起業や開業を考える際、「個人事業主と法人、どちらが自分に合っているのか」と迷う方は多いはずです。事業形態の選択は、手続きの手間や費用、税金、社会的信用など将来に大きく影響する重要な決断です。
本記事では、個人事業主と法人の違いや、それぞれのメリット・デメリット、失敗しない選び方、開業手続きまでわかりやすくまとめました。自信を持って第一歩を踏み出せるよう、今のあなたにぴったりな起業方法を丁寧に解説します。
- 目次 -
起業・開業するなら個人事業主?法人?メリット・デメリットを比較
起業や開業を考える際、「個人事業主」「法人」「フリーランス」など、どの形態で始めるのが自分に合っているか悩む方も多いでしょう。ここでは、それぞれの形態のメリット・デメリットや違い、選ぶポイントを初心者にもわかりやすく徹底比較します。
起業においては個人事業主・フリーランス・法人などの形態は問われない
起業を目指す際には、「個人事業主」「法人」そして「フリーランス」など、事業の形態はいくつかありますが、どの形を選んでも起業の本質に大きな違いはありません。重要なのは、自分の事業規模や目標、リスク許容度、また成長イメージに合った形態を選ぶことです。
たとえば、小規模でリスクを抑えて事業を始めたいなら個人事業主、社会的信用や拡大を重視するなら法人など、自分に最適なスタイルを柔軟に選択しましょう。それぞれの特徴をしっかり理解することが起業成功への第一歩です。
個人事業主とフリーランスの違いは?
「個人事業主」と「フリーランス」の違いは、主に呼称と法律上の区分にあります。
| 区分 | 個人事業主 | フリーランス |
| 法的区分・定義 | 税務署に開業届を出し、税法上の事業者として扱われる | 働き方や仕事の受注形態を指す呼称で、法律上の区分ではない |
|---|---|---|
| 開業届 | 必須(税務署に提出) | 不要(開業届を出すと個人事業主になる) |
| 税務上の扱い | 確定申告や個人事業税の納付が必要 | 税務区分はなく、開業届を出さない場合は給与所得扱いまたは副業扱いになることも |
| 働き方 | 自分で事業を継続的におこなう | 企業に属さず案件ごとに独立して働くスタイル |
| 事業形態 | 個人で継続的に事業を運営 | 幅広く個人で仕事を請け負うスタイル全般を含む |
| 法的責任 | 事業の債務は個人が無限責任を負う | 法的責任は事業の形態により変わるが特に規定なし |
個人事業主は税務署に開業届を提出し、継続的な事業活動をおこなう人を指します。一方、フリーランスは特定の会社に属さず案件ごとに独立して働くスタイルを表す言葉で、税務上や法律上の区分ではありません。
つまり、フリーランスは形式的に個人事業主に該当するケースも多いですが、すべてのフリーランスが個人事業主とは限らないのです。
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個人事業主と自営業の違い
「個人事業主」と「自営業」は混同されがちですが、厳密には異なるものです。個人事業主は税務署に開業届を提出し、税法上で正式に認められた事業者を指します。一方、自営業は個人で事業や商売を営む人の総称で、次のように広い意味を含みます。
- 法人
- 個人事業主
- 開業届を出していないフリーランス
つまり、すべての個人事業主は自営業ですが、すべての自営業が必ずしも税法上の個人事業主とは限らず、法人やフリーランスに該当する場合もあるのです。
個人事業主と法人のメリット・デメリットを比較
個人事業主と法人のメリット・デメリットには、次のような違いがあります。
| メリット・デメリット | 個人事業主 | 法人 |
| メリット | ・開業届を出すだけで簡単、費用がほぼかからない ・維持コスト(税金・社会保険料など)が比較的安い ・開業しやすく小規模事業に向く ・所得税は累進課税で利益が少なければ税負担が軽い ・会計処理が簡易で管理しやすい(決算書の提出、複雑な処理は不要) |
・社会的信用が高い、節税策が多い ・節税対策がしやすい、経費計上の幅が広い ・法人名義で取引可能で信用、融資や取引先の拡大に有利 ・法人税は一定税率で節税策が多い、役員報酬や退職金などで節税可能 ・事業承継やM&Aがしやすい ・決算管理が厳格で信頼性が高い |
