「防御」から「無意味化」へシフト!
逆転の発想が導くセキュリティの新次元

IT・インターネット

執筆者: 佐々木正孝 編集:菊池 徳行(ハイキックス)

「秘密分散」が情報漏えいを防ぐ!
守らないセキュリティのかたち 展開している事業の内容・特徴

/z-1-01.jpg ランサムウェアによるサイバー攻撃、ハッキングによる個人情報流出など、セキュリティを脅かすニュースが毎日のように報道されている。今後も企業、個人を問わずデータの保護は避けて通れない課題だ。

しかし、セキュリティ対策と攻撃側の攻防はいたちごっこの世界。厳重な暗号化を進めたとしても、いずれは解読されてしまうリスクをはらむ。そこで、「情報は守るもの」という従来型の発想ではなく、「情報は盗まれるもの」という前提で開発されたソリューションが「ZENMU」である。開発・販売を手がける株式会社ZenmuTechの田口善一CEOにソリューションの特徴、優位性を聞いた。

「私たちが着目したのは『秘密分散』という技術です。データを無意味化して様々な箇所に分散して保管。使用する際に合体させて復元するというもの。分散したデータがすべて揃わなければ復元できないので、例えばPCのハードディスクとスマホにデータを分けることで、一つが盗難、紛失にあっても情報漏えいは起こり得ません。分散したデータ自体は無意味ですから、サーバー内のデータにも有用です。パブリッククラウドの使用を制限する企業は多いですが、この技術を使えば安全にクラウドを利用できるようにもなるでしょう」

サーバー上の情報もサイバー攻撃の対象になるが、ファイルデータの99%をクラウドに置き、1%を自社システムの中に置くことで安全は担保される。サーバー上の分散データは単体では無意味なので、流出しても情報漏えいにはならない。一方、インタフェース上ではスムーズに動作、確認できるため、ユーザーはデータ分散していることを意識することはない。まさにセキュリティのインフラとして機能するソリューションがZENMUなのだ。

「2015年のサービス提供以来、パソコン向けの『ZENMU for PC』は5万ライセンスを販売。住宅メーカーのLIXIL様は第1号ユーザーとして社内のモバイルPC4500台への導入を決定し、富士通様も社外持ち出し用の端末1万5000台に導入中です。業種・業態を問わず、多くの企業が日本発のセキュリティソリューションに期待を寄せてくださっているのです」

セキュア環境を目指して地道に技術開発。
時代の後押しを受けてブレイクスルー ビジネスアイディア発想のきっかけ

1-01.jpgZENMUのコアである秘密分散技術は1970年代から提唱されていたが、運用が重厚になるため、個人用PCなどでフットワーク軽く使える利便性はなかった。ZenmuTechは「AONT(All-or-Nothing Transform)」と呼ばれる方式を採用し、秘密分散技術に「スピード」「可用性」をプラス。自社が培ってきた技術で高速化させ、汎用性を高めてソリューション化を果たす。かくして、多様なITリソースで活用できるZENMUを掲げて打って出たのだ。

セキュリティ分野において、防御一辺倒ではなく「無意味化する」という逆転の発想は、同社をブルーオーシャンに導いた。創業からの来し方を振り返り、田口氏は「ベンチャーが成功するための3条件にピタリと当てはまった3年間だった」と述懐する。

「3条件とは天の時・地の利・人の和です。まずは、天の時。ワークスタイル変革が叫ばれ、先進国中で最下位の生産性向上を求める声も根強い。PCを社外に持ち出せない環境を改善したいという情勢が『ZENMU』導入の追い風になっています。地の利は、セキュアなサービスを地道に磨き上げてきた弊社開発陣の技術力、トップセールスができる営業力。そして、LIXIL様や富士通様など、イノベーティブな大企業の応援、産学連携やVCの支援による人の和です」

脚光を浴びるまで、地道に特許を取得してZENMUをブラッシュアップし続けてきた。それは、IoT・ビッグデータ・AIの時代ならではのセキュリティ・情報漏えい対策が必ずやブレイクするという確信があったからだ。データ保護、セキュリティの概念を変えるインフラを目指し、ZenmuTechは次なるフェーズを見据える。

セキュリティのあり方を
ガラリと変える可能性を秘めて 将来の展望

技術の高度化に余念がないZenmuTechは、東京大学・東京電機大学・東京理科大学などとの産学連携を推し進めている。「日の丸技術」として、経産省など政府関係者からの期待も高い。

「日本発のITメーカーで、世界で成功したと誰もが認める企業はほとんどありません。特にセキュリティ分野では皆無。我が社はその先駆けになりたい」と、田口氏もグローバルに打って出る旗幟を鮮明に掲げる。

2016年には東京大学エッジキャピタルなどから3億円強の出資を受け、2017年にも銀行系のベンチャーキャピタルから2.5億円を資金調達。すでにシリコンバレーに拠点を構え、海外進出の準備を進めており、アメリカのIT企業、パソコンメーカーへの営業、協業に向けて動き出している。

「国内でもZENMUをバンドルしたPCを企画しています。CPUで『インテル インサイド』というキャッチフレーズがあるならば、セキュリティでは『ZENMU インサイド』。そんな時がきっと来るでしょう。IoT時代、ネットワークやチップの中に組み込めるZENMUは、ありとあらゆるデバイス、クラウドに使われる無意味化データインフラになるはず。世界を一変させる可能性を秘めています」

2020年頃の実用化に向けて開発を進めているのが、デバイス×無線通信技術の連携だ。データを分散したパソコンとスマートフォン、ウェアラブル端末を無線で連携。身体から離れたデバイスはZENMUが速攻で無意味化する。これぞ、IoT時代の新たなセキュリティプラットフォームの姿だ。

社名とソリューション名のZENMUは秘密分散の「All-or-Nothing」に由来し、そして「全無」――無限大の「無」も表しているという。意識しないまま、誰もが安心・安全にデータ、ネットワークを活用できる環境へ。ZENMUにかかる期待は、まさに「無限大」だ。

株式会社ZenmuTech
代表者:田口 善一 氏 設立:2014年
URL:https://www.zenmutech.com/ スタッフ数:24名
事業内容:オープンセキュリティソリューション「ZENMU」、シンクライアント用仮想USBデバイス統合管理ソフト「VUMS」、Windows Embedded OSのカスタマイズ「お好みセキュアPC」の開発・販売。

当記事の内容は 2017/08/08 時点のもので、該当のサービス内容が変わっていたり、サービス自体が停止している場合もございますので、あらかじめご了承ください。