整形外科を開業するには?必要な資格や資金、開業の流れを徹底解説

この記事は2025/11/05に専門家 須田 幸宏 (すだ ゆきひろ) によって監修されました。

執筆者: ドリームゲート事務局

整形外科医として独立開業を考える際、準備すべきことは多岐にわたります。医師免許だけでなく、診療所開設届や施設基準など様々な手続きが必要です。さらに医療機器の購入費用や内装工事費などの初期投資も必要になります。

これらの準備を計画的に進めないと、開業が遅れたり予算をオーバーしたりするリスクがあります。

この記事では、整形外科クリニック開業に必要な資格や許可、資金調達の方法、開業までの具体的な流れについて分かりやすく解説します。開業を検討している整形外科医の方は、ぜひ参考にしてください。


監修者プロフィール:須田 幸宏(すだ ゆきひろ)
東北の起業家のみなさまをサポートします! 三楽る(みらくる)オフィス

東北を拠点に資金調達の支援で活躍する須田アドバイザー。元日本政策金融公庫融資課長で、日本公庫に33年勤務し、融資を通して、延べ2万以上の事業者、5,000以上の起業家をサポートされてきました。非常に親切・温厚なお人柄で、事業だけでなくライフプランニング(生活・家計の設計・見直し)もサポートされていますので経営者の強い味方となるでしょう。

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ドリームゲートアドバイザー 須田 幸宏

整形外科開業を成功に導く事業計画書が必要です!

整形外科開業は高額な医療機器導入や立地選定など、多額の初期投資を伴うため、綿密な事業計画なしには成功は困難です。融資を受ける際にも、金融機関から詳細な事業計画書の提出を求められます。患者数予測、競合クリニック分析、設備投資計画、収支シミュレーションなど、整理すべき項目は多岐にわたります。

そこで、事業計画書作成に役立つテンプレートを無料でご提供いたします。基本的な事業計画の構成要素が盛り込まれているため、整形外科開業の特性に合わせてカスタマイズすることで、金融機関への提出にも対応できる事業計画書を作成できます。


整形外科 開業 アイキャッチ

- 目次 -

整形外科開業までの流れ

整形外科クリニックの開業には、通常1年から2年程度の準備期間が必要です。

多くの手続きや準備を並行して進めていくため、計画的なスケジュール管理が成功の鍵となります。

診療方針やコンセプトを固める

開業を成功させるために最も重要なのが、明確な診療方針とコンセプトの確立です。どのような患者に対して、どのような医療を提供したいのかを具体的に決めることから始めましょう。

例えば、高齢者の運動器疾患に特化するのか、スポーツ整形に力を入れるのか、リハビリテーションを充実させるのかなど、自分の強みや経験を活かせる分野を明確にします。

このコンセプトが決まることで、その後の立地選定や設備投資、スタッフ採用などの方向性が定まり、一貫性のある経営戦略を立てることができます。

事業計画書を作成する

診療方針が固まったら、具体的な事業計画書の作成に取りかかります。事業計画書は融資を受ける際に必要不可欠な書類であり、開業後の経営の指針にもなる重要な文書です。開業時の初期投資額、月々の運営費用、予想される患者数や診療単価から算出する収入見込み、損益分岐点などを詳細に計算します。整形外科の開業や運営に必要な費用は、診療内容によっては高額になるため、特に慎重な資金計画が求められます。

また、診療報酬の入金は診療月の約2ヶ月後になるため、開業から軌道に乗るまでの運転資金も十分に見積もっておく必要があります。

専門家に相談しながら、現実的で説得力のある事業計画書を作成しましょう。

開業形態を決める(戸建て・テナント・医療モール)

開業形態は大きく分けて戸建て・テナント・医療モールの3つの選択肢があります。

以下はそれぞれのメリットデメリットです。

戸建てでの開業

メリット
自由な設計が可能で、クリニックのコンセプトに合わせた空間をデザインできます。

デメリット
土地の購入や建築、インフラ(電気・給排水など)の整備に費用と時間がかかります。

テナントでの開業

メリット
比較的早期に開業でき、家賃や共益費などのランニングコストがかかります。

デメリット
既存の建物のため、間取りの制約を受けることがあります。電気・給排水などのインフラがクリニックの要件に適しているか確認が必要です。

医療モールでの開業

メリット
クリニック開業を前提に設計されているため、電気・給排水などのインフラ設備が整っています。また、診療科が異なる複数のクリニックが集まっているため、患者が一度に多くの医療サービスを受けやすく、集患に有利です。

