内科クリニックの開業は、医師としてのキャリアにおいて大きな転機となる一方で、多額の資金や綿密な準備が求められるプロジェクトでもあります。診療科目の選定や立地の見極め、医療機器や内装工事の手配、さらには人材採用や広告施策まで、成功に向けて考慮すべき項目は多岐にわたります。とくに、開業にかかる資金の目安を正しく把握し、費用の内訳や節約のポイントを理解しておくことは、経営の安定とリスク軽減につながる重要な要素です。
そこで今回は、内科開業に必要な資金の目安から準備ステップ、診療科目ごとのコストの違い、成功に導く戦略までを網羅的に解説します。これから開業を目指す方にとって、実践的な指針となる内容をまとめましたので、ぜひ参考にしてください。
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内科開業には、開業資金の調達、立地選定、医療機器の選定、各種許可申請、患者獲得戦略など、医療業界特有の専門知識が必要な課題が数多くあります。一人ですべてを解決しようとすると、重要なポイントを見落としてしまい、開業後の経営に大きな影響を与える可能性があります。
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- 目次 -
内科開業にかかる資金目安
内科クリニックの開業にかかる資金は、診療科の内容や開業スタイルによって大きく異なります。テナントを利用した開業なら6,000万〜8,000万円程度、土地を購入して建物を構える戸建て型では、1億円を超えるケースも少なくありません。
費用の内訳としては、物件取得費・内装工事費をはじめ、電子カルテなどの医療システム導入費、広告宣伝費、スタッフの採用費用などがかかります。また、開業直後は診療報酬の入金にタイムラグがあるため、運転資金を十分に確保することも重要です。
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内科の開業に必要な資金の内訳
内科クリニックを開業するには、多額の初期費用が必要ですが、その内訳を把握しておくことは資金計画を立てるうえで不可欠です。ここでは内科開業に必要な資金の内訳について解説します。
物件取得・内装費
内科クリニックの開業を考えるうえで、まず大きな割合をしめるのが「物件取得費」と「内装費」です。物件取得費には、敷金・礼金・前賃料などが含まれ、相場としては賃料の10〜40カ月分が目安とされています。都心部や駅近など立地によっては、数百万円規模になるケースも珍しくありません。
一方の内装費は、坪単価70万〜280万円ほどが一般的で、待合室や診察室、トイレといった空間全体の設計や施工にかかる費用です。清潔感や導線のよさは患者の印象に直結するため、設計や仕様に配慮するほどコストが増加する傾向があります。
コストを少しでもおさえたい場合は、複数業者から見積もりを取り比較する、もしくは設備が一部残っている「居抜き物件」を活用するのもひとつです。ただし、居抜き物件はレイアウトの自由度が制限されやすいため、診療スタイルに合っているかどうかを確認しておくことが重要です。
設備資金
内科クリニックの開業に際しては、診療設備や院内システムの整備に多額の費用がかかる場合があります。
代表的なものとしては、診察台や心電計、超音波診断装置、レントゲン装置などがあり、導入する機器の種類や性能によっては2,000万円を超えるケースも珍しくありません。加えて、診療に欠かせない椅子・机などの什器や、電子カルテやネットワークといったOA機器も必要になります。
ただ、すべてを新品でそろえる必要はありません。コストをおさえたい方は、中古機器の活用やリース契約も視野に入れるとよいでしょう。
運転資金
内科クリニックを開業する際は、開業後しばらくは収益が安定しない期間があることを見越して、あらかじめ十分な運転資金を用意しておくことも大切です。
とくに保険診療をおこなう場合、診療報酬が振りこまれるまでには通常2カ月ほどのタイムラグがあるため、その間に発生する支出をカバーできる体制を整備しておく必要があります。
支出の内訳としては、家賃やスタッフの給与などの「固定費」が大部分をしめるほか、薬剤費や検査費、消耗品などの「変動費」も見こんでおく必要があります。
また、テナント家賃の6カ月分程度を目安として運転資金を確保しておくことが望ましいです。資金繰りが厳しくなってからでは追加融資も受けにくくなるため、事業計画の段階で余裕をもった資金設計をしておくことがポイントです。
