歯科医院を開業するには?必要資金や開業の流れ、注意点などを徹底解説

この記事は専門家 によって監修されました。

執筆者: ドリームゲート事務局

歯科医院の開業は、歯科医師としてのキャリアの集大成ともいえる大きな転機です。しかし、開業を成功させるには、診療スキルだけでなく、経営・資金・人材・マーケティングなど多岐にわたる知識と準備が求められます。近年は歯科業界を取り巻く環境が大きく変化しており、診療所数の減少や自由診療ニーズの高まり、医療法人化の進展など、開業を取り巻く条件も複雑化しています。

そこで今回は、歯科医院の開業に必要な資金の相場や調達方法、開業までのスケジュール、成功のための注意点までを体系的に解説します。これから開業を検討している歯科医師にとって、実践的な判断材料となる内容を網羅していますので、ぜひ参考にしてください。


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- 目次 -

歯科医院を開業する前に知っておきたい現在の動向

歯科医院を取り巻く環境は、近年大きく変化しています。ここでは、開業前に知っておきたい歯科業界の最新動向について解説します。

歯科診療所数は減少傾向にある

近年、全国の歯科診療所数は緩やかな減少傾向にあります。厚生労働省の調査によれば、2017年に68,609施設だった数は、2023年には66,818施設まで減少しています。この推移の背景には、以下のような複合的な要因が関係しています。

  • 診療報酬の見直しによる収益性の低下
  • 地域人口の減少と診療圏の縮小
  • 歯科衛生士など人材の確保難
  • 院長の高齢化にともなう廃業の増加
  • デジタル化への対応負担の増大

加えて、下記の表にあるとおり、近年は新規開設数よりも廃止数が上回る傾向が続いています。

年度 開設数 廃止数
2017年 1,720件 1,739件
2022年 1,333件 1,410件

このような状況から、今後も診療所数は減少すると見込まれます。歯科医院を新たに開業する場合には、地域ごとの需要や競合の動向を慎重に見極めたうえで、適切な立地や事業計画を立てることが求められます。

 

歯科医師数は長期的に微増傾向にある

近年、歯科診療所数が減少傾向にある一方で、歯科医師数は長期的に緩やかな増加が続いています。厚生労働省の統計によれば、2022年時点の歯科医師数は105,267人であり、2010年の101,576人から増加しています。また、医療施設でじっさいに業務に従事している歯科医師の人数も増加しており、人口10万人あたりの歯科医師数は、昭和50年の37.5人から令和4年には81.6人まで拡大しました。

以下に歯科医師総数および人口10万対で見た歯科医師数の推移を示します。

年度 歯科医師総数 人口10万人対歯科医師数
2010年 101,576人 77.1人
2016年 104,533人 80.0人
2022年 105,267人 81.6人

このように、年ごとの伸び幅は大きくないものの、歯科医師数は着実に増加しています。また、近年ではひとつの診療所に複数の歯科医師が勤務するケースも見られます。開業を検討する際には、歯科医師の供給動向や就業形態の変化に留意し、柔軟な経営戦略を構築することが求められます。

医療法人は増加し、個人開業は減少している

歯科医院の開設形態には明確な構造変化が見られ、医療法人の増加と個人開業の減少が進行しています。厚生労働省の調査によれば、2000年に32,708件だった医療法人数は、2024年には58,902件へと倍増しました。一方、個人事業主による歯科医院は2005年の57,110件をピークに減少へ転じ、2024年には48,361件となりました。

この傾向の背景には、勤務医の多様化や院長の高齢化、後継者不足に加え、医療法人の持つ経営面での安定性や人材確保力の高さが影響しています。さらに、収益面でも医療法人は伸び率が高く、診療所の集約化や大規模化が全国的に進みつつあります。今後、歯科医院の開業を検討する際には、個人開業にこだわらず、法人化やM&Aの活用といった多角的な視点での経営判断が求められるでしょう。

人口あたりの歯科医院数は微増している

歯科診療所の総数は近年減少していますが、国内の総人口も減少傾向にあるため、人口10万人あたりの歯科医院数に着目するとわずかに増加しています。厚生労働省「医療施設動態調査」によれば、1999年には約50軒だったこの指標は、2023年には53.7軒となりました。

年度 10万人あたり歯科医院数
1999年 約50軒
2023年 53.7軒

この背景には、都市部への開業集中や過疎地域での需要減少といった地域差の影響があります。その結果、ひとつの診療所が対応する人口は減り、地域内での競争はより激しくなっています。開業を検討する際には、地域の人口構成や周辺施設の密度を十分に調査したうえで、自院ならではの特色を打ち出すことが求められます。

参考:厚生労働省「令和5年(2023年)医療施設(静態・動態)調査・病院報告の概況 統計表」

予防志向の高まりで定期受診者が増加傾向にある

近年は国民の健康志向が高まり、虫歯や歯周病の治療よりも予防を目的とした定期的な歯科受診が広がっています。厚生労働省の調査によれば、過去1年間に歯科健診を受けた20歳以上の人の割合は、2016年に52.9%、2022年には58.0%に達しており、全体として増加傾向が見られます。一方で30〜50代男性の受診率は相対的に低いことも指摘されています。

