1年で約1万社が採用。無料予約システムやサロン直前予約アプリで、スモールビジネスの業務システム市場を狙うベンチャー「Coubic(クービック)」

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執筆者: ドリームゲート事務局

テスラモーターズの試乗会予約システムで磨き上げた予約サービス「Coubic」。サロン当日・直前予約アプリ「Popcorn」もリリース
展開している事業内容・特徴

20150305-42014年4月にリリースされ、2015年2月時点で導入数1万社も目前という大人気の予約システム「Coubic(クービック)」。開発・運営元のクービック株式会社は、2013年10月に設立されたばかりのベンチャーだ。

イベントやセミナーの予約受付を代行するサービスはこれまでにもあったが、Coubicは無料で使えて、しかも予約数や顧客管理数に制限がない。スマホ対応はもちろん、専用 iPhone アプリやGoogleカレンダーとの連携機能など、無料サービスなのに至れり尽くせり。

Coubicの収益モデルは有料会員モデル。無料版は予約受付画面に広告が表示されるなどの制約があるが、有料のプレミアムプラン(月額4980円)では広告が表示されず、予約データのダウンロード機能や電話サポートサービスが加わる。さらにサービス導入のセットアップサービスがついた法人向けプランも用意している。

また、2015年2月9日には、美容院やエステなどを当日・直前で予約できるアプリ「Popcorn(ポップコーン)」も新たにリリースした。ユーザーは、恵比寿や渋谷、代官山などにあるサロンを、平均30%、最大70%オフの価格で予約できるというものだ。

狙いは、予約システムであるCoubicを横軸に、業界別に特化したサービスやアプリを縦軸展開することで、集客から管理までをワンストップで行える業務システム・サービスの提供だ。Popcornのリリースは、新たな縦軸の第一歩という位置づけである。

Coubicの開発は2013年10月からスタートし、正式ローンチされた2014年4月までの約半年間だが、実はこの開発期間中に、電気自動車ベンチャーとして知られるテスラモーターズの試乗会予約システムとして使われた実績がある。

自動車業界は顧客サービスの要求レベルが非常に高い分野の一つだが、テスラモーターズの試乗会予約の仕事を通じてさまざまな要望・ニーズが得られたことで、高いレベルのビジネスコンセプトやプロダクトの磨きこみができたそうだ。

元々は研究者志望だったが、Google勤務時代にシリコンバレーの文化に魅了されてベンチャーを志す
ビジネスアイデア発想のきっかけ

20150305-3クービック株式会社の創業者である倉岡寛氏は、実は東京大学大学院で複雑系ネットワークやマルチエージェントといった分野を専攻し、そのまま研究者の道に進むことを考えていた。しかし、大学院修了となる2007年、Googleが本格的に日本法人での新卒採用を進めていることを知り、面白そうだと方向転換。東京大学大学院を修了後、Googleのプロダクトマネージャーとして4年間勤務することになる。

Google入社後は、毎月のようにアメリカに出張があり、1年間のうち2カ月はシリコンバレーで過ごすという日々のなか、しだいに独特のカルチャーに魅了されていく。シリコンバレーでは、起業は転職と同程度のカジュアルさで語られ、カフェに入れば、常にどこかしこでベンチャービジネス談議がなされている。徐々に起業に対する心理的ハードルもなくなり、倉岡氏自身も起業したいと考えるようになったという。

そして2011年、グローバル展開を積極的に進め始めたGREEの米国法人に転職する。当時はスマホが急速に伸び始めた時期とも重なる。倉岡氏はWebからスマホへの大きなトレンドの変化を感じていた。

その後、GREEの日本法人配属となり帰国したが、倉岡氏は、部屋を探す、引っ越し業者を探す、さらに転居に伴う各種手続きの煩雑さに辟易とした。すでにアメリカではスマホで簡単にタクシーが呼べるUberや、格安で短期滞在用の部屋を探せるAirbnbといったサービスが当たり前になっていた。そんな自分が感じた不満・不便の体験から、さまざまなサービスが簡単に予約できるサービスの必要性に思い至ったというわけだ。

