紙のデータ集計を自動化・効率化
2兆円市場に挑む東大発ベンチャー

IoT

執筆者: 東雄介  編集:菊池 徳行(ハイキックス)

ストレスチェック義務化も追い風。
1年半で1000件以上の受注。 展開している事業の内容・特徴

20170615-1株式会社情報基盤開発の主力サービスは、アンケートなど各種帳票の自動読み取りシステム「AltPaper」。ユーザーは、マイクロソフトのWordで質問内容を入力、オフィスにあるPCやプリンタでアンケート用紙を作成する。回収したアンケート用紙をオフィスにあるスキャナで読み取り同社へ送信すると後日、集計結果が送られてくる。アンケートのほか、出勤簿、帳簿作成、データ入力・集計、グラフ・統計レポートなど、用途は多岐にわたる。

つまりAltPaperは、紙に手書きで記載されたデータの入力や集計を効率化するサービス。しかも早くて安い。1枚あたり10円から、1000枚程度であれば2時間程度で納品される。従来、紙からアンケートを入力・集計する作業には、プリンタもスキャナも用紙も専用のものが必要とされ、企業がマークシートを導入するには1000万円前後の初期導入コストがかかった。一方、AltPaperは、用紙も設備も全て市販のものでOK。「1枚いくら」の費用がかかるのみである。

2015年には「AltPaperストレスチェックキット」の販売をスタート。以来、わずか1年半で1000件以上の注文が舞い込んでいる。これは労働安全衛生法で義務化されたストレスチェックに簡単に対応できるオールインワンキットで、紙によるストレスチェックの集計、 出力までをシステム化した。特に、サービス業、飲食業、マッサージ業など、1人1台パソコンがない環境では、パソコンよりも紙による運用のほうがなじみやすい。

橋梁の管理システムから派生した研究。
紙からのデータ入力のニーズに着目した ビジネスアイディア発想のきっかけ

20170615-22004年の創業当時、同社の鎌田代表は東京大学工学部の博士課程に在籍していた。JR東日本と共同研究していたのが橋梁をメンテナンスするシステム。ここで試作された橋梁の保守点検記録を蓄積する「橋守 Eagle-eyeシステム」が、JR東日本から高い評価を受けたことが創業の契機になった。学生8人で資金を出し合い、資本金300万円で会社を設立。今も「橋守 Eagle-eyeシステム」はAltPaperにつぐ事業の柱だ。「仕事が存在するなかで起業したわけで、何のリスクもなかった。不安もありませんでしたね」

実は橋梁を検査する過程にAltPaperのヒントがあった。橋梁のひび割れや反り、破損、劣化状況などの評価項目を入力し、データベースをつくるには、紙の調査用紙を大量につかい、これをデジタルデータ化しなくてはならない。というのも、断崖絶壁に建てられている橋まで登っていって検査をするのである。「タブレットを使えばいい」とはいかず、紙からデータを入力する作業がどうしても必要だ。「それならマークシートを読み込めばいいんじゃないか。それも専用紙も専用スキャナもいらない、普通紙と普通のスキャナで読めるものを作ろうと」。

だが、やってみるとこれが難しい。紙を印刷するときわずかに生じる歪みや、スキャナで読み取るときの歪みなど、二重、三重に生じる歪みが、回答者のチェックマークを読み取りにくいものにする。果たして、研究開始から実用化まで5年近くがかかっている。「読み取りの技術は、ノウハウの集積です。私たちもやってみて初めてわかったことですが、そう簡単にはできません。だからこそ、紙の読み取りに注力している競合もいないのです」

データ入力の市場は2兆円規模。
ブレイクスルーは近い 将来の展望

IT化、ペーパーレス化が叫ばれながら、「現実に紙はなくなっていない」と鎌田代表はいう。紙に書き、それをデータ化するというニーズは根強く残っている。「紙は1円のデバイス。これを代替する電子デバイスは存在しません。今、労働者派遣の市場は4兆円ほど。その半数の派遣スタッフがデータ入力業務に携わっているという調査結果があります。この作業を省力化するのが、AltPeper。おおよそ2兆円の市場規模が推計できるということです」

現在のAltPaperユーザーは大企業が中心。カゴメやJTBなど、そうそうたる有名企業が導入している。「大企業であればあるほど、ユニバーサルなサービスを提供しなければならず、そのために紙のニーズがいまだに大きいといえます」。働き手をデータ入力から解放すれば、より付加価値の高い作業に人手を回すことができるだろう。

「あらゆる帳票が自動的に読めるようになるという段階が、われわれの最終ゴールです。この技術はまだ成長過程にあり、現時点では、マークシートならともかく手書きの日本語の文字になると、全然読めません。しかしAIの進化などでそれが可能になれば、本当に2兆円規模の市場が拓けてくる。それは、近い将来、必ず起こることです。幸い、AltPaperの事業を続けていると、手書きの文字サンプルを容易に集めることができます。これを蓄積しながら研究を重ね、どこかでブレイクスルーを起こしたい。それが5年後になるか10年後になるかは、まだわかりませんが(笑)」

株式会社情報基盤開発
代表者:代表取締役 鎌田長明 氏 設立:2004年8月
URL:http://www.altpaper.net/ スタッフ数:正社員15名、派遣スタッフ2名、常勤パート3名、アルバイト15名
事業内容:紙からのデータ入力を自動化するサービス「AltPaper」の運営。

当記事の内容は 2017/06/15 時点のもので、該当のサービス内容が変わっていたり、サービス自体が停止している場合もございますので、あらかじめご了承ください。