IT・システム導入費
内科クリニックを開業するうえで、電子カルテや予約システムなどのIT導入は欠かせない要素のひとつです。とくに、オンライン診療やスマートフォンからの予約受付に対応しておくと、業務の効率化だけでなく患者さんの利便性向上にもつながります。
導入費用の目安としては、電子カルテだけで200万〜500万円、予約管理システムやオンライン診療機能を含めると、トータルで300万〜800万円ほどになるケースもあります。クラウド型にするかオンプレミス型にするかでもコスト構成は変わってきます。
また、システム本体のほかにも、パソコンやルーターなどの機器費用、保守費、月額利用料といったランニングコストも想定しておきましょう。
専門領域ごとの追加コスト
内科といっても、じっさいは消化器・呼吸器・循環器・糖尿病など、診療内容によって開業時のコストに大きな違いがあります。
たとえば、消化器内科では内視鏡検査が不可欠です。内視鏡本体に加えて洗浄装置や前処置室の設置も必要になり、設備投資や内装費がかさむ傾向にあります。
一方で循環器内科の場合、心エコーやホルター心電計に加え、CTやMRIといった高額機器の導入を検討するケースもあり、総費用が1億円を超えることもあります。
こうした追加コストは、単に機器の値段だけでなく、集患や診療の差別化にも影響してきます。専門性の高い医療を提供するには、それに見合った設備が必要になるため、診療内容と初期投資のバランスを見極めることが重要です。
診療科目別の内科開業資金の目安
内科と一口にいっても、開業資金は診療科目によって大きく異なります。ここでは、診療科目別に内科開業に必要な資金の目安を解説します。
消化器内科
消化器内科を開業する場合、内視鏡検査に対応できる設備を整えることがほぼ必須です。
たとえば、内視鏡本体や洗浄装置に加えて、前処置室や回復室、導線を工夫した院内レイアウトなど、患者さんの負担を軽減する設備が求められます。これらは一般内科と比べて設備費・内装費ともに高額になりやすい傾向があります。
また、消化器内科では検査の前後で患者さんが休めるよう、広めのスペース(45~55坪程度)を確保するケースが多いです。トイレも複数必要になるため、内装の設計段階からコストをしっかり意識しておくことが大切です。
開業資金として8,000万円以上かかることもあるため、資金計画は慎重に立てましょう。さらに、上部内視鏡だけでは差別化が難しい場合もあるので、下部内視鏡や生活習慣病への対応も視野に入れると、地域に根ざした診療がしやすくなります。
呼吸器内科
呼吸器内科の開業では、内科と比べて設備投資がやや高くなる傾向があります。
肺機能検査や胸部レントゲンなどに対応するために、スパイロメーター(呼吸機能測定器)やパルスオキシメーター、酸素濃縮器といった専用機器の導入が基本となるためです。さらに、感染症対策を意識するなら、空調や換気設備を強化する必要も出てくるでしょう。
とくに、気管支喘息やCOPDの患者を多く診療する予定がある場合は、吸入指導をおこなう専用スペースや吸入器の整備も必要です。また、感染症リスクに備えて陰圧室を設ける場合、内装工事費が大きく上がる可能性があります。
物件選びの段階で十分な換気性能を確保できるかどうかも、初期コストに大きく影響します。
循環器内科
循環器内科の開業にも、しっかりとした資金計画が必要です。
とくに、心エコーやホルター心電図、X線装置、血圧脈波検査装置など、診療に必要な検査機器が多く、初期投資が大きくなりやすい傾向にあります。テナント型ではおよそ7,000万〜8,000万円、戸建て型の場合は1億円を超えるケースも珍しくありません。
また、心臓リハビリテーションをおこなう場合には、専用スペースやリハビリ用の機器が別途必要になるため、内装費も高くなりがちです。
開業直後は患者数が安定しないケースも少なくないため、あらかじめ2,000万円前後の運転資金を確保しておくことが望まれます。
内分泌・糖尿病内科
糖尿病や甲状腺疾患などを中心に診療する内分泌・糖尿病内科では、一般内科と同じく6,000万〜8,000万円前後が開業資金の目安です。ただし、レントゲンを導入しない場合は800万〜1,000万円ほどおさえられるケースもあります。
診察・採血・栄養指導などで患者の滞在時間が比較的長くなる診療科のため、やや広めのテナントを選んでおくと安心です。
また、勤務先病院から患者さんを引き継げる体制があれば、自己資金ゼロでのスタートも可能です。
