落雷抑制型PDCE避雷針で市場を開拓!
雷から電子機器を守るための新提案

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執筆者: 松本 美菜 編集:菊池 徳行(ハイキックス)

自然の原理を応用して、
落雷をコントロールする 展開している事業の内容・特徴

170727_1 多くの人々は、「避雷針があれば雷は落ちない」という、漠然とした安心感を持っているのではないだろうか。しかし普段、私たちが目にする先の尖った従来型の避雷針は、雷を避けるためのものではなく、落雷を呼び寄せて建物の周囲の地面に流すための設備なのだ。

「従来の避雷針は、建造物に落雷があった場合、その躯体を形成している鉄骨を通じて地面に雷電流を流す仕組みです。しかし、これは建物そのものを保護するためのものでしかない。最近の建築物には、壁の中や床下に多数のケーブルなどが敷設されています。避雷針が誘導した強い雷電流が鉄骨の躯体を通ると、それらのケーブルに逆向きの電流が発生し、ケーブルに接続されている電気・電子機器が破壊されてしまいます」と株式会社落雷抑制システムズ(神奈川県横浜市)の松本敏男代表取締役社長が説明する。

建築基準法では、高さ20メートルを超える建築物には、通称、「避雷針」と呼ばれる避雷設備の設置が義務付けられている。しかし、日常の中で電子機器が当たり前に使われる時代となり、昨今多発するようになった雷から電子機器をどのように守るかが喫緊の課題となっているのだ。

そこで、注目されているのが、落雷を抑制するPDCE(Pararrayos Desionnizador Carge Electrostatica=消イオン容量型避雷針)だ。従来型の、落雷を誘導するタイプとは異なり、落雷自体を発生しにくくするメカニズムを持つ。同社は、その開発・製造・販売を手がけている。

雲の中の氷の粒がこすれ合って発生した静電気がたまることで、雷雲が形成される。雷雲の下の方にはマイナス、上の方にはプラスの電気がたまる。そして、雲の下部にたまったマイナスに引かれるように、地表にはプラスの電気がたまる。雷が発生する初期には、雷雲の下から地表に向かって、雷の通り道をつくるために弱い放電が起こる。やがて、この通り道に向かって、今度は地表から雲に向かって強い電流が流れる。これが“お迎え放電”といわれる現象だ。お迎え放電が発生すると、それが雷雲からの放電と結びつき、大きな放電、つまり落雷が起こる原因となる。

それならば、雲のマイナス電気と地表のプラス電気を結びつけないようにし、お迎え放電を抑制することで、落雷を発生させづらくすればいいのではないか――。そこで考えられたのが、「PDCE避雷針」である。もともと、この落雷抑制の原理は、スペインとフランスの間に位置するアンドラ公国で生まれたもので、松本氏はこの原理を活用して日本向けに避雷針を改良したという。

同社が製造するPDCE避雷針は、半球を二つ重ねた形状で、その上部をマイナスにし、まず、雷雲の下部からの落雷の目標にされることを避ける。そのうえで避雷針の下部をプラスにすることで、地表からのお迎え放電を受けにくくする構造となっている。

会社の理論に翻弄される人生はまっぴら!
起業して落雷抑制の専門会社を立ち上げた ビジネスアイディア発想のきっかけ

170727_2松本氏は、電気通信大学卒業後、スーパーコンピューターや日本語ワードプロセッサーの開発に携わり、1980年、日本IBMに転職。マニュアル作成やLAN製品の企画などの業務に就いた。1996年からはスイスに本拠を置く、コネクターやケーブルに強みのあるReichle & De-Massari(以下、R&M)に再び身を転じ、駐日事務所の代表として日本支社の設立に尽力した。

「ところが、懇意にしていた本社の友人が社内の派閥闘争に敗れ、彼の息のかかった面々は一掃。私は日本支社の代表といっても、所詮は雇われの身。業績が悪いわけでもなかったのに、クビになりました。確かにそれまで私を育ててくれたのは組織で、そのありがたい面は十分承知していますが、嫌なもことも多い。これからは人生の後半戦、会社に翻弄されるのはまっぴらごめんだと、つくづく思いました」と起業の道を選ぶ。

