スマホ活用の遠隔放送システム”スマ放”で、防災・危機管理サービス市場に切り込むスタートアップ

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執筆者: ドリームゲート事務局

既存遠隔放送システムの“場所・配線”から、マイクとスピーカーを解き放ち、さらに低コスト・簡便性を実現する「スマ放クラウド」。 展開している事業の内容・特徴

20160202-1スマートフォンは、わずか数年で通信業界に変革を起こし、人々のライフスタイルをも一変させた。さらに、それだけに止まらず、現在ではものづくりの世界の一端を担おうとしている。例えば、スマホで鍵の開閉ができる「Akerun」や、 iphoneをモニタとして活用するデジタルカメラ「DxO one」などは、スマホの機能がなければ成立しないプロダクトだ。このように、スマートフォン自体がいち要素技術となり、ものづくりの設計に組み込まれるようになったということは、非常にインパクトが大きい。なぜなら、開発ツールとして活用することで、大幅にコスト・時間・労力を省くことができるからである。すべてのものづくりがとは言わないが、今後もおそらくこのようなプロダクトは続々と登場してくることだろうし、近い将来、スタンダードな開発スタイルとなるかもしれない。

今回紹介するのも、そのように開発されたシステムだ。スマホの通信技術を活用して遠隔放送を行う「スマ放クラウド(スマートフォン遠隔放送®)」である。

遠隔放送システムというと、放送環境の確保から、スピーカーの設置場所や配線など、通常は大掛かりなシステムを想像するが、同システムは至ってシンプル。「マイク(スマホ)」、「専用アプリ」、「クラウドサーバー」、「ステーション(専用アンプ内蔵可動式スピーカー)」のみで構成されており、アプリをインストールするだけで運用準備が整う。しかも、受信ユニットとなるステーションは設置施工不要で人力での移動も容易く、さらにソーラーパネルとバッテリーにより稼働するので、電源の必要もない。

20160202-1使い方も簡単で、アプリを起動してスマホに向かいしゃべる、ただそれだけでいい。音声・映像の送受信にはクラウドを活用しており、クラウドサーバからのフィードバックをステーションが受信・増幅しスピーカーで拡散する仕組み。さらに、音声合成送信を活用すれば、テキストメッセージで音声合成変換し放送される。まさに、クラウド技術を活用した拡声放送システムだ。音声の伝達距離はスピーカーの性能に依存するが、アレイ型スピーカーを取り付ければ、2〜3キロメートル先まで音を届けることができるという。ほかにも、ステーション側に内蔵されている受信端末(スマホ)を活用することで、トランシーバーとしての情報通信、動画のリアルタイムなやり取りもできる。また送信側では、複数台のステーションを一元管理することも可能だ。(特許出願、審査請求中)

現在スマ放は、最終調整を行っている段階で、まだローンチ前である。だが、すでに引き合いはあり、特に建設現場の危機管理対策として建設会社から好感触を得ているそうだ。実際にテスト運用で導入している会社も数社あり、こちらも評価は上々だという。

また、減災防災対策としての注目度も高く、避難誘導システムとして導入を前向きに検討する各自治体の担当者も少なくない。既存システムを導入するとなると、必要なコストはときに数千万円に上り、それゆえ、未導入の自治体は全国で400箇所を数えるという。しかし一方で、スマ放は100万円以内での提供を予定しており、低コストで導入でき設置施工も不要とあって、「これならば」と答える担当者が多いそうだ。

成功体験から、ITを駆使した産業ソリューションを自身の事業ドメインに。海外事業をクローズし、ゼロからのスタートで見つけた自分自身のビジネス。 ビジネスアイディア発想のきっかけ

20160202-2スマ放の開発者であり、クェスタ社・代表取締役の大石氏のバッググラウンドは、北海道で事業を展開するエコモット社にある。エコモット社は、IoTやM2M技術をさまざまな産業のソリューションとして提案している会社で、これまでに数多くの実績を持つ。その代表事例に融雪ボイラーの遠隔監視サービスがあるが、この拡大販売に大きく寄与したのが大石氏だった。

大石氏はもともと弱電業界の出身で、放送設備や監視カメラなどの取付けや保守・管理などを行う会社の役員をしていた。だが、ITを使った産業ソリューションを事業にするエコモットに刺激を受け合流。立ち上げメンバーとしてジョイントし、弱電で培ったノウハウを活かし、会社のキーパーソンになっていく。また、いつしか自身もIT技術を駆使したソリューションをテーマにするようになったという。

