抗体医薬専門のバイオベンチャー。
独自技術で、がん治療に貢献する

この記事はに専門家 によって監修されました。

執筆者: 東 雄介 編集:菊池 徳行(ハイキックス)

抗体医薬の標的分子を探し、
製薬会社にリード抗体を導出する

事業や製品・サービスの紹介

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株式会社オーダーメードメディカルリサーチは、抗体医薬の研究開発を進めるバイオテックベンチャーだ。抗体医薬とは、その名のとおり抗体を利用した医薬品のことをいう。人間の体内では日々、がん細胞ができているが、免疫の働きによりガンの発症が抑えられている。このとき、特定の異物にある抗原と結びつき、その異物を除去するという重要な働きを担っているのが抗体だ。

抗体医薬品は、がん細胞などの細胞表面の目印となる抗原(標的分子)だけを狙い撃ちできる抗体を開発し、これを大量に作成、投与することで高い治療効果と副作用の軽減を期待するものだ。さらにいえば、化学合成技術を用いた従来の低分子医薬品が、開発から実用に至るまで1000億円規模の費用がかかるのに対し、高分子医薬品(バイオ医薬品)に分類される抗体医薬は、低予算かつスピーディに抗体医薬を開発可能。そのため、ベンチャー企業が取り組みやすい分野ともいえる。

同社のビジネスは、抗体医薬の標的分子を探し、医薬品の候補となる「リード抗体」を早い段階で製薬会社に導出することを目指すものだ。最初に導出した抗体は大腸ガンや乳がんの治療用抗体だった。「S1」というコード名が付せられている。

独自の「リマクシス法」で、
抗体作製の技術が飛躍的に向上

対象市場と優位性

「抗体医薬はベンチャー企業が取り組みやすい」と期待されながら、その実、研究開発が進んでいなかった。その背景には、こんな事情がある。2003年にヒトゲノム解析が完了したことの恩恵を受け、標的分子の探索は容易になった反面、抗体作成の技術は未熟なまま。というのも、がん治療の抗体医薬開発においては、がん細胞の細胞膜上に存在する膜タンパク質が重要な標的とされる。しかし従来の技術では、一部の膜タンパク(約20種)を標的にするのみだった。

同社の優位性は、この問題を独自の抗体作製法「LIMAXYS(リマクシス)法」で解決したことだ。結果、理論上すべての膜タンパク質(5600種)に対して抗体を作製できるようになったという。つまり標的分子の増加に、ようやく抗体作製の技術が追いついた、というわけだ。そして、抗体医薬品を開発したい大手製薬会社は、オーダーメードメディカルリサーチを頼みにする。

抗体医薬の市場規模は、国内では数千億円規模にとどまっている。だが、同社のビジネスは、これを数倍、数十倍へと一気に引き上げるポテンシャルを秘めているといえるだろう。

海外進出を果たし、
抗体医薬市場の拡大に尽力する

事業にかける思い

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同社の村上康文代表は、東京理科大学の教授としての顔も持つ。長らく、画期的ながん治療薬の研究をライフワークとしてきた。「創薬のターゲットは、ネット上のデータベースを見ればすぐに見つかります。しかし、抗体作製は驚くほど誰もやっていない。誰もやっていないなら、私がやろうと思い、起業に踏み切りました」。大学とベンチャー、この2つは抗体医薬の開発にあたってそれぞれ異なる役割を果たしているという。

「標的を見つけて抗体をつくるところまでは会社がやります。そこで薬効があるとわかれば、すぐ薬になる。でも、どのようなメカニズムで薬効が生まれているのか、そこを追求するのは、東京理科大学の研究室、というわけです」

今後も、新しいリード抗体の導出を目指す。また「既存の抗体医薬品にリマクシス法を用いれば、格段に質が向上する」として、パートナーとなる製薬会社を模索中だ。

「もっというと、抗体医薬のトレンドは今なお海外にある。資金調達をするにも、海外にアプローチしたほうが話は早いというのが現状です。ですから今後は、海外展開も。上場するなら東証マザーズよりも米国ナスダックだ!と意気込んでいます。会社をできるだけ早く成長させ、抗体医薬市場そのものを拡大できるよう力を尽くすつもりです」

株式会社オーダーメードメディカルリサーチ
代表者:村上 康文 氏 設立:2012年4月
URL:http://www.omr.co.jp スタッフ数:11名
事業内容:
LIMAXYS(リマクシス)法を用いた抗体医薬の研究開発
これまでの資金調達額(出資額)と主な投資会社名:
ベンチャーキャピタル3社から約6億円。
ILS2017 大手企業との商談数:
4社

当記事の内容は 2018/8/7 時点のもので、該当のサービス内容が変わっていたり、サービス自体が停止している場合もございますので、あらかじめご了承ください。

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