「R&Mにいた頃、屋外配線用のケーブルは銅線で、雷の影響を受けやすく、なんとかならないかと思っていました。PDCE避雷針という技術があることも知っていましたから、この技術は、昨今の異常気象の影響で、雷の発生が増えている日本にこそ必要なのではないか」と考えたのだ。そして2010年2月、落雷抑制の専門会社を立ち上げた。

最初から経営が順風満帆だったというわけではない。「市場には従来型の、落雷を誘導するタイプの避雷針が普及しています。見ず知らずの新参者が提案する、落雷抑制型の避雷針がすんなり採用されるはずはなく、最初の3年間は資金繰りにも苦労しました」

しかし世の中、避雷針が必要な建造物はビルだけではない。ある日、茨城県の牛久大仏を目にした松本氏は、巨大なブロンズ立像に活路を見いだす。聞けば、何度も落雷を受け、エレベーターの故障などにも悩まされていたという。そこで、PDCE避雷針を提案すると、すぐに採用された。同社の製品の最初の納品先となった。

以降、無線中継設備や消防署、データセンター、さらに、海上を航行する地球深部探査船「ちきゅう」や鉄道事業者、発電所、ごみ焼却工場、住宅、保育園、小学校、医療施設など、国内では1300カ所以上に同社のPDCE避雷針が導入されている。多くの観客が集まる屋外のコンサートやイベント会場などでも使えるよう、高所作業車に設置可能な製品の開発や、外部の事業者との連携で、レンタルもされている。

PDCEの設置を加速、
直撃雷の被害を低減させたい 将来の展望

170727_3もちろん、課題はある。「PDCE避雷針で、雷の抑制はできるものの、100%防止できるわけではありません。雷が起きやすい状況は刻々と変わりますし、気象条件や季節、また、日本海側、太平洋側など、地域によっても対策は変わります。しかし何より、雷をなるべく呼び込まないようにすることが重要です」と松本氏は強調する。

現在、同社の事業の中心はPDCE避雷針の販売で、年内には導入先が累計1500カ所を超えると予想している。2017年度の年商は約2億円を見込み、数年内に4億円程度になる見通しだ。

新製品の開発や改良を進めながら、新たなビジネスチャンスも模索している。「国内に設置したPDCE避雷針の様子を、IoTを駆使してモニタリングすることで、全国の雷の状況がわかるようになるでしょう。それが可能になれば、さらに精度の高い落雷抑制が提案できるはず。また今、特に力を入れて取り組んでいるテーマは、風力発電用の風車を落雷による被害から守る仕組みづくり、高層ビルへの落雷対策、電力網への落雷防止などです。特に、風車については、ブレード自体にPDCEと同様の構造を採り入れることができるのではないかと、研究を進めています」

「落雷抑制関連の新規事業は、50億~100億円のマーケットになると予測しています。そのためには、組織力の強化や海外での展開力が必要で、今後、風車メーカーや架空地線などのケーブルメーカー、それに建築物の知見・ノウハウを持つ企業との連携を視野に入れています。当社ができることはまだまだある。自然界の雷は会社の上司が部下に対して落とすカミナリと一緒(笑)。何か原因があるから落ちるのであって、一方的に落ちてくるものではありません。原因となるお迎え放電を出さないようにすれば、カミナリは落ちにくくなる。落雷抑制の専門会社として、世界から直撃雷の被害を低減させること。これが生涯変わらぬ目標です」

株式会社落雷抑制システムズ
代表者:松本 敏男 氏 設立:2010年2月
URL:http://www.rakurai-yokusei.jp/ スタッフ数:1名
事業内容:落雷抑制装置の開発・製造・販売、情報ネットワーク装置の開発など

当記事の内容は 2017/07/27 時点のもので、該当のサービス内容が変わっていたり、サービス自体が停止している場合もございますので、あらかじめご了承ください。