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建設現場などで導入が進むスマートグラス「Telepathy Jumper」で世界に挑む!起業家と連携して新市場創出を目指す「テレパシージャパン」

スマビ総研

執筆者: ドリームゲート事務局

ドラゴンボールに出てくるスカウターのような外観のウェラブルデバイスを開発・販売しているベンチャー。既に建設現場や農場で実用化。 展開している事業の内容・特徴

160119-2「Telepathy Jumper(テレパシー・ジャンパー)」というアイウェア型のウェラブルデバイスをご存じだろうか。ドラゴンボールに出てくるスカウンターのような外見で、ディスプレイユニットとコントロールユニットを首にかけて使用する。開発・販売しているのは株式会社テレパシージャパンというベンチャー企業だ。

2013年7月に創業され、およそ2年の開発期間を経て2015年6月にTelepathy Jumperの販売を開始した。

同製品は販売にあたり、約60社によって実用試験・テストなどを行い、そのうち約30社が実際の現場で導入をしている。利用例として多いのは建設現場での作業記録や遠隔での作業支援。特に建設現場は人材の入れ替わりが激しいうえ、昨今では人材難という背景もあるため、外国人を雇用するケースも多い。しかし、日本語の習熟を待っているわけにもいかないため、Telepathy Jumperを用いて外国語での案内・指示や、熟練者の知見が必要な作業指示などを行っているという。ウェラブルデバイスを活用する事で、経験の浅い外国人を即戦力化しているというわけだ。

また、佐賀県では、県、佐賀大学、株式会社オプティムが連携して、農業現場での遠隔支援を行っている。Uターン、Iターンなどで地方に戻ってきた若い就農者に、農業技術やノウハウをスマートに継承してもらおうという取り組みだ。なお、株式会社オプティムはテレパシージャパン社と販売提携しているパートナー会社の1つで、ビジネス用モバイルアプリを開発・販売している東証一部上場のSI会社だ。

農業×ウェラブルデバイス×ITで、効率的な農法などのノウハウ継承をスマートにおこないつつ、さらに高付加価値の農業を目指している。その1つが「アイスプラント」という野菜の栽培。ほんのりとした塩味にプチプチとした食感が人気。これが高く売れるという事だが、育てるには独特のノウハウが必要という事もあり、Telepathy Jumperによる遠隔支援が活用されている。ちなみに佐賀県は一人当たりの作付面積が国内でも最大級で、北海道とトップを競うほどの農業県だ。

取材を行った2016年1月時点で、同社のスタッフは25名ほど。そのうち常勤スタッフは15名で、大半がエンジニアという体制。そのため営業活動や販売については外部のパートナー会社と連携しているそうで、10社ほどと提携を結んでいるという。提携会社はSIerやアプリケーションプロバイダーのほか、電子機器・部品大手の加賀電子とも提携している。

Telepathy Jumper の価格だが、単品で購入できるDeveloper Editionが18万円。同製品を用いたアプリケーション企画開発のコンサルティングや電話サポートがついた契約だと60万円から。また提携会社の1つであるオプティム社の展開する遠距離作業支援サービスを組み合わせた「Remote Action」は、1週間4万円でレンタルなども行っている。

Telepathy Jumper 自体はAndroid をOSに動いているため、ソフトウェア・プラットフォームとしてスマートフォンとかわりない。大手はもとより、スマートフォン向けにアプリを開発しているベンチャー企業などとも連携して、便利なサービスを沢山生み出していきたいと、テレパシージャパン社代表の鈴木 健一氏は語ってくれた。

ウェラブルデバイスをハードから開発するのは大変だが、同製品を購入すればAndroidアプリケーションさえ開発すれば、ウェラブルデバイスを活用したサービスが容易に開発出来る。テレパシー社はハードを提供し、その上で動くソフト・アプリは他の会社が行うという生態系を同社は目指している。

ノートパソコンの設計などを25年間手掛けた生粋のエンジニア。井口氏との出会いで起業家への道を歩みだした。 ビジネスアイディア発想のきっかけ

160119-1テレパシージャパン社の創業者はAR(拡張現実)アプリを開発で知られる頓智ドットの井口尊仁氏が創業したベンチャーだ。日本と米国の両方に拠点を設け、2013年8月には、米国のファーストハンド・テクノロジー・バリュー・ファンドから500万ドル(当時約5億円)の資金を調達した。グーグル・グラスの対抗馬が現れたかと話題にもなった。

一方、現代表の鈴木 健一氏は、電子回路やコンピューター・アーキテクトを専門とする生粋のエンジニア。カシオからスピンアウトした設計会社で技術者としてのスタートを切り、その後、鈴木氏が所属していた設計チームは独立。鈴木氏は主にカシオや、NEC、ソーテックなどが開発・販売していたノートパソコンの設計を手掛けていた。

鈴木氏が最初に起業を意識したのは1998年頃。独立・起業を考えてビジネスを学ぼうと考え伊藤忠系の半導体商社に転職し、1999年には会社を設立した。ただ、この時は起業といっても社員は一人だけで、仕事もNECやエイサーなどからノートパソコンの設計や製品開発のコンサルティングなどを請け負っていた。

転機となったのは2012年末。クライアントから「次世代のコンピューター端末」という企画があり、そこでスマートグラスを検討した事がきっかけだった。グーグルグラスの製品テストがスタートしたのが2012年4月であり、まだスマートグラスという製品概念が世の中に登場したばかりであった。