当初は単に楽で便利な予約ツールがあればビジネスになるだろうと考えていたが、ベータ版を開発して、実際にサロン店舗に使ってもらおうとしたら「こんな使いづらいものはいらない」と一蹴されてしまう。また、前述したテスラモーターズの試乗会予約システムに採用された際も、予約だけにとどまらないさまざまなニーズが裏にあることに気づいた。

試行錯誤を繰り返しながら、プロダクト開発やコンセプト設計を進めるなかで、浮かび上がってきたのは、サロン店舗やヨガインストラクター、美容室などのスモールビジネスオーナーにとって、既存の予約サービスや顧客管理システムはどれも高額で導入しづらいという声だった。

もう一つ、ビジネスオーナーの本当の要望は「集客」。つまり、予約機能の提供だけではなく、予約してくれるユーザーも連れてきてほしいのだ。そこに大きなビジネスチャンスがあると倉岡は踏んだ。

Coubicで提供している予約ツールを横軸とし、縦軸に業界別に特化したサービスやアプリを投入しながら集客力を持つメディアも立ち上げる。その両輪が揃って初めてスモールビジネスのオーナーが満足するサービスが構築できる――。このビジネスコンセプトが固まり、Coubicをローンチ。さらにPopcornのリリースへとつながった。

創業メンバーの3名は、GoogleやGREE時代の仲間たち。設立時の資本金は250万円だが、2014年4月にシリコンバレーの有名ベンチャーキャピタルDCM、およびグリーベンチャーズから総額5000万円の出資を受けている。

予約ツールを軸に、顧客管理や集客支援など、業務全般に対応したサービスの提供を狙う
将来への展望

倉岡氏に今後の展望を伺ったところ、「予約ツールを軸に、顧客管理や集客支援など、業務全般に対応したサービスを提供していきたい」という回答。Coubicはすでに英語対応もしており、マーケットとしてアメリカやアジア各国も視野に入れている。特に経済成長目覚ましいアジア圏には早い段階で進出していく計画だ。

当面の目標はさらなる機能改善と機能追加。特にプレミアムプラン向けの付加機能を拡充させていくことが急務だという。マネタイズは急いではいないということだが、狙っているマーケットはビジネス領域全般。どのような業界であっても使えるサービスにしていきたいという。簡単に言うと、スモールビジネスオーナー向けに超簡単に使えるSalesForceのようなサービスとの事だ。

また、「Product/Market Fit」というキーワードも意識しているという。これはシリコンバレーのスタートアップ界隈で使われているキーワードだが、市場と製品のフィット感が最重要で、事業や売上を伸ばすために無茶なプロモーションや販促活動はしないという概念だ。例えば、Coubicは会員登録をしなくても使えるように設計されている。しかし、会員登録をしなければ顧客管理機能の提供は難しい。そこで、会員登録をせずとも経路や履歴から同一人物であるとして個客管理が出来るように仕組みを充実させようとしている。

2020年の東京オリンピックでは、たくさんの外国人が日本に訪れるだろう。「来日した外国人の方が、日本のいろいろなITサービスを利用して、母国に戻っても同じサービスが使えるようになっていれば面白いですよね」。取材の最後にそんな話になったが、2020年にクービックがその立役者になっていることを期待したい。

クービック株式会社
代表者:倉岡 寛氏 設立:2013年10月
URL:
https://coubic.com/
スタッフ数:10人
事業内容:
予約システム「Coubic (クービック)」および、サロン当日予約「Popcorn (ポップコーン)」をはじめとする各種インターネットサービス

当記事の内容は 2015/3/10時点のもので、該当のサービス内容が変わっていたり、サービス自体が停止している場合もございますので、あらかじめご了承ください。

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