障がい者や高齢者にも、おしゃれを楽しんで欲しい / 有限会社メディセフ

この記事はに専門家 によって監修されました。

執筆者: ドリームゲート事務局

 「ユニバーサルデザイン」とは、年齢や性別、障害の有無などに関係なく
誰もが心地よく、安心・安全に使えるよう にと考えられたもの。
有限会社メディセフ代表取締役社長の井崎孝映さんは、
障害のある人や高齢者でも、気持ちよくおしゃれを楽しめる
ユニバーサルデザイン の洋服開発に励んでいる。

井崎さんは12年前、香港で女優として活躍しながら、アパレルの通販会社でバイヤーとして働いたことをきっかけに服飾に興味を持つ。
そして服飾に ついてもっと本格的に勉強したいと日本に帰国し、夜間、服飾デザインの専門学校に通いながら、経験を積むためにアパレル会社で働くことに。
しかし、久しぶ りに帰ってきた日本の変化に戸惑い、さまざまな迷いが出てしまう。

「そんな時に父からボランティア活動を勧められて、障がい者のためのダンスパーティを開催するボランティア活動に参加したんです。
パーティ当日、私は出席者 の方たちがおしゃれをして来てくれるものと思っていたら、
皆さん、トレーナーやジャージ姿。
その時、『世の中にはいっぱい服があるけれど、自分たちでも着 られるような外出着は限られてしまうんだ』って言われたんです。そこで始めて、障がい者の洋服について真剣に考えるようになったんです」

調べてみると、確かに、パジャマや部屋着はあっても外出用の服はほとんどない。
おまけに、大半が介護する人間にとって脱ぎ着させやすい形が優先されていて、
着る人間の気持ちを考えた洋服ではなかった。

「それまではパリコレに出られるようなデザイナーになりたいって思っていたんですが、
それよりも、障がいのある人でも高齢者でも心地よく着られる、人に優しい服をつくろうと思ったんです」

 

コンテストやファッションショーに参加し外部からの協力を得る

休日を利用し、障がい者向けの洋服をボランティアでつくっていた井崎さんは、
1998年、障害者や高齢者を対象とした洋服のオーダー・リフォーム店を開業し、
本格的にユニバーサルデザインの洋服開発を始めた。

「最初は出張型の店で、自宅を拠点にできたため開業資金はほとんどかけずに済んだんです。
前職の会社のパタンナーや、友人などが協力してくれたのも助かりました」

その後、「ニューウェーブデザイン’99」というデザインコンテストに参加し、大賞を受賞する。この受賞が井崎さんに大きなチャンスとなった。

「その時の主催者の推薦で、翌年行われる福岡アジアコレクションに出られることになって。通常、コレクションに出るとなると洋服製作代やモデル代などで数百万円かかるものなんですが、私の参加費用はコレクション側に出してもらえたんです」

福岡アジアコレクションに出たことにより、井崎さんの活動に協力したいという企業から東京コレクションにも出てみないかと声がかかり、井崎さんは参加を決めた。
この2つのコレクションへの参加は新聞などでも取り上げられ、記事を見た縫製工場が製作の協力を申し出てくれた。

「でも、1シーズンのアイテムを生産する場合、生地代などを含めると最低でも数百万円は必要。
それで、銀行に勤めていた友人に融資担当者を紹介してもらい、企画書を片手に
何とか認めてもらって500万円の融資を受けることができました」
 
さらにその翌年の2001年には、下着メーカーのトリンプが行う、女性起業家支援「トリンプ・エンジェルプロジェクト」で大賞を受賞し、1000万円の資金協力を得た。
2002年には、この時の資金を資本金にし、有限会社メディセフを設立する。

 

縫製職人たちに怒鳴られながらもユニバーサルデザインの服を作成

こうして井崎さんの活動は少しずつ認められながら外部から資金協力を得ることができたが、製作の工程では大きな苦労があった。
コレクションを見て製作の協力を申し出てくれた企業があったものの、それだけでは工場は足りなかった。
井崎さんは繊維組合などから少量でも請け負ってくれる縫製工場を紹介してもらい、最終的に11社の工場を見つけることができた。
が、問題はそこからだった。

「私たちが開発したパターンや縫製仕様は、従来の服とまったく違うもの。
例えば、床ずれにならないように縫い目の位置をずらす必要があるんです。
縫製工場 の人達には、長年培ってきた技術とは全く異なるやり方をしてもらわなくてはいけないので、『なんでこんなことしなくちゃいけないんだ!』って怒鳴られたこ とも何度もあります」

それでも、井崎さんたちはあきらめず、直接工場に行って見本を見せるしかないと、1着をつくり上げるまで何度も何度もそれぞれの職人の元に通って、つくり方を教えていったという。

メディセフでは当初、製作から販売まで自分たちで行っていたが、現在では通信販売会社と提携し、オーダーメイド以外はすべて通信販売としている。

「障がい者の方の中には外出が難しい方もいらっしゃるので、自宅で注文できる通信販売の方が良いと思いました。
それに私たちの服は、ボタンや縫い目の位置な ど、一つひとつのつくりに理由があるので、その説明が必要なんです。
通信販売なら商品説明欄にくわしく書けるのでお客様に理解しやすい。
今後は、洋服だけで なくユニバーサルデザインの雑貨なども手がけていきたいと思っています」

井崎孝映さんプロフィール

井崎孝映さん

神奈川県生まれ。
女優となり、1988年には香港を拠点に活躍。
香港では女優業とともに、アパレル通販会社に入りバイヤーとして働く。
1993年、本格的に服の勉強がしたいと帰国し、服飾関連の専門学校に入学。
同時に、アパレル会社で働く。
1998年、障害者や老人のためのオーダー・リフォーム店 「Medicef International Company」を開店。
1999年には「ニューウェーブデザイン‘99」大賞受賞。
2000年福岡アジアコレクション・東京コレクションに出展。
2001年にはトリンプ・エンジェルプロジェクト大賞受賞し、
2002年有限会社Medicef(メディセフ)設立。

会社概要

有限会社メディセフ
設立/2002年2月
資本金/300万円

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