たった2~6坪の売場で、月商300万~500万円!
急成長を続ける 「旬八青果店」成功の裏側にある秘密

この記事はに専門家 によって監修されました。

執筆者: 松元 順子  編集:菊池 徳行(ハイキックス)

規格外品に価値を付け、粗利率50%!
都市と農家をつなぐビジネスモデル
展開している事業の内容・特徴

20160908-1スーパーやコンビニなどの台頭により、昔ながらの八百屋など小売店が減少の一途をたどるなか、今注目を集めているのが「旬八青果店」だ。たった2~6坪の売場で、月商300万~500万円という圧倒的な数字を誇っている。もっとも売り上げの高い大崎店(東京)の月商は約500万円、1日の来店客数は250~300人という盛況ぶりだ。

同店を運営しているのは、株式会社アグリゲート。企画から製造、販売までを担うアパレルのビジネスモデル「SPA」を、青果小売業に応用した独自のビジネスモデル「SPF(specialty store retailer of private label Food)」を展開しているベンチャーだ。一般的に単価が低く、利益を出すのが難しいとされる八百屋ビジネスにおいて、高収益を得られる要因はどこにあるのだろうか。同社代表の左今克憲氏に聞いた。

「旬八青果店では、形や大きさが出荷基準を満たさない規格外品を多く扱っています。また、自社内で規格外品や1日で売り切れなかった青果を用いて、サラダやスムージーといったオリジナル商品の製造・販売も行っています。こうして、廃棄されるはずのモノに新たな価値をプラスすることで、粗利率20%といわれる青果業界において粗利率50%という驚異的な数字を実現しています」

形が不揃いでも、味・品質ともに規格品と遜色なければ、顧客ニーズは必ずある。品質のよい野菜を求めている都市部の消費者と、おいしい野菜をつくっていても規格面のハードルに阻まれて売り先に困っている農家。双方にとってWin-Winとなるビジネスモデルとなっている。

さらに、出店エリアを東京の目黒区、渋谷区、港区、品川区の4区に絞り込んだ、「超狭域ドミナント戦略」も重要なポイントだ。一定の地域に集中的に出店することで、物流コストを最小限に抑えるのが一番の狙い。また、このエリアの住民は食のリテラシーが高いというのも理由のひとつだという。

地域活性化への思いが起業の原点。
生産者のこだわりを伝えていく
ビジネスアイディア発想のきっかけ

20160908-2左今氏がアグリビジネスに興味をもったきっかけは、大学時代に全国をバイクで旅したことにある。「地方の田園風景を見て癒されつつも、目にするのはお年寄りばかり。若者がいないことに危機感を抱き、地域活性化に貢献したいという気持ちが芽生えました」。その後、農業専門人材ベンチャーでインターンをしたり、政策立案コンテストに応募したりするなかで起業への思いが強まっていったという。

大学卒業後は、将来起業することを見据え、各業界の人の流れや働きやすい環境づくりを学ぼうと大手人材紹介会社・インテリジェンスに入社。2009年に個人事業主として農家の営業代行の仕事をスタートし、翌2010年に法人化した。開業資金は、会社員時代に貯めた100万円のみだった。

旬八青果店のコンセプトは、「新鮮・おいしい・適正価格」。左今氏自らがバイヤーとして産地を回り、商品を買い付けている。青果を選ぶ基準は、栽培履歴や生産者のこだわりが明確であるものだという。また、採れたての鮮度とおいしさを保つため、品目に合わせて予冷配送を行うなど品質管理も徹底している。

また、旬八青果店という名のとおり、「旬」を大切にしている。「たとえば『スイカは山形産』などと産地名で選びがちですが、スイカは南から北へ産地がリレーしていくため、旬の時期は品種ごとに異なります。当店では、その時期の一番おいしい商品を販売しています」。

さらに、バイヤーが現地で得た最新情報を社内のSNSで販売スタッフ全員に共有。「産地の情報や生産者の思いなどをお客さまに伝えることで、スーパーにはない体験を生み出せるのではないかと考えています」。

設立から6年。「地域のお客さまと対話し、深くかかわっていく中で、本当に求められているものは何かがわかりました。昨年は事業の急拡大により、初めて赤字を経験しましたが、そうした苦労も含めた経験の蓄積がノウハウにつながっています」

目標は、5年後の株式上場。
年商40億円規模の企業を目指す
将来の展望

20160908-3現在、旬八青果店は都内に9店舗を出店。さらなる事業拡大に向けて、フランチャイズ展開も視野に入れている。そのベースとなる人材教育機関として、昨年10月には「旬八大学」を設立。FCオーナーやバイヤーを目指す人向けのビジネス講座と日常の食生活を楽しむためのカルチャー講座を開講している。受講生は約100名にのぼり、その中からすでに2名の起業家が誕生したという。

今後の目標は、年商40億~50億円。2021年の上場を目指し、新たなサービスを次々と打ち出している。7月25日からは、三田店、大崎店に次いで五反田店でも日替わり弁当(1日30食限定)の販売を開始した。特に事前の告知をしなかったにもかかわらず、発売初日から瞬時に完売するほどの人気だという。「このエリアは、コンビニに行列ができるほどのランチ難民の多いエリア。今後はもっと伸びるはず」と意気込む。

さらに、8月1日には渋谷区広尾エリアを中心とした野菜宅配サービスをスタートした。スマホアプリで発注すると1時間後には野菜が自宅に届くというスピーディーさが売りだ。

「私たちは都会の人々に各地の新鮮な農作物を提供することで、“都市と地方の架け橋”となる存在を目指しています。それと同時に、“昔ながらの八百屋”の役割も担いたい。気軽に立ち寄れて、ここに来れば今どの野菜がおいしいかがすぐにわかる。そんな地域のニーズに合った業態を創っていきたいですね」

経営者としてのポリシーは、「妥協しないこと」だという左今氏。そのゆるぎない信念で、食農業界に新しい風を吹き込んでいく。

株式会社アグリゲート
代表者:左今 克憲氏 設立:2010年1月
URL:http://agrigate.co.jp/ スタッフ数:45名(パート・アルバイト含む)
事業内容:・旬八青果店の企画運営、飲食業の企画運営、旬八大学の運営

当記事の内容は 2016/09/08 時点のもので、該当のサービス内容が変わっていたり、サービス自体が停止している場合もございますので、あらかじめご了承ください。

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