管理栄養士の採用や、スマホ対応のホームページ設置、地域医療機関との連携などが開業成功のカギとなるでしょう。
脳神経内科
脳神経内科を開業する場合、設備や物件の選定しだいで初期投資額は大きく変動します。目安としては6,000万〜2億5,000万円とかなり幅がありますが、これは導入する医療機器や施設基準の取得状況によって左右されます。
たとえば、脳血管疾患リハビリテーションⅢの施設基準を満たすには、45㎡以上のリハビリ室を含む50〜60坪程度の広さが求められ、バリアフリー仕様の1階物件が望ましいとされています。
CTやMRIの導入は高額になるため、地域の画像センターと連携し、必要に応じて検査を外部委託するケースも多く見られます。電子カルテやリハビリ器具など、最低限の設備に絞ることで、開業時のコストをおさえることも可能です。
また、PT(理学療法士)・OT(作業療法士)・ST(言語聴覚士)のいずれかを常勤で確保する必要があるため、人件費の見積もりも忘れずにおこないましょう。
人工透析内科
人工透析内科を開業するには、最低でも8,000万〜1億円程度の資金が必要とされ、場合によっては2億円を超えることもあります。透析ベッドや専用の透析装置、超純水装置、勾配配管といった高額な設備が必須となり、それに対応するための広いテナントと専門的な内装工事も必要だからです。
たとえば、透析ベッドを20台設置するだけでも40坪ほどのスペースが必要で、40台まで増やす場合は60坪以上の広さが求められます。こうした理由から、内科と比べて開業コストが高くなりやすい傾向にあります。
さらに、透析患者は週3回の通院が必要となるため、駅から近くて通いやすい場所にクリニックを構えることが重要です。開業を成功させるためには、まず地域の透析患者数や既存クリニックの分布状況を把握しておくことが第一歩といえるでしょう。
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内科を開業する際の予算をおさえるためのポイント
内科クリニックの開業は、多額の初期費用がかかる一大プロジェクトですが、事前の工夫しだいでコストをおさえることも可能です。ここでは、内科開業時の予算をおさえるための具体的な工夫やポイントについて解説します。
立地と物件の選定で固定費を抑制する
内科クリニックを開業するうえで、物件の選び方はとても重要です。
まず意識したいのが「家賃相場」です。比較的コストの低いエリアを選べば、月々の固定費を大きくおさえることができます。ただし、「家賃が安い=ベスト」とは限りません。駅から遠かったり、生活動線から外れていたりすると、患者さんが通いにくくなることもあります。アクセスのよさや建物の視認性も含めて、バランスのとれた立地を見極めましょう。
また、見落としがちなのが物件の「設備条件」です。電気容量や床の耐荷重、水回りの仕様によっては、医療機関として使うには追加工事が必要になるケースもあります。せっかく物件取得費用をおさえても、想定外の出費が発生してしまっては意味がありません。
一方で、内装工事のコストを減らしたい場合には「居抜き物件」の活用もおすすめです。すでに医療用の内装が整っている物件なら、初期投資を大きくおさえることができます。ただし、レイアウトに制限があったり、診療スタイルに合わなかったりするケースもあるので、慎重に検討しましょう。
このように、物件選びは単なるコスト比較ではなく、将来の集患や運営のしやすさにも関わってくるポイントです。
医療機器は中古・リースを検討する
内科クリニックを開業する際、「医療機器にどれくらい費用がかかるのか」は、多くの方が気になるポイントです。新品で一式をそろえると、想像以上に初期投資が膨らんでしまうケースも少なくありません。
そのような場合には、中古機器やリース契約の活用を検討することが効果的です。たとえば、診察台や超音波診断装置などは耐久性が高く、中古品でも実用性に問題ないことが多いため、コストをおさえられます。状態がよければ、新品価格の半額ほどで導入できるでしょう。
さらに、CTやMRIなどの高額な機器については、リースを活用するのが現実的な選択肢です。リースであれば購入資金を一括で用意する必要がなく、月々の支払いで対応できるため、資金繰りも安定しやすくなります。これらの機器は診療報酬による回収も見こめるため、長期的に見れば採算がとりやすいのも魅力です。
