医療専用チャットツール「メディライン」が、
臨床現場のコミュニケーション齟齬を解決!

介護・福祉・医療

執筆者: 東 雄介  編集:菊池 徳行(ハイキックス)

「医療者専用のLINE」として浸透。
リリースから半年で60施設にまで拡大 展開している事業の内容・特徴

photo1.jpg 株式会社シェアメディカルは、医療者向けチャットツール「MediLine(メディライン)」やスマートフォン用医療辞書内蔵キーボードアプリ「医詞(いことば)」をリリースしている医療ISV(independent software vendor)である。メディラインについて同社代表の峯啓真氏は次のように語る。「お医者さん専用のLINEです、と説明すると若い方も年配の方もすぐ理解してもらえます」。その利便性とわかりやすさの証左として、2017年4月のリリースから半年足らずで、60施設、1000ユーザーまで活用が広がっている

メディライン開発の背景には、医療現場における情報齟齬の問題があった。多くの医師は忙しすぎ、またシフト勤務によっても情報のすれ違いが生じるため、同じ施設内にいながら直接コミュニケーションをとる時間が不足している。フェイスブックなど既存の無料SNSを使おうにも情報漏えいのリスクがつきまとう。医療者はクローズドで情報交換できるコミュニケーションインフラを求めていたのだ。

だが峯氏はこうも言う。「正直、メディラインに、技術的な大発明といえるものはありません。患者情報をオンラインでやりとりする際のガイドラインに準拠していること、情報を暗号化していることなどブレイクスルーポイントはありますが、本質的には医療者は高機能なツールを求めているのではなく『誰にでも当たり前に使えるツール』を求めている。だから使いやすさ、理解のしやすさが第一優先です」。

医療の現場には、医師以上にナースやヘルパーといった“コメディカル”の人数が多く、年齢層も幅広い。全体として捉えると、ITリテラシーはまちまちなのだ。「しかしメディラインは単純なアプリですから『LINEぐらいなら使える』とすんなり理解してもらえますし、導入してすぐ、安心して誰でも使いこなせるのです。また院内のコンプライアンスなどの理由で外部サーバに患者データを置けない施設には、ハードウェア版も提供しています」。

東日本大震災を前に挫折感を味わうも、
医療ICTの推進を志して再起! ビジネスアイディア発想のきっかけ

photo2.jpg 峯氏は、口コミ病院検索サイトなどのサービスを手がける「QLife」の創業メンバーだ。病院検索、お薬検索などの医療アプリを次々にリリースし、成功を収めていた。「医療ITの分野に関してはトップランナーを走っているという自負がありました。しかし、知れば知るほど医療のIT化が遅れていることがわかってきました。医療ICTを推進することは医療費の増大を抑制し、皆保険制度の崩壊を防ぐ特効薬だと信じていました」

彼の運命を変えたのは、東日本大震災である。◎◎の基地局はすべて押し流され、通信が途絶するというエリアが広域に発生した。院内の電子カルテのシステムは海水に浸かり、復元は叶わなかった。「ある時映像で、泥まみれの紙のカルテを見つけ出し、水で洗ってガラスに貼り付けて乾かして『これで治療が続けられます』と話す医師の姿を見ました。医療ITを推進してきた自分のキャリアが全否定されたようで、膝から崩れ落ちました」。

医師のマインドに触れたことも、峯氏が生き方を変える契機となった。「自分のクリニックを休診にしてカバン1つを持って救護に赴く姿を見て、医療はツールではないんだと。IT化の遅れが医療の問題だと思っていましたが、僕は物事の一面しか見ていなかった。紙だろうとITだろうと、もっと本質的なところを捉え、変えなければならないと確信しました」。

シェアメディカルを起業したのは2014年3月のこと。震災を機に多くの医療者と交流し、現場で真に求められている“もの”を見聞きしていた。「お医者さん自身は日々の臨床仕事が忙しく、ITによる医療改革の中心になるのは難しい。だったら僕が、静かなる改革者になって、一つひとつ小さな改善点を示していこうと考えたのです」。

メディラインを軸に医療ソリューションを展開。
医療専用スマホの開発も見据える 将来の展望

2017年5月には、「医療版UBER」と呼ばれるスマート往診システムの開発を発表。これは、往診が必要な時にアプリから医師の往診を依頼できるサービスだ。医療機関向けのサービスだったメディライン、医詞とは異なる患者向けのソリューションであり、特に乳幼児や高齢者の利用が見込まれる。

「自分の子育て体験からも、子供は夜間に体調を崩すことが多いにもかかわらず、多くの医療機関が夜間は診療していない、兄弟や姉妹がいると片方を家においておけないので、なかなか病院にいけないという問題があることがわかっていました。実は都市部の夜間は医療過疎なのです」。医療の提供形態としては古い往診という診療形態にITを活用して再定義したのがスマート往診だ。

「本当にやりたいのは、メディラインを核とした医療ソリューションです」と峯氏。今、大手PCメーカーと組み、医療専用スマートフォンの開発を進めている。「これがメディラインなど医療用アプリを配信するプラットフォームにもなります。我々にとってはハードからソフトまで垂直統合的なビジネスモデルを組む意味は大きい。医療者とのコネクションがさらに密になるという利点がありますし、彼らベンダー側も医療マーケットに参入する糸口をつかめるというわけです」

海外展開も見据えている。「東南アジア各国からも何件か引き合いがありますし、先日はアフリカからも問い合わせが届きました。どうやら、PCよりもスマホのほうが普及している地域や、医師の数が少なく都市部と農村部をつなぐツールが必要な地域で、期待されているようです。志の範囲を、日本だけに留めるつもりはありません」。

株式会社シェアメディカル
代表者:峯 啓真 氏 設立:2014年5月
URL:https://www.sharemedical.jp/ スタッフ数:5名
事業内容: 事業内容: 医療プラットフォーム事業、医療ICT開発事業

当記事の内容は 2017/09/14 時点のもので、該当のサービス内容が変わっていたり、サービス自体が停止している場合もございますので、あらかじめご了承ください。