カルチュア(文化)をコンビニエンス(手軽)に提供する / カルチュア・コンビニエンス・クラブ

この記事はに専門家 によって監修されました。

執筆者: ドリームゲート事務局

“やった者勝ち”精神を身につけたサラリーマン時代

007バンド活動に明け暮れた大学時代。が、オーディションに落ちてプロへの道を断念。卒業後に選んだ場は、婦人服販売の鈴屋であった。

「トップ層の企業やビジネスは、時代と共にいち早く変わっていく。僕らが就職する頃はメーカーや商社が花形だったが、僕は、当時、頭角を現し始めていたファッションビジネスが絶対に世の中のリーダーになると思っていた」というのが、その理由。

入社して早々の増田に任されたのは「軽井沢ベルコモンズ」の店舗開発の仕事。が、入社したばかり、しかも学生時代にはギターばかり弾いていた増田には、当然のことながら、店舗開発のノウハウなどない。

「で も、必死になって勉強して、結局2年くらいかかって出店契約にまでこぎつけましたよ。投資・採算計画、原価管理を始めとしたコスト管理など、ビジネスに必 要な多くのことを、この経験で学びました。そして、何より痛感したのは『とにかくやってみる』ことの大切さ。これが、人間が成長するための最良で最大の方 法と学んだ。やった人間だけにノウハウが身につくんですよ」

インターネット創生期と同じで、マーケットのほうが大きく、それに対するスキルやノウハウが成熟していない段階においては、やった者勝ち。

この時身につけたチャレンジ精神、「強い志を持てばできる」という自信は、その後の「TSUTAYA」の成長に大いに役立っていると、増田は振り返る。

副業が思わぬヒット、起業家としてのスタート

会 社員生活も10年目に入った頃。「喫茶店をやりたい」と言う姉に対して、増田は、当時流行り始めていた貸しレコード業を、複合業態として一緒にしたら…… と提案。そして、追って手助けをするようになるのだが、この副業がとんでもない大ヒット。これは大きなビジネスになるという確信が生まれた。かといって、 脱サラまでして危ない橋を渡ることもないという気持ちも消しきれず、しばらくは板ばさみに。

「でも、これほど儲かる商売を周りが指をくわえて見ているはずがない。本気で商売するなら、ライバルが出現する前に次を抑えねば。それには片手間ではできない。そして、何より自由に生きたいという気持ちから、サラリーマン稼業から足を洗うことにしたんです」

ちょうど20年前の83年、鈴屋を退職し、増田は大阪・枚方市に「TSUTAYA」の原型となる「蔦屋書店」を創業。本もビデオもレコードもある“カルチュアコンビニエンスストア”である。

「成熟した消費社会が求めているのはモノでなく、ライフスタイルやイメージということはわかっていました。そのイメージをやりとりするもっとも効果的な方法が、CDやビデオに乗せて流通させることだと」

このコンセプトは、若い人たちの心を大きく捉えた。

1985年「カルチュア・コンビニエンス・クラブ株式会社」を新たに旗揚げ。増田が34歳の時のことである。

成功後も失速することのないチャレンジ精神

その後、ご存じのように「TSUTAYA」は国内最大の映像・音響ソフトレンタル&販売チェーンに急成長していく。その間には、アメリカで偶然見た「ディレクTV」を日本に引っ張ってきて、失敗するという辛酸もなめた。

「なぜリスクのある未知の世界に手を出したのか、と問われると、ただのやんちゃなオーナーで終わりたくなかったんです。僕は、特に息子には、いつもチャレンジしている親父の姿を見せ続けていたいと思ってるんで」

こ うした経験をバネに、いまだ増田のチャレンジ精神は失われることはない。Web とiモードのエンタテインメント・サイト「TSUTAYA online」を開設したり、六本木ヒルズに、コーヒーを飲みながら本を読むことができる「TSUTAYA TOKYO ROPPONGI」をオープンするなど、音楽、映像、ゲームソフトのヒットに大きな影響力を持つ存在となっている。

まさに、「蔦屋書店」創業時に描いた「モノではない、ライフスタイルの提案」が、より一層実現したかたちだ。

「僕のキーワードは『自由』。自由ってやりたいことがやれて、やめたいことはやめられること。これね、最高の贅沢なんですよ。ワガママと言われても、生きてるうちにバンバンやっておかなきゃ損。これ以上できん!というところまでやって、人間初めて往生できるんですから」

これからもカルチュア(文化)をコンビニエンス(手軽)に提供するという変わらぬ信念で、情報や流通に革命を起こし続けていくに違いない。

【増田 宗昭氏 プロフィール】

大阪府に生まれる。同志社大学卒業後、鈴屋に入社。10年間籍を置く。
83年、本もビデオもレコードもある「蔦屋書店」(「TSUTAYA 」の前身)を創業。
続いて85年に「カルチュア・コンビニエンス・クラブ」を設立。DVD ・ビデオ・CD・書籍などのエンタテインメントソフトのレンタルおよび販売店「TSUTAYA」のFC本部として展開中。

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