発電する巻物にエネくじなど、ユニークな商品を発信中のエネルギーベンチャー、みんな電力株式会社

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執筆者: ドリームゲート事務局

電力が「見える」、「選べる」!? みんな電力株式会社が打ち出す、新しい電力流通のカタチ
展開している事業内容・特徴

20150330-1東日本大震災を機に電気に関する考え方、市場動向は大きく様変わりした。政府が掲げるエネルギー基本計画では、2020年に総発電電力量の13.5%相当を再生可能エネルギーによってまかなうことを目標にしている。

官民挙げて再生エネルギー界隈の熱は高まる一方であり、ユニークなエネルギーベンチャーも次々と登場している。今回紹介するベンチャーは、ソーシャル・エネルギー・カンパニーをコンセプトに掲げる「みんな電力株式会社」だ。

さまざまな事業を展開する同社だが、2014年10月にシート状で巻いて持ち歩けるポータブル太陽光発電装置「solamaki(ソラマキ)」を発売した。わずか100gという軽さだが、iPhone1台を5時間でフル充電できるという。価格は19800円(税込)と少々値が張るものの、発売後の半年間で約1000台を販売するなど、好調な滑り出しをみせている。

同社が展開している事業は、「パーソナルエネルギー」・「次世代エネルギー」・「電源開発」・「新電力(PPS)」の4種類。一般的に電力会社というと、固いイメージがあるが、同社の印象はそれとは正反対だ。

まずパーソナルエネルギー事業では、デザイン性の高いソーラー充電器の開発販売やコミュニティサイト運営、さらに業界初の自然エネルギーアイドルユニット「エネドル」もプロデュースしている。

そして、同社が今後の事業の中核として考えているのが、新電力(PPS)。2016年には電力自由化がスタートする予定で、これにより自由に小売電力の売買ができるようになり電力を自分自身で選べるようになる。

同社が狙っているのは、電力自由化に向けた今までにない電力流通システムおよびアプリを開発する事業であり、いわば電力売買のプラットフォームづくり。 “グリーン電力版マーケットプレイス”の創出なのである。

クラウドを活用した同システムは、全国各地の電力小売事業者とユーザーを結ぶ。そして、ユーザーは任意の事業者から電力を購入できる仕組みだが、ただそれだけではない。最大の特徴は「電力を高付加価値化」させていること。例えば、福島県の事業者から電力を買えば桃が、新潟県の事業者では米や魚介がといった具合に、特定の地域の特産品等をもらえる仕組みなのである。ユーザーは今までのように、気づかないうちに供給された電力を使い料金を支払うのではなく、自らの意思で選べるようになる。

つまり、電力の「見える化」である。この「見える化」と「選ぶ」行為が担う役割は非常に大きい。電力購入だけで、例えば故郷の応援や地域交流・振興、あるいは復興支援につながっていく。また事業者側にとっても事業者は自分のつくった電力がどこでどう使われているかがわかり、モチベーションとなることは間違いない。事業者間の交流も生まれるだろう。同システムは、電力自由化にフィットするのみではなく、電力を軸にして、社会の活性化を促す壮大なサービスなのだ。

リリースは、電力自由化のタイミングに合わせ、エンタープライズサービスを先発に、その直後コンシューマーサービスとして予定。企業への投下で、グリーン電力の存在感を広くアピールしていく。

かのApple社ではデータセンターで使用する電力のすべてをグリーン電力に、Google社は業務で仕様する電力の30パーセントをグリーン電力でカバーしているという。これらの動きからもわかるように、自然エネルギーへのシフトは世界的な動向である。

歴史的な電力不足で自らのアイデアの重要性を実感! 社会とリンクしたサービスが会社を急成長させていく
ビジネスアイデア発想のきっかけ

20150330-2みんな電力株式会社の代表取締役を務める大石英司氏。前職の凸版印刷では、出版デジタル機構で知られるBitwayなど、新規事業担当者としてさまざまな事業の立ち上げに携わっていた中、現在のビジネスアイデアを閃いた。そのきっかけを大石氏はこう語る。

「2007年ごろだったと思いますが、最初は地下鉄の中でのことなんです。有楽町線に乗っていて、携帯電話の充電が切れそうでした。どうしようかと端末を見ていると、ふと目の前に座っている女性のカバンが気になった。というのも、そのカバンにはソーラーの小型充電器が付いていたんですね。それで、『その電気を売って欲しい』と思ったわけです(笑)。もちろん、実際に頼んで購入したわけではありませんが、そのとき誰もが自由に電力を売買できる仕組みをつくったらどうか? と閃きました。手軽に電気をつくれ、得をする。そして、電気を持っている人の背景やビジュアルによってバリューが異なる新しい仕組みがあったら面白いんじゃないかと。それがきっかけですね。また、会社での仕事も、アイデアに拍車をかけました。各種新規事業の立ち上げから、産業に深く寄与できるような事業を立ち上げたいと考えるようになり、エネルギーに着目していたんです。これらが結びつき、現在のビジネスモデルに至りました」

