「左官」の無限の可能性を伝える、
「SAKAN LIBRARY」が密かな人気!

この記事はに専門家 によって監修されました。

執筆者: 松元 順子  編集:菊池 徳行(ハイキックス)

5カ月で来館者200組を記録!
左官の魅力を体感できるショールーム
展開している事業の内容・特徴

20160604-1近年、DIYを趣味にする人が多くなったこともあり、日本の伝統技術である「左官」が再び注目を集めている。そんな中、2015年8月に、業界でもめずらしい左官のショールーム「SAKAN LIBRARY」をスタートしたのが原田左官工業所だ。

「SAKAN LIBRARY」のコンセプトは“左官の図書館”。左官素材や表現方法のサンプルを常時100種類以上展示。左官関連の書籍や製品カタログも充実している。また、内装の床や壁にも「研ぎ出し」や「洗い出し」、「版築仕上げ」「コンクリート打ち放し風仕上げ」など、さまざまな左官技術が用いられている。

さらに、「サンプル製作室」が併設されており、さまざまな材料を用いて、その場でサンプルを試作することが可能。業界関係者だけでなく、一般の顧客にも開かれた空間となっている。まさに、見て、触れて、楽しめる“体験型ショールーム”となっており、昨年だけで約200組の来館者が訪れたという。

同社の最大の特徴は、「提案型の左官」だ。例えば「南仏ふうの壁にしたい」「真っ白ではなく何か色味を加えた壁にしたい」というような、漠然とした顧客のイメージを多種多様な左官技術を用いて具現化している。時代の流れとともに顧客の要望も多様化し、「単に“塗る”だけでなく、技術を使って“表現する”ことが求められるようになった」と同社代表の原田宗亮氏は語る。

人材採用においても他社にみられない特色がある。業界に先駆けて積極的に女性を採用。産休・育休制度を設けており、現在は、8人の女性職人が同社の“職人”として、いきいきと活躍している。

左官の素晴らしさを伝えることで、
職人の地位向上を目指す
ビジネスアイディア発想のきっかけ

20160604-2「左官」は、壁を真っ平らに塗るだけの技術ではない。石やガラス、コーヒーの粉などを原料に混ぜ合わせたり、あえてランダムに塗ったり、塗った後に削ってみたりなど、各種の技法を組み合わせることで、「“表現の可能性”は無限に広がる」という。そんな「“左官の面白さ”を多くの人に知ってもらいたい」との思いから生まれたのが「SAKAN LIBRARY」だ。

一昔前までは、左官職人は住宅建築に欠かせない存在であった。しかし、最盛期に30万人いた左官職人が現在は5万人にまで減少。「時代とともに、壁仕上げの方法が漆喰からビニールクロスに変わり、左官の塗り壁は少なくなってしまった。左官の魅力を広くPRすることで、そんな左官職人の存在価値を高めたい」というのも、原田氏が同館をつくった理由のひとつだという。

また、「昔は至るところに現場があり、左官職人の仕事を見ることができたが、今は一般の人にとって左官業が身近な存在ではなくなった」と原田氏。左官をより身近に感じてもらい、現代の生活に取り入れてもらうために、DIY教室や塗り壁体験会を随時開催。「版築」という左官技術を用いた家庭用のオリジナルかまどの販売も行っている。

1949年創業の同社、現社長の原田氏は3代目となる。新たな試みを次々と展開しているが、創業当時から変わらないのが、経営理念である「夢とロマンをもって仕事に取り組む」という姿勢だ。

「『夢とロマン』をもって日々仕事に励むことで、左官の素晴らしさを後世に伝えていきたい」。そう語る原田氏の言葉の端々からは、職人であることの「誇り」が感じられる。

今後は若手職人の育成に注力。
伝統技術を後世に伝えたい
将来の展望

昨今の左官業界では、職人の急減と高年齢化が大きな課題となっている。左官業は、人の手作業により支えられる現場。「人」が財産であり、腕のいい職人を育てていくことが業績向上にもつながる。そのため、同社では、「職人を育て、職人を守る」というコンセプトを掲げ、「人を育てる会社」を目指して、さまざまな取り組みを行っている。

例えば、「モデリング」という独自の教育システムを採用。これは、一流の職人の作業風景を撮影したビデオを元に、お手本を繰り返し真似ることで技法をマスターしてもらうというもの。これにより、今まで習得するのに3年かかっていた技術を1年で身につけられるようになるという。

また、社内講習会では、基本・中級・応用とそれぞれの見習い工のレベルに合わせた講習を実施。OJT制度や外部研修・技術講習会なども充実しており、未経験から一人前の職人に育て上げるための教育制度が整備されている。

さらに、2014年には他の左官業者6社と提携し、左官の訓練校を開校。昨年度11名、今年度10名の訓練生が入校し、左官の基本技術を学んでいる。今後も10名前後の訓練生を受け入れていく計画だ。「技術はもとより職人としての心構えもしっかりと伝えていくことで、『いつまでも上を目指せる職人』を育てたい」とのこと。

最後に原田氏は、「今後も先代から受け継いだ伝統技術を残しつつも、新しいアイデアを取り入れて、常にチャレンジを続けていきたい」と語ってくれた。日本が誇る素晴らしき建築技術である「左官」の火種を守り、ぜひとも次代につなげ、世界に広げていってほしい。

有限会社 原田左官工業所
代表者:原田 宗亮氏 設立:1949年4月
URL:http://www.haradasakan.co.jp/ スタッフ数:46名
事業内容:左官工事、タイル貼り工事、防水工事、れんが・ブロック工事業

当記事の内容は 2016/06/07 時点のもので、該当のサービス内容が変わっていたり、サービス自体が停止している場合もございますので、あらかじめご了承ください。

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