この背景には、口腔の健康が全身疾患の予防や生活の質の向上と深く関わるという認識が広まったことが挙げられます。予防歯科は自由診療との親和性が高く、安定した患者層の獲得にもつながるため、開業時にはクリーニングやメンテナンス、セルフケアの指導といった予防メニューの充実を検討するとよいでしょう。

審美や矯正など自由診療の需要が拡大している

最近の歯科医療では、保険診療に加え、審美歯科や矯正歯科といった自由診療の需要が着実に広がっています。背景には「見た目の美しさ」への関心の高まりがあり、ホワイトニングやセラミック治療、インビザライン(マウスピース矯正)などを希望する患者が増えています。

とくに都市部では、審美性を重視する若年層やビジネスパーソンのニーズが顕著です。自由診療は治療単価が高く、保険診療より収益性に優れているため、医院経営の安定化にも貢献しやすいでしょう。開業を考える際には、地域特性を踏まえたうえで自由診療メニューの導入を戦略的に検討することが求められます。

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歯科医院の開業におすすめのタイミング

歯科医院の開業を成功させるためには、資金や物件といった準備面だけでなく、「いつ開業するか」というタイミングの見極めも重要です。ここでは、歯科医院を開業するのに適したタイミングについて解説します。

30代前半〜40代前半が開業の目安

歯科医院の開業は、臨床経験や資金状況、ライフプランなどが整う30代前半から40代前半におこなうのが適しているとされています。厚生労働省の統計によれば、30〜39歳の歯科医師のうち約15%が診療所の開設者または法人の代表者となっており、40〜49歳では約47%に上ります。さらに60~69歳では約79%に達しており、年齢とともに独立の割合が高まる傾向が示されています。

この年代は、臨床スキルの蓄積や経営知識の習得が進んでいるうえ、患者との信頼関係も築きやすく、事業を軌道に乗せやすい時期といえます。また、約10年の勤務経験を経て自己資金を1,000万円以上確保しているケースも多く、融資の審査にも有利に働く傾向があります。

そのため、30代後半から40代前半の開業は、スキル・資金・体力のいずれの面でもバランスがとれた、現実的かつ効果的なタイミングといえるでしょう。

春(3〜5月)または秋(10〜11月)が集患に有利な開業時期

春(3〜5月)や秋(10〜11月)は、歯科医院の開業に最も適した時期とされています。とくに内覧会では多くの来場者が見込まれやすく、地域住民への認知拡大や開業初期の集患につながる好機となります。気候が安定しており、外出しやすい季節であることも、足を運んでもらいやすい要因といえるでしょう。

これに対し、夏や冬の内覧会は天候や気温の影響によって来場者数が減少する傾向があります。たとえば、夏の内覧会では春や秋の約7割、冬にいたっては半数以下に落ち込むケースもあります。こうした差は、集患戦略におけるスタートダッシュの成否に直結しかねません。

そのため、より高い集客効果を期待するには、開業のタイミングに季節性を考慮することが重要です。天候や気温による来院ハードルの違いを踏まえ、初期の立ち上がりを計画的に進める視点が求められます。

歯科開業におけるふたつの診療タイプ

歯科医院を開業するにあたり、診療スタイルの選択は経営の方向性を大きく左右します。ここでは、歯科開業におけるふたつの診療タイプについて解説します。

保険診療を中心とした歯科医院

保険診療を中心とする歯科医院は、国の制度により治療費の大半が公費で補助されるため、患者の自己負担が1〜3割程度におさえられます。そのため、幅広い層の来院が見込める診療スタイルといえるでしょう。診療内容は虫歯や歯周病といった基本的な治療が中心で、地域住民の健康維持に貢献する点も大きな魅力です。

ただし、診療報酬は点数制度によって国が定めており、治療単価には上限があります。経営面では、日々の患者数を安定的に確保することが利益維持のポイントです。代表的な経営モデルの特徴は以下のとおりです。

  • チェア数:3~4台程度
  • 延床面積:30~60坪
  • 年間売上:4,000万~8,000万円
  • 院長の手取り収入:1,300万~1,800万円程度
  • インプラントなど自由診療の一部導入も可能

将来的には自由診療の比率を高めたり、設備投資によってさらなる収益向上を目指すのもひとつの方向性です。

自由診療を中心とした歯科医院

自由診療を中心とした歯科医院は、審美性や機能性に重点を置いた高品質な治療を提供するスタイルです。ホワイトニングやセラミック治療、マウスピース矯正(インビザラインなど)といった自費診療を自由な価格設定でおこなえるため、収益性の高い運営が実現しやすくなります。さらに、最先端の医療機器や設備を導入しやすい環境が整い、結果として患者満足度の向上にもつながります。

一方で、治療費が高額になりやすいため、想定する患者層を明確にし、ニーズに即したマーケティング戦略を講じることが欠かせません。とくに都市部では、美容意識の高い層やビジネスパーソンからの需要が多く、自由診療に特化した医院が目立ちます。

