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木賃アパートをハブに都市を更新する!
建築界のスタートアップ

執筆者:東 雄介  編集:菊池 徳行(ハイキックス)
更新日:2017年01月17日

木賃アパートを改修するデザイン集、
「モクチンレシピ」を公開 展開している事業の内容・特徴

20170117-1“モクチン”とは木造賃貸アパートのこと。かつて都市の人口増加の受け皿として建造され、今も都内23区だけでも18万戸以上のモクチンが残る。だが、その多くは老朽化し、建て替えや改修もされないまま放置されている。これら「社会からこぼれおちた」モクチンを「社会資源」として捉え直すことがNPO法人モクチン企画のコンセプトだ。

「モクチンレシピ」がそのためのツールになる。これは、木賃アパートを改修するにあたってのデザイン集だ。風通りがよくなる、光が入る、開放的に感じられる、こうした「物件そのものの価値」を高めるアイデアをまとめ、すべてをWebサイトで公開している。

マネタイズの仕組みは大きく2つだ。一つは、物件のオーナーからの依頼で、レシピを提案、設計業務をサポートするパターン。もう一つは「モクチンレシピ」の有料会員を増やし、彼らを相手にレシピに関するアドバイスを行うパターンだ。

「基本は、不動産管理会社の空室対策です。管理しているアパートが空室になると、業界的には家賃を下げて人を入れようとするのが一般的。しかし、これを繰り返していると物件の収益性がどんどん悪化します。そこで家賃を上げるために、テコ入れとしてレシピを使うというわけです」。パートナー会員になるには年間20万円の会費が必要で、現在は20社ほどが登録している。

しかし、モクチンレシピのベーシックな情報は無料で公開されており、使おうと思えば会員でなくとも、誰でも使えるのだ。代表理事の連勇太朗氏も「どんどん勝手に使ってもらいたい」と躊躇がない。レシピを使った事例を「モクチンレシピ」のサイト上に投稿してもらう仕組みまである。

「情報がどんどんフリーになっていく時代ですから、建築家のアイデアも、クローズドにするよりは全部種明かしをしてしまったほうが、質の高い仕事がくるというヨミがあります。何より、木賃アパートは都内に18万戸以上もあり、我々だけでカバーするのは不可能。地域のプレイヤーと連帯することで影響力を底上げする、モクチンレシピはそのための仕組みでもあるのです」

「社会問題を解決する建築家」の
あり方を模索した結果の起業 ビジネスアイディア発想のきっかけ

20170117-2連氏は、建築家であると同時に、慶應義塾大学SFC 特任助教のポストに就く研究者でもある。モクチン企画も、2009年に発足した学生プロジェクト「木造賃貸アパート再生ワークショップ」に端を発する。もともとアーティスティックな建築づくりより、「社会問題を建築家がどう解決するか、そのために建築をどう民主化するかに興味があった」という。

「大学では、設計プロセスを人と共有しながら建築をつくる仕組みを考えていました。それを実際の現場で試したいと思った時、リノベーションの先駆であるブルースタジオの大島芳彦さんを紹介してもらいました。大島さんはちょうど木賃アパートを改修するプロジェクトを手がけていましたが、資金力のないオーナーもアパートの再生ができるようなプロジェクトができないかと議論しました」

つまり木賃アパートとの出合いは偶然による。自身の興味は「設計プロセスを人と共有する建築づくり」にこそあった。しかし、改めて木賃アパートを見つめ直すと、関連する多くの社会問題が浮かび上がってきた。「例えば、空き家の問題であり、独居老人の問題。こうした問題に建築家としてアプローチするのは面白いんじゃないかと」。こうしてモクチン企画をNPO法人化したのが、2012年のことだ。

NPO法人という形態を選んだのは、利益ベースではなく理念ベースの組織である、という意識の表れだ。「他者と連帯する、市民社会のなかで建築をつくる、こうした社会的意義を掲げている建築事務所はほかにありません。建築家の多くは社会問題に対する意識が高いのですが、実際の仕事は多くが請負で、能動的には動こうとしない。そういう意味で、自らミッションを掲げて活動していく我々のような組織が、一つのモデルになれたらいいなと思っています」

新しいミッションに向けてドライブ!
「つながりを育む街をつくる」 将来の展望

「2012年に創業して、現在は事業が一回転した感じ」と語る連氏。目下、サービスレベルの向上に向けて、大規模なリニューアルに動いている。一つの目標は、モクチンレシピの会員数を増やすこと。そのために無料で情報を提供する範囲と機会を広げる予定だ。そのほか、レシピの使い方を教えるスクールの開校も構想している。

ミッションやビジョンもより具体化してきた。現在、連氏が掲げているミッションは「つながりを育む街をつくる」というものだ。

「一つは空間的なつながりです。最近のマンションは人と人との関連をどんどん切っていくような空間ですが、隣人と視線が合うとか、相手の気配を感じるとか、ちょっとした工夫で人の縁ができる。そういうつながりを育む空間をつくっていきたいと思っています。それから、時間的なつながりも。人の記憶は、そこにある街並みやモノの記憶と結びついています。木賃アパートはもういらないからといってどんどん立替えていくと、僕たちの記憶まで失われていきます。街が更新される速度にも、適切なスピードがある。僕たちは、木賃アパートをハブにして、少しずつ街を更新していきたい。これによって、時間のつながりをつくれるのではないか、そう思うのです」

時代の変化の中で、その価値が目減りし、取り残されてしまった“もの”“こと”は、木賃アパート以外にもたくさんある。温故知新のアイデアを施すことで、新たな価値を付与できるビジネスを考えてみてはどうだろうか。モクチン企画の取り組みは、そんなヒントを社会に投げかけている。

特定非営利活動法人モクチン企画
代表者:連 勇太朗氏 設立:2012年9月
URL:http://www.mokuchin.jp/ スタッフ数:4名
事業内容:木造賃貸アパートを「モクチンレシピ」で改修、都市を更新する

当記事の内容は 2017/1/17 時点のもので、該当のサービス内容が変わっていたり、サービス自体が停止している場合もございますので、あらかじめご了承ください。

この記事の執筆者

取材・文/東 雄介 編集/菊池 徳行(ハイキックス)

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