さっそく、大石氏は「エネルギー事業」として構想をスキーム化。プロジェクトを立ち上げ、推進させていった。だが、プロジェクトを社内でアクティブに行うにはいくつものハードルがあり、しだいに進捗を得ることが難しくなっていったという。

そんななか、今も記憶に新しい東日本大震災と福島の原発事故が起こった。当時、日本の電力の30パーセントを占める原子力発電所のすべてがストップし、歴史的な電力供不安に陥った。この事態を受け、大石氏はこのエネルギープロジェクトは社会的な使命があると思い至り、大震災から2ヶ月後に「みんな電力」を立ち上げた。

業界にイノベーションを起こすべく、創業時にまず始めたのは、とにかく知名度を得ること。エネギャルを結成し、ひたすらPRと啓蒙に奔走した。それが注目を集め、有志が集まり、事業資金も得た。それをもとに、凸版印刷時代に練っていたアイデアを具現化。

自社サービス第1弾となる、手のひらサイズのソーラー充電器「手のひら発電 空野めぐみ」を開発・販売する。世界初のお財布ケータイ機能を搭載した同ツール。スマホをかざすと充電量によってポイントが貯まり、さまざまなグッズと交換できる機能がユーザーを掴み、リリースした150台は瞬く間に完売。みんな電力の名は着実に広まっていった。

しかし、資金繰りは、難航の連続だったそうだ。“手のひらソーラー”の再出荷も先が見えない状態が続いた。だが、同社のユニークかつインパクトある事業が業界に広く知られたことで、やがて転機が訪れる。

以前より、PPS導入や自然エネルギーの活用に積極的に取り組んでいた世田谷区との連携である。同社は、担当官庁、新電力企業、識者等を招き、フォーラムを開催する「世田谷新電力研究会」の事務局に任命。2013年に主催した「世田谷発 電力を選べる世界へ」では、約350人もの区民が、「同、〜ビジネス編〜」では約70もの企業・団体が参加し、好評を博す。

その後、ソーラーやメガソーラ建設依頼やコンサル等の引き合いも増え、急成長を遂げていく。第3期となる2014年には、SMBCベンチャーキャピタルへの第三者割当増資を実施。5000万円の資金調達に成功した。

また、集合住宅のベランダにソーラー発電を導入・普及させる「コミュニティ型ベランダソーラーの研究開発」を世田谷区、NEDO、中部大学の協業で開始させる等々、さまざまなプロジェクトが生み、推進していった。

2015年4月時点で、スタッフ数は14人。ソーラー、バイオマス、水力発電等々・・・、あらゆる電力に精通する技術者が集っている。

大石氏によれば「もともと電力業界に身を置く人間ではなかったから」ことが幸いして、「こだわりや垣根がない」視点を持てたからこそ、さまざまなカテゴリーのプロフェッショナルたちの賛同を得ることができたのではと、振り返る。

電力の見える化から始まる新しい社会。次世代社会に深く根ざす、画期的なシステムの研究を推し進める
将来への展望

みんな電力は、来る「選べる時代」に向け、急ピッチで事業を押し進めている。PPS事業でもっとも注力するのは、汎用性の高いシステムの構築。電力自由化は、未だその制度のすべてが確定されているわけではなく、直前に改正や制度が追加される可能性も多分にある。そこで、どのような内容になっても柔軟に対応できるシステムをめざす。

また、「見える電力」の市場創出の一環として、直近では、未利用木材に着目したバイオマス発電にも着手。2015年4月以降から小型バイオマス発電施設の開設・運営事業をスタートさせ、2017年内までに50億円の売り上げを見込む。また、この事業も見える化システム同様、未利用木材の収集や運搬、植樹等、さまざまな雇用を生み、電力をつくるだけではなく、地域活性化に寄与する事業として期待されている。

取材の最後に将来の展望を大石氏はこう語ってくれた。

「事業のビジョンは、創業当初からのテーマ『おじいちゃんからちびっ子まで、そして地域も、電力を創り、財を得られる仕組み・環境創出』の実現です。2019年まで、電力を選べるシステムでシェアを獲得したら、送電線を介さない電力流通の仕組みをリリースしたいと考えています。具体的には、“電力の露店”のような、誰もがデバイスを使って手軽に電気を貯め、それを売り買いできる環境の整備ですね。現在、次世代エネルギー事業の中でプロダクト化していて、京都大学との産学連携で研究に着手しています。会社としては、例えば社会的貢献度の高いサービスを展開する会社への電力の投資も見据えています。また、教育にも積極的に取り組んでいきたいと考えていて、光熱費の中で1番コストがかかる電力を無料供給し、その分を子どもたちの学習にあててもらえるような環境をつくっていきたいですね。新しい電力時代のフロントランナーとして、よりよい次世代社会の実現に貢献していきます。」

みんな電力株式会社
代表者:大石 英司氏 設立:2011年5月
URL:
http://minden.co.jp/
スタッフ数:14名
事業内容:
電源開発事業
新電力(PPS)事業
次世代エネルギー事業
パーソナルエネルギー事業

当記事の内容は 2015/4/7時点のもので、該当のサービス内容が変わっていたり、サービス自体が停止している場合もございますので、あらかじめご了承ください。

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