東京工業大学発の研究開発型ベンチャーが、
極限作業型ロボットで社会問題の解決に挑む

ドローン・ロボット

執筆者: 松本美菜  編集:菊池 徳行(ハイキックス)

最適な機能と形態で、
産業界のニーズに応える 展開している事業の内容・特徴

101.jpg 一般的にロボットとは、人間になり代わり、ある目的を達成するために自律的に稼働する装置や機械のことをいう。ちなみに国内では、1980年代から産業界に製造用ロボットが多く導入されてきた。また近年では、ソフトバンクのペッパーなど、ヒューマノイド型ロボットも多数開発され、サービス業界をターゲットにした販売競争も激化しつつある。

そのようななか、一貫して、「社会問題を解決するために必要な技術を提供する」というアプローチで極限作業型ロボット(人が立ち入ることのできないような劣悪・過酷な環境下で稼働・作業をする高度な技術を持つロボットのこと)の創造開発・販売を行っている企業がある。東京工業大学発の研究開発型ベンチャー、株式会社ハイボットだ。

同社の技術の核となるのが代表取締役社長で、ロボット工学研究の第一人者、東京工業大学名誉教授でもある広瀬茂男氏が学生時代から研究を継続してきたヘビ型ロボットだ。その特徴は、硬い金属を使っているにもかかわらず、「しなやかな動作」を実現していることにある。広瀬氏が最初にヘビ型ロボットの開発に成功したのは今から45年前、1972年のこと。以降、数えきれないくらいの改良・開発を続け、2005年には水陸両用ヘビ型ロボット「ACM-R5」を発表している。その動きは、陸上では躯体をヘビのようにくねらせて進み、水中ではウミヘビのように悠々と、しかも、巧みに泳ぎ回る。

もちろん、ヘビ型ロボット以外のソリューション提供も可能だ。「以前、電力会社から高圧送電線の点検にヘビ型ロボットが使えないか、といった要望がありました。しかし、話をよく聞いてみると、ヘビ型ではなく、別の形がよいのではないかという結論に至ったことも。課題を解決するために、一番よい機能と形態を目的に合わせ、最適なものを選択していくことが重要なのです」

何が一番世の中のためになるのかを考え、
目的達成のためのアプローチをする ビジネスアイディア発想のきっかけ

102.jpg 広瀬氏が東京工業大学教授を務めていた頃、自身の研究室には海外からの留学生も多数在籍していた。その当時の学生で、現同社取締役のミケレ・グアラニエリ氏らが、「この研究室の技術は面白いから、起業したい」と熱心に言うので一緒に起業することを考えたのだという。

2004年4月に設立した時の創業メンバーは6名。広瀬氏は、2013年に東京工業大学を定年退職し、2016年からハイボットの経営に参画。まず取締役会長に就任し、2017年5月に代表取締役に就任した。

「自分がつくったロボットを社会に役立てようと考えるのであれば、産業界とのつながりは欠かせません。会社組織にしたことで、産業界が待ち望んでいる多くの需要に応えられるメリットが生まれたと考えています」と話す広瀬氏は、自身の研究室で、産学連携の研究にも深く携わってきた。

「私は大学生のころからずっと、ロボットを使った工学的なアプローチで社会の問題解決に取り組むことを考え、言い続け、また、実践してきました。企業からもたらされた課題を学生と一緒に議論し、シーズの研究をしながら解決方法を見つけてはロボットをつくり、現場に投入し、ニーズを探る。すると、新しい発見があり、改良を加え、再び現場で試す、その繰り返しです。目の前の最先端技術を使えば、いいものができる、というものではありません。明確な目的を掲げ、そこにたどりつくための試行錯誤を愚直に重ねることで得られる成果はまったく異なる。このプロセスにこそロボット工学の価値があり、何かの役に立ち、社会を変えられるのではないかと思いました」

クリエイティブなロボットの開発と
データ提供の2軸でビジネスを拡大 将来の展望

103.jpg ヘビ型ロボットに対する企業のニーズは高い。同社は今後、小径配管点検ロボットや構造物・橋梁点検ロボットの開発を加速させる計画だ。これらの点検ロボットを必要としているのは、インフラ、電機、プラント業界など多岐にわたる。

「人間が入り込めない場所や危険な作業を伴う場所はいくらでもあります。加えて国内では、橋梁やトンネル、各種配管などインフラの老朽化が進み、腐食やコンクリートの剥離、ひび割れなどが目立ちます。そのような場所にこそ、当社のロボットが貢献できるのではないかと考えています」。そのほかにも、ビルの壁面のペンキ塗装、ひび割れの点検及び窓の清掃といった需要にも応えられるロボット開発を進める考えだ。

しかし、「当社はロボットを売るだけの会社ではない」と広瀬氏は強調する。たとえば、人間が橋梁の点検を目視で行う場合、写真撮影や記録をとるといった作業が発生する。一方、そこにロボットを導入することにより、座標を入れ、定期的に損傷の履歴を追い、過去の傷み具合との比較において、その差分を取得することができれば、劣化の進み具合を適切に把握・管理することが可能になる。

「ロボットで取得したデータをもとに、合理的な判断・診断をすることが可能で、効率的な補修計画を立てられるようになります。ビジネスとして、そういった提案まで持っていけるようにしたい」と広瀬氏は抱負を述べる。

「当社は、ロボット工学の専門家はもちろんのこと、高度なデータ解析のスキルを持つ人材も揃っていますし、今後の事業拡大のため人材は常に募集しております。ですから、当社に加わるメンバーには、ロボットの開発や販売と並行しながら、当社のロボットでしか取得できない、詳細なデータを企業や専門家、点検者などにわかりやすいカタチで提供する新たなビジネスモデルを確立し、各種の診断やメンテナンスに役立ててほしい」

ロボットの開発とデータビジネス。これらを2つの軸としながら、データ解析、さらに次世代のロボット開発につなげる――。「当社は、人ができないような作業、いわゆる3K(きつい、汚い、危険)といわれる作業をするロボットを“形”にこだわらずつくり、提供する。ロボットは機械です。人間がより安全に、幸せに暮らしていけるような環境を維持するため、そして、人を助け、支援するために創造的なロボット技術を採り入れて社会をよりよくしていきたい。クリエイティブな発想で、多様な社会問題を解決する。これが当社の理念です

株式会社ハイボット
代表者:広瀬 茂男 氏 設立:2004年4月
URL:http://www.hibot.co.jp/jp/home スタッフ数:21名(2017年7月20日現在)
事業内容: ロボットおよびロボット制御に必要な制御・駆動用コンポーネンツの開発・販売など

当記事の内容は 2017/08/22 時点のもので、該当のサービス内容が変わっていたり、サービス自体が停止している場合もございますので、あらかじめご了承ください。