それからしばらくの時を経て、大石氏は自らのサービス開発をめざしエコモッ社を退職。海外に渡り、フィリピンとベトナムでシステム開発の会社を立ち上げた。コストを抑え日本クオリティの開発環境を構築するために選らんだ進出だったそうだが、しかし、コミュニケーションや文化、業習慣の違いなどで、なかなか事業を波に乗せることができなかったという。また、優秀なIT人材が望めればこその両国であったが、蓋を開けてみれば、優れた人物はみな外国に活躍の場を求めてしまい、人材の充実を図るのも至難の技だったそうだ。

そういった状況から、大石氏はベトナムでの2年に区切りをつけ帰国。2012年に現在のクェスタ社を立ち上げ、今日に至る。スマ放クラウド誕生のきっかけについては、こう話してくれた。

「きっかけは偶然です。日本に帰国してからは、スマホアプリの受託や自社開発をしていました。自社アプリの売却もでき、事業自体はトントンながらも安定していましたが、一方で自分が腰を据えて取り組めるビジネスを常に求めていていました。それで、いろいろ模索しているときに、新聞の記事でたまたま見つけたのが3.11の記事。岩手県の南三陸町で避難誘導放送を行っていた若い女性職員が、放送中に津波に襲われ亡くなってしまった事故についてでした。それを読んだときに、やりきれなさを感じるとともに、なぜそういった災害時を想定した避難誘導システムがないのか? と、ふと疑問に思ったんです。それで気になって調べたのですが、やはりない。それならば自分がと思い立ったのが、スマ放クラウドのはじまりでした。」

音声が一旦サーバにあがることで生じる通信エラー、ステーションの省エネ化、同一空間内でのハウリング等々、開発が進むごとに続々と登場する課題。開発は困難の連続だと大石氏は笑うが、それでも、スマ放クラウドのビジネスアイデアは世に広く受け入れられ、これまでに商工会議所の平成26年度補正予算小規模事業者持続化補助金や国のものづくり補助金事業に採択。最近では、複数のビジネスコンテストで優勝賞や特別賞などを受賞している。

そして現在、まだいくつかは残るものの、これまでの課題はおおよそ克服。発売も今春に決定した。

「いつでもどこでも」防災対策本部を整備できるシステムとして、国内外のシェアを狙い、あらゆる業界のニーズもきめ細やかに探っていく。 将来の展望

スマ放クラウドローンチ後の展開で急務となるのが、販路開拓だ。同社が実施したマーケティングによれば、建築会社や自治体ほか、自衛隊や消防署にも潜在的なニーズがあるそうで、今後はそういった領域にも積極的にアプローチをかけていくとのこと。いつでもどこでも防災対策本部を創出できるシステムとして、確たるシェア獲得をめざしていく構えだ。さらに、電気が普及していない場所でも放送環境を整備できることから、例えばアフリカやバングラディシュなど、発展途上国への国際支援としての展開も視野に入れており、具体的な話も進みつつあるという。

また、大石氏はスマ放クラウドの汎用性についても注目。今や国民の69.2パーセント(メディア環境研究所「メディア定点調査2015」調べ)が持つスマートフォンを活用したシステムであるため、エンタメ的なサービス提供なども可能と見ており、災害対策に限らず、さまざまな業界を俯瞰し、それぞれに適したサービスを提案していきたいとしている。

よく防災関連のサービスはスケールしづらいと聞く。その理由は用途が災害発生時のみに限られるからだ。しかし、スマホを取り込んだことで、カジュアルな印象も持つスマ放クラウドは、大石氏の話のようにきっとエンタメにもフィットしていくだろう。有事にはもちろん、平時にも利用できる、こういったシームレスな防災システムのあり方は、首都直下、南海トラフを控える今後の日本にとって、非常に重要になってくるのではないだろうか。

クェスタ株式会社
代表者:大石 守氏 設立:2012年1月
URL:http://questar.ac/ スタッフ数:3名
事業内容:
・スマートフォン遠隔放送®の開発・販売
・見える化アプリ・業務用アプリの開発

当記事の内容は 2016/02/02 時点のもので、該当のサービス内容が変わっていたり、サービス自体が停止している場合もございますので、あらかじめご了承ください。