デメリット
医療モールの規定に応じたテナント費用が発生します。また、医療モールの運営方針に従う必要があり、クリニックの設計や内装に制約を受ける場合があります。

立地と物件を選定する

立地選定は開業成功の重要な要素の一つです。ターゲットとする患者層の人口分布、年齢構成、競合クリニックの状況、交通アクセス、駐車場の確保の可否などを総合的に検討します。

整形外科の場合、高齢者や運動器疾患を抱える患者が多いため、バリアフリーでアクセスしやすい立地が望ましいでしょう。実際に現地を訪れて、朝昼夕の時間帯別の人通りや交通状況を確認することも大切です。

また、物件を決定する前に、必ず保健所に事前相談を行ってください。クリニックとして使用できない構造や名称の制限などがあり、契約後に問題が発覚すると大きな損失につながる可能性があります。

資金調達を行う

整形外科の開業には数千万円から1億円を超える資金が必要になることが多く、十分な資金調達が不可欠です。

自己資金だけでは足りないことがほとんどであるため、多くの場合、金融機関からの融資を検討します。

日本政策金融公庫や福祉医療機構などの公的融資は金利が比較的低く、医療機関向けの制度も整っています。

民間金融機関でも医師向けの開業ローンが用意されており、条件を比較検討しましょう。融資の審査には時間がかかるため、開業予定日の6か月前までには申請を完了させることが重要です。

また、予想以上の出費や開業後の運転資金も考慮し、余裕を持った金額で融資を申請することをお勧めします。事業計画書の完成度が審査に大きく影響するため、専門家のサポートを受けながら準備を進めましょう。

内装工事業者を選定し施工する

内装工事は単なる改装ではなく、医療法や建築基準法などの法的要件を満たす必要があります。

整形外科クリニックでは、X線室の放射線防護工事、リハビリテーション室の十分なスペース確保、バリアフリー設計などが特に重要になります。

そのため、クリニックの施工経験が豊富な業者を選ぶことが大切です。開業予定日の4か月前までには業者を決定し、工事スケジュールを確定させましょう。

設計段階では患者の動線を考慮し、車椅子での移動や高齢者の安全性に配慮した設計にします。

また、将来的な設備拡充も見据えた設計にしておくとよいでしょう。コストを抑えたい場合は、整形外科の居抜き物件を活用するという選択肢もあります。

医療機器を選定・導入する

整形外科クリニックに必要な医療機器は多岐にわたり、高額な投資が必要になります。

必須機器としては、X線撮影装置、電子カルテシステム、超音波診断装置、骨密度測定装置などがあります。

リハビリテーションに力を入れる場合は、物理療法機器や運動療法機器も必要です。機器選定では、初期費用だけでなく、維持費用や操作性も考慮しましょう。

スタッフが使いやすい機器を選ぶことで、業務効率が向上し、患者の待ち時間短縮にもつながります。

高額な機器についてはリース契約を活用することで初期投資を抑えることもできます。

また、開業当初は必要最小限の機器でスタートし、経営が安定してから追加導入するという方法も有効です。導入スケジュールは開業日の1ヶ月前には完了させ、動作確認や操作研修の時間を確保しておきましょう。

スタッフを採用・研修する

整形外科クリニックの運営には、看護師、理学療法士、医療事務、受付スタッフなど多様な職種のスタッフが必要です。

開業日の半年前には採用活動を開始し、十分な準備期間を確保しましょう。特に理学療法士などの専門職は人材不足の傾向にあるため、早めの採用活動が重要です。クリニックのコンセプトや働きやすさをアピールし、長期的に働いてもらえる人材を確保することを目指しましょう。

採用後は、電子カルテの操作方法、院内ルール、接遇マナーなどの研修を実施します。開業時に経験豊富なスタッフがいると心強いため、他のクリニックでの勤務経験がある人材を優先的に採用することも一つの戦略です。

チーム医療を実現するため、スタッフ間のコミュニケーションを重視した職場環境作りも大切にしましょう。

税理士や専門家を選ぶ

クリニック経営には専門的な会計処理や税務申告が必要になるため、医療機関の実務に精通した税理士との契約は不可欠です。

医療機関特有の会計処理、診療報酬の管理、将来的な医療法人化への対応など、一般的な税理士では対応が困難な業務が多数あります。

税理士選びでは、医療機関との契約実績、提供サービスの内容、月額顧問料などを比較検討しましょう。一般的に月額5万円から8万円程度が相場とされています。税理士の紹介は、他の開業医からの紹介や税理士紹介サービスを活用すると良いでしょう。

