スマホ1台で子どもの「成長シネマ」が完成。
機械が苦手なママもぞっこんのサービスとは?

メーカー

執筆者: 本多 小百合  編集:菊池 徳行(ハイキックス)

ベストシーンを自動で解析。
撮りっぱなしの動画が思い出ムービーに 展開している事業の内容・特徴

20170418-1最近のママは忙しい。家事育児に仕事までこなしながら、撮りためた子どもの動画を見返したり、整理、編集したりする時間はなかなかとれないのではないだろうか。

それでも合間をぬって、今だけの子どもの姿を留めておきたいというママたちに絶賛されているサービスがある。スマホで撮った子どもの動画を自動で編集し、音楽や文字で効果をつけた「成長シネマ」をつくってくれるサービス「filme(フィルミー)」だ。詳細の数字は非公表だが、アプリをダウンロードしたユーザー数は優に数万人になる。そして、このサービスを提供しているのが株式会社コトコトである。

たとえば、初めての寝返り。アプリを起動して、その瞬間を撮影するとクラウド上に動画が保存される。動画が20個以上たまると、撮った動画の中からシステムが自動でベストショットを選び、オリジナルのムービー作品に仕立ててくれる。アプリ自体は無料で、完成したムービーは980円払えばDVD化も可能だ。

「静止画をアルバムにするサービスは多くありますが、子どもの動画を思い出に残すサービスはほかにはありません。子どもの成長を目の当たりにすると、やはり動画でしか撮れない瞬間もあり、このサービスの必要性を改めて実感します」と語るのは、昨年、娘が誕生したばかりの父でもある、コトコト代表の門松信吾氏。

「日本には『ホームビデオ』という文化があります。でも、撮られたビデオを見返すことは少ないでしょう。撮りっぱなしではもったいない。見返すことで初めて、思い出が深まるはずです。ここに課題があると感じ、サービスを立ち上げました」

ママたちが動画を撮るのは、子どもの思い出を残したい、いつか子どもに小さかった頃のあなたを見せてあげたいという愛情ゆえ。単なる動画の切り貼りでは、そうした気持ちには応えられない。そこで、開発当初、自動であってもベストシーンがきちんと抜き出せるように、ママたちの声を参考に、残しておきたい仕草や声を点数換算した。今ではどのママも大満足の仕上がりを実現している。

「自分用のPCを持っていない方もいるので、スマホだけで完結する点が喜ばれていますね。また、アプリ経由でお預かりした動画はスマホから削除しても大丈夫です。スマホに動画がたまって重くなりすぎてしまっている方にも便利に使っていただいているようです」

システムの完成がゴールではない。
ユーザーの心に響くサービス設計 ビジネスアイディア発想のきっかけ

20170418-2起業前はソフトウェアの受託会社に勤めていた門松氏。大手企業から受託した大型プロジェクトにも携わったが、輝かしい仕事に取り組む胸のうちにはある疑問がくすぶっていた。

「エンジニアはただシステムをつくっていればいいのだろうか……。その小さな違和感を見過ごせず、業務時間外にも仲間とサービスをつくったり、アプリのコンテストに応募したりしていました。ITは便利で使いやすい道具です。道具だけれども、ときに人の心を動かすこともある。そのようにユーザーの心に響く“コト”をつくっていきたいという思いが常にありました」

在職中から共に活動していた仲間と2014年に立ち上げた会社は「コトコト」と名付けた。当時は「動画元年」といわれており、自身の生活実感からも動画の時代が来ると予感していた。そこに、子どもが結びついたきっかけは妻との会話だった。

「保育士をしている妻から園児たちの話を聞き、子どもの日常がいかにドラマチックかということは感じていました。一般家庭で動画を撮ることが多いのは、子どもの成長記録です。ところが現状は、撮ってそのままになっている。もし動画を思い出を喚起するものに変えられたら、誰かの心が動くのではないかと思いました」

志は高かったが、越えるべき壁も高かった。思い出のDVDを家族で見て感動するには、どんなプレイヤーでも再生できる必要がある。あらゆるプレイヤーに対応させるため、生産中止になった型番をオークションで購入し、動作を検証したこともあった。

動画撮影からDVD作成までの一連の工程を完全に自動化したシステムは、それだけでも充分に価値は高い。しかし、人手を介していないため、あたたかみを感じにくいのも事実だ。そこで、安心して使ってもらえるよう、アナログな工夫もしている。ユーザーのお子さんの誕生日に、手描きのバースデーカードを贈るのだという。門松氏自ら毎日、ポスト投函しているというから、驚きだ。

「このようなコミュニケーションは小さな会社にしかできないことです。僕らの場合、アプリは店舗みたいなもの。町の写真屋さんの接客と何ら変わりません。アプリ画面はもちろん、DVDのパッケージやカスタマーサービスまで、サービス全体で『ご家族の思い出を大切にお預かりします』という姿勢を伝えるよう、心がけています」

冷たいシステムではなく、まるでパートナーのように、子どもの成長を一緒に喜んでくれる。感激したママ達からお礼の手紙が届くことも珍しくないそうだ。

懐かしい思い出として、振り返る日まで、
存続し続ける企業になる 将来の展望

20170418-32014年にスタートして以降、地道に改善を繰り返し、ママたちの満足度もどんどん高まってきた。昨年にはDVD化のサービスも拡充し、コアファンもついている。ここからはユーザー数を伸ばしていくことが課題だ。

「サービスを利用してくださっているのは半数以上が0〜1歳のお子さんを持つママ。今は結婚式で流すのは写真のスライドショーが主流ですが、動画になるだけで記憶のよみがえる量が違うと思うんです。思い出を扱う企業として、そのお子さんたちが成人し、結婚するまでは企業としてサービスを存続していかなければという使命を感じています」

20年後、30年後まで事業を継続するためには、強固な経営基盤を築いていかなくてはならない。今後は安定した収益源として、法人向けサービスも視野に入っているという。

たとえば、人生の伴侶と歩みはじめる結婚、人生に幕を引くエンディングなどでは、「filme」の仕組みをそのまま利用して、「ブライダルシネマ」や「エンディングシネマ」がつくれるだろう。そのほか、スポーツや音楽、ダンスや演劇といった趣味の分野も、現段階では自動編集は難しいが、「fileme」の動画を自動DVD化するシステム部分で展開可能性がある。 「僕たちが目指しているのは、思い出づくりのインフラのような存在です。バックグラウンドで使われているシステムが“スゴい技術”だと、ことさら強調しなくても当たり前にそこにあって、ごく自然にサービスが使われるような状態を目指していきたいですね」

技術進歩のスピードは早い。そして、家族のライフスタイルもどんどん変わっていく。先の見えにくい時代、30年後まで同じサービスを続けられるかと考えると決して安心材料だけではないだろう。それでも門松氏の言葉は力強い。

「このサービスによって生み出そうとしている未来には、人間の喜びや幸せといった本質的な価値があると信じています。サービスのなかで何を残すべきか、依って立つ指針が明確なので、浮き沈みはあっても、やり続けられます」

きっと、彼には30年後も変わらない、家族の笑顔が見えているのだろう。

株式会社コトコト
代表者:門松 信吾氏 設立:2014年6月
URL:http://www.coto-coto.co.jp/ スタッフ数:4名
事業内容:こどもの成長シネマサービス「filme(フィルミー)」の開発・運営

当記事の内容は 2017/04/18 時点のもので、該当のサービス内容が変わっていたり、サービス自体が停止している場合もございますので、あらかじめご了承ください。