IoTとAIによる“空席情報発信”サービスで、
「人は多いが、混雑はない」未来をつくる

この記事はに専門家 によって監修されました。

執筆者: 馬島利花 編集:菊池 徳行(ハイキックス)

もう行列に並ぶ必要はなくなる!?
事前に”空き”が確認できるように

事業や製品・サービスの紹介

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駆け込んだトイレに行列ができていたり、ふらっと入ったカフェが満席だったり――そんな、「行ってみたけど、駄目だった」という経験が誰にでもあるだろう。こうした不便を解消するために立ち上がったのが、株式会社バカン。IoTとAIを活用し、あらゆる空席情報をリアルタイムで発信するサービスを展開する。

そのサービスの一つが、トイレの空き状況を発信する「Throne(スローン)」だ。このサービスは、トイレの個室に取りつけられたセンサー(IoT)により室内の人の有無を判別し、その情報をパソコンやスマートフォンに送ってくれるというもの。「Throne」を導入したオフィスで働く従業員は、仕事中にトイレに行きたくなった際、パソコンやスマートフォンで空き状況を確認してから席を立つことができる。

さらに、同社は「Throne」の技術を進化させ、トイレだけでなく飲食店や商業施設などのさまざまな空席情報を発信するサービス「VACAN(バカン)」を開発。このサービスは、センサー(IoT)やカメラの画像認識(AI)、あるいは手入力(人)により得た空席情報をサーバーに送り、デジタルサイネージ(電子看板)に映し出す仕組みになっている。「VACAN」を導入した商業施設では、ランチに訪れた客が、施設内の空いている飲食店を瞬時に選別することができるというわけだ。

6つの特許技術を大きな強みに!
複数の大手企業と共同で実証実験進行中

対象市場と優位性

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同様のサービスは、これまでまったく存在しなかったわけではない。例えば、IoTを活用してトイレの空き状況を発信する仕組みは、社内プロジェクトや個人の趣味レベルでは数年前から存在していた。しかし、製品として展開されるようになったのは、ごく最近のこと。現在は、同社含め十数社が参入しているとみられ、市場規模はおよそ200億円と予測される。

そんななか、同社は他社には真似できない新しい技術を生み出し、サービスに落とし込むことで差別化を図る。これまで、計6つの技術で特許を取得してきた。そのひとつが、「Air Knock(エアノック)」という技術。これは、トイレに必要以上に長居している人に対して、ドアをノックするのと同じようなアクション――例えば、個室内に滞在時間や待ち人数を表示するなどして、善意に訴えかけて行動させるというもの。今後、この技術をサービスに組み込み、行列解消の一助として役立てていく予定だ。

同社は2018年1月の「VACAN」販売開始を目指し、相鉄グループや株式会社高島屋など複数の企業の協力を得て、実証実験およびアップデートを行ってきた。現在も、東日本旅客鉄道株式会社と共同で、JR大宮駅に点在するカフェやレストラン、みどりの窓口などの空き状況が一目でわかるデジタルサイネージを駅構内に設置し、新たな実証実験を進めている。

「もっと家族と楽しむ時間を大切にしたい」。
子育て経験がアイデア発想のきっかけに

事業にかける思い

そもそも、同社のサービスはどのようにして生まれたのか。代表の河野剛進氏によれば、自身の子どもが生まれ、子育てを始めたことが発想のきっかけになったのだという。

「当時、仕事が忙しいなかで、いかに無駄な時間を減らし、家族と過ごす時間を大切にするかが課題でした。例えば、子連れで商業施設に遊びに行くと、トイレや飲食店などで行列に巻き込まれることがあります。そうすると、子どもがぐずり出したり、泣き出したりして大変なんです。そういう時間を少しでも減らし、家族で楽しむ時間を充実させるにはどうすればいいか。そういった観点から、空席情報の発信サービスが生まれました」

たった一人でスタートを切り、徐々に仲間を増やしていったという河野氏。何もないところから、地道にチャレンジを続けた結果、「少しずつ大手企業からも応援していただけるようになり、人を紹介していただいたり、アドバイスをいただいたりできるようになった」。今、どんな未来を描いているのか。

「まずは、来年から始まるプロダクト販売を成功させること。続いて、2〜3年後にはグローバル展開、5年後にはIPOを実現させていきたいです。そして、空席情報の発信サービスを広く社会に浸透させ、”カフェ難民”、”ランチ難民”といった言葉が死語となるような未来を目指したい。『人は多いが、混雑はない』――そんな世の中づくりに貢献できるといいですね」

株式会社バカン
代表者:河野剛進 氏 設立:2016年4月創業、同年6月設立
URL:https://www.vacancorp.com スタッフ数:5名
事業内容:
IoT・AIを活用した空席情報プラットフォーム開発・提供
これまでの資金調達額(出資額)と主な投資会社名:
株式会社ベータカタリスト(金額は非公開) 
ILS2017 大手企業との商談数:
7社

当記事の内容は 2017/12/19 時点のもので、該当のサービス内容が変わっていたり、サービス自体が停止している場合もございますので、あらかじめご了承ください。

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