なお、リースには「ファイナンスリース」と「オペレーティングリース」の2種類があり、それぞれ契約内容や会計処理の方法が異なります。クリニックの経営方針に沿って、無理のない導入計画を検討することが重要です。
内装・設備工事は必要最小限にとどめる
内科クリニックを開業するうえで、内装や設備工事はどうしても大きなコストがかかってしまう部分です。
理想を重視しすぎるあまり、結果として予算を超過してしまうリスクも考えられます。そこでおすすめなのが、「必要最低限の機能に絞って設計する」という考え方です。たとえば、診療や検査に必要なスペースだけを優先し、内装デザインや家具の豪華さは後回しにするのもひとつの方法です。
また、設計と施工をまとめて請け負ってくれる業者を選べば、コスト管理がしやすくなり、余計な出費を防ぎやすくなります。さらに、初期段階ではあえて使用頻度の低い設備やスペースは整備せず、あとから追加していく「ミニマム開業」のスタイルも効果的です。
内科開業後の年収目安
内科を開業したあとの年収は、経営スタイルや診療体制によって大きく差が出るのが実情です。
平均年収はおおよそ2,000万〜2,800万円とされているものの、中央値は1,600万〜1,800万円ほどとなります。じっさいには、年収1,000万〜2,000万円の層が全体の約4割以上を占めており、想像以上に幅があります。
収入の多寡を分けるのは、1日あたりの診療数や診療単価に加え、経費率の違いです。人件費や家賃、設備維持費などを差し引いた経費率は、だいたい40〜60%が一般的です。つまり、売上が高くても支出が多ければ手元に残る額は少なくなります。
また、開業場所によっても事情は異なります。都市部は競合クリニックが多く集患が難しい反面、自由診療のニーズは高めです。一方で地方では、人件費やテナント料をおさえながら安定した診療ができるため、収支バランスがとりやすい傾向があります。
なかには、訪問診療や美容系など自由診療を取り入れて、年収1億円を超えるドクターもいますが、全体の1〜2%とごくわずかといえるでしょう。
内科開業に必要な準備ステップ
内科クリニックの開業には、診療方針の明確化や物件選び、資金計画、人材の採用といった多くの準備が必要です。ここでは、内科開業までに必要な主な準備ステップについて解説します。
診療コンセプトを明確にする
内科クリニックを開業するうえで、最初に考えたいのが「どのような診療をするか」という診療コンセプトです。たとえば、幅広い症状に対応する一般内科にするのか、それとも糖尿病や呼吸器といった専門領域に特化するのかなどが挙げられます。診療方針を明確にすることで、診療内容や必要な設備、対象とする患者層を具体的に把握できるようになります。
内科は対応できる症状が多いため、「何を診るか」「何を診ないか」を明確にしておくことが、他院との差別化にもつながります。また、「誰に向けたクリニックか(Who)」「どのような診療を提供するか(What)」「どのように治療を進めるか(How)」といった視点を意識すると、開業後の方向性もブレにくくなります。
開業地と物件を選定する
内科クリニックの開業を成功させるには、「どこに」「どのような物件で」開業するかも重要な要素になります。
まずは開業候補地の「診療圏調査」をおこないましょう。地域の人口構成や想定される患者数、競合クリニックがどれくらいあるかといった情報を把握することで、開業後の収益性をある程度見通すことができます。
ただし、数字だけで判断するのは危険です。駅やスーパーの帰り道にある物件など、日常の動線上に位置する場所は目につきやすく、認知を得やすい傾向があります。視認性の高さや周辺環境との調和も含めてチェックしておきたいポイントです。
一方で、路地裏や建物の奥まった場所など、通行人から見えづらい物件は、看板や広告での補完が必要になる場合もあります。また、医療機器に対応できる電気容量・床の強度・給排水の整備状況など、医療施設としての基準を満たしているかも忘れずに確認しましょう。
事業計画と資金調達をおこなう
内科クリニックを安定して運営していくには、開業前にしっかりとした事業計画を立てておくことも大切です。
まずは、開業後にどれくらいの収益が見こ込めるのか、人件費・設備費・家賃・広告費といった支出はどの程度かを整理しましょう。この段階で作成する損益計算書やキャッシュフロー表は、金融機関に融資を申しこむ際の重要な資料になります。数字の根拠がはっきりしていると、実現可能性のある計画として評価されやすくなります。
