2か月で100万ダウンロードを突破! 激戦区のカメラアプリに登場した「Pico Sweet(ピコスイート)」の急成長の秘密とは?

この記事はに専門家 によって監修されました。

執筆者: ドリームゲート事務局

乙女心を確実にキャッチして、爆発的なダウンロード数を達成。
展開している事業内容・特徴

20140730_1毎日のように新しいアプリが登場し、App Storeに登録されているアプリ数は120万※を超えたとのアナウンスもある。
※2014年開催のAppleのWWDC(Worldwide Developer’s Conference)より

もはやレッドオーシャン化したアプリ市場だが、その中でもカメラアプリのカテゴリは各社がしのぎを削る、猛烈な開発競争が続いている。しかし、この分野であるアプリが大ブレイクしている。有限会社アンジーが提供する写真加工アプリ「Pico Sweet(ピコ・スイート)」だ。

2013年11月にiOSアプリとしてストア公開した4日後に、カテゴリ1位、トップ無料では3位を獲得し、わずか2ヶ月で100万ダウンロードを突破した。2014年7月時点では、およそ220万ダウンロードと成長が続いている。それだけではなく、驚くべきはアプリのアクティブ率である。ダウンロードして1〜2回使用すれば使用されなくなるアプリも多い中で、同社の調査によれば1日に7〜10万人が利用し続けているという。

10代後半から20代前半の女性がコアユーザーとなるが、PRに用いた宣伝費はゼロ。同アプリのどこが世の女性に刺さったのだろうか?

サービス概要は、従来の写真加工アプリのそれと同様だが、不動の人気を獲得している理由は、“誰でも”、“簡単に”かわいいデコ写真を作れること。つまり、「デコる」という行為に汎用性を持たせたことだ。携帯電話のボディから始まり、昨今のスマホ画像まで、「デコる」という行為は世の女性に広く浸透してきた。しかし、すべての女性が上手く「デコれる」わけではない。自分の思うようにつくりたいが、ゼロからだとなかなか難しいと感じているユーザーは多い。

そこのニーズに応えたのが「Pico Sweet』だ。同アプリは、あらかじめデザイン性の高いテンプレートや背景が数多く、スタンプも1700種類以上用意されている。スマホカメラやカメラロールから選択した写真に、それらを適用するだけで、自分好みのデコが完成する。忙しくて暇がない、何から始めれば良いのかわからないユーザーも、手軽にデコれるUIが評価を受けている。また、ガーデニングやクラフトをアプリモチーフにした高いデザイン性や、柔軟にアレンジ可能なテンプレートもユーザーを獲得している理由である。

さらに、同アプリが支持される秘密はもうひとつある。「デコシェア」と呼ばれる機能だ。アプリ内にある「デコシェアURLをゲット!」をタップすると、デコの情報がURL化して、メール、TwitterやFacebook、LINEなどのSNSに添付が可能となり、ユーザー間でデコの共有やプレゼントができる。デコに限ったことではないが、自分の“お気に入り”が完成したら、誰かに見せたい、あるいは広めたいという気持ちはすべての人にある。ここへの確かなアプローチが、高いアクティブ率につながっているのである。

きっかけは奥様!? 身近な人のニーズに限りなく応えることで、高い汎用性を持つアプリが誕生
ビジネスアイデア発想のきっかけ

20140730_2「Pico Sweet」の誕生と人気の背景には、アンジー社が2013年6月にリリースした「My Heart Camera(マイ・ハート・カメラ)」というiOS向け写真加工アプリがある。

「ハート」モチーフに特化したスタンプが充実し、デコや写真加工ができるアプリだが、特徴として「オートデコレーション機能」と呼ばれる機能が搭載されている。アプリを起動し写真を選択、iPhoneを胸に3秒ほどあてると、写真をアプリが自動でデコってくれるものだ。乙女心をくすぐるハートがモチーフであることと、この“かわいい”アクションを示唆する機能を搭載していたことにより、同アプリは瞬く間に女性のユーザーを獲得、人気アプリとなった。

この人気を受け、同社が第2弾としてリリースしたのが「Pico Sweet」というわけだが、「My Heart Camera」開発に至るまでの経緯が非常に興味深い。

もともとアンジー社は、リクルートやアスキーなどでキャリアを積んだ森英信氏が2005年に立ち上げた編集プロダクションだ。雑誌の企画・編集のほか、Web制作事業や、エンタメ系モバイルサイトの企画・制作を手がけていた。Web事業では、創業当時興隆を極めていたFlashとブログにフォーカスし、CMSを用いたFlashサイトのマネジメントに注力し、コンシューマー向けコンテンツを多数展開した。

2006年には「Pico Sweet」と「My Heat Camera」のデザイナー・開発者であるキーパーソンとなる川野辺亮氏が同社にジョインした。Flashコンテンツが急速に支持を失い、ガラケーからスマートフォンへの急速に変化するなか、森氏は2011年にスマホアプリの分野に舵を切った。Web事業を縮小させ、モバイルファースト領域に社運を賭したわけである。

