品質そのままで建築費用を大幅削減。建築業界に果敢に挑むベンチャー企業「ニーズコーポレーション」

この記事はに専門家 によって監修されました。

執筆者: 室賀 文治

不透明な建築費用にメスを入れて最適化を実施。品質維持しながら施工代金を大幅削減
展開している事業内容・特徴

kenchikuhi1新築、増改築における建築費用の大幅な削減を請け負うコンサルティング――。株式会社ニーズコーポレーションが提供しているサービス、「コンストラクション・コスト・マネジメント』(CCM)が建築業界から注目を集めている。

通常、不動産オーナーから新築や改築などの工事を依頼された工務店(元請業者)は、その工事発注をいくつかの下請け業者を経て、それぞれの専門工事に依頼する。それがこれまでの同業界の慣例だった。

そして、オーナーが建築費用の見積もりについて値下げを要求すると、元請業者はその値下げ要求をそのまま下請け業者に対して要求する。下請け業者はさらに下請け業者への減額要請を……となり、結果的には実際に工事を受け持つ専門業者にしわ寄せがいく。これが世に言う“手抜き工事”などのリスク要因となってしまっている。

そんな非効率な業界慣例を打ち崩すべく、ニーズコーポレーションのCCMは、オーナーに代わって各種工事会社と交渉し、工事の最適化を行うコンサル業務を行うことで、上記のようなしわ寄せを解消しているのだ。

具体的には、建築に関わる部材や人件費など、すべてのプロセスやかかる経費を透明化することから始まる。この透明化された個別の工事について、たとえば外壁工事、床工事、水周りといった個別工事を、全国の専門業者に対して入札を実施。当初の工務店が指定した専門業者から、最良の工事をコスト競争力のある専門業者に入れ替えていくのである。競争原理を働かせることで、肥大化している重層構造を可能な限り小さなものへと圧縮するのだ。

この最適化の結果、工事の質を一切下げることなく、20~40%程度の工事費用の削減を実現している。なかには発注段階の予算から、40~50%のコスト削減を実現したケースもあるという。しかも、このモデルは成功報酬型だというところも一つの特徴だ。

リーマン・ショック勃発後、建築・不動産業界の低迷が続いているが、同社のここ数年の取り扱い件数は増えており、直近の売り上げは前年対比200%の伸び。さらに、東日本大震災以降、建物の耐震化ニーズが高まり、そういった耐震補強工事での活用案件も増えてきている。

不透明な建築業界の商慣行に疑問を持ったことが始まり
ビジネスアイデア発想のきっかけ

kenchikuhi2ニーズコーポレーション代表の芹澤豊宏氏は、「コンストラクション・マネジメント(CM)は、米国をはじめ海外では割と常識的に行われている事業だ」と教えてくれた。もっとも海外のCMの多くは、オーナーが専門業者ごとに直接契約を交わして工事を発注する方式であり、そもそも日本のようなゼネコンが全体を管理する重層構造は一般的ではない。

日本のゼネコン方式には、個別の工事に関するトラブルについても保証してくれるなど、良い点もあるが、一方で実際の工事代金や施工内容など、不透明な部分もある。同社が運営するコンストラクション・コスト・マネジメント(CCM)は、日本の建設業界の構造の特徴を踏まえて、日本流にアレンジしたものなのだ。

CCMの大きなポイントは、クオリティはそのままで値段が下がるというところだ。専門業者が提示する工事価格には、その時の忙しさや作業員の都合など、さまざまな要素が反映される。また、いつも元請業者の協力会社という決まった業者に発注していては競争原理が働かない。CCMで専門業者を選定する際には、何よりも品質管理を重視し、そのうえで価格を考慮しながら最適な選択をしているという。

そして、CCMは元請業者にとっても有益なサービスなのだ。そもそも元請業者には、従来どおり現場経費や一般管理費を計上してもらい、工事中やアフターの管理監督保証も依頼しているため、大きな不利益はない。

また、CCMは、すべての工事について、全国約1万6,000社の工事業者に向けて入札を実施し、最適な専門業者を採用して元請業者と契約を結ばせている。元請業者にとっても優良業者を見つけてくれるサービスとして喜ばれているというわけだ。

建築業界をもっと透明化し、海外進出も計画中。
将来への展望

日本の施工管理は不透明であるものの、各専門業者の技術力はきわめて高い。ニーズコーポレーションはまだ従業員数名のベンチャー企業だが、優良な技術を持つ業者の発掘を続けることで、この業界の最適化を徹底的に進めていきたいと考えている。

また現在、東南アジアなどで空前の不動産ブームが起きているが、実際、建築や内装工事などはまだまだ信頼して任せられる状態ではないという。円高や高齢化によって、海外で不動産物件の取得を検討している日本人も増えているが、この分野においても、信頼できる施工や優良な工事を提供するCCMの「最適化」ノウハウを生かすことができる。日本発のオリジナルCCMが、東南アジア市場へ進出する日も近そうだ。

株式会社ニーズ・コーポレーション
代表者:芹澤 豊宏 スタッフ数:5名
設立:1999年4月 URL:http://www.kenchikuhi.com/
事業内容:
コンストラクション・コストマネジメント、プロパティ・コストマネジメント、建設請負、不動産開発企画、不動産売買、調査・診断・設計・監理・コンサルティング、生命保険・損害保険 取扱代理店

当記事の内容は 2012/7/3 時点のもので、該当のサービス内容が変わっていたり、サービス自体が停止している場合もございますので、あらかじめご了承ください。

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