また、労務関係の手続きが必要な場合は、社会保険労務士との契約も検討します。開業準備段階から専門家のサポートを受けることで、法的な問題を避け、スムーズな開業と経営が可能になります。

ホームページや広告を準備する

開業の認知度向上と患者の集客のために、効果的な広告戦略を立てることが重要です。

まず、クリニックのホームページを作成し、診療内容、医師の紹介、アクセス情報、診療時間などを分かりやすく掲載します。患者の利便性を考慮し、Web予約機能を設けることをお勧めします。

ホームページは検索エンジンで上位表示されるよう、SEO対策も施しておきましょう。

その他の広告手段として、地域情報誌への掲載、開業案内のチラシ配布、内覧会の開催なども効果的です。また、SNSアカウントの開設も検討し、開業前から情報発信を始めて認知度を高めていくと良いでしょう。

ただし、医療機関の広告には医療広告ガイドラインによる規制があるため、表現内容には十分注意が必要です。

行政機関の手続きを済ませる

クリニック開業には複数の行政機関への届出や申請が必要で、これらの手続きを確実に完了させなければ診療を開始できません。

まず、保健所に診療所開設届を提出し、開設許可を取得します。この際、建物の構造や設備が基準を満たしているかの検査があります。

開設許可取得後、地方厚生局に保険医療機関指定申請を行い、保険診療を実施するための指定を受けます。この手続きには約1か月かかるため、スケジュールに余裕を持って申請しましょう。X線装置を設置する場合は、X線装置備付届の提出も必要です。

その他、消防署への防火管理者選任届、税務署への開業届、労働基準監督署や年金事務所への労働保険関係の届出など、多数の手続きがあります。

これらの手続きは専門性が高く複雑なため、行政書士などの専門家に依頼することも検討しましょう。

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整形外科の開業に必要な資金の目安

整形外科クリニックの開業には、他の診療科と比較して高額な資金が必要になります。医療機器やリハビリ設備への投資、専門スタッフの人件費など、様々な費用を総合的に計画することが重要です。

整形外科開業資金の総額は5,000万~2億5,000万円程度

整形外科クリニックの開業に必要な資金は、開業形態や規模によって大きく異なりますが、一般的に5,000万円から1億円程度が目安となります。

テナント開業の場合は比較的費用を抑えることができ、6,000万円から8,000万円程度で開業が可能です。

一方、戸建て開業の場合は土地取得費や建設費が加わるため、1億円を超えるケースが多く、立地や設備によっては2億円以上になることもあります。

この高額な開業資金の主な要因は、整形外科特有の高価な医療機器やリハビリテーション設備、そして広いスペースが必要になることです。

また、MRIなどの高度な画像診断装置を導入する場合は、さらに6,000万円から1億円の追加投資が必要になります。

開業準備期間中は収入がないことも考慮し、余裕を持った資金計画を立てることが成功の鍵となります。

土地・建物、内装、機器といった初期費用の内訳

整形外科開業の初期費用は多岐にわたり、それぞれが高額になる傾向があります。

土地・建物費用は立地によって大きく変動しますが、テナントの場合は敷金・保証金として月額賃料の6か月から12か月分、礼金として1か月から3か月分が必要です。

内装工事費は坪単価30万円から50万円程度が相場で、整形外科では放射線防護工事やバリアフリー対応が必要なため、一般的な内装より高額になります。

医療機器では、X線撮影装置に450万円から500万円、電子カルテシステムに300万円程度、骨密度測定装置に400万円程度が必要です。

特に費用がかさむのがリハビリテーション設備で、温熱療法機器、牽引装置、運動療法機器などを一通り揃えると1,000万円以上の投資が必要になります。

その他、滅菌器、超音波診断装置、ギプス関連器具なども含めると、医療機器だけで2,000万円から3,000万円の予算を見込んでおく必要があります。

人件費、家賃、薬剤費といった運営資金の内訳

整形外科クリニックの運営には、開業後も継続的に発生する運営資金が必要で、年間4,000万円程度の費用を見込む必要があります。

人件費が最も大きな割合を占め、看護師1名の常勤雇用で年間約400万円、理学療法士も同程度の人件費がかかります。整形外科では医師、看護師、理学療法士、作業療法士、放射線技師、医療事務など多職種のスタッフが必要なため、スタッフ5名程度で年間2,000万円以上の人件費を想定しておきましょう。