たとえば以下のような特徴が見られます。

  • チェア数:4〜6台
  • 延床面積:40~60坪
  • 年間売上:約1億円前後
  • 院長の年収:1,000万円以上
  • 主な診療内容は審美歯科、矯正、インプラント

このように高度な治療を展開するには、専門的な知識や技術を備えたスタッフが不可欠です。とくに歯科衛生士や歯科技工士との連携体制を整えることで、より質の高い診療を継続的に提供できるようになります。

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歯科医院における5つの開業科目

歯科医院を開業するにあたり、どの診療科目を軸とするかは経営戦略を左右する重要なポイントです。ここでは、代表的な5つの開業科目について解説します。

一般歯科

一般歯科は、歯科医院における最も基本的な診療科であり、虫歯や歯周病の治療、義歯の作製、歯のクリーニングなど幅広い治療を担います。保険診療を中心として多くの患者に対応できる点が特徴で、地域に根ざした医療として重要な役割を果たしています。さらに、より専門的な対応が必要と判断された場合には、矯正歯科や口腔外科などの専門医へ紹介する体制も整えられています。

提供される治療には以下のようなものが含まれます。

  • 虫歯や歯周病の治療
  • 義歯(入れ歯)の作製
  • 歯のクリーニングやメンテナンス

こうした診療は安定した来院数を期待できる一方、診療報酬が固定されているため、効率的な運営や患者満足度の向上が経営上の課題です。今後は、予防意識の高まりを踏まえ、定期検診やメンテナンスの質をいっそう高めることが、他院との差別化において重要になるでしょう。

小児歯科

小児歯科は、乳歯から永久歯への移行や成長にともなう特有の口腔トラブルに対応する診療科で、子どもの発育に即した専門的な対応が求められます。虫歯予防や初期治療に加え、噛み合わせや歯並びの経過観察、保護者への適切なブラッシング指導も重要です。治療に対する恐怖心を和らげるため、やさしい声かけや視覚的な安心感を意識した設計が欠かせません。

カラフルな内装や遊び心のある待合スペースを取り入れることで、子どもが通いやすい医院を実現できます。とくに住宅街や保育施設、学校の周辺といった、子育て世帯が多く集まる地域ではニーズが高く、立地が集患に直結します。

矯正歯科

矯正歯科は、歯並びや噛み合わせの改善を専門とする診療科で、審美性と機能性の両面から口腔環境の向上を目指します。自由診療が中心で治療単価が高く、収益確保の面でも注目されています。治療には長期間を要するため、患者との継続的な関係構築が重要です。また、紹介や口コミによって安定した集患が見込める点も、この診療科ならではの特長といえるでしょう。

矯正歯科での開業を検討する際には、次のような要素がポイントとなります。

  • 診療形態は保険適用外の自由診療が中心
  • 主な対象は中高生から成人までの審美意識が高い層
  • 治療費は数十万円から百万円超となることもある
  • 通院期間は数か月から数年に及ぶことが多い

ただし、矯正単科での開業は設備投資や人材確保のハードルが高いため、一般歯科と併設するケースが多いです。専門性を強みにするには、技術力の向上と他院との差別化が不可欠です。

口腔外科

口腔外科は、親知らずの抜歯や顎関節症、口内炎、舌や粘膜の異常など、一般歯科では対応が難しい症例を扱う診療科です。なかには口腔がんのような重篤な疾患もあり、大がかりな手術は病院の歯科口腔外科で行われるケースが一般的です。そのため、開業する際には高度な外科的処置能力が求められます。じっさい、診療所のうち約3割が口腔外科を標榜し、地域医療の要としての役割を担っています。

開業に際しては、CTやパノラマレントゲンといった画像診断機器の整備や、急変時の対応体制を構築しておくことが重要です。具体的な診療内容には、以下のようなものがあります。

  • 横向きや埋伏状態の親知らずに対する抜歯
  • 咬合やストレス要因を踏まえた顎関節症の診断と治療
  • 慢性化しやすい口内炎や粘膜疾患への精密検査と処置
  • 嚢胞摘出などの日帰り手術(局所麻酔下で実施)

他院との連携も活発であり、専門性を活かした地域貢献が期待される分野です。

審美歯科

審美歯科は、歯の色や形、歯並びなど口元の美しさを重視した自由診療型の診療科です。代表的な治療としてはホワイトニングやセラミック補綴、ラミネートベニアなどがあり、とくに美容意識の高い若年層やビジネスパーソンを中心にニーズが高まっています。都市部ではその傾向が顕著であり、開業の際には立地やターゲット層の明確化が重要です。

自由診療であるため高単価な治療が可能で、収益性の高さが期待されます。ただし、患者の選択肢が広い分、差別化が求められます。ブランディングの確立やDXの活用、オンライン集患の施策強化が成功のカギとなります。

なお、「審美歯科」という名称は広告規制上、標榜科目として認められていないため、看板や広告物に記載できません。治療内容としてWebサイトや院内掲示で案内する必要があります。

歯科医院の開業資金総額と平均相場

歯科医院の開業に必要な資金は、一般的に4,600万〜8,300万円程度とされています。必要な金額は診療方針や立地、物件の形態(テナントか戸建てか)によって大きく異なります。とくに都市部では設備費や物件価格が高騰しやすく、7,000万円を超えるケースも見られます。