資金調達の方法としては、日本政策金融公庫や医師向けの信用組合、民間の銀行など、いくつかの選択肢があります。それぞれ融資条件や金利が異なるため、複数を比較しながら自院に合った金融機関を選ぶのがおすすめです。
また、クリニックの理念や診療方針をまとめた「趣意書」を添えることで、開業に対する想いやビジョンが伝わりやすくなり、融資審査でも好印象につながることがあります。
内装工事と医療機器を手配する
クリニックを開業するうえで、内装工事と医療機器の手配も欠かせない準備項目です。物件が決まったら、できるだけ早めに準備を進めていきましょう。
まずは内装業者と打ち合わせをおこない、動線設計や設備の配置など、施設基準を満たすレイアウトを詰めていくことが大切です。とくにX線装置など一部の医療機器は、設置後に漏えい検査が必要となるため、内装が完成するタイミングにあわせて導入計画を立てておくと安心です。
また、医療機器の導入には、機種の選定だけでなく、納品スケジュールやスタッフ向けの操作説明・研修の段取りも必要になります。新品だけでなく、中古機器やリースを活用する方法もあるため、コストやメンテナンス性などを比較しながら、自院に合った方法を選びましょう。
人材の採用と教育を進める
内科クリニックをスムーズに運営するには、スタッフの採用と教育も大切です。
開業前には、受付や看護師が何人必要かをしっかり決めておきましょう。そのうえで、業務内容や求めるスキルを具体的に書いた求人を出すと、クリニックの方針に合った人材が集まりやすくなります。
とくに大切なのが、「クリニックの理念や診療方針に共感してくれるかどうか」です。共通の想いを持つスタッフが集まれば、長く安定した運営につながりやすくなります。採用後は、すぐに活躍できるようにサポートしていくことが大切です。たとえば、業務マニュアルをつくったり、接遇研修をおこなったりして、安心して働ける環境を整えましょう。
また、電子カルテや予約システムの操作方法を習得するためのIT研修も実施しておく必要があります。スタッフ間の連携を深めるには、定期的な面談やミーティングも効果的です。
広告・マーケティング施策を準備する
内科クリニックの開業に向けて、「どうやって患者さんに知ってもらうか?」はとても重要なテーマです。とくに開業初期においては、地域住民にクリニックの存在を認知してもらうことが重要となります。
そこでまず取り組みたいのが、チラシの配布や看板の設置といったアナログな手段です。地域の住宅街や駅前で見かけることで、「ここに新しいクリニックができるんだ」と気づいてもらいやすくなります。
加えて、ホームページの開設も早めに進めておきましょう。診療方針や医師紹介、アクセス方法などがわかりやすく載っていれば、患者さんの安心感にもつながります。
そのほか、Googleマップへの登録やSNS(InstagramやXなど)を活用によって、幅広い年代にアプローチすることも可能です。広告や宣伝の方針を考えるときは、「誰に」「何を」「どのような手段で」伝えるのかを整理しておくのがポイントです。
行政手続き・施設基準の確認をおこなう
内科クリニックを開業する際には、いくつかの行政手続きや施設基準の確認が必要になります。
まず大切なのが、保健所への「診療所開設届」と、厚生局への「保険医療機関指定申請」のふたつです。これらの手続きをクリアしないと、予定どおりに診療をはじめられない可能性もあります。とくに「診療所開設届」は開業後10日以内の提出が義務づけられているため、事前に図面や面積、設備が基準に適合しているかをしっかりチェックしておきましょう。
また、X線装置を設置する予定がある場合や、オンライン診療をおこないたい場合は、追加で専用の届出が必要になるケースもあります。こうした申請内容は、クリニックのレイアウトや内装とも深く関係してくるため、工事前のタイミングで保健所に相談しておくのが理想的です。
手続きが遅れてしまうと、保険診療のスタートが1カ か月以上ずれこ込むこともあります。
内科開業を成功させるためのポイント
内科クリニックの開業を軌道に乗せるには、資金計画や物件選定だけでなく、地域ニーズへの対応や診療の差別化といった戦略的な視点が求められます。ここでは、内科開業を成功へと導くための具体的なポイントについて解説します。
ターゲット層と地域ニーズを把握する
内科クリニックの開業を成功させるには、まず開業地の地域特性をしっかり把握することが大切です。たとえば、高齢者が多いエリアでは生活習慣病の長期的な管理や在宅医療のニーズが高まる傾向があります。一方で、子育て世帯が多い地域では、感染症への対応や予防医療、早期発見の体制が求められるケースが多く見られます。