「Web制作とスマホアプリ制作、勝手は異なりますが、創業からWeb制作で築いた6年間のスキルとノウハウを応用展開できる面もあり、スムーズとは言い切れないながらもハードルを感じず事業をシフトしていくことができたと思います。1年目はひとつのアプリをリリースするのがやっとでしたが、2年目は60アプリほどになりました」と、森氏は話す。

しかし、受託制作で食い扶持を稼ぎながら自社アプリをリリースする同社だったが、ヒットアプリが生まれないというジレンマもあったそうだ。資金も乏しくなるその中で打ち出した、最後の一手が「My Heart Camera」であった。

開発のきっかけは、もともと付き合いがあったクライアントからアプリを出したいという相談を森氏が受け、受託獲得のためにコンペ用にカメラアプリを提案したことだ。ふだんから付き合いの深い会社からの依頼であったが、アプリはコンペで落選してしまう。そこで、カメラアプリを自社でリリースしようと決めたのである。

開発者である川野辺氏は当時をこう振り返る。

「当初から女性ユーザーに支持されるものを作ろうとは考えていました。でも、ヒントになったのは、妻の行動ですね。というのも、ある時、私の妻が3時間くらいスマホに熱中していたんです。訳を聞くと、妻の友人がFBにアップしているデコ写真にかわいいハートがあり、その素材を探しているとのことでした。

私からすれば「そんなことに3時間も…」と理解できないことでしたが、よくよく考えてみると、男性が自分好みのアダルトコンテンツを探すモチベーションに非常に良く似ているなと(笑)。

その時、実は妻のようなカワイイものを探すことに労力を問わない女性はたくさんいて、ここには巨大なニーズがあるのではないか? ということに気がついたんです」

以後、川野辺氏の奥様や、同社に勤務する女性社員、そのお姉さん、女子大生アルバイトから森氏の娘さんまで、とにかく身近にいる女性を集めて、彼女らの手によってデコ素材をでつくることにした。

20140730_1アプリ開発に関する技術的な知識はないが、デザインに対してかわいい・好き・嫌いを遠慮なしに意見する女性たちの存在は、同アプリのクオリティを上げる最良のアドバイザーとなった。こうして女性チームが納得するまでブラッシュアップを続けた結果、「My Heart Camera」は完成した。

当初、森氏はカメラアプリという競合の激しいカテゴリで、爆発的なヒット飛ばせるとは考えていなかったそうだ。しかし、その予想を裏切り、ストアカテゴリでは堂々の1位、トップ無料では11位に食い込む快進撃を見せ、リリース後4ヶ月でおよそ70万人のユーザーを獲得。現在もなおユーザーを増やしているのである。

「My Heart Camera」と冒頭で述べた「Pico Sweet」の快挙から、同社は今、創業9年間続けてきた受託ビジネスから自社事業を中心にした体制に生まれ変わろうとしている。すでにエンジェル投資家からの出資も得て、IPOまでの具体的な計画を策定中とのことだ。

2017年までに累計1億DL!! 世界の女性の希求を叶える一大プラットフォームの構築をめざす。
将来への展望

同社のこれからの展望だが、まずは「Pico Sweet」のAndroid版のリリースと、「デコシェア」を促進するSNSサービスのリリースを予定している。マネタイズに関しては、現状では、アプリ内に掲載している広告と一部スタンプの課金となっているが、スポンサーのタイアップコンテンツ。auスマートパスへの挑戦など、新しい収入源の開発も積極的に行っていく。

また、年内は、新しいアルバムアプリや、年賀状の印刷注文ができるアプリなどでラインアップ強化を図っていく計画だという。

同社では、2017年までに自社アプリの1億ダウンロード達成を目標に掲げている。この計画の実現に向け、上述のアプリのみならず、女性をターゲットにしたビデオ編集、ゲーム、ニュース、ファッションなどのカテゴリのアプリ開発を進めており、現状のユーザーベースとアクティビティを維持しつつ、一層のサービスの拡充とユーザー獲得を押し進めていく構えだ。

同社が狙う市場は日本だけでなく、当然だが世界も視野に入れている。世のすべての女性が求めるニーズを叶える一大プラットフォームの構築をめざしている。

さまざまなマーケティング手法があり苛烈な競争のビジネスの世界だが、身近な女性の“生の声”を反映した同社のアプリの大ブレイクは、意外と「身近な人のニーズ・ウォントに徹底的に耳を傾ける」ことができていない証左かもしれない。スマートフォンのアプリビジネスには、まだまだ大きなチャンスがありそうだ。

有限会社アンジー
代表者:森 英信氏 設立:2005年8月
URL:
http://andg.net/
スタッフ数:3人
事業内容:
・スマートフォン向けアプリ企画制作  ・紙媒体および電子媒体出版企画制作

当記事の内容は 2014/7/31 時点のもので、該当のサービス内容が変わっていたり、サービス自体が停止している場合もございますので、あらかじめご了承ください。

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