その時、偉人たちはどう動いたのか? 松下電器産業創業者 松下幸之助 1

この記事はに専門家 によって監修されました。

執筆者: ドリームゲート事務局

エピソード1「人間大事」
「生産は即日半減するが従業員は一人も減らさない」 1929(昭和4)年:34歳 創業11年目

 1929年、政府の緊縮政策のあおりを受けて経済が混乱する中、日本一待遇が良いといわれていた鐘紡ですら賃下げによる労働争議で揺れていた状況下で、人材を第一に雇用を守ったエピソード。

 松下電器でも製品の売れ行きが半減、在庫が溢れて倉庫に入りきらない状態になってしまい、しかも工場建設後で資金も不足している。この肝心な時に幸之助は体調が悪く病床にあった。
そんなある日、経営を任せていた2人の幹部が訪ねてきて、「従業員を半減するしかない」と進言した。ところが幸之助は、この時、思い迷っていた心が決まり、一議にも及ばずこう指示した。 「生産は即日半減するが従業員は1人も減らさない。このため工場は半日勤務とする。しかし従業員には日給の全額を支給する。その代わり、全員で休日も返上してストック品の販売に努力すること」
こうして持久戦に持ち込み、様子を見ようとの判断である。安易に雇用に手をつけてしまえば、これまで培ってきた従業員との信頼関係は失われてしまう。それに比べたら、半日分の工賃の損失など長い目で見れば問題にはなるまい。ただちにこの考えを全従業員に告げると、いつ解雇されるかと気が気でなかった従業員たちは、全員、大喜びで賛成した。

 士気が高まった従業員たちが一致団結して販売に努力した結果、わずか2カ月で在庫を売り尽してしまった。そして工場は半日操業をやめてフル稼動を再開、以前にも増して活況を呈するに至った。松下幸之助イズムの象徴である「人間大事」の考え方を物語る典型的なエピソードである。

私たちならこうする!

(株)ネクシィーズ代表取締役社長 近藤太香巳氏

松下さんの終身雇用は、「社員の身分を保証するからおまえも頑張れ」というお互いのパートナーシップであるように思います。だから、このエピソードのよう にピンチの時に人を減らすのではなく、工場の操業を半日にし、もう半日は営業して生産性を確保するのは的確な選択でしょうね。一緒にピンチを経験するから 社員にも力がつくのであって、そのたびに人を減らしていたら、増やすときに一からイズムを入れ直すのも大変ですから。
ネクシィーズも終身雇用が基本です。でも「終身雇用」というと、「働かなくても給料もらえるのは当たり前」と勘違いする者が出てくる。そうではなく、その 人が給料以上を稼ぐから給料が支払われるんであって、それがプロの世界だと思うんです。大切なのは、いかにぶら下がる社員をつくらないか、ということでは ないでしょうか。

シナジーマーケティング(株)代表取締役社長 谷井等氏

安易にリストラをしないスタンスは大いに共感できます。当時の松下さんの状況の厳しさはよくわかりませんが、雇用に手をつけるのは最後の最後の手段だと思 いますから。
社員に対して会社の損得をベースに考えると、個人にとってはいい結果にはつながらないと思います。このドリームゲートの「挑戦する生き方」でも言いました が、僕が仕事をするうえで大事にしているのは、人を大切にすること。独立したいという社員に成功するイメージが持てなければ心底慰留しますし、逆にどれだ け成果を上げている人でも、当社にいるよりも独立や転職をしたほうがその人のためになるなら応援します。

際コーポレーション株式会社 代表取締役 中島 武氏

不良在庫って、必ずたまるものなんだよね。我々の商売でも同じ。でもなんとかして売らなきゃいけない。従業員はみんな新しいことに意識が向くから、不良在 庫の処分なんて後ろ向きの仕事なんてやりたがらない。それを上手にやらせた幸之助さんは偉かった。僕は、幸之助さんは優しいから従業員を減らさなかったん じゃないと思う。心の底では「クビになりたくなけりゃ売れ!」って思っていたかもしれない(笑)。
こういうふうに行き詰った時に、火事場のバカ力を発揮させる環境づくりができることが経営者には大切なこと。僕も、不調の店のスタッフには「ごちゃごちゃ 余計なことを考えず、一生懸命に掃除とお客さまへのあいさつをすることだけを考えろ」と言います。すると、吹っ切れたようにやり始めますよ。「売れる企画 を考えろ」とか難しいことをさせるのではなく、簡単にしてやることが大事なんだと思います。

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