|---|---|---|
| デメリット | ・信用度が低く、大きな取引や融資で不利 ・利益が大きいと高税率、節税方法も限られる ・家族や他人への承継がやや難しい |
・設立費用がかかる、手続きが複雑 ・維持コストが高い(社会保険料や税理士報酬等) ・コンプライアンス管理や決算公告等の義務が増える ・赤字の繰越期間制限がある(10年) ・会計処理が複雑、税理士など専門家の活用がほぼ必須 |
個人事業主は、開業や運営のコストが低く、手間のかからないシンプルな手続きで事業を始められるのが大きなメリットです。しかし、社会的信用や資金調達、取引先からの信頼性では法人に比べて不利な面もあります。また、利益が大きくなると所得税の負担も増えやすい傾向があります。
一方、法人は社会的信用が高く、資金調達や営業拡大面で有利なだけでなく、節税対策の選択肢も広がりますが、設立費用や維持コスト、会計処理の手間がかかるというデメリットも存在します。事業規模や長期的な展望に合わせて最適な形態を選びましょう。
個人事業主として起業してから法人化するタイミングとステップ
個人事業主として起業したあとに法人化するタイミングとして、具体的に次のようなケースがあります。
- 年間売上が500万円以上になったとき
- 所得金額が800万円~900万円前後になったとき
- 課税売上高が1,000万円を超えたとき
- 事業拡大や社会的信用向上を目指す場合
年間売上が500万円以上、または800~900万円程度と所得金額が大きくなり、所得税の累進課税による税負担が増える段階で法人化がコスト面で有利になることが多いです。
また、課税売上高が1,000万円を超えた場合、消費税の納税義務が発生するため、新たに法人を設立すると1期目、2期目は消費税納税が免除される場合が多く、税負担を先送りできます。
ただ、2023年10月に導入されたインボイス制度により、適格請求書発行事業者として登録した個人事業主は、売上高が1,000万円を超えなくても納税義務が生じるようになりました。
インボイス制度は消費税の仕入税額控除を正しくおこなうために導入された制度。適格請求書(インボイス)という証明書を売り手が発行、買い手が保存することで、お互いの取引が透明になり、消費税の納付が適正になる。
インボイス制度下での個人事業主の法人化は、「売上1,000万円を超えたかどうか」だけで判断せず、制度への対応や法人化後の事業形態・税務計画を踏まえて検討しましょう。
法人化することで、節税メリットや社会的信用の向上、責任範囲の限定といったメリットがあります。個人事業主としての手軽さからスタートし、事業の成長に応じて法人化を検討するのが理想的な流れのひとつです。
起業・開業する際の個人事業主と法人の違い・選び方
起業・開業を検討する際、個人事業主と法人の違いを理解し、自分に最適な事業形態を選ぶことが重要です。ここでは設立手続きから税務、社会保険まで主要な違いを整理し、起業形態選びのポイントを初心者にも分かりやすく解説します。
開業手続き・費用の違い
個人事業主の設立は、税務署に「開業届」を提出するだけで完了し、手数料や登記費用はかからないため初期費用は実質0円です。
一方で、法人(株式会社や合同会社)の場合は、設立時に次のような費用がかかります。
| 費用 | 金額 |
| 登録免許税 | 株式会社:最低15万円(資本金額の0.7%が15万円を超える場合はその金額) 合同会社:6万円 |
|---|---|
| 定款認証費用 | 約1.5~5万円(公証役場での手数料)、合同会社は不要 |
| 定款用収入印紙代 | 紙の定款の場合4万円がかかるが、電子定款なら不要 |
| その他登記関連費用(定款謄本手数料など) | 数千円程度 |
合計すると、電子定款を使った場合で約20万円前後、紙の定款だと約24万円ほどが一般的な最低設立費用の目安です。
個人事業主は費用も手続きもシンプルですが、法人はコストと手間がかかる点が大きな違いです。
会計処理と税務対応の違い
個人事業主の場合、会計処理は比較的シンプルで、現金主義や簡易簿記でも認められており、確定申告も自身でおこないやすいのが特徴です。青色申告を選択すれば節税優遇も受けられますが、白色申告なら帳簿の作成義務も軽減されます。