さらに、単身世帯が多い都市部では、オンライン診療や予約システムの導入が患者さんの利便性向上につながることもあります。こうした地域の暮らしやすさ・世帯構成に応じて、どのような診療スタイルが求められているのかを考えていくことが大切です。
また、周囲にあるほかのクリニックの診療科目や診療時間もあわせてチェックしておくと、自院が担うべき役割や差別化の方向性が見えてきます。
専門領域で差別化を図る
内科クリニックを開業するうえで、「地域に選ばれるクリニック」を目指すなら、専門性を活かした診療方針の打ち出しがカギになります。
たとえば、循環器内科や消化器内科、呼吸器内科といった専門医の資格を持っていれば、それを活かして「一般内科+専門診療」というスタイルにすることで、患者さんの信頼を得やすくなります。風邪や生活習慣病の相談だけでなく、「○○にも強いクリニックである」と思ってもらえると、集患にもつながりやすくなります。
さらに、専門診療に必要な検査機器を導入しておけば、診療単価アップにもつながり、経営面でも安定しやすくなります。クリニック名やホームページに「○○専門」と明記するだけでも強みが伝わりやすく、効果的です。
また、高齢の患者さんが多い地域では、複数の疾患に対応できる体制を整えることで“かかりつけ医”としての信頼も得られやすくなります。まずは、自分の専門分野と地域のニーズを照らし合わせて、どのような診療方針が求められているかを考えてみましょう。
在宅医療や休日診療などニーズへの対応策を検討する
少子高齢化やライフスタイルの多様化が進展するなか、自宅での診療を希望する患者や、平日の通院が困難な層のニーズが高まりつつあります。そうした地域のニーズにしっかり応えていくことが、内科クリニックとしての信頼や経営の安定につながります。
たとえば在宅医療を取り入れる場合は、ケアマネージャーや介護施設などとの連携がポイントになります。「訪問診療が必要な患者さんがいたら紹介してもらえる」という関係性を築いておくと、スムーズに運営しやすくなるでしょう。訪問診療は診療報酬の加算対象にもなるため、収益面でもプラスに働きやすいのが特徴です。
また、休日診療をおこなうことで、平日に通院しづらい患者さんの受け皿になれます。「土日に診てもらえるから助かる」といった声が集まりやすく、定期的な来院にもつながるでしょう。
地域医療機関との連携体制を構築する
内科クリニックの経営を安定させるには、地域とのつながりづくりがとても大切です。とくに、CTやMRIといった高額な検査機器を自院で持たない場合は、近隣の病院やクリニックと提携することで、より多くの検査に対応できるようになります。
また、診療所や調剤薬局といった地域の医療機関と連携することで、お互いに患者さんを紹介し合える関係ができ、集患にもつながります。こうした連携をスムーズに進めるには、紹介の流れやルールをあらかじめ決めておいたり、定期的に情報交換をしたりすることがポイントです。
内科開業を成功させるために、今できることからはじめよう
内科開業には多額の資金や綿密な準備が必要ですが、事前にしっかりとした情報収集と計画をおこなうことで、リスクを最小限におさえることが可能です。とくに、地域に根ざしたかかりつけ医として信頼を築くためには、診療方針の明確化と継続的な見直しが不可欠です。まずは自分自身の専門性や理想の診療スタイルを振り返りながら、今できることから一歩ずつ準備をはじめていきましょう。
内科開業の複雑な手続きや資金調達は専門家に相談して解決しませんか?
内科開業には、開業資金の調達、立地選定、医療機器の選定、各種許可申請、患者獲得戦略など、医療業界特有の専門知識が必要な課題が数多くあります。一人ですべてを解決しようとすると、重要なポイントを見落としてしまい、開業後の経営に大きな影響を与える可能性があります。
ドリームゲートでは、医療機関開業に精通した専門家が、あなたの状況に合わせた具体的なアドバイスを無料で提供いたします。開業準備をスムーズに進めるために、ぜひお気軽にご相談ください。
執筆者プロフィール:ドリームゲート事務局
ドリームゲートは経済産業省の後援を受けて2003年4月に発足した日本最大級の起業支援プラットフォームです。
運営:株式会社プロジェクトニッポン
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