家賃は立地によって大きく異なりますが、都市部では月額50万円から100万円程度が相場です。

薬剤費は月額150万円から200万円程度が目安で、湿布薬や痛み止めなどの外用薬、注射薬の使用頻度が高いのが特徴です。

その他、光熱費、通信費、医療材料費、保険料なども含めると、月額300万円から400万円程度の運営資金が継続的に必要になります。

診療報酬の入金は診療月から約2か月後になるため、開業から軌道に乗るまでの運転資金として、最低でも6ヶ月分の運営資金を確保しておくことが重要です。

自己資金は1,000万~2,000万円、残りは融資で調達するケースが多い

整形外科開業では、すべての資金を自己資金で賄うことは現実的ではないため、多くの場合は融資を活用した資金調達を行います。

一般的に、開業資金の10%から20%程度にあたる1,000万円から2,000万円の自己資金を準備し、残りの80%から90%を金融機関からの融資で調達するケースが多く見られます。

自己資金が多いほど融資審査に有利に働くため、可能な限り自己資金を増やしておくことをお勧めします。

融資先としては、日本政策金融公庫が最も利用しやすく、比較的低金利で保証人や担保が不要な場合が多いのが特徴です。

医師信用組合は医師会員向けの優遇条件があり、民間金融機関では医師向けの開業ローンが充実しています。

福祉医療機構は医療機関専門の融資機関として、長期・低利での借入が可能です。

複数の金融機関から借り入れることでリスク分散を図ることも重要で、将来の設備投資や事業拡大に備えて良好な取引関係を構築しておくことが経営安定化につながります。

なお、融資審査では詳細な事業計画書の提出が求められるため、専門家のサポートを受けながら現実的で説得力のある計画を作成することが成功の鍵となります。

整形外科を開業するメリット

整形外科の開業には多くの魅力的なメリットがあります。経済的な面では勤務医時代を大きく上回る収入が期待でき、仕事面では理想の診療を実現できる自由度があります。さらに地域医療への貢献や安定した需要も大きな魅力です。

勤務医よりも年収が高い

整形外科開業医の平均年収は約2,900万円で、勤務医の約1,300万円と比較すると約1,600万円も高い収入を得ることができます。これは他の診療科の開業医と比較しても小児科に次いで2番目に高い水準となっています。

勤務医時代の約2倍以上の年収を実現できる可能性があり、経済的なメリットは非常に大きいと言えるでしょう。

ただし、開業医の収入は事業所得であるため、経営状況によって変動することも理解しておく必要があります。

また、開業医は国民健康保険および国民年金に加入することになるため、勤務医時代に加入していた健康保険組合や厚生年金と比べると、保険料負担や将来の年金額などの条件が変わります。

ただし、開業によって収入が大幅に増えるケースでは、これらの負担増を相殺できるだけの所得水準が期待できます。

自分の理想の診療スタイルを実現できる

開業医になることで、勤務医時代には難しかった理想の診療スタイルを自分の裁量で実現できるようになります。病院勤務では組織の方針や制約に従う必要がありましたが、開業することで診療方針、治療方法、患者との向き合い方など、すべてを自分の理念に基づいて決定できます。

例えば、リハビリテーションに特化したクリニックにするか、スポーツ整形に力を入れるか、高齢者向けの丁寧な診療を重視するかなど、自身の専門性や価値観に合わせた診療を提供できます。

また、診療時間の設定、休診日の決定、スタッフの採用方針なども自分で決められるため、患者一人ひとりに十分な時間をかけた診療が可能になります。

さらに、最新の医療機器や治療法の導入も自分の判断で行えるため、常に医療の質向上を目指すことができるでしょう。

地域医療に貢献し患者と長期的な信頼関係を築ける

整形外科開業医として地域に根ざした医療を提供することで、地域住民の健康維持・増進に直接貢献できる大きなやりがいがあります。

整形外科は慢性的な痛みや運動器疾患を抱える患者が多く、長期間にわたって継続的な治療やリハビリテーションが必要になるケースが多いのが特徴です。

そのため、患者との信頼関係を深く築きながら、症状の改善を一緒に目指していくことができます。地域のかかりつけ医として、患者の生活背景や家族構成も含めて理解し、一人ひとりに最適な治療プランを提供できることは開業医ならではの醍醐味です。

また、地域の他の医療機関や介護施設との連携を図ることで、患者にとってより良い医療環境を構築することも可能です。

長年にわたって患者の健康を支え続け、感謝の言葉をいただいたときの喜びは何物にも代えがたい価値があります。

高齢化を背景に安定した需要がある

日本の高齢化社会の進展により、整形外科への需要は今後も継続的に拡大していくことが予想されます。高齢者の運動器疾患、骨粗鬆症、変形性関節症などの患者数は年々増加しており、安定した患者層を確保できる環境が整っています。

