ウガンダと日本、1万キロを超えた母娘による起業。
アフリカから世界に発信するトラベルバッグブランド

スマビ総研

執筆者: 本多 小百合  編集:菊池 徳行(ハイキックス)

ウガンダの“仕立て”の楽しさを世界に伝える
カラフルなハンドメイド・バッグ 展開している事業の内容・特徴

20161117-1.jpg売り場のなかでひと際目をひく鮮やかな色柄のバッグ。思わず手に取ってみると「そのバッグ、トート・ショルダー・クラッチ・ハンドバッグと、使い方が4とおりあるんですよ」と店員さんが説明してくれた。「実は、これはウガンダに住むシングルマザーたちのハンドメイドなんです」。

株式会社RICCI EVERYDAYが展開する「アケロバッグ 4WAY」(税込1万800円)の店頭でのシーンだ。色鮮やかな柄の正体は、アフリカン・ワックスプリント。明るい太陽に映えそうな元気な色と日本では珍しい大胆な柄が、若い女性だけではなく、年配の男女にもうけている。

RICCI EVERYDAYの立ち上げを支えた仲本千津さんは現在、アフリカのウガンダに住んでいる。ウガンダ暮らしの楽しみのひとつはファッション。個人経営の生地屋と仕立て屋が多いウガンダでは、自分で選んだ布で、自分好みのデザインの服を仕立ててもらうオーダーメイドの仕立てが盛んだ。

積み上がった色とりどりの布の山からお気に入りの柄を選び、完成を待つ間のワクワク感。出来上がりを手にする瞬間のうれしさ。そういった、仕立てならではの手作りの魅力を知ってもらおうと、RICCI EVERYDAYが提供しているバッグは、大手百貨店での期間限定ポップアップストアやオンラインストアで70種類以上の柄から選べるようになっている。

「アフリカというと、紛争や貧困などといったネガティブな言葉で語られがちですが、実際こちらに来ると、それがすべてではないことが実感できます。人々が明るくポジティブな面もそう、日本人の方々にも学べることがたくさんあると思うのです。ファッションを通じて、そんなアフリカの魅力を伝えたい」と仲本さん。

RICCI EVERYDAYでは現在、バッグのほかポーチやPCケースなど全10種類のアイテムを展開。生産はすべて現地の直営工房で行なわれ、腕利きの職人がハンドメイドで製造を担当している。現在5人いる職人は全員、ウガンダで暮らすシングルマザー。仕事の選択肢が少ない彼女たちにとって、この仕事が安定した収入源になっている。

「雇用を生み出すことはブランドの大切な柱です。けれども、シングルマザー支援を全面に押し出すのではなく、それを知らなくてもお客さまが『欲しい』と思える商品づくりを目指しています」

きっかけは娘からのLINEメッセージ。
母娘の二人三脚で事業化に成功 ビジネスアイディア発想のきっかけ

20161117-2.jpg創業のきっかけは仲本千津さんが母親の律枝さんにあてたLINEメッセージだった。2014年、夏前に仕事で念願のウガンダに渡った千津さん。「こちらでは布を選んでバッグを仕立ててもらうのが楽しい」と、写真入りで母へメッセージを送ると「日本の人にも喜んでもらえそう」と話が盛り上がった。

そんな雑談のような本気のような話から3カ月経った頃、千津さんはウガンダ郊外に住む一人のシングルマザーと出会った。彼女の話を聞き、何らかのかたちで支援できないかと考えたという。

「ウガンダは人口の約半分が18歳以下。まだまだ発展途上にあり、女性が高等教育を受けようにも、様々な障壁が立ちはだかります。大学を卒業した人でも就職できるのは2~3割です。なかでもシングルマザーがきちんとした職に就くことは困難を極めています。そんな彼女たちを応援したいと」

ウガンダには仕立てや縫製の技術をもっている女性は少なからずいる。納期や品質管理など、日本を相手とする仕事で求められるルールを理解してもらえれば、技術水準は実務を通じて高めることができる。現地のシングルマザーを雇用してバッグを生産し、日本で販売できないか。2014年秋、親子二人三脚での起業準備が始まった。