とくにテナント物件で標準的な開業をおこなう場合、以下のような費用が想定されます。

費用項目 概算費用(目安)
医療機器費 1,500万〜3,000万円
内外装工事費 1,000万〜2,500万円
賃貸契約関連費用 500万〜1,000万円
広告・求人費 100万〜200万円
運転資金(6か月分) 約1,000万円
合計 4,600万〜8,300万円

じっさいの開業事例では、5,000万〜5,500万円程度でスタートしているケースが多く見られます。また、自己資金として1,000万〜2,000万円を用意するのが一般的です。

過度な節約は開業後の集患や経営安定に悪影響を及ぼす可能性があるため、初期段階から適切な投資をおこない、無理のない資金計画を立てることが重要です。

歯科医院開業に必要な資金の内訳

歯科医院を開業するには、医療機器の導入費や内装工事費、人件費、広告宣伝費など、多岐にわたる費用が発生します。ここでは、歯科医院開業に必要な資金の内訳について解説します。

医療機器・診療ユニットなど設備費

開業資金のなかで最も大きな比重をしめるのが、医療機器や診療ユニットを中心とした設備費です。相場は1,500万〜3,000万円程度で、ユニットの台数や機器の性能によって大きく異なります。診療ユニットを多く導入すれば、同時に対応できる患者数が増える反面、スペースや人員体制の確保も考慮しなければなりません。

具体的には、次のような設備が必要になります。

  • 診療ユニット(チェア・操作台・ライトなど)
  • レントゲン設備(パノラマ撮影やCT併設)
  • 滅菌・消毒機器(オートクレーブや器具洗浄器)
  • バキューム装置、エアーコンプレッサー
  • レセコンや電子カルテ、周辺機器類

初期費用をおさえるには、リース契約を活用する方法もあります。

内装・外装工事費

内装・外装工事費の相場は1,000万〜2,500万円程度です。診療スペースや受付、待合室といった院内全体の設計施工に加え、歯科特有の給排水設備や床上げ、電源の配置など専門的な工事が必要なため、他業種に比べて高額になりがちです。

また、患者に安心感を与える空間づくりも重要です。導線や照明、色彩設計の工夫は、医院全体の印象を大きく左右し、ブランディングにも影響します。とくに開業初期は認知度が低いため、印象に残る内外装が集患力を高める要素となり得ます。

このように、機能性とデザイン性の両立を図りつつ、限られた予算内で最適な工事内容を選定することが、成功へのカギといえるでしょう。

レントゲン・消毒滅菌機器などの導入費

歯科医院の開業においては、レントゲン設備や消毒・滅菌機器の導入も不可欠な投資となります。これらの設備は、患者の安全確保や感染症対策の観点からも重要度が高く、導入する機器の種類や性能によって費用は大きく変動します。たとえば、画像診断に用いられるパノラマレントゲンは約200万〜600万円、歯科用CTは約500万〜1,500万円、消毒関連ではオートクレーブが約50万〜150万円、ハンドピース滅菌器が約30万〜100万円かかるのが一般的です。

必要な機器の選定にあたっては、診療方針や自費診療の導入有無など、開業形態を踏まえたうえで慎重な判断が求められます。

広告・ホームページ制作などの販促費

歯科医院を開業する際には、地域住民への認知を早期に高めるための広告宣伝も必要です。ホームページ制作や看板の設置、チラシの配布に加え、近年ではSNSやSEO対策などのWeb施策も重要です。開業直後は知名度が低いため、集患に直結する販促活動には、ある程度の予算を見込んでおく必要があります。具体的な費用の目安としては、以下のような金額が想定されます。

  • ホームページ制作費:30万〜100万円
  • チラシ・リーフレット作成:3万〜30万円
  • 看板・外観サイン設置:10万〜50万円
  • Web広告・SEO対策:5万〜50万円

総額は100万〜200万円程度で、立地やターゲット層、施策内容によって変動しますが、費用対効果を意識した計画が重要です。

人件費・採用費

歯科医院の開業にあたっては、歯科衛生士や歯科助手、受付スタッフなどの人材を適切に確保することも大切です。なかでも優秀な人材を採用するには、求人広告の掲載や紹介会社の活用、面接の実施などで一定の費用が必要となり、一般的に50万〜150万円程度の採用コストがかかります。

さらに、開業後の運営を安定させるには、数か月分の人件費もあらかじめ準備しておくことが重要です。給与に加えて社会保険料などの法定福利費も発生するため、運転資金における負担は小さくありません。具体的には、スタッフの人数や雇用形態によって変動しますが、月額50万〜100万円程度となるケースが多く見られます。

人材の質は患者満足度や医院の評価に直結する要素でもあり、採用活動は単なるコストではなく、長期的な経営基盤を築くための投資といえるでしょう。こうした点を踏まえ、開業計画の段階から現実的な人件費のシミュレーションをおこない、無理のない資金配分を検討しておくことが成功への第一歩となります。

