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ハイテク系ベンチャーのスマートな立上げと成功へのポイント~株式会社ケイエスピー 栗田 秀臣氏インタビュー~

執筆者:ドリームゲート事務局
更新日:2016年01月26日

20160114-2一口にベンチャーキャピタル、インキュベーションと言っても実は様々な形態がある。今回はものづくり、ハイテク系ベンチャーを検討している起業家に向けて、KSP(かながわサイエンスパーク)の運営を行っている株式会社ケイエスピー インキュベート・投資事業部 統括課長の栗田 秀臣氏にインタビュー行った。

KSPは日本最古参のインキュベーション施設であり、特にものづくり、ハイテク系ベンチャーへの支援で知られている。パソコン1台でサービス開発ができるIT系ベンチャーに対し、技術・ものづくり系の起業には、資金や人材・開発設備の用意、営業力など、よりパワーが必要となる。そうしたベンチャーに包括的な支援を実施してきたのがKSPだ。

これまでに投資したベンチャーは合計で200社以上にのぼり、そのうち10社はIPOしている。具体的には1997年1月にスタートした第1号ファンドを皮切りに、これまでに4本のファンドを立ち上げている。2号以降は2004年3月・2006年7月・2014年6月で、総額は約50億円。1号ファンドについては10年間の運用が終了しており、出資総額7億円に対して数倍のキャピタルゲインを達成している。

ハイテク系ベンチャーがスマートにゼロ→イチを行うには

栗田氏によれば、起業家はまず立派な事業計画書を作成しなければと考えている人もいるが、ビジネスの基礎知識に乏しい段階で作成したものは、あまり意味をなさない。それよりも大切なのは「やるべき事業、サービス、製品の骨格をまず固めること」だという。

そのためKSPで起業を考える場合は、事業計画書などを最初からきちんと用意してくる必要はないという。少なくとも会社経営や事業立上げの経験などが無い技術者系の起業家の場合、いきなり事業計画書を書いてといっても土台無理があるからだ。

それでは何から手をつけるべきか。栗田氏からのアドバイスとして、まずはアイディアを紙に書いて、多くの人の意見を聞くことがスタートラインとなる。起業家が最初に考えている構想と世の中のニーズは、往々にして隔たりがある。まずは世の中で何が求められていて、自分は何ができるのかという点を深く考えることから始めるべきである。それは在職中でもできることなので、休日を使って事業のコンセプトを徹底的に考えて明確にし、自信や確信を十分に得てから、起業の準備へと向かうのがスマートだといえる。

事業計画書についても、事業のコンセプトが決まり、製品開発のプロセスやプロジェクト全体像が固まってくれば、何から取り組むのかといった優先順位はおのずと見えてくる。

また、起業自体は手段にすぎないため、自分の目指す事業が社内でできるのであれば、それを薦めることもある。KSPに来る前に、「どうしてもやりたいか」「自分がやる必然性があるか」を何回も自分自身に問うてほしいと栗田氏は語る。

事業計画の作成についてはKSPとしてサポートできるため、むしろ技術そのものがどの程度新規性のあるものかが重要になる。多くの研究開発型ベンチャーの場合、技術シーズは社長自身がもっており、経営者は代わりがいるがCTOは代わりがいないといったことも多いからだ。

また、起業の準備はまず身辺を整理して退社してから・・・と考える方も少なくないかもしれないが、栗田氏によれば、むしろ退職する前段階から相談してほしいという。

栗田氏からのアドバイスとして、大企業を退職して起業する場合に大切なのは「辞め方」であるという。もともと所属していた会社と良い関係を維持しながら退職することで、例えば前職の同僚や上司がビジネス案件を紹介してくれるかもしれないし、後から即戦力人材としてジョインするかもしれない。会社員時代に培った人脈は起業家にとって貴重な財産である。そういった可能性を途切れさせないためにも、退職した後も同僚や上司といつでも連絡を取れるような関係を整えておくことは、起業する際には非常に重要なポイントになる。

ハイテク系インキュベーションの実際。成功のカギはオープンイノベーション

20160114-1ハイテク系ベンチャーにとっての大きな課題は、肝心のニーズがどこにあるかがわかりづらいという点だ。コンシューマー向けに製品を販売するビジネスであれば別だが、ハイテク系ベンチャーはB2B型ビジネスであることが多い。つまり顧客は大手企業になる。

KSP栗田氏によれば、社外から最新の技術を求めている大手会社は非常に多いという。しかし、いざその技術を取り込む体制が整っているかというと、そうとは言えない。ICT、創薬などの分野では、ベンチャーのもつ開発力やシーズを取り込むことが大企業の戦略の一部になっているが、日本がまだ競争力を維持している分野(自動車、素材、電子デバイス等)では、まだまだ試行錯誤している段階と言える。

