フィリピン伝統文化の持つ可能性を世界へ!
EDAYAが織りなすサスティナブルなビジネス

スマビ総研

執筆者: 古田島 大介  編集:菊池 徳行(ハイキックス)

フィリピン山岳地方の伝統文化継承のため、
現地技術者とともにEDAYAブランドを展開 展開している事業の内容・特徴

20161110-1フィリピン北ルソン地方と聞いて、何かをイメージできる人は少ないのではないだろうか。ここは同国の山岳地方で、先住民族が暮らす地域である。かつて人々は、自給自足の暮らしを営み、例えば儀式では古来から伝わる竹楽器を奏でるなど、独自のカルチャーを紡いできた。一方で、北ルソンの中心都市バギオ市などでは、かつて企業が運営していた鉱山跡地で働く人が多く存在するなど、人々の暮らしは変わりつつある。

よって、この地域には彼らにしかできない技術、伝統的な文化が残されていたのだが、今の資本主義の世の中でそれらを残しつつ暮らしていくことは難しい。そんな状況を知ったEDAYA(エダヤ)創業者の山下彩香氏は、この素晴らしい技術をもっと広め、サスティナブルなビジネス展開ができないかを考えた。

知られざる北ルソン島の伝統文化を、ものづくりをとおして継承していきたい――そんな思いで山下氏は現地に幾度も足を運び、度重なるリサーチを重ねた。そして、2012年に現地アーティストたちが紡いできた伝統的クラフトマンシップの技が光るエシカルジュエリーブランド、EDAYAを立ち上げた。

現地の竹工芸家と組み、バンブージュエリーをオンラインストアや催事で販売。価格帯は、安いもので1万円程度から高いものでは12万円ほどだ。小ロットの希少な伝統工芸品で、一点物にふさわしい価格といえるだろう。主な顧客は、EDAYAのストーリーに共感してくれる感度の高い人々。持続可能な社会づくりに取り組みから生まれたプロダクトに送られる「ソーシャルプロダクツ・アワード」を受賞するなど、クオリティやその社会性が評価されている。

就職活動前のバックパック旅行で訪れた
フィリピン・北ルソンで衝撃を受ける ビジネスアイディア発想のきっかけ

20161110-2山下氏は東京大学および大学院で国際開発農学、人類生態学を専攻。起業のきっかけは、そろそろ就職活動を考えなければならない修士課程1年の頃だった。

「これまで海外の国々を何となくバックパッカーとして旅をしていましたが、就活を前にして初めて、真剣に自分の将来のテーマは何であるか、考えようと思ったのです。そして、以前から気になっていたフィリピンの劇団が行う活動に参加するため、現地を訪れました」

そこで山下氏は、バギオ現地の山岳民族が紡いできたアートや伝統的な音楽、工芸品に出合う。ここで見た光景に、頭から離れられないほどの衝撃を受けたという。それと同時に多くの山岳民族が伝統技術だけでは食べていくことができないため、鉱山労働に従事する日々を送っている現実を知ることになる。

「なぜか、そんな環境に置かれた人々の才能を非常にもったいなく感じて……。もっと彼らが自分たちらしく生き、マジョリティな社会との共生の中で活躍できるようなカルチャーづくりができないかと思ったのが、起業の理由です」

人は何がきっかけで新しい道を志すかわからないのが面白い。そんなふとした思いがきっかけで、起業を決断した山下氏は、現地の伝統技術継承を支援するために、ものづくりブランドEDAYAを立ち上げた。周りに声をかけ、思いに共感してもらった人々に立ち上げを手伝ってもらい、現在はインターンを雇うなどしてスタッフを確保している。

当然だが、ここまでくるには、いくつもの苦労があったという。当初は、雇用を生むことが一番大事だと考え、鉱山労働者を数名雇い、彼らが簡単につくれる商品を大量生産して販売するというスタイルでスタート。しかし、思うようには売れず、結果として多くの在庫が残った。また、伝統工芸品を大量生産すると、希少価値が損なわれるという現実にも直面。結果、雇った現地の人たちも辞めていく……。