一方、法人は複式簿記による厳格な帳簿管理が義務づけられ、決算書作成や法人税申告など専門的な対応が求められます。税理士へ依頼するケースが多く、コストや事務負担も発生する点が大きな違いです。
税金・節税の違い
個人事業主は、所得税が累進課税で利益が大きくなるほど高税率になり、節税策も限定的です。一方、法人は所得に関わらず法人税率が一定で、役員報酬や経費・退職金制度を活用した柔軟な節税が可能です。
個人事業主と法人それぞれでできる主な節税対策には、次のようなものがあります。
| 形態 | 主な節税対策 |
| 個人事業主 | ・青色申告特別控除の適用(最大65万円控除) ・青色申告による赤字の3年繰越控除 ・専従者給与の経費化(家族への給与を条件付きで経費計上) ・必要経費の幅広い計上(事業に関連する支出) ・小規模企業共済や経営セーフティ共済への加入(掛金を全額所得控除) ・生命保険料の控除(個人契約・一部事業経費化も可) ・減価償却による設備等の費用化 |
|---|---|
| 法人 | ・役員報酬の設定による所得分散と経費計上 ・多様な経費の計上(福利厚生費、法定福利費、会議費など) ・法人契約の生命保険料を福利厚生費として全額損金算入 ・会社からの退職金支給による損金算入 ・家族への給与支給(役員・従業員としての適正額を経費計上) ・減価償却による設備投資の費用化 ・赤字の最長10年繰越し ・小規模企業共済や経営セーフティ共済の掛金を経費化 ・役員報酬の支給による給与所得控除の活用 |
法人には赤字の繰越しや損益通算の年数も長いなど有利な点が多く、利益規模や経営戦略によって最適な節税方法が大きく異なります。事業の成長を見据えた形態選びが重要です。
社会的信用・資金調達の違い
個人事業主は設立や運営の手軽さが魅力ですが、社会的信用力が低く、取引先や金融機関からの評価が限定的です。大口契約や融資を受ける際に不利となる傾向にあります。
一方、法人は登記や決算公告の義務はあるものの、法人名義での契約や融資が可能で、金融機関や取引先からの信頼度が大幅に向上します。資金調達や取引拡大のチャンスも広がるため、事業規模拡大や持続的成長を重視する場合は法人化が有利だと言えます。
社会保険の加入義務の違い
個人事業主は、基本的に社会保険への加入義務はなく、国民健康保険と国民年金に加入します。従業員を5人未満雇用している場合も社会保険の強制加入はありませんが、従業員が5人以上になると加入義務が生じます。
一方、法人は従業員数にかかわらず、たとえ社長一人であっても健康保険や厚生年金の社会保険加入が必須です。法人化すると事業主自身も社会保険に加入し、会社と事業主双方で保険料を負担する必要があります。
社会保険の加入義務の違いは、起業・開業時のコストや福利厚生面で大きな影響を与えます。社会保険加入義務の違いは経営計画において重要な検討ポイントです。
赤字の繰越・損益通算の違い
赤字繰越・損益通算とは、事業で赤字(損失)が出た場合、損失を翌年以降の黒字(所得)から差し引いて税金を軽減できる制度のことです。
個人事業主と法人の赤字の繰越・損益通算の違いは、繰越可能期間に大きな差があります。個人事業主は青色申告をしている場合、赤字(純損失)を翌年以後3年間繰り越して控除が可能です。
法人の場合は欠損金を最長10年間繰り越せるため、長期間にわたって赤字を損益通算でき、事業の初期投資や赤字が続くケースでも高い節税効果があります。長期的な事業計画には法人の繰越期間の長さが有利に働きます。
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個人事業主と法人の起業・開業手続き
個人事業主と法人では起業・開業の手続きに大きな違いがあります。個人事業主は税務署に開業届を提出するだけで手続きが完了し、費用もかかりません。法人は定款の作成や認証、登記申請など複数の法的手続きを経て設立しなければならず、時間と費用が必要です。
ここでは、それぞれの手続きの具体的な流れとポイントをわかりやすく解説します。
個人事業主として起業・開業する手続き
