独自の“AIカメラ”で店舗運営を最適化。
的確な販売促進、顧客の不満解消を実現!

この記事はに専門家 によって監修されました。

執筆者: 取材・文:髙橋光二 編集:菊池 徳行(ハイキックス)

属性別の顧客が何人集客できている?
エリア別・時間帯別に自動判別!

展開している事業の内容・特徴

20170627-1監視カメラを使った映像監視・録画クラウドサービス、中小規模向け入退室管理&勤怠管理システム、顔認証システムといった企業向けセキュリティシステムを提供している、株式会社セキュア。2016年10月、これらのサービスに独自開発の“AIカメラ”を統合し、小売業、サービス業などの集客力をさらに向上する「インストア・アナリティクスシステム」と、専用の監視カメラ映像をクラウド上にレコーディングするプラットフォーム「Secure VSaaS」を開発、リリースした。

「インストア・アナリティクスシステム」を導入し、AIカメラで店内を撮影すると、どのエリアにどういった属性(性別や年齢層)の来店客が何人いるのか、といった情報を自動的・経時的に判別・記録してくれる。曜日別、時間帯別のフロアや売り場ごとの正確な集客状況が簡単に把握できるため、店舗内外の動線づくりや販促企画の立案、および販促効果の把握など、より的確な店舗運営が可能になるというわけだ。

あるホームセンターのケースを紹介しよう。入口前に園芸売り場が設けられているが、園芸売り場から店内への動線が把握できずにいた。そこで、園芸売り場前と店内入口にAIカメラを設置したところ、園芸用品を買うだけで店内には入らずに帰ってしまう顧客が想定以上に多いことが判明。重い園芸用品を最初に買ってしまうと、荷物を持って店内に入る気になれないことが原因と予測し、「園芸品預かりサービス」を実施した。結果、入店人数が増加し、売上増につながったという。

また、ある人気の温浴施設では、混雑による不満を感じた顧客からのクレームが増え、混雑状況を問い合わせる電話が頻繁にかかってくるようになった。そこで、AIカメラを導入して、施設内の場所別の混雑状況をWebサイトでリアルタイムに表示、公開することに。その後、蓄積されたデータから導いた、“週間・時間帯別混雑予想”も表示。顧客の不満を激減させることに成功した。

「いずれのケースもクラウドサービスにより、どこからでもシステムにアクセスでき、現場に行かなくても状況を把握し、現場に指示を出すといったオペレーションが可能。成果が出たことは当然として、それらの利便性も好評いただいています」と、同社代表取締役社長の谷口辰成氏は胸を張る。

セキュリティ意識の高まり、クラウド、
AI技術の進展を見てビジネスに着手
ビジネスアイディア発想のきっかけ

20170627-2起業前の勤務先で監視カメラの開発に携わっていた谷口氏は、「これからの社会はインフラの安全性がさらに重要になるはず」と考えていた。そして2002年10月、世の中に幅広く防犯カメラを提供する事業を手がけるため、有限会社セキュア(現株式会社セキュア)を設立する。「ところが、マンションに売りに行っても『プライバシーを侵害する』と相手にされず、話を聞いてくれるのは銀行くらい。時期尚早だったのです」と述懐する。

そこで当時、セコムやALSOKの機械警備は高額と考えるユーザー向けに、賃貸物件にも取り付けられるリモコン式電子錠を開発。2004年12月に第1号製品「ラクロック」を発売すると、各種メディアに取り上げられて話題となった。そして2006年8月、日本DIYショーに出展した第2号製品の「セフィリオ」が経済産業大臣賞を受賞。両製品は合わせて約3万個売れたが、販路開拓にかかる資金が重しとなり徐々に頭打ちに。

「当時はまだ今ほどECサイトが普及しておらず、主に実店舗に製品を卸していたのですが、販路開拓にかける人手も資金も潤沢ではありませんでした。また、ファブレスで製造していましたが、そのための資金調達もうまく回らない。小さなベンチャーがこのビジネスモデルを継続するのは難しいと判断し、思い切って当該事業を譲渡。ゼロスタートを切ることにしたのです」

時代の情勢をにらみつつ熟考を重ねた谷口氏は、クラウドサービスが広がり始めた2010年、冒頭で説明した防犯用のカメラシステムで再起を図ることを決断する。ちょうどその頃、カメラで人を追跡するシステムがイスラエルで開発されたことを知る。「それを聞いて、これは防犯だけでなく販売促進に応用できるのではないかとひらめいた」と谷口氏。東京都の助成金を得て、システム開発に着手し、本格的なテストをスタートさせた。

「その後、機械学習やクラウドがどんどん進展し、当社もAI化に舵を切りました。当社のクラウド監視カメラプラットフォームに大量に蓄積されていたデータを活用すれば、店舗運営を最適化する情報提供サービスが提供できるのではないかと」。そんな経緯を経て、2016年10月、「インストア・アナリティクスシステム」と「Secure VSaaS」がリリースされたのだ。

“セキュリティ技術後進国”の日本で、
世界最先端の技術開発を追求する
将来の展望

20170627-3同社が初めてクラウドと監視カメラを組み合わせた「Secure VSaaS」を発表した時、セキュリティ関連業界では否定的な意見が大半を占めたという。

「大量の動画データをインターネット回線で伝送する際、動画が寸断されたり、動画が外部に漏えいするリスクがあると思われたようです。しかし、防犯用途以外にも、遠隔モニタリングによるオペレーションの確認やマーケティング的な用途が増えていましたし、クラウドならば機械学習に必要なデータを蓄積しやすく、ユーザーのメンテナンスも不要。外野に何と言われようと、絶対にいけるという確信がありました」

そんな谷口氏の読みどおり、「Secure VSaaS」はすぐに売れ始め、リリースから半年間で約1500台のカメラを受注した。現在、AIカメラによりローカルの環境で解析している「インストア・アナリティクスシステム」は、将来的にクラウド環境の「Secure VSaaS」と統合する計画であるという。「2018年末までに1万台の設置が目標です。競合は大手を含め何社か存在していますが、2019年度には国内ナンバーワンのシェアを獲得する計画を立てています」。グローバル展開もにらんでいるが、海外には国内以上に強力なプレーヤーが数多く存在している。

「欧米やイスラエルなどの軍事産業が発達した国では、最先端のセキュリティ技術が開発されていますが、世界の中でもっとも安全といわれる日本はセキュリティ技術の後進国なのです。そんなマイナス要因をはねのけて、世界に負けない最先端技術を追求し続けていきます」

株式会社セキュア
代表者:谷口 辰成 氏 設立:2002年10月
URL:www.secureinc.co.jp/ スタッフ数:60名
事業内容:各種セキュリティ機器およびセキュリティシステムの設計・開発ほか

当記事の内容は 2017/06/29 時点のもので、該当のサービス内容が変わっていたり、サービス自体が停止している場合もございますので、あらかじめご了承ください。

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