“明日からでも使える”IoTシステムで
未来の100兆円市場に切り込む!

介護・福祉・医療

執筆者: 佐々木正孝 編集:菊池 徳行(ハイキックス)

簡単に導入できるIoTプラットフォームを構築。
大手企業と積極的にパートナーシップを結ぶ 展開している事業の内容・特徴

20170704-1新サービス、ビジネスモデル創出のキーワードとしていまだ強みを発揮する「IoT」。大手企業もスタートアップもIoTビジネスを捉える動きは活発だ。しかし、クラウドや各種センサー、無線通信などIoTを支える基盤技術は多岐にわたっており、革新的なビジネスを構築するためにはさまざまな障壁を乗り越える必要がある。

IoTスタートアップとして存在感を発揮する株式会社Z-Worksは、IoTシステムを手軽に導入できるプラットフォームを開発。富士通、インフォコム、キヤノンなど大手企業と組み、IoTビジネスの導入を支援している。大手企業との連携戦略について、代表の小川誠氏に聞いた。

「近年は日本でもオープンイノベーションが活発になっており、大手がスタートアップの技術を活用して新規ビジネスを立ち上げることも珍しくなくなってきました。私たちは最終製品を作る会社ではありません。各種センサー、取得したデータを取りまとめるゲートウェイ、無線通信技術、クラウド、スマホアプリなどをパッケージで提供。『明日からでも使えるIoTシステム』として提案を行っているのです」

センサー、無線通信の活用で優位性を持つ同社は、IoTの活用先として介護分野にフォーカス。センサー・ゲートウェイ・クラウドをパッケージしたシステムを介護向けにカスタムし、「LiveConnect Care」としてサービス化した。これはベッドなどに装着する非接触型人感センサーを駆使し、要介護者がベッドから転落・転倒したり、トイレで立ち往生したりといった異変を感知し、介護スタッフや家族に通知する仕組み。

すでに居宅介護サービスを手がける株式会社やさしい手にシステムを提供しているほか、大手介護事業者の採用も決定。2017年中に全国数百単位の施設で運用がスタートする予定だ。同システムに無線規格「Z-Wave」を採用したのも、介護施設・家庭での利用を考えたからだ。

「Z-Waveは、海外市場のスマートホーム、ホームセキュリティ向けに普及が進んでいます。 すでにリリースされているセンサーを手軽に廉価に利用できるメリットがあります」

自らの介護体験から見いだしたキーワード。
「頑張らない介護」を掲げてビジネスを始動 ビジネスアイディア発想のきっかけ

20170627-2「センシングによって介護現場を支える」。この着想は、小川氏自身の介護経験が原点だ。人員不足による過重労働が指摘される介護の現場。疲弊するスタッフ、家族の負担が身にしみるからこそ、IoTの力でサポートしていきたい。それが創業の理念にも直結している。

「私たちが実現したいのは“頑張らない介護”です。自分の経験上、“頑張る介護”は2年が限度。それ以上は息切れしてしまいます。誰かが一人寝たきりになると、家族全体の生活の質が確実に落ちていくのを如実に感じました。要介護者に寄りそうことは大切ですが、その時間、労力を減らしていかないと。いい意味でのゆるさがないとやっていけませんから。そこにセンサー、ICTが活躍する余地があるのです」

「頑張らない介護」というコンセプトが評価され、創業当初に苦労した資金調達にも光明が見えた。介護IoTシステムが総務省のイノベーション創出プログラム「I-Challenge!」(2016年)に採択されたのだ。倍率約20倍ともいわれる難関を突破し、約6000万円の補助金の交付が決まった。

「出資を懸命に募っていたので、採択が決まってホッとしました。ところが、同プログラムは事業に使った資金を後で交付するという仕組みということが判明。何とかならないかと銀行に相談し、交付証明書を提出することで融資獲得に成功、開発資金を捻出することができました」

開発資金を投入したのは、同システムのクラウド技術「行動翻訳エンジン」だ。介護空間では、検知したデータを単純にアラート通知して済むわけではない。防犯などセキュリティよりもきめ細かい行動分析が必須になる。

「人の動きやドアの開閉、施錠など、センサーの種類、製品によって感知するデータがさまざまあります。そのデータを人の行動に翻訳し、想定したシナリオに応じて危機情報として抽出する。それが、私たちが独自に開発した行動翻訳エンジンなのです」

未曾有の超高齢社会に、
IoT、センシングで突破口を開く 将来の展望

20170704-3今後のロードマップを示すうえで、小川氏は拡大の一途をたどる高齢者市場の数値を示した。医療産業は約39兆円、介護産業は約9兆円、生活産業で約20兆円(2012年)。団塊の世代が後期高齢者に突入する2025年にはトータルで100兆円を超え、介護産業だけで21兆円超の市場を形成する見込みだ。しかし、この数字が示すのは単なるビジネスチャンスではない。「介護が社会全体の課題になる」、と小川氏は見る。

「介護市場が拡大するにつれ、自らの強みをICTによって補完し、ビジネスに参入したいという企業も増えてくるでしょう。そこにはIoTに対しての知見がなかったり、センサーや無線通信にノウハウを持っていない企業も多いはずです。そこに、私たちのIoTプラットフォームの出番があると考えています」

介護現場だけではなく、今後はメディカル、ヘルスケア分野への進出も視野に入れている。アクティブシニア周辺のさまざまなデータを収集、解析することで健康寿命を伸ばすことにも寄与していきたいという。

「温度や湿度などのデータから、熱中症、感染症リスクを減らしたり、外出頻度を見ながら単身シニアのコミュニケーションを活発化させたり、いろいろな切り口が考えられます。しかし、人感センサーやカメラを周辺に置くことに抵抗を覚える人は多いため、よりきめ細かいセンシングが求められるでしょう。最終製品を作っていない私たちは、ベストなセンサーを選び、自社プラットフォームに組み込むことで、柔軟に新しいシステム、サービスを考えていけるのです」

社名のZ-Worksは、前述の無線規格「Z-Wave」にも由来するが、「終末医療、終末期の介護」を支援していきたいという想いも込めた。「“Z”――人生のエンディング=看取りをサポート」がミッションでもある。優位性を持つセンサー、IoT技術を駆使し、Z-Worksは社会的課題の解決に取り組んでいく。

※高齢者市場データ
<財務省財務総合政策研究所「高齢社会における選択と集中に関する研究会」第3回会合「高齢者市場への取組みの考察:社会的課題解決に向けて」>

株式会社Z-Works
代表者:小川 誠 氏 設立:2015年4月
URL:http://www.z-works.co.jp スタッフ数:20名
事業内容:IoTプラットフォームの開発。センサー、デバイスの調達。IoT、ビッグデータ解析のコンサルティング。

当記事の内容は 2017/07/04 時点のもので、該当のサービス内容が変わっていたり、サービス自体が停止している場合もございますので、あらかじめご了承ください。