1年間で5000人が参加し、1200件のアイデアが集まった。参加者にも収益分配する、ものづくりクラウドソーシングサービス「Wemake(ウィーメイク)」

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執筆者: ドリームゲート事務局

ユーザーの製品アイデアを、ユーザーコミュニティで分担開発。商品企画から生産、販売までワンストップで提供してくれるプラットフォーム
展開している事業内容・特徴

20141205-1「3Dプリンター」の普及、「1人家電メーカー」の登場などなど、ものづくり革命は単なるブームを超えて定着しつつある。クリス・アンダーソンの著書『MAKERS』で示された「21世紀の産業革命」「製造業の革命」は、確実に進んでいるようだ。

本日紹介するベンチャーも、ものづくり革命を発展させるための大きな原動力となりそうなサービスを展開している。それは、ものづくりの企画段階からデザイン、開発、生産までを、ユーザーみんなで行ってしまおうという、まったく新しいクラウドソーシングサービス「Wemake(ウィーメイク)」だ。取材した2014年12月時点で、登録されているアイデアは1200件、参加者数は5000人超という規模に成長している。

サービスの概要はこうだ。まず、ユーザーが「欲しい」と思う商品のアイデアを投稿する。投稿されたアイデアは、ほかのユーザーによって、デザインされたり、設計や開発についての検討が進み、人気となった商品は企業が商品化して販売する。

商品製造を担当するメーカーは、貝印や東証一部上場の大手衛生・掃除用品メーカーといった企業のほか、東京都大田区や広島県の町工場なども参加している。

実際に商品化された場合、参加したユーザーにも収益分配されるのが同サービスのポイント。商品化にあたって必要となる細かなプロセスごとに貢献度が決められており、それをもとに分配率が決定される。収益分配率は商品価格に対して数%。同社の収益源はその収益分配金額からの手数料となる。

収益がきちんと分配されるため、参加しているユーザーも本職が多いそうだ。例を挙げると、大手家電メーカーの技術者や商品企画担当者、工業デザイナー、研究者、発明家などの“プロ”たちが参加している。

商品化が決定すると、メーカーによって商品生産が進められるが、日用雑貨から生活家電まで広くコンシューマ向け商品を扱い、販売まで6~18ヵ月ほどかかるそうだ。ちなみに、2013年11月にサービスをリリースした後、5件が商品化を進めている。やっと実際に販売される商品の完成が見えてきた。

同サービスを開発・運営する株式会社A(エイス)は、2012年~2013年に大学・大学院をそれぞれ修了したばかりの山田歩氏と大川浩基氏の2名が立ち上げたベンチャーだ。山田、大川両氏に伺ったところ、商品が実際に販売されるのは2015年3月以降の見込みで、そこから一気にプロモーションなどを仕かけ、サービスの成長を加速させたいという考えだ。

学生時代に起業し、そのままベンチャー経営者に。疲弊を続ける町工場を見て事業を思いつく
ビジネスアイデア発想のきっかけ

20141205-2山田氏は、大学まで機械工学などを学び、ものづくりにかかわる仕事がしたいと考えていた。また、あの「鳥人間コンテスト」にも出場。飛行機づくりの作業に従事するなかで、ものづくりの面白さと大変さを知った。大田区の町工場にも出入りし、町工場の持つ技術力の高さを知る一方で、下請け・孫請け構造に苦しみ、自社製品をつくる企画力やマーケティング・販路開拓のリソースに乏しいことに気づいた。

ご存じのとおり、日本の製造業の土台となってきた中小町工場を取り巻く状況は厳しい。海外の安価な製造コストで勝てず、国内市場は激減し、大田区ではこの数年で半分ほどの工場が消えていったという。

一方で、山田氏の同級生は大手家電メーカーなどに就職していったが、彼らの話を聞いていると、大企業の中でも組織の方針や物理的な制約により、ものづくりが思うようにできず、フラストレーションがたまっている。それなら、技術力と企画力のコラボレーションで、新しいことができるのではないか。そこで、物理的な制約がなく、誰もがものづくりに参加できて、価値を生み出すような場所をつくりたいと考えた。