開業前後の運転資金

歯科医院を開業する際は、初期投資だけでなく、開業後の経営を支える「運転資金」の準備も必要です。診療報酬はレセプト請求からじっさいの入金までに約2か月のタイムラグがあり、その間も家賃や人件費、光熱費などの固定費は発生し続けます。このため、開業時には月間粗利益の6か月分、1,000万〜1,200万円程度を目安に運転資金を確保しておくことが推奨されます。

なかでも開業初期は患者数が安定せず、想定より収入が伸びないケースも少なくありません。したがって、赤字期間を乗り越える体力があるかどうかが、経営の安定に直結します。以下は、6か月分の運転資金の内訳例です。

費用項目 内容例 想定金額
人件費 スタッフ給与、社会保険料など 月額50万〜100万円
家賃・光熱費 物件賃料、水道光熱費など 月額30万〜50万円
雑費 消耗品、顧問料、システム利用料など 月額10万〜20万円
合計 上記の6か月分を想定 約1,000万〜1,200万円

このように、開業後の運営を見据えた余裕ある資金計画が、スムーズな立ち上がりと将来的な安定経営のカギを握るとなります。

歯科医院の開業資金の調達方法

歯科医院の開業には数千万円規模の初期投資が必要となるため、自己資金だけでまかなうのは現実的ではありません。ここでは、歯科医院の開業資金を調達する主な方法について解説します。

日本政策金融公庫からの融資を活用する

歯科医院の開業資金を調達する手段としては、日本政策金融公庫の「新規開業資金」が広く活用されています。低金利で長期返済が可能なうえ、原則として無担保での融資にも対応しており、自己資金が少ない場合でも利用しやすいのが特徴です。なかでも、設備資金は最大2,400万円、運転資金は最大4,800万円まで融資を受けられる可能性があります。

この制度を利用するには、以下の条件を満たす必要があります。

  • 融資対象:開業前または開業後7年以内の事業者
  • 融資上限:設備資金2,400万円、運転資金4,800万円
  • 返済期間:設備資金は最長20年、運転資金は最長10年
  • 担保・保証人:要相談
  • 必要書類:創業計画書、見積書、自己資金証明、本人確認書類など

なかでも創業計画書の内容と自己資金の準備状況は、融資審査に大きく影響します。融資を受ける可能性を高めるためには、専門家の支援を受けながら計画を練り上げることが重要です。

民間金融機関の事業融資を利用する

歯科医院の開業資金を調達する手段のひとつに、民間金融機関によるプロパー融資の活用もあります。プロパー融資とは、信用保証協会の保証を付けずに、銀行や信用金庫が独自の審査に基づいて貸し付けをおこなう融資制度です。信用保証が不要である分、審査基準はより厳格であり、無担保での融資が可能な場合もありますが、申請者の自己資金の有無や事業計画の完成度、経営者としての資質などが総合的に判断されます。

この融資制度にはいくつかの特徴があります。まず、融資元は地方銀行や信用金庫などの民間金融機関となり、無担保での借入限度額は最大5,000万円とされる場合があります。返済期間は用途によって異なり、内装費は最長15年、機材費は10年、運転資金は7〜10年が目安です。必要書類は、事業計画書、資金計画書、自己資金の証明などが求められ、審査においては返済能力に加え、事業の実現可能性や自己資金比率も重要な評価基準となります。

ただし、金融機関によって審査の基準や条件には違いがあるため、事前に複数の金融機関に相談し、歯科業界での融資実績が豊富な機関を選ぶと安心です。

自己資金と家族からの支援を組み合わせる

歯科医院の開業資金を準備する際には、自己資金に加えて家族からの支援を組み合わせる方法も現実的な選択肢です。自己資金は全体の20〜30%、おおよそ500万〜1,000万円を確保するのが理想とされ、金融機関の融資審査でも信用度を示す重要な要素となります。

親や配偶者などからの援助や借入は柔軟な資金源となりますが、年間110万円を超える場合は贈与税の対象となるため注意が必要です。トラブルを避けるには、金銭貸借契約書を交わし、条件や返済内容を明記しておくと安心です。また、預貯金通帳による積立実績があれば、信用力の裏付けとして有利に働く可能性もあります。

補助金・助成金制度を申請する

歯科医院の開業時には、返済不要の補助金や助成金を活用することで、自己資金や融資による負担を軽減できます。対象は、設備導入、雇用支援、IT化推進など多岐にわたり、開業支援として実績のある制度も多く存在します。

なかでも、次の5つは活用事例が豊富で、支援内容も明確です。

  • 地域創生推進交付金など自治体の創業支援制度:詳細は各自治体に要確認
  • トライアル雇用助成金:月額最大4万円(3か月間)
  • キャリアアップ助成金:非正規から正社員化で1人あたり最大57万円(中小企業の場合。要件を満たせば72万円)
  • 事業承継・引継ぎ補助金:補助率は原則1/2だが、条件を満たせば600万円まで2/3(上限800万円、超過分は1/2)。創業や代替わり、M&A型にも対応
  • IT導入補助金:上限額や対象は年度により変更(最新情報は公式サイトで要確認)

多くは開業後に申請可能ですが、審査に通過するには事業計画の完成度が重要です。申請時には税理士やコンサルタントの助言を得ながら、適切な制度を選定するとよいでしょう。

