をさせてもらっています。

現在の状況。自計化でコストは抑えつつ専門家の指導で健全経営を

個人事業から数えてコンサルタントとして5年やってきたわけですが、今の顧客のメインボリュームは年商30億~100億規模の中堅企業が増えてきました。私としては創業当時の思いとして年商数千万といった零細企業も支援したいのですが、そうした会社はコンサルタントを使う余裕なんてありません。なので、零細企業からはお金はもらわないプロボノ的な形でご支援して、ある程度売り上げのある会社からはしっかりフィーをいただく。そうやって自社のバランスをとっています。

会計については、顧問税理士の勧めで弥生会計を導入しています。今は妻が経理担当として帳簿を入力して、月に一度、税理士から直接指導を受けています。自分で自計化をすることで余分なコストはかけず、かつ、会計事務所の方からの的確なアドバイスをいただくことで経営状況をより深く理解することで、健全な事業展開が出来ています。

あと、会社もそれなりに大きくなってきたので、実はさらなる業容拡大で新しくITの開発会社を関連会社としてつくろうと考えているのですが、そうなると妻に新しい会社の分まで帳簿付けを依頼するのは厳しいので、経理の専任担当者を雇わないといけないですが…。当然その分のコストがかかるのでこれもランサーズで公募してもようかとも思っています。

最後に、これから開業を目指す方へのメッセージを

これから独立・開業する方へのメッセージとしては、「自らが経営者たれ」でしょうか。特に技術系のコンサルはそうだと思いますが、どうしても自身が技術者の視点に偏りがちです。しかし、経営者はそれほど技術には興味がありません。たとえばITというツールが欲しいわけではなくITの導入により自社のビジネスや経営がどうプラスなのか、という視点がないと話を聞いてもらえないものです。

また、とにかく営業は苦労すると思います。私も最初は公共系の仕事が8割、民間は2割だけでした。それでもサラリーマン時代くらいの収入になったので、食えないことはないのですが、やはりそれだけでは厳しい、続きません。私の場合は歯を食いしばってこれを3年続けて実績を積み、4、5年目でようやく民間の仕事を増やしていくことができました。

あとは、個人事業でスタートしたのは楽でよかったし、公共系の経営相談などの仕事は個人でないと請けられないという事情もあったのでプラスだったと思います。

ただ、民間企業との取引では、やはり法人格がないと厳しいので、最初から法人でスタートすべきだったかな、とも思います。これはケースバイケースなので一概にはいえませんが、最近は会社設立するのにあまりお金もかかりませんから、個人と法人、両方の顔を用意しておくのも手だと思います。

そして、できる限りコストをかけないということですね。電話ならIP電話や携帯転送のサービス、オフィスなら自宅やレンタルオフィスを利用することで運転資金はかなり抑えられる。帳簿付けも自分でソフトを購入してやれば十分対応できますから、記帳代行などの費用をかけずに済む。私は自己資金5万円でスタートしましたが、それでも十分やってこれました。さらに今では、独立・開業の敷居がかなり下がっていますから、あとは本人の気持ちしだい。「絶対にこれをやりたい!」という思いがあるなら、やらない後悔をするより、まず挑戦することが大事だと思います。

出身地 新潟
プロフィール 富士ゼロックスIT関連企業にて、日本最大のネットワーク・セキュリティー業界のマーケティング関連に従事。個人およびパートナー支援で販売実績が認められ数々の賞を受賞。 京セラ関連IT企業にて経営企画部長、事業開発部長を経て、ITコンサルティング部長に従事。ITコーディネータ協会勤務、専務理事および常務理事スタッフとして企画および協会改革担当として活動。現在、独立。中小企業向けITコンサルティング専門企業ブリッジ・リサーチ&コンサルティング合同会社代表社員として活動。ITコンサルティング、セミ ナー講師、執筆活動。著書『IT経営可視化戦略』『IT経営実践の知識』など。経済産業省IT経営力大賞認定支援、中小企業大学校講師、講演、執筆など公 職含め実績多数。
会社所在地 〒105-0021東京都港区東新橋2-10-10 東新橋ビル2階
業種 士業・コンサルティング
事業概要 経営コンサルティング、ITシステムの導入
URL http://www.bridge-rac.com/index.html
取材日 2013年8月

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