東京で“大油田”を見つけたベンチャー。年間2万トンの廃棄タイルカーペットを再生「リファインバース」

スマビ総研

執筆者: ドリームゲート事務局

リサイクル不可能といわれた廃棄タイルカーペットの再資源化率90%を達成。圧倒的価格優位性で素材を販売する 展開している事業の内容・特徴

151215-1近年、高度成長期に建てられたオフィスビルの老朽化、耐震基準への対応、高層化による収益向上などの理由に、渋谷ヒカリエ、虎ノ門ヒルズ、新丸ビル、あべのハルカスなど、巨大オフィスビルを中心とした再開発が頻繁に行われている。まちが美しく、便利になるその一方で、大量に発生する建築廃材の処理が問題となっている。

今回紹介するベンチャーは、オフィスの床に敷かれたタイルカーペットの再資源化に成功したリファインバース株式会社。

同社が再資源化の事業化に成功する前までは、技術およびコストの問題でリサイクル不可能といわれていたタイルカーペット。その原因は、タイルカーペットの表面がナイロン製の化学繊維、裏面が塩化ビニール樹脂という二重構造にあった。異なる素材が組み合わされたカーペットを低コストで再資源化する技術がなかったのだ。

また、その二重構造ゆえ、リサイクル処理も難しかったが、同社は塩ビ樹脂を刃物で削り、細かくして分離する技術を開発。再資源化を成功させた。

リファインバース社の調査によれば、廃棄される使用済みタイルカーペットは首都圏全体で年間約3万5000トンにもなり、そのうちの約6割にあたる2万トン強を、同社が再生処理している。しかも再生した素材は、従来の樹脂(ヴァージン樹脂)と比べて半値という、圧倒的なコスト競争力を持つ。

しかし、同社が再生した素材を使って既存設備でタイルカーペットを生産すると、生産効率が低下するためトータルの製造原価があがってしまうという課題が存在していた。これは既存設備はヴァージン樹脂を加工するために最適化された技術・設備であるために、加工特性の違う再生素材を加工すれば生産効率が低下することは当然のことであった。そこで同社は、インテリアメーカーに設備投資を含めた提案を行うかたちで事業化を進めた。原材料が半値になるということは、それだけで製造原価の低減が行える。初期投資は必要だが、償却負担を加味しても長い目で見れば経営には大きなプラスだ。

さらに生産時の二酸化炭素(CO2)排出量は、石油化学由来の塩ビ樹脂より9割も少なく、環境にも優しい。しかもコスト的に優れているということで、同社は「東京に油田を見つけた企業」というキャッチコピーで自社のPRを進めている。

「資源小国の日本は、石油や鉱物など大半の資源・エネルギー源を遠く海外から輸入せざるを得ないが、廃棄物から再資源化、あるいはエネルギー資源化のサイクルが広がれば、資源大国に生まれ変わる。そうなれば、モノづくりのルールが変わる」と、同社代表の越智晶氏は語る。実際、シェール革命によってアメリカのエネルギー事情が大きく変わり、同国の製造業が復活してきている。あるいはドイツはインダストリー4.0を掲げ、製造業の大変革を進めている。

大前研一氏の元でベンチャーキャピタリストとしてベンチャーの世界へ飛び込み、廃棄物処理会社を世界初のタイルカーペット再生素材メーカーに生まれ変わらせる。 ビジネスアイディア発想のきっかけ

151215-2越智氏は、大学卒業後、化粧品メーカーに5年間勤務した後、大前研一氏のもとで投資会社の設立に参画。ベンチャーキャピタリストとして、年間1000件近い新規事業案件を審査していた。その投資先の一つがリファインバースの前身である、産廃処理業を営む御美商(現ジーエムエス社)という会社だった。

2001年に基礎技術を確立すると、同社は大前氏の投資会社のビジネスプランコンテストに応募。その時の担当者が越智氏だった。越智氏は、この廃棄タイルカーペットを再資源化する技術・アイデアの価値を高く評価、すぐに投資を決断し、自ら社外取締役として経営に参画。

2001年6月に同事業のプロジェクトチームが結成され、明治大学理工学部建築学科菊池研究室との共同研究、オフィス用品・家具の大手であるコクヨのグループ会社であるコクヨオフィスシステム株式会社、コクヨエンジニアリング株式会社、株式会社セルコンテクノスらとタイルカーペットの循環型リサイクル事業を本格的に開始した。

そして、2003年12月にリファインバース株式会社を設立し、越智氏が代表取締役社長として、同社の舵取りを担うことになった。

再生資源は、環境に優しいという面が重視されるため、品質やコスト面は軽視されがちだった。しかし、「ECO」を理由に商業性を軽視していては、大きなビジネスにならず、社会へのインパクトも弱い。国や行政からの補助金などで採算を補填するケースもあるが、「それはイノベーションを阻害しているだけ」と越智氏は強く語る。