個人事業主として起業・開業する際の手続きは、比較的シンプルでスピーディーに進められるのが特徴です。具体的な手続きの流れは次の通りです。
- 開業届の提出方法
- 青色申告承認申請書の提出
- 個人事業税の申告
- 税務署・自治体への届出
必要な手続きを把握しておくことで、事業開始後の税務管理や節税対策がスムーズに進みます。次の各項目で手続きの具体的な流れを詳しく解説します。
開業届の提出方法
開業届は、個人事業を開始した日から1カ月以内に最寄りの税務署へ提出します。提出は窓口持参のほか、郵送やe-Taxによるオンライン提出も可能です。必要書類は次の通りです。
- 個人事業の開業届出・廃業届出(税務署で入手、または国税庁ホームページでダウンロード可能)
- 本人確認書類(マイナンバーカード、または番号記載の住民票+運転免許証など)
印鑑 - 返信用封筒・切手(郵送提出し、控えの返送を希望する場合)
「個人事業の開業・廃業等届出書」は、国税庁のホームページからダウンロードできます。屋号(個人事業主が事業をおこなう際に使う名称)や事業内容を記入し、マイナンバーや印鑑も忘れずに用意しましょう。
青色申告承認申請書の提出(任意)
青色申告承認申請書は、個人事業主が青色申告をおこなうために税務署に提出する重要な書類です。必須ではありませんが、開業届と一緒に提出するのが一般的で、申請書の提出により最大65万円の控除など青色申告の節税メリットを受けられます。
提出期限は原則として毎年3月15日までですが、1月16日以降に開業した場合は開業日から2か月以内に提出すれば認められます。申請書は所轄の税務署の窓口、郵送、またはe-Taxでのオンライン提出が可能です。
自治体への届出
個人事業主が自治体へ提出する届出は、都道府県ごとに必要性や提出期限が異なります。提出する場合は、都道府県税事務所および市区町村役場に「事業開始等申告書」または「個人事業開始申告書」の提出が必要です。書類の提出によって、個人事業税や住民税の課税が適正におこなわれます。
地域によって手続きや提出期限が異なる点に注意が必要です。自治体の公式ウェブサイトで最新の書式や手順を確認し、届出をおこなうことが起業後の税務管理の円滑化につながります。
法人として起業・開業するための手続き
法人として起業・開業する手続きは、次のように個人事業主に比べて複雑です。
- 定款の作成と認証
- 資本金の払込み
- 登記申請
- 税務署・自治体への各種届出
- 社会保険・労働保険の加入
手続きを正確かつ期限内に進めることが、円滑な法人設立の鍵となります。ここからは、各手続きの内容について、具体的に解説します。
定款の作成と認証
定款の作成と認証は、法人設立における最初のステップです。定款とは、会社の基本ルールや目的を定めた書面で、発起人全員の同意のもとで作成します。株式会社の場合は、この定款を公証役場で公証人に認証してもらう必要があります。
認証を受けることで、定款の正当性が公的に証明され、設立の信頼性が高まります。手続きには予約が必要で、定款のほかに必要書類や手数料の準備も欠かせません。認証手続きには次の書類が必要になります。
- 定款(3通)
- 実質的支配者となるべき者の申告書(公証人連合会のホームページから入手可能)
- 発起人全員分の印鑑登録証明書と実印
- 発起人が法人の場合は、その法人の登記事項証明書
- 委任状(代理人が手続きをおこなう場合)
- 認証を受けに行く人の身分証明書と印鑑
認証にかかる手数料や費用は次の通りです。
| 手数料や費用 | 金額 |
| 認証手数料 | 約1.5~5万円 |
|---|---|
| 収入印紙代 | 4万円(電子定款の場合は不要) |
| 謄本用紙代 | 600円/枚 |
なお、合同会社の場合は定款認証は不要です。
資本金の払込み
法人設立時の資本金の払込みは、定款で決めた金額を、発起人の個人名義の銀行口座に振り込みます。会社設立前のため会社名義の口座はなく、発起人の口座を使用します。振り込みは、誰がいくら出資したかを通帳で証明できるようにすることが重要です。
複数の発起人がいる場合は代表者の口座に集約して振り込む場合もあります。払込み後は通帳のコピーと「払込証明書」を作成し、登記申請時に提出します。
登記申請