さらに、予防医学への関心の高まりにより、骨密度検査や運動器検診などの予防的医療サービスへの需要も増えています。

こうした社会的背景により、整形外科クリニックは将来にわたって安定した患者数を見込むことができ、長期的な事業継続性が高い分野として注目されています。

診療時間を調整しワークライフバランスを取りやすい

開業医になることで、勤務医時代には難しかったワークライフバランスの実現が可能になります。

病院勤務では当直やオンコール対応、夜勤などがあり、不規則な勤務スケジュールを強いられることが多かったのに対し、開業医では診療時間を自分で設定できるため、規則正しい生活リズムを維持できます。

また、休診日の設定も自分の裁量で決められるため、長期休暇を取りやすくなり、プライベートの予定を立てやすくなります。

ただし、開業医は経営者としての責任も伴うため、診療以外の経営業務に時間を割く必要があることも理解しておく必要があります。

しかし、全体的には勤務医時代と比較して時間の自由度が高くなり、充実したプライベートライフを送りながら医療に従事することが可能になるでしょう。

自由診療や介護事業など収益拡大のチャンスがある

整形外科開業では、保険診療だけでなく自由診療や介護保険事業への展開により、収益を大幅に拡大できる機会があります。

自由診療では、プラセンタ注射、PRP治療、神経ブロック注射などを自院で価格設定できるため、保険診療よりも高い収益性を期待できます。

また、通所リハビリテーション事業を併設することで、介護保険を利用した継続的な収入源を確保できます。理学療法士1人につき最大10人の利用者を同時にサービス提供できるため、効率的な事業展開が可能です。医療保険でのリハビリは150日の制限がありますが、介護保険では期間制限がないため、長期間にわたって安定した収益を得られます

さらに、骨密度検査やスポーツ医学分野への特化、最新のリハビリ機器導入による差別化など、様々な方向性で事業を拡大していくことができ、医師としてのキャリアアップと収益向上を同時に実現できる可能性があります。

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整形外科を開業するデメリット

整形外科の開業には多くのメリットがある一方で、勤務医時代にはなかったリスクや課題も存在します。高額な初期投資、経営責任、スタッフ確保の困難さなど、慎重に検討すべきデメリットを理解しておくことが重要です。

初期投資が高額で経営リスクが大きい

整形外科クリニックの開業には、他の診療科と比較して特に高額な初期投資が必要になり、大きな経営リスクを伴います。

本記事でも前述した通り、テナント開業でも6,000万円から8,000万円、戸建て開業では1億円を超える資金が必要で、X線撮影装置やリハビリ機器などの医療機器だけでも数千万円の投資が求められます。

さらに、整形外科に必要な広いリハビリスペースの確保により、物件費用や内装工事費も高額になる傾向があります。

これらの高額な初期投資は主に融資に依存することになるため、開業後の返済負担が経営を圧迫するリスクがあります。

また、高額な医療機器は定期的なメンテナンスや更新が必要で、継続的な設備投資も経営の負担となります。

経営が軌道に乗るまでの期間が長引けば、資金繰りが悪化し、最悪の場合は廃業に追い込まれるリスクも存在するため、十分な準備と慎重な事業計画が不可欠です。

診療以外に経営全般の責任を負う必要がある

開業医になることで、これまでの診療業務に加えて経営者としての幅広い責任を負うことになり、大きな負担となります。

スタッフの採用や労務管理、給与計算、税務処理、資金繰り、設備管理など、医療以外の業務が大幅に増加します。

特に人事管理では、スタッフのモチベーション維持や職場環境の改善、労働法規の遵守など、専門的な知識と細やかな配慮が求められます。

また、クリニックの集客や宣伝活動、患者満足度の向上策なども経営者として考える必要があります。

さらに、経営判断の責任はすべて自分にかかってくるため、設備投資の決定、スタッフの増減、診療方針の変更など、常に適切な判断を求められるプレッシャーがあります。

経営に関する専門知識が不足している場合は、税理士や経営コンサルタントなどの専門家への依頼が必要になり、追加的なコストも発生します。

理学療法士など専門スタッフの確保が難しい

整形外科クリニックの運営には理学療法士、作業療法士、放射線技師などの専門職が不可欠ですが、これらの人材確保は非常に困難な課題となっています。

特に理学療法士や作業療法士は全国的に人手不足が深刻で、求人を出しても応募者が集まりにくい状況が続いています。

優秀な人材を確保するためには競合他院よりも高い給与や充実した福利厚生を提供する必要があり、人件費の負担が重くなります。

また、せっかく採用できたスタッフが定着せずに離職してしまうリスクもあり、継続的な人材確保と教育に多大な労力とコストを費やすことになります。新卒採用の場合は一から教育する必要があり、戦力になるまでに時間がかかる一方、経験者採用では高い人件費が必要になるジレンマがあります。