大企業でも町工場でも、ものづくりがうまく回っていない、つながっていないことに疑問を感じた山田氏は、身らベンチャーを立ち上げて解決しようと考えた。一度目の起業は学部生の頃。中学高校と同級生だった大川氏から起業を誘われた。大川氏は大学で生産管理、大学院では金融工学を専攻していた。

最初に取り組んだのは工房ビジネス。住宅街の中の一軒家をリノベーションして、ものづくり拠点をつくろうと考えた。しかし、周囲から「音がうるさい」などとクレームが入ったことで頓挫。その経験から自分たちのビジネスの甘さに気づき、そこから次の事業立案に取り組み始めた。

この工房ビジネスは精算し、2012年4月に新会社を設立。大川氏の自宅をオフィスとして、活動を開始した。200社ほどの工場を回り、ヒアリングを続け、事業リサーチに1年をかけた。その間は売り上げゼロのため、自己資金と経産省の助成金などでしのいだ。

そうして行き着いたのが、「Wemake」のビジネスモデルだった。このビジネスモデルは、いろいろな人からの協力なしでは生まれなかったと山田、大川両氏は語ってくれた。

例えば、神戸大学のMBAで教べんを執る、イノベーション分野の大家である小川進教授や、Creative Commons Japan理事などで知られる水野祐弁護士などが同社の顧問、支援者となっている。

また、同社は2012年度「新事業創出のための目利き・支援人材育成等事業」にも採択されている。

サービス開発に当たっては、外注コントロールとマネジメントに苦労したそう。また、資金もないことから大学時代の同級生などにも手伝ってもらい、サービス立ち上げを行っている。「Wemake」の事業責任者は山田氏と大川氏の2名だが、チームとしては10名以上がかかわっているという。

世界中のリソースを結び、ものづくりのGoogleを目指す
将来への展望

山田、大川両氏に今後の展望を伺ったところ、「ものづくりのGoogleを目指す」という回答をいただいた。Googleは、世界中のあらゆる情報を整理し、検索できることを理念としているが、同社は世界中のあらゆるものづくりリソースをウェブを通して利用可能にすることを、ものづくりの分野で実現したいという。

具体的には、商品アイデアを投稿するコミュニティーを世界中に立ち上げる。世界中から集まった商品企画を「Wemake」のプラットフォームに参加する国内のメーカーに流して生産し、世界中に輸出するというものだ。ものづくりに必要なリソースを結びつけることで、日本の製造業を復活させるという構想である。

日本の製造業にこだわるのは、日本のものづくりの品質が競争優位性・武器になると信じているからだ。特にアジア圏における日本製品へのブランドイメージは強い。そうした優位性が少しでも残されているうちに、日本の製造業、ひいては町工場などが復活するきっかけをつくりたいと考えている。

年商目標としては、2017年に40億円。1年間に300商品の生産を行う規模に成長させて、2018年にはIPOという計画だ。

ちなみに、同分野ではアメリカの「Quirky(クワーキー)」というベンチャーが有名。2009年に創業し、まだ5年目のベンチャーだが、GEから30億円もの資金を調達したことでも知られ、100万人を超えるユーザーを抱える巨大な「発明家コミュニティー」となっている。

“ものづくりニッポン”の復活に挑戦する、若き2名の起業家のこれからに注目していきたい。

株式会社A(エイス)
代表者:山田 歩氏、大川 浩基氏 設立:2012年4月
URL:
http://www.8ce.me/
https://www.wemake.jp/
スタッフ数:
事業内容:
ものづくりのクラウドソーシングサービス 「Wemake」の運営

当記事の内容は 2014/12/11 時点のもので、該当のサービス内容が変わっていたり、サービス自体が停止している場合もございますので、あらかじめご了承ください。

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