法人の登記申請は、会社設立後、原則として設立日から2週間以内に本店所在地を管轄する法務局へ必要書類を提出しておこないます。申請方法は次の3種類から選べます。
- 法務局への窓口持参
- 郵送
- オンライン申請
登記申請に必要な書類は次の通りです。
- 登記申請書
- 登記免許税納付用台紙(収入印紙を貼付)
- 定款(公証役場で認証済みのもの)
- 発起人の決定書(本店所在地決定の証明書類)
- 設立時取締役の就任承諾書
- 設立時代表取締役の就任承諾書(合同会社の場合は代表社員の就任承諾書)
- 設立時取締役の印鑑証明書(合同会社は代表社員の印鑑登録証明書)
- 資本金の払込みを証する書面(通帳のコピーなど)
- 印鑑届出書(会社の実印届出用)
- 登記すべき事項を記載した書面または保存したデータ(CD-Rなど)
書類を提出し、不備がなければ約1週間程度で登記が完了します。書類が煩雑になりがちですが、正確な準備と期限内の申請が円滑な法人設立のカギとなります。
税務署・自治体への各種届出
法人として起業・開業する際の税務署・自治体への各種届出は、設立登記後におこなう重要な手続きです。必要な届出には、以下のようなものがあります。
| 提出先 | 提出書類 | 添付書類例 | 提出期限 |
| 税務署 | 法人設立届出書 | 定款の写し、設立登記事項証明書、株主名簿、貸借対照表など | 設立登記の日から2か月以内 |
|---|---|---|---|
| 青色申告承認申請書 | なし | 設立の日から3か月を経過した日と設立後最初の事業年度終了の日といずれか早い日の前日 | |
| 給与支払事務所等の開設届出書 | なし | 事務所開設日から1ヶ月以内 | |
| 源泉所得税の納期の特例の承認申請書 | なし | 特例を受ける際 | |
| 消費税関係届出書 | なし | 期限は設立後間もない期間内 | |
| 都道府県税務事務所 | 法人設立届出書 | 定款の写し、設立登記事項証明書、株主名簿など | 設立登記の日から1~2か月以内(必要性、期限は自治体によってことなる) |
| 市区町村役場 | 法人設立届出書 | 定款の写し、設立登記事項証明書、株主名簿など | 設立登記の日から1~2か月以内(必要性、期限は自治体によってことなる) |
法人設立届出書、源泉所得税関係届出書、消費税関係届出書などを所轄の税務署に提出します。また、自治体にもよりますが法人設立届は自治体にも必要です。必要性や期限は必ず自社の所在地の自治体の公式情報や税務当局の案内で確認しましょう。
届出は設立後速やかにおこない、書類の不備や遅延を避けるのが重要です。
社会保険・労働保険の加入
法人として起業・開業する際、社会保険・労働保険の加入は必須の手続きです。法人の代表者や従業員は、健康保険と厚生年金の社会保険に加入しなければなりません。従業員を雇用する場合は、労働保険(労災保険・雇用保険)への加入も義務付けられています。
社会保険、労働保険それぞれの加入手続きの手続きは、次の通りです。
| 保険種類 | 主な提出書類 | 提出先 | 提出期限 |
| 社会保険 | ・健康保険・厚生年金保険新規適用届 ・被保険者資格取得届 ・被扶養者異動届(該当時) |
管轄の年金事務所 | 事実発生(設立・雇用)から5日以内 |
|---|---|---|---|
| 労働保険 | ・労働保険 保険関係成立届 ・労働保険 概算保険料申告書 ・雇用保険 適用事業所設置届 ・雇用保険 被保険者資格取得届 |
管轄の労働基準監督署・ハローワーク | 従業員雇用後、10日以内 |
保険料は会社と加入者が折半で負担し、個人事業主に比べて経費負担が増す点に注意が必要です。手続きを期限内に正確におこなうことが法人運営の義務であり、スムーズな社会保険・労働保険の適用につながります。
個人事業主・法人の税の違い
起業を考える際、個人事業主・法人それぞれで税制や納税方法が異なります。自分に合った形態を選ぶためには、各ケースにかかる税金の特徴や違いを正しく理解することが重要です。ここでは、個人事業主・法人それぞれの税金について詳しく解説します。
各形態の税制、納税方法の主な違いを表にまとめました。
| 項目 | 個人事業主 | 法人 |
