一単語4円からOK!? 2500人を超える翻訳家が登録する、人力翻訳プラットフォーム「myGengoj(マイゲンゴ)」

この記事はに専門家 によって監修されました。

執筆者: 森 滋昭

月間300万単語の翻訳依頼が! シリコンバレーの著名投資家から続々と投資を受ける日本のITベンチャー
展開している事業内容・特徴

mygengo01株式会社myGengoは、一単語4円から依頼できる人力翻訳ネットサービス「myGengo」を運営してるITベンチャーだ。このプラットフォームに登録している翻訳家は世界中におり、24時間依頼可能。現在、15カ国語に対応し、2500人以上のネイティブクラスの翻訳者が登録している。彼らは在宅勤務で作業を行うため、低料金でのサービス提供が実現した。例えば、iPhoneアプリ説明書きは1172円(297 単語)、某企業のプレスリリースは2968 円(752 単語)、某製品のマニュアルは3万1207円(1万3176 単語)といった具合だ。また、サービスの利用方法もシンプルで、事前にポイントを購入しておき、翻訳が必要となったらそのポイントを使って依頼する。一文字、一単語単位という明快な料金体系と品質の高さが受け、個人はもちろん、JTBやフォルクスワーゲンといった大企業も「myGengo」を利用している。

翻訳家は、独自の審査を設けて厳選。登録希望者は、翻訳のスペシャリストであるシニアトランスレーターが作成したテストを受けなければならない。しかも、基本的にネイティブクラスでなければ、合格できないレベルだという。これまで登録を希望した翻訳者は約3万人だが、実際に審査をクリアして登録しているのはわずか2500人。合格率10%以下という狭き門だ。そういった企業努力により、安かろう悪かろうではなく、安くて質の高い翻訳サービスが提供できるというわけだ。

「myGengo」のユーザーは、日本国内が4割、海外が6割。70%は500文字以下の翻訳依頼だという。しかし、法人のWebサイトをまるごと多言語にローカライズする依頼も多く、売り上げのシェアは法人取引が大部分を占めている。ちなみに、2011年5月の翻訳依頼数は、1月で300万単語。半年前から比べると倍増のペース。さらに2011年9月28日には、総額525 万ドルの増資を受けている。

「myGengo」の戦略はAPIにあるという。同社のAPIを使うと、自社のWebサイトに簡単に翻訳依頼窓口を設置できる。このAPIを活用することで、企業のWebサイトに寄せられる別言語の顧客からの問い合わせであっても、双方の母国語でコミュニケーションさせるサービスを構築するのが狙いだ。また、APIを通じて寄せられた小さな翻訳依頼を大量に集めることで、ロングテール型のビジネスが目指せるのだという。

そんなAPI戦略を進めるために、現在、同社はライブラリーやサンプルプログラムの充実にパワーを集中させている。対応しているブログラム言語は、PHPをはじめ、PythonやC#、C++、Javaと多岐にわたる。また、「ハッカソン」などのITエンジニア・コミュニティーにも積極的に参加しながら、自社のAPIの普及活動を行っている。ちなみに、ハッカソンとは、「Hack」と「Marathon」を合わせた造語で、プログラマが集まってわいわいとプログラミングをするというイベントである。

勤務先の仕事への不満が起業アイデアに。翻訳業界の常識を打ち破る新サービスで勝負!
ビジネスアイデア発想のきっかけ

mygengo02このビジネスアイデアが生まれたきっかけは、CTOのマシュー・ロメイン氏の前職、ソニー勤務時代の実体験にある。ソニーにエンジニアとして入社したものの、英語と日本語に堪能なマシュー氏には、社内から翻訳に関する仕事ばかりが集まり、嫌気がさしていたそうだ。また、共同創業者であるCEOのロバート・ラング氏は当時国内でウェブ制作会社を運営していて、仕事でプロの翻訳家に依頼する際の煩雑な手続きにも疑問を感じ、「短い文章の翻訳を簡単に依頼できるプラットフォームがあれば便利なのに」と思い立ったのがそもそものきっかけだという。ちなみに、一般的な翻訳料金は1ページいくらの世界で、価格も時と場合によって、マチマチ。依頼するたびに見積もりを取る必要があり、さらに1万円以下の仕事を受けてくれる翻訳家は少ない。それゆえ、簡単なプレスリリースや製品の説明書きを翻訳するといった、小さな仕事を引き受けてくれる翻訳家を探すこと自体が大変だったそうだ。