スタッフ不足により診療の質が低下したり、患者の待ち時間が長くなったりすると、クリニックの評判にも影響を与えかねません。

競合が多く集患に工夫が求められる

整形外科は人気の高い診療科であるため、多くの地域で競合クリニックが密集しており、患者の獲得競争が激化しています。

新規開業の場合は既存クリニックとの差別化を図る必要があり、専門分野の特化、最新設備の導入、診療時間の延長、アクセスの良さなど、何らかの優位性を打ち出さなければ患者に選ばれません。

また、口コミやインターネット上の評判が集患に大きく影響するため、継続的な患者満足度の向上と評判管理が重要になります。ホームページの充実、SNSを活用した情報発信、地域での認知度向上など、従来の医療機関では必要なかった宣伝活動も欠かせません。

さらに、大規模病院との連携不足により、紹介患者が獲得できない可能性もあり、地域医療ネットワークでの位置づけを築くことも重要な課題となります。

診療報酬改定や制度変更の影響を受けやすい

整形外科クリニックの収益は診療報酬に大きく依存しているため、2年に1度行われる診療報酬改定や医療制度の変更が経営に直接的な影響を与えます。

リハビリテーション料の点数変更、算定要件の見直し、施設基準の厳格化などにより、従来の収益構造が変わってしまう可能性があります。

特に運動器リハビリテーションは整形外科の主要な収益源の一つですが、過去にも算定日数の制限や要件変更が行われており、今後も制度変更のリスクがあります。

また、医療DXの推進により、オンライン資格確認システムの導入や電子処方箋への対応など、新たなシステム投資が義務化される場合もあります。

これらの制度変更に対応するためには、システムの更新や職員の教育、業務フローの見直しなどが必要で、追加的なコストと労力が発生します。

これらの変化に迅速に対応できない場合、収益の減少や競争力の低下につながるリスクがあります。

医療訴訟リスクや法的トラブルへの備えが必要

開業医として独立することで、医療訴訟や法的トラブルに対するリスクと責任が大幅に増加します。整形外科では手術や注射などの侵襲的な治療を行うことが多く、合併症や治療結果に対する患者の不満から訴訟に発展するケースがあります。

勤務医時代は病院が訴訟対応を行っていましたが、開業医では自分自身で対応しなければならず、精神的・金銭的な負担が大きくなります。

また、医療法や薬事法などの各種法規制の遵守も重要で、違反があれば行政処分を受けるリスクがあります。スタッフの労務管理においても、労働基準法違反やハラスメント問題など、様々な法的リスクが存在します。

さらに、個人情報保護法の遵守、医療広告ガイドラインの遵守など、クリニック運営に関わる法的要件は多岐にわたります。

これらのリスクに適切に対応するためには、顧問弁護士との契約や定期的な法的チェックが必要で、継続的なコストが発生する点は理解しておきましょう。

経営状況により収入が安定しない可能性がある

開業医の収入は事業所得であるため、クリニックの経営状況によって大きく変動し、勤務医のような安定した収入が保証されないのも事実です。患者数の減少、競合クリニックの出現、経済情勢の悪化などにより売上が下がれば、直接的に収入に影響します。

特に、開業当初は患者の定着に時間がかかり、想定していた収入を得られない期間が続く可能性があります。また、設備の故障や修理、スタッフの急な退職、医療事故への対応など、予期せぬ出費が発生した場合は、その月の収入が大幅に減少することもあります。

季節要因による患者数の変動や、感染症の流行による受診控えなど、外部要因によっても収益が不安定になりがちです。

さらに、借入金の返済や設備投資により固定費が高い場合、売上の変動が収入に与える影響はより深刻になります。

そのため、収入の変動に備えた資金管理や、複数の収益源の確保、リスク分散などの対策が不可欠です。

整形外科開業の成功ポイント

整形外科クリニックの開業を成功させるためには、戦略的なアプローチが不可欠です。設備投資の最適化、人材への投資、地域ニーズの把握、効果的な立地選定など、複数の要素を総合的に考慮した計画的な取り組みが求められます。