| 税の種類 | ・所得税(超過累進課税) ・住民税 ・個人事業税 ・消費税 |
・法人税(税率ほぼ一律) ・法人住民税 ・法人事業税 ・消費税 |
|---|---|---|
| 税率 | 所得税は5~45%の超過累進課税 | 法人税15%(所得800万円以下)~23.2%(超過) |
| 赤字時の取扱い | 税金負担なし | 法人住民税の均等割が最低約7万円~かかる |
| 税務申告 | 確定申告(比較的簡単) | 法人税申告(手続きや会計が複雑) |
| 経費の幅 | 一般的に法人より狭い | 範囲が広く、節税対策に有利 |
| 社会保険の加入義務 | 任意(国民健康保険・国民年金) | 健康保険・厚生年金に加入義務あり |
次項から、それぞれの内容について詳しく述べます。
個人事業主にかかる税金
個人事業主にかかる税金は、事業の所得に対して課される所得税が中心で、税率は5%から45%の超過累進課税となっています。
| 課税所得金額 | 所得税率 | 控除額 |
| 195万円以下 | 5% | 0円 |
|---|---|---|
| 195万超~330万円以下 | 10% | 97,500円 |
| 330万超~695万円以下 | 20% | 427,500円 |
| 695万超~900万円以下 | 23% | 636,000円 |
| 900万超~1,800万円以下 | 33% | 1,536,000円 |
| 1,800万超~4,000万円以下 | 40% | 2,796,000円 |
| 4,000万円超 | 45% | 4,796,000円 |
また、所得に応じて住民税(所得の10%+均等割)や事業規模により個人事業税(年間事業所得が290万円超、税率は業種によって異なりますが3~5%)も課されます。さらに、基準期間の課税売上高が1,000万円を超える場合は消費税の納税義務も発生します。(インボイス登録登録事業者は、売上1,000万円以下でも納税義務が生じる)
2025年の税制改正により、基礎控除や給与所得控除が引き上げられ、低〜中所得層の税負担が軽減される点も注目すべきポイントです。税金の種類や納付のタイミングを正確に把握し、適切な確定申告をおこなうことが重要です。
法人にかかる税金
法人にかかる税金は、個人事業主・フリーランスと比べて種類や計算方法が異なります。主な税金は次の通りです。
| 税金の種類 | 税率・課税内容 | 備考 |
| 法人税 | ・所得年800万円以下:15% ・所得年800万円超:23.2% |
軽減税率は2027年3月末までの特例 |
|---|---|---|
| 法人住民税(均等割) | 最低約7万円(都道府県民税6%+市町村税1%) | 資本金や従業員数により変動 |
| 法人住民税(法人税割) | 法人税額の7~10%程度 | 自治体により異なる場合あり |
| 法人事業税 | 10% | 年間売上高1,000万円超で課税事業者 |
企業規模や利益額によって税率が変わる場合もあるため、最新の税制や自社の状況に合わせて正確な税額の試算と対策が重要となります。
起業・開業に向けて個人事業主や法人の事業形態を正しく選ぼう
起業・開業を考える際は、「個人事業主」と「法人」の違いを正しく知ることが第一歩です。税金や手続き、社会的信用、節税効果、コストなど、それぞれにメリット・デメリットがあります。
自身の事業規模や将来の展望に合わせて形態を選ぶことが大切です。事前に必要な手続きや税制を確認し、計画的に準備することで、安心して事業をスタートできます。ぜひ本記事を参考に、どのような形態で働くのか検討してみてください。
なお、「ドリームゲート」には起業・開業に精通した専門家が多数在籍しています。起業や開業が初めての方にとって、専門家の存在は安心できるものです。無料のメール相談もご用意しておりますので、ぜひお気軽にご相談ください。
執筆者プロフィール:ドリームゲート事務局
ドリームゲートは経済産業省の後援を受けて2003年4月に発足した日本最大級の起業支援プラットフォームです。
運営:株式会社プロジェクトニッポン
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