経済合理性がなければ、どんなに素晴らしい事業でも継続できない。逆にいえば、ビジネスとして回るようになりさえすれば、投資を呼び込み、社会を一気に変えていくインパクトを生む。リファインバース社のタイルカーペット再資源化事業は、まさに資本主義の持つパワーとルールに則ったビジネスモデルといえるだろう。

ただ、事業化にあたっては苦労も多かったと越智氏は語る。タイルカーペットなど建材業界は古くから様々な企業が競争を続けており、新参者が簡単に入り込める世界ではなかった。そこで越智氏は明治大学との共同研究による技術的な裏付けや、住友商事の資本参加やコクヨなどの大手との連携によって信用力をつけることに注力した。

また、廃棄物のタイルカーペットから再資源化した素材は、従来の製造設備では生産効率が低下することもわかっていた。そこで越智氏は3つの戦略を考えた。

1つはリファインバース社がタイルカーペット自体の製造も行うというもの。しかし、これは膨大な設備投資、製品の販路開拓などが必要でリスクが高い。次に考えたのはさらなる研究開発によって従来の製造設備でも生産効率を低下させない素材にするために素材の改質を行うこと。しかしこれでは再生素材そのもののコストが上がってしまうため、ヴァージン樹脂に対する価格優位性を失ってしまうことになる。そこで第3の道として、タイルカーペットメーカーに新規の設備投資までを含めた提案を行うこと。これは廃棄物をベースとして素材再生から最終製品の製造までのバリューチェーン全てを見直し再構築することで、従来よりも圧倒的な競争力を有するモノづくりの戦略を立案し推し進めることとした。

再生素材の最適な加工技術の研究開発を明治大学と共同実施から始まり、織物・カーペットメーカーとして100年超の歴史を持つ住江織物株式会社と住友商事をパートナーとして プロジェクトを立ち上げるなど着実に同社の戦略を推進していった。

そして2011年住江織物株式会社、株式会社スミノエ、そして住友商事株式会社などと共同開発した、世界トップクラスの再生材比率を達成したタイルカーペット「ECOS(エコス)」シリーズを発売により結実する。

このプロジェクトは再生素材を加工するための専用設備の導入という大規模な設備投資を住江織物が実行することで、同社が10年来追い求めたきた再生素材によるバリューチェーンの大変革による競争力を有するモノづくりを実現することになった。

素材のコスト革命はモノづくりのルールを変える! 製造業の地産地消を見据えて事業展開。 将来の展望

2015年12月時点で、同社グループ全体の従業員数は150名を超えている。現在も積極的な人材採用を行っており、すでにIPO準備の段階まできているという。今のところ世界を見渡しても競合は存在せず、事業は順調に成長を続けている。

越智氏は、競合が出てこない理由として、技術開発の難易度の割にマーケットがニッチすぎるため大手企業が参入しづらく、一方でベンチャーが挑むには研究開発投資のリスクが大きいためと分析している。越智氏にこれまで最も苦労したことを聞いたところ「資金繰り」という回答だった。特に創業期の研究開発投資による累損が重かったそうだ。それだけ素材分野の新規参入が難しいことが伺われる。

越智氏に今後の展望を伺ったところ、「将来は様々な廃棄物から再生資源を生み出す素材メーカーとして、タイルカーペット以外の分野にも挑戦していきたい。例えば、建材としての壁紙などは、まだリサイクルする技術やビジネスモデルが確立されていないため、新たな領域として検討している。また、廃棄物を原料に戻す、あるいは再生する過程で発生する副産物などをエネルギー転換できないかとも考えている。原材料に戻すだけでなくエネルギー源としても活用することで、トータルでの採算性を確立し事業化する。そうしたビジネスモデルをつくり出すこともイノベーションの1つのかたち」と語ってくれた。

廃棄されたコンピューターや家電製品の内部にある貴金属を取り出すことで、大都市を貴金属が採れる鉱山に例えた「都市鉱山」という言葉があるが、リファインバースのビジネスは、都市が「油田」にもなり得ることを証明した。

世界はさらなる経済成長を続け、資源やエネルギーの消費が拡大し続けている。いずれは様々な原材料を採掘し遠くまで運搬して加工するより、生産地・消費地の近くで廃棄物から再資源化したほうがトータルコストは安くなる――近い将来、そんな時代になるかもしれない。「製造業の地産地消」ともいうべき未来を越智氏は見据えているのだ。

リファインバース株式会社
代表者:越智 晶氏 設立:2003年12月
URL:http://www.r-inverse.com/ スタッフ数:
事業内容:
・タイルカーペットなどの廃棄物の再資源化。

当記事の内容は 2015/12/10 時点のもので、該当のサービス内容が変わっていたり、サービス自体が停止している場合もございますので、あらかじめご了承ください。