ニーズの一例をあげると、電子デバイスについては、光などを用いた非侵襲の生体センシング分野が有望だという。例えば、赤外線や電波、超音波を当てて、心拍・血流、乳酸値や血糖値などを非接触で連続測定できるといった技術が該当する。医療とヘルスケアでは、センサーに求められる精度も大きく異なるが、医療分野での利用を考えると、採血検査と比較してどれだけ安定した再現性があるかがが重要。未だ製品として上市されているセンサーは少なく、実現した場合は非常に大きなビジネスになる可能性が高い。

また、材料開発系も大手企業のニーズが高い。この分野は開発から事業化まで長い時間と多くの資金が必要となるため、ベンチャーが単独で行うにはかなりリスクが高い。大企業からのスピンアウトや大学研究者が起業するケースもあるが、非常に専門性の高い領域のため、そもそも起業家の数自体が限られてくる。しかし、イノベーションが起きた時の社会的なインパクトは非常に大きく、大企業も新しい材料は常に探しており、KSPとして注目をしている分野だ。

現状では、実際に大手企業がベンチャーを買収するケースはまだそれほど多くないが、今後の傾向としては確実に増えていくと栗田氏は見ている。そうした際、KSPには大手企業の研究所も多数入居している事から、コミュニケーションがとりやすい場としての強みがより発揮されるだろう。

また、KSPのベンチャー支援の中でも大きな特徴として挙げられるのが、「ビジネスマッチング」である。成長市場への新規参入を目指す企業を対象にした会員制の研究会「ビジネスアライアンス研究会」ほか、「協創マッチングフォーラム」がある。

協創マッチングフォーラムは、オープンイノベーションを求める中堅・大企業へ、全国の支援機関が推薦する中小ベンチャー企業の技術を紹介する商談形式のマッチングイベントで、受発注取引だけではなく、共同開発やOEMといった事業創出をテーマにしている。同フォーラムは2016年2月4日に開催される予定だ。参加は無料。興味のある方はぜひ足を運んでみてほしい。

なお、ベンチャー企業がKSPに入居する期間はおよそ3〜5年程度。事業が順調に立ち上がり3年でKSPを卒業する企業もいるし、創業以来10年以上KSPにいる企業もいる。単なる下請けの設計開発ではなく、継続的に利益が出せるレベルになるまでには、技術開発系のベンチャーでは比較的時間がかかるため、そういった事情を考慮して、KSPに入居できる期間を最大で8年(※)と設定している。
※8年目以降については卒業企業として、一般企業と同じ条件で継続して入居することが可能な仕組みを採用している。

KSP発ハイテクベンチャーの事例

ここでKSPの投資先でIPOを果たしたハイテク系ベンチャーを紹介したい。

株式会社メディアグローバルリンクスは、放送機器メーカーのエンジニアが単独で起業したベンチャー。1993年の創立から約7年間は受託案件をこなしつつ、自社製品を開発し成功。2006年3月にはJASDAQに株式を公開した。現在は年商53億円(2015年3月期)で、海外に確たるシェアを持つ通信系機器・放送系機器メーカーとして、独自技術を駆使し通信と放送を融合させたIPビデオルーターやマルチメディアIP伝送装置、HDプロセッシングシステム、館内デジタル自主放送システムなどを展開している。KSP1号ファンドの投資先の1つでもある。

サイオステクノロジー株式会社はKSPで創業したJava・Linux関連のソフトウェアメーカー。KSPの出資先であったLinuxサーバの開発メーカー・ノーザンライツコンピュータと、大手SIerなどが出資していたLinuxのソフトウェアメーカー・テンアートニーが合併してできた会社。2004年8月、マザーズに上場、その後に現在の社名に変更している。同社の代表取締役社長である喜多伸夫氏は、現在はKSPの投資委員会の外部役員も務めており、後進の支援も担っている。

サイオステクノロジー社のように、KSPから支援を受けて成功したのち、今度は自らが支援する側を担うというのはシリコンバレーにみられるベンチャー育成のエコシステムだが、KSPにもそうした先達からの後続への支援が脈々と受け継がれていく生態系が形成されていることは注目したい。

KSP栗田氏より起業家へのメッセージ

「KSPとして投資対象としている業種はライフサイエンス・電子デバイス・材料・組込ソフトウェアなどが多く、特に技術開発・ものづくりで勝負できる会社を投資対象にしています。

技術開発を行うベンチャーにとって、以前は設備や支援サービスが整った環境・施設が少なかったですが、最近は民間でもハードウェア開発をサポートする施設が増えてきており、とても良いことだと思います。ただし、ハードウェアといっても消費者向けの家電、ガジェットに留まっているケースも多く、業務用機器の開発という領域では、まだまだKSPの優位性はあると思っています。また、KSPの支援先企業は自社単独で技術や製品を世に出していくというより、大手メーカーと協業していくケースが多いため、大手メーカーが何を求めているのかということは、常時リサーチしています。KSPには様々な大企業の新事業やオープンイノベーションのニーズが集まってきます。マッチングのための場づくりも定期的に行っているので、有望なベンチャーと大企業とのビジネスプロディースも積極的に行っています。