千津さんは信頼できる職人を集め、現地での生産体制の構築に奔走。販売は日本で代表を務める母親の律枝さんが担当した。ちなみに律枝さんは4人の子を育ててきた専業主婦。ビジネス経験はなく、当然、起業も初めてのチャレンジだった。強みはPTAなど、保護者としての活動で養ってきた社交性やコミュニケーションスキル。持ち前の能力を生かし、果敢な営業で販路を開拓した。百貨店での初めての販売を決めたのも律枝さんの功績だ。初めてのことに手探りしながら進めた起業準備は1年に及んだ。

実は、律枝さんはこれまで一度もウガンダを訪れていない。創業にあたって母娘が活用した連絡手段は、律枝さんが唯一使いこなすことのできる SNS のLINEだ。毎日連絡を取り合い、1万キロ以上の遠距離コミュニケーションを克服した。何よりも、率直にものが言えて、一言で意図が汲みとれる親子の信頼関係が強みとなり、スピード感をもって事業を進めることができた。

日本で律枝さんが営業、販売を担当し、ウガンダで千津さんが生産、財務、経理、広報を担当。母娘それぞれの得意分野を生かしながら、販売開始にこぎ着けた。「母がこんなに優れたビジネスパーソンだったとは知らなかった」と笑顔で話す千津さん。いまや、二人は親子でもあり、よきビジネスパートナーともなっている。

グローバル展開と増産体制の構築で
さらなる成長を目指す 将来の展望

20161117-3.jpg2016年に入ってから、RICCI EVERYDAYは勢いを増している。7月にウガンダで現地法人を設立、翌8月にはウガンダの首都カンパラに直営店もオープンした。高所得層が集まるカフェの一角にできた店には、現地に駐在する外国人や地元の富裕層が頻繁に訪れる。ウガンダに暮らす人々の間では品質の高いものは輸入品というイメージがあったが、店に並ぶ商品を見て「メイド・イン・ウガンダ」でもここまでできるのかと驚く人も多いという。

今後はここを発信拠点とし、東アフリカ、そして欧米市場へと進出していく狙いだ。すでに、ロンドンでの展示会にも出展、バイヤーとの商談も始まっている。日本とは違い、アフリカン・プリントが流通しているイギリスでは、特にデザイン性の高さや丁寧な縫製が評価されているという。友人知人の率直な意見を参考に、買う人が本当に欲しいデザインのバッグを追求してきた努力が実ったかたちだ。

「もちろん、日本でも引き続き、販売していきます。北海道から広島まで現在25店舗での取り扱い実績がありますが、もっと身近で製品を手にとってもらえる環境を充実させていきたいですね」。来年の春夏以降には商品アイテムをさらに20種類増やす予定だという。

これに伴い、生産拠点も増強する。次は、ウガンダ北部に工房をつくるつもりだと千津さんは話す。「ウガンダ北部は約20年間、激しい内戦に苦しんできた地域です。2006年の停戦合意以降、国際機関が入って開発を進め、ようやくさまざまなインフラが整ってきました。今は住民の生活向上が課題になっています。RICCI EVERYDAYではウガンダ北部の中心都市グルに工房を設置し、現地に新たな雇用を生み出したい」。

シングルマザーを含め紛争の影響で苦しむ現地の女性たちにとって、安定した収入源は自立への確かな道筋となる。いずれは法人として、雇用した女性たちの医療費や年金など福利厚生面も充実させ、彼女たちに安心して仕事に取り組める環境を提供し、中長期的な生活設計を支えていく構想もあるそうだ。

「スタートアップなので、これからやっていきたいことは山ほどある」と律枝さん。今年から働き方を変え、RICCI EVERYDAYの仕事にもさらにパワーを割けるようになった。世界進出へ向けて一直線。ウガンダの女性たちが手がける華やかなアフリカン・プリントの多機能型バッグや小物が、世界のあちこちで見られる日はそう遠くないかもしれない。

株式会社RICCI EVERYDAY
代表者:仲本律枝氏(日本法人)
    仲本千津氏(ウガンダ現地法人)
設立:2015年8月
URL:http://www.riccieveryday.com/ スタッフ数:12名
事業内容:・アフリカン・プリントを使用したバッグ及びトラベルグッズの企画・製造・販売

当記事の内容は 2016/11/17 時点のもので、該当のサービス内容が変わっていたり、サービス自体が停止している場合もございますので、あらかじめご了承ください。