そういった不満を解消するため、自分で使いたいサービスとして開発を始めたのが「myGengo」というわけだ。著名なベンチャーキャピタリストである伊藤穰一氏がマシュー氏の通っていたインターナショナルスクールの先輩という縁もあり、伊藤氏が運営する世界中のインターネット関係者が参加しているメーリングリストに、あるCMSの質問が流れたところ、偶然同様の同様のアイデアを考えていたというロバート氏と知り合い、myGengoを共同で創業することになったという。

サービスを開発し始めた当初は生活費などは自分持ち。その間の費用を抑えるために、マシュー氏は実家の一部屋に開発機材とエアーベッドを持ち込んで、早朝7時に起床し、深夜の2、3時まで開発に没頭。そんな日々を数カ月間続けたという。

そして、「myGengo」 は2008年12月に産声を上げた。開発を始めてから、ファーストリリースまでには約5カ月をかけたという。サービスリリース時にはまだ会社もなく、個人事業主の仲間が集って運営している状態だった。ちなみに、法人化したのは2009年6月。会社の立ち上げ資金は、創業メンバーの自己資金と家族からの出資でまかない、さらにベンチャーキャピタルからの資金を集めやすいとの理由で米国にも法人を登記。開発・運営の拠点は日本法人だが、形式上は米国法人が親会社になるという。

マシュー氏は、サービスリリース後にシリコンバレーへ出向き、投資を募る活動を開始した。初期に出資したエンジェル投資家は10名で、そのうち日本人は3名。その全員が母国語圏以外での在住経験があり、「myGengo」のビジネスモデルの価値をすぐ理解・共感してくれたという。シリコンバレーで資金集めをしたのは、投資判断がとにかく早いから。ビジネスプランを説明した一時間後には、もう投資のぜひを議論していたそうだ。マシュー氏によれば、アーリーステージではビジネスモデルの緻密さよりも、起業家のガッツが重視される。特に、起業前後では創業者がサービスの準備や開発に如何に専念できるかが大事。そこに理解がない投資家を受けて入れしまうと、過度のミーティングや報告資料の作成に時間を取られすぎて、失敗してしまうのだ。

実は、マシュー氏は「myGengo」を立ち上げる以前、別のWebサイト制作会社を経営していて、それなりの売り上げも立っていた。その制作会社の経営をストップし、「myGengo」の開発に専念するかどうか……。「myGengo」の開発に踏み切るに当たって、一番悩んだのは、それまでの生活を捨てることだったという。

多言語間コミュニケーションの不便を解消し、目指すは年商30億ドル企業!
将来への展望

「myGengo」が提供している翻訳サービスのマーケットは、どこまでも巨大化していくとマシュー氏は見ている。特に中国や東南アジアなど、非英語圏の人口と経済規模が急速に巨大化しつつあり、すでに中国のインターネットユーザーは米国人口を超えた。確かに、欧米の英語圏と中国をはじめとするアジアの非英語圏との間でのコンテンツ流通は急拡大しており、そのすべてのコミュニケーション需要が「myGengo」のターゲットとなる可能性がある。機械翻訳ではどうしても言葉の感覚が伝わりづらいいこともあり、安くてスピーディーな人力翻訳の需要は今後ますます高まっていきそうだ。

同社の社員は2011年9月現在で11名。その半分はエンジニアだ。マシュー氏もマネジメントの仕事が5割、残りの半分はプログラムを書く仕事で、とにかく時間と優秀な開発者が足りないと嘆く。10年後の目標は、年商30億ドルの企業になること。さらなる夢は、ネットを通じて、誰もが悩まず、多言語間コミュニケーションができる世界をつくることだという。

株式会社myGengo
代表者:Robert Laing,CEO Matthew Romaine, CTO 設立:2009年6月
社員:11名 URL:http://ja.mygengo.com/
事業内容
myGengo は、いつでも、どこからでもアクセスできる、リーズナブルな人力翻訳サービスです。案件の規模を問わず、クオリティの高い翻訳を最速でお届けします。

当記事の内容は 2011/10/11 時点のもので、該当のサービス内容が変わっていたり、サービス自体が停止している場合もございますので、あらかじめご了承ください。

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