技術系ベンチャーにとって、他社への参入障壁を確立し、競争優位性の源泉になるものは技術なのですが、実際の事業の立上げは技術だけでは難しい。KSPに入居している会社には、世界トップレベルの技術を保有する会社が多数ありますが、必ずしもその会社が商業的に大成功しているかというと、そういうことでもありません。特に、資金が枯渇してくると知的財産などの切売り、安売りに走ってしまうケースもあり、実際には知財のライセンスだけでは利益が出ないのが実情です。

技術系ベンチャーを目指す方へのメッセージとしてお伝えしておきたいのは、重要なのは知財や部品をそのまま売るのではなく、完成度は低くても良いので半製品として機能するものに仕上げて提案していくという意識です。例えば半導体であれば、プリント基板に実装し、ソフトもつけて機能モジュールとして提供するといったことです。大企業も要素技術を持ってこられても試作評価できるような余裕はほとんどなくなっており、大企業の製品プラットフォームに載せて動かして、評価データもとってあげるぐらいのことをしなければ、技術が良くてもなかなか商談は前に進みません。また、大企業からの受託開発だとしても、自社の領域だけ考えて開発をしていれば良い訳でなく、エンドユーザーを想定した開発が求められており、今後はそれができるか否かで、事業成功の明暗は分かれていくと思います。

ただ、一社ですべてそろえる必要はなく、どうしたら全体のシステムとして機能するかを考え、それぞれの技術分野の得意な企業を集め、協業しながら開発を進めていくのが良いと思います。事業の立ち上げ時には、技術開発以外の資金調達、販売体制、サポートなどいろいろなことがありますが、自社でやること、やらないことの区別をしっかりつけて、強みに集中するということが肝心です。

ぜひ、志を大きく、目線は高く保ちながら、事業を展開していただきたいと思います。KSPとしても、インキュベーション施設の草分けとして更なる進化、サポート体制の充実に努めていきます。」

株式会社ケイエスピー
代表者:代表取締役社長 内田 裕久氏 設立:1985年7月
資本金:45億円 スタッフ数:20名(うち、10名ほどがベンチャー支援を担当)
URL:http://www.ksp.co.jp/
事業内容:
・創業支援
・起業家育成
・成長支援
・企業交流
・イベント開催

<KSPの概要>
KSPは2016年12月で30周年を迎える、日本では最古参のインキュベーション施設として知られる。施設自体は株式会社ケイエスピーを含めて5社の民間企業による共同所有であり、株式会社ケイエスピーがインキュベーション事業を行っている。施設全体の運営会社としては土地・建物管理等の事業を行う「ケイスピーコミュニティ」、地域冷暖房供給事業を行う「ケイエスピー熱供給」、ホテル経営や関連事業を行う「ホテルケイエスピー」で構成される。

株式会社ケイエスピーの資本金は45億円で、神奈川県、川崎市、株式会社日本政策投資銀行などの公共セクターから34.2%、残りの65.8%は民間セクター46社の出資を受けて、1986年12月に設立された。

渋谷から電車で20分ほどにある溝の口に、55,000平米という広大な敷地を持つKSPは、ホテルや会議室がある「西棟」、ベンチャー向けラボとオフィス施設の「東棟」、大企業のラボとオフィス施設「R&D棟」からなる。また、川崎市京浜臨海部にはKSPとJFEライフが共同で運営するベンチャールーム「KSP-Think」もある。2016年1月時点で溝の口のKSPには約50社、川崎のKSP Thinkには約30社のベンチャーが入居している。

KSPと民間ベンチャーキャピタルとの最たる違いは、IPOを目指さない企業も支援するところにある。KSPはVC投資を行っているが、インキュベーション施設の運営、ビジネスマッチング、セミナーなども行っており、ベンチャー企業、中小企業、中堅・大企業など幅広い企業に対しての支援メニューを用意している。

<ビジネススクールについて>
KSPでは具体的に起業を考える人を対象に、「KSPビジネスイノベーションスクール」を開催している。同スクールは月に1~2回、土曜日に開催しており、期間は約6ヶ月間。受講者は技術系の事業を持つ人が多いという。

事業計画書の作成をカリュキュラムの中心にして、企業活動を総合的な視点から把握してもらう事と、ベンチャーマインドに富む「起業家型人材の育成」を目的に実施している。同スクールの受講生には、希望者にはインキュベートサービスの提供や、事業計画書作成時のKSPスタッフによる個別サポートを行っている。

当記事の内容は 2016/01/19 時点のもので、該当のサービス内容が変わっていたり、サービス自体が停止している場合もございますので、あらかじめご了承ください。

この記事の執筆者

ドリームゲート事務局
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取材・文:ドリームゲート事務局 起業・開業・独立・ベンチャーの悩みに、専門家がお答えします。無料なのでお気軽にどうぞ。

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