無駄な設備投資を避けて経営負担を減らす

整形外科開業の成功には、必要最小限の設備投資から始めて段階的に拡充していく戦略が重要です。

開業当初から高額な医療機器を一度に揃えようとすると、初期投資が膨らんで資金繰りを圧迫し、経営が困難になるリスクがあります。

まずはX線撮影装置、電子カルテ、基本的なリハビリ機器など、診療に最低限必要な設備を導入し、患者数の増加と収益の安定に合わせて追加投資を検討しましょう。

MRIなどの高額な画像診断装置は、開業当初は近隣の病院との連携で対応し、経営が軌道に乗ってから導入を検討する方が賢明です。

また、医療機器のリースやレンタルを活用することで、初期投資を抑えながら必要な設備を確保できます。リース契約なら保守サービスも含まれることが多く、故障時の対応コストも軽減できます。

設備投資の判断では、その機器がどの程度の収益向上に寄与するかを慎重に計算し、投資回収期間を明確にした上で決定することが大切です。無駄な投資を避けることで、経営の安定性を高め、長期的な成長基盤を築くことができます。

理学療法士など”ヒト”への投資で収益性を高める

整形外科クリニックの収益性向上には、理学療法士や作業療法士などの専門職への投資が最も効果的です。

運動器リハビリテーションは物理療法よりも診療報酬が高く設定されており、運動器リハビリテーション料(Ⅰ)では185点、(Ⅱ)では170点の算定が可能です。これに対して物理療法の消炎鎮痛等処置は35点しか算定できないため、理学療法士を雇用することで大幅な収益向上が期待できます。理学療法士1名あたり1日最大18単位の算定が可能で、1単位20分として計算すると、月間で大きな収益増加を見込めます。

また、運動器リハビリテーションの施設基準を満たすことで、(Ⅰ)では4名以上、(Ⅱ)では2名以上の理学療法士配置により、より高い点数での算定が可能になります。人件費はかかりますが、理学療法士1名の年収400万円程度に対して、算定できる診療報酬を考慮すると十分な投資効果が見込めます。

さらに、質の高いリハビリテーションを提供することで患者満足度が向上し、口コミによる集患効果も期待できるため、長期的な経営安定にもつながります。

地域ニーズに合った診療コンセプトを確立する

成功する整形外科クリニックを運営するには、開業予定地域の患者ニーズを的確に把握し、それに応じた診療コンセプトを確立することが不可欠です。

高齢者が多い地域では骨粗鬆症治療や変形性関節症への対応を重視し、骨密度測定装置の導入や転倒予防指導に力を入れることが効果的です。

一方、若い世代やスポーツ人口が多い地域では、スポーツ外傷やスポーツ障害の治療に特化したサービスを提供することで差別化を図れます。

また、働く世代が多い立地では、夜間診療や土曜診療を実施することで利便性を高め、競合との差別化につながります。地域の競合クリニックの診療内容や特徴を調査し、まだ満たされていないニーズを見つけ出すことも重要です。

地域に根ざした医療を提供することで、患者からの信頼を獲得し、長期的な経営安定を実現できるでしょう。

立地を見極めて通院しやすさを確保する

整形外科クリニックの成功において立地選定は極めて重要な要素であり、患者の通院しやすさを最優先に考慮する必要があります。整形外科の患者は高齢者や運動機能に制限がある方が多いため、アクセスの良さが集患に直結します。

駅から徒歩圏内やバス停の近く、主要道路沿いなど、公共交通機関や自家用車でのアクセスが容易な立地を選ぶことが基本です。特に重要なのが駐車場の確保で、車椅子での来院にも対応できる広いスペースと、クリニック入口までのバリアフリー動線を整備することが必要です。

また、住宅地の中心部や商業施設に近い立地は、日常の買い物ついでに通院できる利便性があり、継続的な通院を促進します。競合クリニックとの距離も考慮し、同じ診療圏内に複数の整形外科がある場合は、より優位な立地条件を確保することが重要です。

賃料の高さと集患効果のバランスを慎重に検討し、長期的な収益性を見込める立地を選択することが成功への鍵となります。

リハビリ体制を充実させて患者満足度を向上させる

整形外科クリニックにおいて、充実したリハビリテーション体制の構築は患者満足度向上と収益確保の両面で重要な成功要因となります。

理学療法士や作業療法士を適切に配置し、患者一人ひとりの症状に応じた個別リハビリプログラムを提供することで、治療効果を高めながら患者の信頼を獲得できます。リハビリスペースは運動器リハビリテーションの施設基準に従い、最低45平米以上を確保し、様々な運動療法機器を配置することが必要です。

また、レッドコードなどの最新リハビリ機器を導入することで、他院との差別化を図り、患者の関心を引くことができます。

スタッフの技術向上も重要です。定期的な研修や勉強会を実施し、最新のリハビリテーション技術を習得させることで、治療の質を継続的に向上させましょう。患者が効果を実感できるリハビリを提供することで、口コミでの評判が広がり、安定した集患につながります。