リースや割賦を利用して設備資金を調達する

歯科医院の開業には、診療ユニットやレントゲン装置など高額な医療機器の導入が必要です。これらの初期費用をおさえる方法として、リース契約や割賦払いの利用が効果的とされています。リースは機器を借りる形式で、毎月の定額支払いにより資金繰りの見通しが立てやすく、初期費用の負担軽減にもつながります。一方、割賦販売は分割払いで機器を購入し、支払い完了後に所有権を取得できる点が特徴です。

両者の主な違いは以下のとおりです。

項目 リース 割賦販売
所有権 リース会社に帰属 支払い完了後に買主へ移転
会計処理 全額を経費処理可能 固定資産として計上
契約期間 一定期間(例:5〜7年) 支払い完了まで(原則、中途解約可)
主なメリット 初期費用不要・資金繰りが容易 所有権取得による長期的なコスト抑制が可能

このように、それぞれの仕組みには明確な違いがあり、資金計画や経営方針に応じて選択することが求められます。なお、どちらを選ぶ場合でも、契約内容や金利、解約条件などを事前に十分に確認することが大切です。

歯科医院の開業ステップとスケジュール

歯科医院の開業には、診療コンセプトの策定から物件選定、スタッフ採用、各種届出まで、多くの準備工程を段階的に進める必要があります。ここでは、歯科医院を開業するまでのステップとスケジュールについて解説します。

開業1年以上前:診療コンセプト決定と市場調査の開始

歯科医院の開業を検討する場合は、少なくとも1年以上前から診療コンセプトの策定と市場調査をはじめるのが望ましいです。「どのような診療を誰に提供するのか」という軸を明確にし、医院の方向性を定める必要があります。そのうえで、構想が現実的かを見極めるため、候補エリアの人口動態や競合医院の分布、将来的な開発計画の有無といった外的要因を分析します。

理想を追求する姿勢も重要ですが、地域の実情とニーズに合ったコンセプトでなければ継続的な集患にはつながりません。そのため、計画段階から複数の要素を客観的に検討しておくことが不可欠です。初期段階で確認しておきたい代表的な観点は以下のとおりです。

  • 診療コンセプト:小児歯科特化型、予防重視型、自由診療中心型など
  • 想定する患者層:ファミリー層、働く世代、高齢者など
  • 調査項目の例:地域の人口構成、既存医院の数、将来的な再開発計画など
  • 立地判断の基準:人口密度、駅やバス停からの距離、駐車場の有無など

これらの情報を整理することで、開業の方向性がより現実的に固まり、その後の事業計画や資金計画にも一貫性を持たせやすくなります。構想段階の質が、最終的な医院経営の安定性を左右する要素となるでしょう。

開業6〜12か月前:事業計画書の作成と資金調達準備

開業1年前を切るこの時期には、具体的な計画を形にしていく段階へと移行します。診療方針や人員体制、収支予測を含めた事業計画書を作成し、金融機関との融資交渉に備えることが重要です。日本政策金融公庫や民間銀行と面談する際、この計画書の完成度が審査の大きな判断材料となるため、内容の整備には十分な時間をかける必要があります。

また、医療機器や内装工事の見積もりを取り、必要資金を明確にしておくことも欠かせません。

さらに、歯科医師会や厚生局との相談、開業支援をおこなうコンサルタントへの依頼についても、この時期から検討をはじめるとスムーズです。

開業6か月前:物件契約と設計・内装プランの確定

開業6か月前には、物件の本契約と内装設計の確定が求められます。診療コンセプトとの整合性を再確認し、床面積や構造、電気容量などを確認したうえで契約を締結します。その後、診療ユニットの配置や動線設計、待合スペースの構成など、機能性とデザイン性を考慮したプランを具体化させることが重要です。

内装業者とは設備搬入の時期や工期の目安を含め、詳細に打ち合わせをおこないましょう。たとえば、以下の点を事前に整理しておくと、設計や施工の精度が高まります。

  • 床荷重、電気容量、給排水の有無など物件条件
  • チェアの台数や診療・待合動線を意識したレイアウト
  • ロゴ、照明、配色を含む意匠デザイン
  • 着工日や設備搬入日を含めた工事スケジュール

この時期の判断は後の工程に大きく影響するため、慎重かつ計画的に進めることが不可欠です。

開業3〜4か月前:医療機器の発注・スタッフ募集開始

開業の3〜4か月前には、内装工事の着工と並行して、医療機器の発注やスタッフの募集を本格的に進めます。なかでもレントゲンやユニットといった大型機器は、搬入から設置までに時間を要するため、内装の進行状況を踏まえて納品時期を調整することが重要です。

また、歯科衛生士や歯科助手などの採用活動も、この時期から具体的にはじめるのが望ましいといえます。早期に内定を出すことで、開業までに研修をおこなう余裕が生まれ、スムーズな立ち上げにつながります。さらに、診療に必要な消耗品の発注先を決定し、契約手続きを進めておく必要があります。

このほか、ホームページの制作やSNSの開設準備など、集患に向けた取り組みも並行して進めましょう。医院のコンセプトに合致した機器や備品、人材を選定することが、開業後の一貫性ある運営につながります。

