生産者と飲食店をつなぐプラットフォームで、
世界の農業・食料問題の解決を目指す!

起業秘密

執筆者: 松元 順子 編集:菊池 徳行(ハイキックス)

新鮮で多様な食材を少量から取り扱い、
生産者、飲食店双方のメリットを追求 展開している事業の内容・特徴

photo1.jpg 農業のIT 化が叫ばれる昨今、流通システムの効率化の動きも年々加速している。そんななか、ICTを活用した農産物流通プラットフォーム「SEND」を展開しているのがプラネット・テーブル株式会社だ。同社の最大の特徴は、自社で物流センターを保有しており、仕分けから配送までを一貫して引き受けている点にある。

同社のビジネスモデルはこうだ。食材の需要を予測し、生産者に作付や出荷を事前に依頼する。出荷された農産物は、検品後に全量を買い取り、用途に分けてピッキングし、オーダーがあった飲食店に自社配送する。生産者は農産物を小分け・袋詰めする必要はなく、簡単に梱包して「SEND」に送るだけ。飲食店は朝6時までに発注すると当日中に、希望する全国各地の新鮮な食材が揃って届くシステムだ。また、品目によって若干異なるが、飲食店が購入した金額のおよそ80%が生産者に支払われる仕組みを導入している。

「生産者にとっては選果・梱包の手間や包装コストが省けるとともに、収益向上にもつながります。一方、飲食店にとっては、PC/タブレット/スマホひとつで注文が完了するため仕入れの手間が軽減でき、一度の発注で必要な食材がすべて同時に、鮮度の良い状態で届くというメリットがあります」と、同社代表の菊池紳氏が説明してくれた。

「SEND」は、生産者と飲食店の直接取引を実現した新しい形のプラットフォームだ。登録飲食店は優良レストランやホテルのシェフ中心。常時300種以上の食材を取り扱っており、市場に出回らない珍しい食材や生産者こだわりの農産物を扱っている。生産者から食材の出荷提案もでき、シェフからフィードバックを受けることもできる。双方の意見交換を通じて、新たな食材の販路開拓や、シェフにとっては新メニューのアイデア発見にもつながるというわけだ。

現在、配送エリアは東京都心部中心であるが、今後さらに物流機能を強化することにより、川崎、横浜、千葉を含む首都圏全域までエリアを拡大していく構えだという。

難解な社会課題に真っ向から挑み、
総額5億円以上の資金調達を実現 ビジネスアイディア発想のきっかけ

photo2.jpg 同社代表の菊池氏は、外資系金融機関やコンサルティングファーム、大手投資ファンドなどのキャリアを経て独立。 2013年には農林水産省の官民ファンド「農林漁業成長産業化支援機構」の立ち上げにも参画した人物だ。そんな菊池氏が、自ら起業しようと決意したきっかけは何だったのだろうか。

「私の母方の実家が農家を営んでおり、20代後半のときに後を継いでくれないかと言われたのです。そのときから、生産者がいくら努力しても儲からない農業の現状や流通の仕組みを目の当たりにしてきました。そこで、小規模な生産者でも意欲的に取り組みつつ、再生産可能な合理的な対価を得られる仕組みをつくろうと考えました。また、ファンド設立での経験では、政策的サポートでカバーできる対象には限界があると感じました。こうした制度を使えない、個人やご夫婦だけで営んでいるような零細農家や、地域性の強い珍しい食材を扱う生産者などにも支援する仕組みが必要だと」

2014年5月に創業メンバー4名で起業。ITベンチャー全盛期のなか、「流通の問題はITだけでは解決しない」と真っ先に冷蔵庫と配送車を購入し、ハード面を整備した。しかし、自社で物流システムを一から構築するのはコストが高いことから投資家の理解を得るのに苦労した。そんななか、2015年3月には約3500万円のシードマネーを調達。同年12月には総額約1億円の資金調達に成功。こうして順当に資金を確保できたのは、農業分野への深い知見と同時に、金融マン、投資家としての実績と経験があったからだ。

「私は常に自分自身が投資したいかどうかという視点でビジネスモデルを考えています。ポイントは社会課題にきちんと向きあい、かつグローバルでも普遍的なテーマかどうか。そして着実に業績を伸ばしていくためのアプローチがシャープかどうかです。外部資本を入れる以上、“ビッグピクチャー”だけでなく、1年先までの具体的な事業プランや着実なプロセスを明確に示すことが重要です。また、資金調達で失敗する原因のひとつが、評価額を引き上げ過ぎてしまうこと。成長段階に応じて適切な水準で進めていくことが大切だと考えています」

2016年8月には、SBIインベストメント、D4V、Mistletoeを引受先とした第三者割当増資により、さらに総額4億円の資金調達を実施。新たなフェーズに向けて歩み始めている。

農業×フィンテックへの挑戦で、
生産者の資金繰りまでサポート 将来の展望

photo3.jpg 設立から3年で登録飲食店は3000軒、登録生産者数は4000軒を突破。スタッフ数はパートやアルバイトも含め総勢70名に増え、全国47都道府県の生産者との取引を実現するなど圧倒的なスピードで成長を継続。さらに、2016年には経済紙『Forbes JAPAN』の「NEXT RISING STAR AWARD」を受賞するなど各方面から注目を集めている。

こうした成長の要因について、菊池氏は次のように語る。「私たちはあくまでも生産者支援の会社です。ITと物流、双方に強いという特長を生かし、生産者にいかにしてベネフィットを提供できるかという点に徹底してこだわり続けてきました。これにより生産者の方々の賛同・応援をいただき、口コミで認知が広がったことが大きいと思います」

2016年11月には、生産者とバイヤーのための商談・取引管理プラットフォーム「SEASONS!」を新たにリリース。これは、農産物取引における、マッチングや各種書類やりとり・スケジュール管理・決済などの作業負荷を軽減したいとの思いから生まれたサービスだ。取引先開拓から商談、受発注、納品、請求、入金確認まですべての業務が「SEASONS!」ひとつで完結。生産者とバイヤーのコミュニケーションツールとして、生産者の販路拡大を支援している。

そして現在、新たな挑戦として取り組もうとしているのが、生産者向けの金融サービスだ。菊池氏は「生産者が必要なときに必要な資金が手当てされる仕組みづくりが重要だ」と語る。たとえば、収穫期は人件費や肥料代などの支払いが増えるが、通常、飲食業界は月末締めの翌月や翌々月払いのため代金回収に時間がかかる。そこで納品後すぐに生産者に代金が支払われる決済システムをつくるという。また将来的には、金融機関と連携し、作付計画や出荷実績に応じて必要な融資を受けられるファイナンス支援サービスも展開していく構えだ。

「今後は海外展開を視野に入れており、アジア・モンスーン地域に生産者支援プラットフォームをつくる準備に着手します。2050年に人口増加に伴う食糧危機が訪れると推測されていますが、弊社は生産者支援カンパニーとして、必要な食べ物が必要な分だけ持続的に作られ、世界中のすべての人に行き届く社会を実現し、食料危機を防ぐことを目指します」

プラネット・テーブル株式会社
代表者:菊池 紳 氏 設立:2014年5月
URL:http://planet-table.com/ スタッフ数:70名(契約社員・パート・アルバイトを含む)
事業内容: 食料生産支援・流通支援プラットフォームの開発・提供

当記事の内容は 2017/08/29 時点のもので、該当のサービス内容が変わっていたり、サービス自体が停止している場合もございますので、あらかじめご了承ください。