集患につながる広報戦略と内覧会を実施する

整形外科クリニックの成功には、効果的な広報戦略と開業時の内覧会実施が欠かせません。ホームページは患者の第一印象を左右する重要なツールで、診療内容、医師の経歴、設備紹介、アクセス情報などを分かりやすく掲載することが基本です。

Web予約システムの導入により患者の利便性を高め、24時間いつでも予約できる体制を整えることで集患効果を高められます。SEO対策を施し、地域名と「整形外科」などのキーワードで検索上位に表示されるよう工夫することも重要です。また、高齢者の患者が多いことを考慮し、ホームページだけでなく、看板設置、地域情報誌への掲載、チラシ配布なども並行して行うことが効果的です。

さらに、開業前の内覧会は地域住民にクリニックの存在を知ってもらう絶好の機会で、医師やスタッフが直接コミュニケーションを取ることで信頼関係の構築につながります。また、近隣の医療機関や介護施設との連携を構築し、紹介患者の獲得ルートを確保することも長期的な集患戦略として重要です。

スタッフ教育とチーム医療で安定した診療体制を築く

整形外科クリニックの安定運営には、質の高いスタッフ教育と効果的なチーム医療体制の構築が不可欠です。

看護師、理学療法士、作業療法士、放射線技師、医療事務など多職種のスタッフが連携して初めて、患者に満足される医療サービスを提供できます。

特に接遇マナーの向上は患者満足度に直結するため、患者とのコミュニケーション方法、言葉遣い、身だしなみなどについて継続的な教育を行うことが重要です。

また、スタッフのモチベーション維持のために、適切な評価制度や昇給制度を導入し、働きがいのある職場環境を整えることが離職防止につながります。

チーム医療では、医師だけでなく各専門職の専門性を活かした役割分担により、患者一人ひとりに最適な治療プランを提供できます。

スタッフ間の情報共有を密にし、患者の状態変化や治療進捗について全員が把握できる体制を構築することで、質の高い継続的なケアを実現できるでしょう。

自由診療や介護事業で収益源を多角化する

整形外科クリニックの経営安定化には、保険診療だけに依存せず、自由診療や介護保険事業を組み合わせた収益源の多角化が有効です。

自由診療では、プラセンタ注射、PRP治療、ブロック注射、美容目的の治療などを自院で価格設定できるため、保険診療よりも高い収益性を確保できます。

また、通所リハビリテーション事業の併設により、介護保険を活用した安定収入を確保できます。医療保険でのリハビリ期間に150日の制限があるのに対して、通所リハビリは期間制限がないため、長期的な収益源として機能します。

さらに、骨密度検査による骨粗鬆症の早期発見・予防サービスも、高齢化社会において需要が高まっている分野です。

これらの多角的なサービス展開により、診療報酬改定の影響を受けにくい安定した収益基盤を構築できます。

計画的な準備と戦略で整形外科開業を成功させよう

整形外科の開業は、高額な初期投資や複雑な手続きなど多くの課題がありますが、適切な準備と戦略があれば大きな成功を収めることができます。勤務医時代の約2倍の年収を実現し、理想の診療スタイルを追求できる魅力的な選択肢であることも事実です。

重要なのは、診療コンセプトの明確化から資金調達、立地選定、スタッフ採用まで、各段階を計画的に進めることです。

特に理学療法士への投資やリハビリ体制の充実は収益性向上の鍵となります。無駄な設備投資を避け、地域ニーズに合った医療を提供することで、競合との差別化を図れるでしょう。

開業には1年以上の準備期間が必要なため、税理士や開業コンサルタントなど専門家のサポートを受けながら、着実にステップを踏んでいくことが成功への近道です。

計画的な準備で理想のクリニック経営を実現させましょう。


整形外科開業の成功には専門家のサポートが不可欠です!

整形外科の開業は高額な初期投資や複雑な許認可手続き、理学療法士の確保など、多くの専門的な課題をクリアする必要があります。資金調達から立地選定、設備選択、事業計画作成まで、一人で進めるには限界があり、失敗のリスクも高まります。

そこで、医療機関開業に精通した専門家への無料相談をお勧めします。開業準備のスケジュール管理から資金計画の策定、成功のポイントまで、あなたの状況に合わせたアドバイスを提供いたします。


執筆者プロフィール:ドリームゲート事務局

ドリームゲートは経済産業省の後援を受けて2003年4月に発足した日本最大級の起業支援プラットフォームです。
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