飛騨高山の山中に、“香る”宝の山を発見!
純国産のアロマオイルを届ける正プラス

スマビ総研

執筆者: 佐々木正孝  編集:菊池 徳行(ハイキックス)

日本の森から生まれたアロマは、
人を、そして森そのものも健康にする 展開している事業の内容・特徴

20161018-1アロマセラピーにアロマオイルなど、「香り」に着目した療法、そして入浴剤や化粧品などの関連商品は一大マーケットを形成している。国内のアロマテラピー製品の市場規模は約249億円(2011年)だが、それら「アロマ」商品の多くは化学で合成されたもの。純粋に植物から抽出された、混じりけのない精油(エッセンシャルオイル)は、流通量および価格の問題からごく少数に過ぎない。多くは海外産で、産地や精製経路(トレーサビリティ)が明らかではないものが9割以上を占めるという。

そんな状況にくさびを打つべく、飛騨高山の山中から純国産の精油を送りだしているのが、正プラス株式会社だ。現在、クロモジやヒノキ、ニオイコブシ、アスナロ、スギなど9樹種から採った精油「yuica」を商品化し、販売している。代表の稲本正氏は、「人の健康、そして森の健康を考えて、正にプラスの事業をスタートさせた」と語る。

「日本は国土の67%が森林で、世界第3位の森林面積率を誇っています。豊かな森林生態系から抽出した精油が人の心身を健康にします。そして、同時に森の生態系も健康にしていけるのです」

睡眠導入や沈静につながるリラクゼーション効果、朝の快適な目覚めを約束する覚醒効果、香りによる防虫効果など、植物由来の精油は生活の幅広いシーンに効果を発揮する。

加えて、「yuica」の精油は飛騨高山の山野で育った樹木の間伐材や枝葉から抽出したもの。供給元は飛騨高山森林組合と、そのOBたちだ。草刈りや枝打ち、間伐によって、精油の素材を丹念に収集している。こうして適切な手入れをすることで豊かな生態系が育まれ、森や里山を健康にしていけるのだ。

日本の山野で育った野生植物から抽出された精油を嗅いでみる。純粋にして清浄、力強い芳香が立ち上った。「アロマ」といった、今流行のワードでくくられるものではない。私たちが昔からなじんできた伝統をベースにした「香り」だ。

「日本語では香りを“聴く”とも言いますが、それは香りの奥にある自然の声を聞く、ということ。香道をはじめ、古来から日本人は香りに親しむ伝統文化を育んできました。たとえば、yuicaでも用いている植物『クロモジ』は茶道の楊枝に使われてきたもの。クロモジが発する香りには心を静め、落ち着きをもたらす作用があることは古来より知られていたのでしょう」

日本の森に、知られざる商材が眠っていた。
視点を変え、サステイナブルなビジネスを ビジネスアイディア発想のきっかけ

20161018-2代表の稲本氏は、「100年かかって育った木は100年使えるものに」というモットーのもと、飛騨高山でオークヴィレッジを創設。生活に根差した木製品の製造を手がけてきた。数千年にわたって続いてきた木の文化を継承し、受け継いでいく。その志の延長線上に5年間の研究を重ね、2006年から始動したアロマ事業がある。

「私たちは化石燃料によって文明を発展させてきましたが、それは何千万年、何億年の蓄積をただ食いつぶしているだけ。私はかつて“灰色社会から緑の国へ”というキーワードを掲げ、化石燃料に依存した社会から、森、木をベースにした循環型社会への移行を提唱しました。今まではただ捨てられていた間伐材、枝葉から生成する精油には、その考えをさらに本格化させたいという、強い思いもこめているのです」

「森の惑星プロジェクト」という活動を通し、世界の森を巡っていた稲本氏は、イギリス王立キューガーデンの園長であるブランス博士と出会い、精油の世界に開眼する。

「ブランス博士の薦めで着目したのが、アマゾンの森林でした。豊かな原生林の中で、香木のローズウッドだけが絶滅の危機に瀕していたことに驚かされます。かのマリリン・モンローが愛用したことでも知られる有名な香水に使われたことで、この希少な香木は仏領ギアナで伐採され、激減していたのです」

世界の森と比較しても、温帯では稀有な豊かさを誇る日本の森。ここから、日本では予想されていなかった新しい「精油」が抽出できるのではないか。そんな思いから、稲本氏は日本の森における精油抽出の研究をスタートさせた。

「後年、私たちがクロモジから精油を生成した時に、ローズウッドと同じ香り成分『リナロール』を発見し、大変驚きました。それもそのはず、クロモジとローズウッドは同じクスノキ科で、親戚のようなものだったのですから」

日本の豊かな森林に、香りの宝が眠っていた。しかも、それは枝葉を素材とすることで、伐採することなく抽出できる。循環型であり、サステイナブル(持続可能)なビジネスに――稲本氏の確信が、正プラスの起業につながった瞬間である。

和アロマをベースにして進むコラボ、協業。
日本の香り文化を世界に発信していく 将来の展望

正プラスは精油に加えて、「yuica」ブランドをベースにしたアイクリーム、シャンプーなどの香り関連グッズを100製品強展開している。香りを楽しむディフューザー「森香炉」がG7伊勢志摩サミットで各国の要人、関係者に配られるお土産に採用されるなど、小規模体制ながら、確実にプレゼンスを高めているのだ。

「哲学、ストーリーを共有できる企業とビジネスをしていきたい」という稲本氏の言葉どおりに、志を一にする企業との協業も盛んになってきた。主なコラボレーションは下記の3ライン。トヨタ「レクサス」とコラボでルームスプレーを発表。ナイス株式会社とは、「yuica」をブレンドした100%植物由来の香る塗料「森香(しんか」を、株式会社藤波タオルサービスとは、「香りおしぼり」を共同開発。独自ラインアップを太くするだけではなく、衣食住の多彩なチャンネルでアロマを浸透させていく。

「yuica(結馨)、森香(しんか)もそうですし、バストイレタリーブランドのKOTOHA(ことは)もそう。グローバルに通用しつつ、日本の伝統も踏まえたネーミングに決めました。それは世界に日本のアロマを発信していきたい、と思ったからです。たとえば、香るおしぼりを展開することで、清潔・清浄に重きを置く日本文化をプレゼンテーションできるでしょう」

日本の森から生まれる香りを届けること。それは日本文化の発信にプラスして、「産地や精製経路を明確に示す」トレーサビリティと、「持続可能な社会を指向する」サステイナビリティを高らかに掲げることでもある。静かに、しかし力強く――香りが五感から脳に届くように、正プラスの挑戦は続く。

正プラス株式会社
代表者:稲本 正氏 設立:2006年11月
URL:http://www.sei-plus.com/ スタッフ数:14名
事業内容:・草木から抽出したアロマオイルの製造、販売
・森林セラピー、アロマ関連製品の企画、販売。

当記事の内容は 2016/10/18 時点のもので、該当のサービス内容が変わっていたり、サービス自体が停止している場合もございますので、あらかじめご了承ください。