「そこでビジネスとしての発想を180度転換。まずEDAYAのストーリーを知ってもらうことにこだわり、しっかりとした文脈を構築してお客さまにお伝えして、この商品はなぜこういう値段なのか、ものづくりのバックグラウンドに共感してもらう戦略に切り替えました。また、EDAYAブランド独自の展示会を開くなどして、実際にこの取り組みの裏にあるストーリーを知ってもらおうと。また、雇用を生むことを一番の目的とするのではなく、文化継承を一番の目的に据え、誰でもができるわけではない、難しい工芸技術を取り入れた作品を展開するようにしていきました」

それからは、イベントや展示を行うたび、徐々にEDAYAの認知度が上がっていった。また、クラウドファンディングでの資金調達にも成功。そして、各種のメディアに徐々に取り上げられ始めたあたりから、顧客がつき売り上げも安定し始めたのである。しかし、「まだEDAYAの取り組みは始まったばかりです」と山下氏。

「想像してください。今も北ルソンの山岳民族の農作業の様子は、日本のそれの60〜70年前の様子と似ています。私たち日本人は、そのころに文化継承なんて考えていましたか? つまり、EDAYAとしては無形文化の継承を後押ししたいけれど、一方の彼らの中にはそうは思っていない人も多いということ。価値観の押し付けではなく、双方が綿密に話し合う必要がまだまだあるのです」

今もなお、フィリピン・北ルソンに通い、常に調査やEDAYAメンバーとコアバリューについての話し合いを続ける山下氏。「ブランドの方向性や事業展開など、試行錯誤の連続です」。EDAYAの事業のほかに、国際開発のコンサルタントとしても活動している山下氏は、両活動のバランスをとりながら、様々なアイデアをかたちにしていく予定だという。

地域活性に貢献できる社会起業家を育て、
北ルソンに多くの人が注目する仕組みをつくる 将来の展望

「今後はEDAYAブランドで培った経験を生かし、次なるフェーズとして、北ルソンで社会起業家を増やす教育事業を構想しています」と山下氏。そして、現地でNPO法人を設立し、フィールドワークを継続しながら、次なるビジネス展開も模索している。

「EDAYAでの活動を通じて、文化とビジネスを共存させ、継続していくノウハウがたまってきました。次に考えるのは、北ルソン・山岳地方に残ってスモールビジネスをつくっていける人材の教育です。先述したとおり、私たちが考える伝統文化の継承と、北ルソンに住む山岳民族の人たちとの思いが4、5年続けていてもまだ相違する場面があります。そのことを頭に入れ、お互いにとって良好なことは何かと考えた時に、彼ら自らが社会起業家として自立する、地域活性化につながるアクションを起こすべきだと感じました」

つまり山下氏は、EDAYAのビジネスで得られたノウハウを現地の山岳民族の人たちに提供しながら、一つの産業を創出するムーブメントに変えていきたいのだ。その思いが実現すれば、きっとフィリピン・北ルソンにもっとたくさんの人が訪れ、地域全体の活性化に貢献できると山下氏は信じている。

「ゆくゆくは、学校もつくってみたいですね。スペインのバスク地方、サン・セバスチャンは、人口わずか18万人ほどのまちでありながら、世界有数の美食の町として知られ、世界中から人が集まります。そんなロールモデルを参考にしながら、将来的にはバギオからもっと魅力あるコンテンツを発信して、多くの人が集まるようにしたいと考えています」

年々消えゆく伝統文化に新たな価値を見出し、ビジネスの手法でバギオの復興に貢献する山下氏とEDAYAに今後も注目していきたい。

EDAYA ARTS CORDILLERA CORPORATION (フィリピン現地法人)
代表者:山下 彩香氏 設立:2012年7月
URL:http://edaya-arts.com/ スタッフ数:10名 (プロボノ含む)
事業内容:・フィリピン北ルソン地方の伝統的技術を生かしたステートメントジュエリーブランド「EDAYA」の運営

当記事の内容は 2016/11/10 時点のもので、該当のサービス内容が変わっていたり、サービス自体が停止している場合もございますので、あらかじめご了承ください。