開業1〜2か月前:各種届出・広告宣伝・内覧会準備

開業の1〜2か月前は、各種届出や広告宣伝、内覧会の準備など、仕上げの工程が一気に集中する時期です。保健所・厚生局・税務署への必要書類を確実に提出しなければなりません。とくに「診療所開設届」「保険医療機関指定申請書」「個人事業の開業届出書」などは提出期限が明確に定められており、後回しにすると開業スケジュールに影響するおそれがあります。

また、地域住民への周知と集患を目的に、内覧会の開催も検討するとよいでしょう。チラシのポスティングやWeb広告、SNSの活用など、多様な手段を組み合わせて告知することが効果的です。さらに、採用済みスタッフの研修も並行して実施すると安心です。

この時期におこなう主な準備は、以下のように整理できます。

  • 届出関連:保健所・厚生局・税務署などへ必要書類を提出
  • 広告宣伝:チラシ配布やWeb広告、SNSによる地域への情報発信
  • 内覧会準備:開催日の決定、会場の装飾、案内資料の作成
  • スタッフ対応:研修の実施と業務マニュアルの最終確認

こうした対応を計画的に進めておくことで、開業当日をスムーズに迎えることができます。

開業後1〜3か月:集患施策の実行と初期運営の安定化

開業後の1〜3か月は、これまでに準備してきた集患施策を実行し、医院運営の基盤を整えていく大切な期間です。Web広告やSNS運用、ポータルサイトへの掲載を活用し、地域での認知度を着実に高めましょう。Googleマップへの登録や口コミへの対応も効果的です。

来院した患者には丁寧なカウンセリングと温かみのある対応を心がけ、「かかりつけ医」としての信頼を育てていきます。さらに、再来を促す仕組みとして、初診後の定期検診案内やリマインド通知の活用も重要です。こうした取り組みによって再診率の向上も期待できます。

一方、じっさいの運営がはじまることで見えてくる課題もあるため、日々のオペレーションやスタッフの連携体制を振り返り、マニュアルの見直しや業務フローの改善を図ることが欠かせません。現場の声を反映しながら、柔軟に体制を整えることが今後の成長に直結します。

歯科医院の開業で失敗しないための注意点

歯科医院の開業には、多額の初期投資や複雑な手続きがともなうだけでなく、経営判断を誤ることで早期の閉院リスクもあります。ここでは、歯科医院の開業を成功させるためにおさえておきたい主な注意点を解説します。

資金計画は複数シナリオで試算し、運転資金を十分に確保する

資金計画を立てる際には、ひとつの理想的なケースだけでなく、「最悪」「平均」「最良」といった複数のシナリオを想定し、それぞれの収支をシミュレーションしておく必要があります。じっさいには、開業直後から想定どおりの患者数を確保できることは稀であり、診療報酬の入金にも2か月ほどのタイムラグがあるため、楽観的すぎる計画は資金繰りの悪化を招きかねません。

とくに初年度は患者数が安定しにくいため、家賃や人件費といった固定費に対応できるだけの運転資金を用意しておくことが重要です。目安としては、以下のような試算が参考になります。

費用項目 月額目安 6か月分の目安
人件費 50〜150万円 300〜600万円
家賃・光熱費 30〜80万円 180〜300万円
雑費・その他 10〜50万円 60〜120万円
合計 90〜280万円 540〜1,020万円

複数のケースを想定した資金計画と、保守的な見積もりによる運転資金の確保が、安定した経営の土台となります。

立地選定は人口動態・競合状況・交通アクセスを総合的に分析する

歯科医院の開業では、立地選定が成功を大きく左右する要素となります。なかでも重視すべきは、診療圏内の人口構成や年齢層、昼夜間人口の差などの人口動態です。さらに、競合医院の数や診療内容、診療時間の特徴なども分析し、自院ならではの差別化方針を立てることが求められます。また、交通アクセスの良否も来院のしやすさに直結するため、以下の観点から総合的に判断する必要があります。

  • 駅からの距離やバス路線の有無
  • 駐車場の有無と利便性
  • 周辺に学校や商業施設、住宅地があるか

事前には現地を複数回訪れ、時間帯ごとの人の流れを観察することも大切です。これらの調査結果をもとに、実現可能かつ将来性のある立地を見極めましょう。

診療コンセプトとターゲット層は開業前に明確化し一貫性を保つ

歯科医院の開業を成功へ導くには、診療コンセプトとターゲット層の明確化が欠かせません。開業前の早い段階で「どのような価値を誰に届けるのか」を定義することで、物件選定や内装設計、広告戦略、スタッフ採用といった各工程に一貫性を持たせやすくなります。とくに競合が集中する都市部では、患者がその医院を選ぶ必然性を示すことが重要であり、診療方針や提供サービスに独自性を持たせる必要があります。

この段階で整理しておきたい視点例は以下のとおりです。

  • 診療コンセプト:予防重視型、小児歯科特化、自由診療中心型など
  • ターゲット層:子育て世代、働く女性、高齢者、審美志向の若年層など
  • 差別化の要素:診療時間、専門性、院内設備、接遇方針など