2013年になり知人経由で井口氏と出会い、その理念に共感した鈴木氏はテレパシー社に参画する事になった。テレパシー社の第一号エンジニアとしての入社だった。

入社当日、井口氏から「鈴木さんは何が得意か、どのような事で貢献したいですか」という話になり、「未踏です。ゴールが無い事に取り組む事が得意です」と答えたという。

その後、鈴木氏は同社のCTOに就任し、現在は代表を務めるが、その経緯について下記のように語ってくれた。

「井口さんは一言でいうとビジョナリストです。私が一緒に仕事をしたのは1年ほどでしたが、とても貴重な経験でした。事業としての0→1は井口さんが作りました。その後を受け継いで私が事業を育てている最中です。井口さんはもともと創業期のかじ取りをして、その後は実務型のトップに交代するべきという考えで、そこで私に白羽の矢が立った形です。当初は日本の代表は私が担当し、もう一人、米国でマーケティング担当者だった方が米国法人のプレジデント、ツートップ体制で行こうという事でしたが、いろいろな経緯があり、今は日本法人が中心となって事業を進めています。」

また、製品展開の戦略についても伺った。
「テレパシー社としては、創業当初はコンシューマー向けの製品リリースをめざしていましたが、途中から最初の製品はB2B向けに出すという方針に切り替わりました。これは、スマートグラスという製品自体が新しいものなので市場そのものから作る必要があったため、いきなりコンシューマー向けに普及されていくのは難しいという考えからです。実際、今やパソコンは家庭でも使われるようになりましたが、パソコンが登場した当時はビジネス向け・業務用がメインでした。携帯電話も同様です。つまり、まずは法人向けで品質やサービスを磨き込んで、その後にコンシューマー向けに展開していく。B2BとB2Cを梯子を上るように、交互に進めていくという戦略を考えています。」

鈴木氏によればスマートグラスの強みは、一人称視点で情報が届けられる点にあるという。例えば、教育には座学型と体験型の2種類がある。本を読んだり話を聞いて学ぶ前者に比べて、体験型のほうが効率よく学習できることも多い。

例えば料理を学ぼうとした時、卵焼きの焼き加減などはテキストで学ぶより、見ながら覚えたほうが早い。あるいは靴紐の結び方などをパソコンやスマートフォンの画面だけで説明するのは難しいが、実際に結んでいる様子を追体験できれば容易に学習できる。このように、ノウハウの共有には一人称視点での追体験型の学習は有効だろう。

あるいは、ハンディキャップを持つ方に向けたサービスとしてもウェラブルデバイスは有用であると鈴木氏は考えている。例えば、車椅子を使っている方は後ろが見えづらいという悩みがある。そこで常に後ろ側を撮影してスマートグラスに表示させておけば、後方から歩行者や自転車などが迫った際も察知して回避できる。

鈴木氏によれば、究極的にはウェラブルデバイスは人間の生活そのものをサポートする道具として進化していくと考えている。

人とコンピューターの在り方を考えつづけた結果、ウェラブルデバイスに未来を見た。 将来の展望

鈴木氏は1990年からノートパソコンの設計という仕事を通じて、「人とコンピューターの関わり方」を考え続けてきたという。その意味ではテレパシージャパン社の代表としてスマートグラスの事業を進めている現在でも、コアにあるテーマはかわらないと語る。

また、ヨーロッパではインダストリー4.0が広まっており、スマートグラスの活用も進んでいるが、この動きについては、中小製造業のシンジゲート化という側面が大きいと鈴木氏は考えている。つまり、EUという巨大市場の登場により、EU域内での多様なニーズに対応しようとした場合、製造業が地産地消的になりつつあり、その多様なニーズを満たすには、製造現場では今までにない多数のノウハウが必要となる。そこで即効性のある教育システムが必要となっているため、スマートグラスを活用したノウハウの流通が起きている。

最後に、鈴木氏に今後の展望について伺ったので、そのまま紹介して終わりたい。
「スマートグラス市場ではグーグルグラスの知名度が先行して登場しましたが、決して成功はしていません。この分野においては、まだまだこれからの勝負です。個人的には2020年、東京オリンピックまでには、スマートグラスをブレークさせたいですね。特に日本に来る外国人にウェラブルデバイスを使ってもらい、通訳や街案内サービスが体験できるようになっていてほしいです。

先日までCESという世界最大の家電見本市に出展するためアメリカに居たのですが、残念ながら日本の大企業からは新しいスマートグラスの発表はありませんでした。CESではTelepathy Walkerという新製品を紹介しました。これはTelepathy Jumperと比べてより小型軽量化したもので、ヘッドマウント部だけで完結して動きます。販売は2016年第2四半期で、価格は699ドルを予定しています。

当社はベンチャー企業ですが、この分野で世界をリードしていきたいと考えています。携帯電話、スマートフォンでは後塵を期した日本の製造業が、その二の舞にならないように、スマートグラス・ウェラブルデバイスの分野では世界の先頭を走っていたいですね。ウェラブルデバイスというのは日本の持つ「おもてなし」の精神が活きるデバイスだと思います。普段身に着けるものだからこそ、緻密で繊細な設計やサービスが求められるからでしょう。そうした分野は日本の得意領域だと思います。」

株式会社テレパシージャパン
代表者:鈴木 健一氏 設立:2013年7月
URL:https://telepathywear.com/ スタッフ数:25名
事業内容:
・ウェアラブル機器の企画、開発、製造、流通、販売

当記事の内容は 2016/01/21 時点のもので、該当のサービス内容が変わっていたり、サービス自体が停止している場合もございますので、あらかじめご了承ください。