これらを開業前に定めておくことで、意思決定に迷いが生じにくくなり、開業後も一貫した運営姿勢を保つことができます。

医療機器や内装は段階導入で、初期投資を最小限におさえる

歯科医院を開業する際には、すべての医療機器や設備を一度に整える必要はありません。診療スタイルや見込まれる患者数に応じて、段階的に導入を進めることで初期投資をおさえられます。たとえば、診療ユニットは開業時に最低限の2台を備え、CTやセファロといった高額機器は、収益が安定してから追加導入を検討するのが現実的です。

また、内装工事の段階で将来的な設備増設を見越した設計にしておくと、再施工時の費用をおさえられます。以下に示すように、導入時期の目安を明確にしておくことが、無理のない設備投資と健全な資金運用につながります。

導入項目 優先度 導入時期の目安
診療ユニット(2台) 開業時
CT・セファロ機器 開業後1〜2年目以降
追加ユニット(3台目以降) 中〜低 患者数の増加に応じて検討
専用自費診療ルーム 自由診療拡大フェーズで導入

このように、収益や診療体制の変化に応じて柔軟に設備を拡充する姿勢が、持続可能な経営の基盤を支えるカギとなります。

スタッフ採用は適性重視でおこない、開業前研修とマニュアル整備を徹底する

開業時のスタッフ採用では、単なる即戦力にとどまらず、医院の理念や方針に共感し順応できる「適性」を重視することが大切です。とくに少人数で運営される歯科医院では、スタッフ同士の相性やチームとしての連携が、院内の雰囲気や患者の満足度に直結します。

採用後は、現場の混乱を防ぎ、業務の属人化を避けるためにも、統一された業務マニュアルの整備と十分な研修期間の確保が必要です。準備不足のまま開業を迎えると、業務の不安定さが離職やクレームといった問題に発展しかねません。以下に、採用から研修までの主なポイントを挙げます。

  • 医院理念に基づく人物像を明確化し、採用時の評価項目を具体的に設定する
  • 面接では、協調性や学習意欲、ストレス耐性などを具体的な質問で確認する
  • 院内ルールや接遇マナー、業務フローなどを、OJTやロールプレイで共有する
  • 診療補助や受付対応、クレーム発生時の対応内容をマニュアル化し、スタッフ間の認識を統一する

こうした採用と教育の両輪をバランスよく整備することで、職場環境の安定や人材の定着につながり、結果として患者の信頼獲得にも貢献します。

集患はWeb・口コミ・地域連携を組み合わせ、効果測定を定期的におこなう

集患施策を成功させるには、Web、口コミ、地域連携という三つの軸をバランスよく活用することが大切です。Web施策では、ホームページやSNS運用、MEO(Googleマップ上位表示)対策が患者の検索行動に直接訴求する手段として効果的です。口コミは信頼構築において重要な役割を果たし、高評価の獲得と丁寧な返信対応が来院の後押しにつながります。加えて、内覧会の実施や地域イベントへの参加、チラシの配布など地域密着型の施策も、幅広い層への認知拡大に有効です。

こうした取り組みをおこなう際は、効果を客観的に把握するための指標設定が不可欠です。アクセス数や予約数、口コミの件数や評価といった数値をもとに定期的に分析し、PDCAを継続的に回すことが医院の成長につながります。下記に、主な施策とそれぞれの評価指標を示します。

施策分類 具体例 効果測定の指標
Web施策 HP、SNS、MEO アクセス数、検索順位
口コミ施策 Googleレビュー対応 評価数、星の平均値
地域施策 内覧会、チラシ配布 予約数、来場数

計画的な準備と戦略で歯科医院開業を成功させよう

歯科医院の開業は、単に資金を用意して開業日を迎えるだけでは成功しません。業界動向や診療スタイル、開業時期、科目の選定に加え、資金計画や人材確保、マーケティング施策までをトータルで設計することが求められます。とくに近年は、医療法人化や自由診療ニーズの高まりなど、経営環境の変化も大きいため、開業後の成長には時代に合った柔軟な戦略が欠かせません。

また、開業準備の各ステップを段階的に進めることで、初期投資の負担をおさえつつ、確実な立ち上がりが可能になります。本記事で紹介した内容を参考に、事前の計画と戦略立案をしっかりとおこない、自身の理想と地域ニーズに応える歯科医院を実現させましょう。


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歯科医院開業には、数千万円の資金調達、立地選定、医療機器の選定、各種許可申請、スタッフ採用戦略など、医療業界特有の専門知識が必要な課題が数多くあります。一人ですべてを解決しようとすると、重要な手続きを見落としてしまい、開業が大幅に遅れたり予算オーバーになる可能性があります。

ドリームゲートでは、歯科医院開業に精通した専門家が、あなたの状況に合わせた具体的なアドバイスを無料で提供いたします。開業準備をスムーズに進めるために、ぜひお気軽にご相談ください。


執筆者プロフィール:ドリームゲート事務局

ドリームゲートは経済産業省の後援を受けて2003年4月に発足した日本最大級の起業支援プラットフォームです。
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