人工知能でシステム障害を検知するサービス「Impulse(インパルス)」でエンタープライズ市場に切り込むベンチャー、ブレインズテクノロジー株式会社。

IT・インターネット

執筆者: ドリームゲート事務局

システム監視における障害予兆の検知、生産設備の性能劣化や故障予兆の検知、振舞検知で情報漏洩を未然に防ぐなど、様々な機械学習を活用したサービスを低コストで提供。 展開している事業・特徴

20151119-11インターネットの発展を語るうえでかかせないのがオープンソース。我々が普段利用している多くのサービスが、実はオープンソースの恩恵を受けている。例えば、Webサイトを配信するためのサーバ・ソフトウェア「Apache」は、オープンソースによって開発されている代表的なものの1つだ。今や企業向けの大規模なシステムなどでも、オープンソースをベースにしているものが多い。今回紹介するブレインズテクノロジー株式会社も、機械学習や分散処理技術などの、最先端のオープンソースを活用したシステムを、大企業向けエンタープライズシステムに開発・提供を行っているベンチャーだ。

主力の「Impulse(インパルス)」は2014年2月21日にリリースされた製品。各種情報システムのログや、センサーから集められた大量のデータをリアルタイムで解析する、機械学習による高度な分析・予測エンジンを搭載した大規模データ分析プラットフォームだ。

同製品の利用シーンとしては、例えばシステム監視領域があげられる。一般にシステム監視業務では、何人ものシステムエンジニアでシフトを組み、従来の閾値ベースの監視ソフトウェアを利用して常に異常がないか監視を行っているが、「Impulse(インパルス)」は機械により監視レベルを高度化する事で、監視業務の負荷軽減に貢献する。 具体的には「Impulse(インパルス)」がリアルタイムで学習と検知を行い、異常が発生しそうな予兆のアラートがあがる。

ポイントは機械学習による検知。正常データを学習する事で、異常が発生しそうなパターンを検知してアラートを出す。これまでは、熟練したシステムエンジニアが経験によって予測していたような高度な監視業務を、「Impulse(インパルス)」が代行してくれるわけだ。

単純なシステム監視、異常検知サービスはこれまでにもあったが、特定のソフトウェアがダウンした、あるいはサーバの負荷が特定の閾値を超えればアラートを出すといった単純な仕組みであることが多く、こうしたやり方では実際に障害が起きてから対応するしかなかった。あるいは障害発生を防止するために検知基準を緩くすると、今度は大量のアラートが発生し、本当に重大な障害検知がうずもれてしまう。サーバ監視業務を担当した事がある方なら、一日に何十通ものアラートメールを受信した経験がある方も多いだろう(筆者もその一人だ)。こうした課題を「Impulse(インパルス)」は解決した。企業にとってはシステム監視に割いていた人件費を削減でき、システムエンジニアに別の仕事をふれるといったメリットが生まれる。

また、「Impulse(インパルス)」では情報漏えい対策といった活用もできる。従業員のパソコンの操作ログを監視することで、普段とは違う行動が検知されれば、情報漏えいの危険性があるとしてアラートをあげる。管理部門が細かく権限設定を行ったり、個人情報の入ったデータベースやファイルのアクセスログをいちいち監視しなくても、「Impulse(インパルス)」情報漏えいを防止すべく、人間にかわって監視をしてくれるというわけだ。

分子生物学で博士から、あえて門外漢だったITの世界へ。モノづくり志向で製品開発に挑む。 ビジネスアイデア発想のきっかけ

ブレインズテクノロジー株式会社を創業した齋藤 佐和子氏。東京大学大学院で分子遺伝学を専攻し、博士課程に進んだ。しかし、研究者ではなく、これまでまったく関わりがなかったITの世界に進んだ。2000年に入社したフューチャーアーキテクトでは研究開発部門に配属。2005年テクノロジーサービス事業部を立ち上げ、副事業部長に就任した。

転機となったのは2008年。ビックデータやセンサー技術などが急速に注目を集め始めた時期で、齋藤氏もセンサー、サイボーグといったキーワードに強く興味を持ち、そうした分野でビジネスをしたいと考えるようになった。2008年にフューチャーアーキテクト社を退職し、ブレインズテクノロジー株式会社を設立。しかし、創業当時はコンサルタント事業がメイン。主にクライアント側のプロジェクトのマネジメント部門(PMO)に入り、さまざまなプロジェクトを推進していた。

しかし、これでは研究開発が全くできない。そのため、創業から6年目に舵を切り、コンサルタント事業から撤退を開始。派遣していたスタッフも次々と引き上げ、自社製品の研究開発に人と資金を投じた。それまで稼いだ内部留保を全て掻き出す決意で研究開発に没頭し、2年間弱の期間を経て完成したのが、「Impulse(インパルス)」と「Neuron(ニューロン)」という自社製品だ。

「Impulse(インパルス)」はリアルタイム予測分析プラットフォーム、「Neuron(ニューロン)」は企業向けに特化した検索エンジン。

こうしたシステムはエンタープライズ向けでは「数億円」という見積が出てくることも珍しくないが、同社の「Impulse(インパルス)」では1件あたり2000万円程度とリーズナブルな価格で提供している。低コストを実現できている理由はオープンソース。基本的な仕組みは既に開発されているソフトウェアを利用しているため、その分の開発原価が浮く形になる。

もう一つの製品は「Neuron(ニューロン)」。企業向けの検索サービスは古くからある分野の1つで同社は後発組になるが、後発組の利点を生かして最新のオープンソース技術を活用し、低コストでハイパフォーマンスの製品に仕上げた。同社によれば、文書数約1億件、文書量約60TBといった大規模な検索システムの対応実績もあるという。また、大量の画像のなかから類似しているものを検索するという機能は、エンタープライズサーチ製品には存在しない。あるコンペでは、大手システム開発会社が2億円という見積を出してきたのに対して、同社は数百万円というコストを提示した。性能はもちろん、価格的には勝負にならない。同社が参加するコンペなどでは、こうしたケースは多いという。

同社代表の齋藤 佐和子氏によれば、オープンソースで作られたソフトの品質の高さは当然のことだが、むしろそうした要素技術を組み合わせて「サービス化」するところがポイントだという。単に高性能なデータベースやビックデータの分析・可視化するエンジンはミドルウェアでしかない。企業としては業務改善やコストカットといったメリットをすぐに求められなければ意味がないわけだ。そのため、「Impulse(インパルス)」は単にビックデータのリアルタイム分析プラットフォームというだけでなく、それを用いて人口知能型のシステム監視サービスや情報漏えい防止システムといったサービスレベルまで構築・提供している点が強みでもある。

また、同社では自社の研究開発部門を「未来工場」と名付け、最高技術責任者である中澤 宣貴氏は、あえて「工場長」という肩書きにしている。これは企業側、特にシステムを利用する現場の受けが良いそうで、親しみやすさを狙ったという側面もあるが、背景にはあくまでソフトウェアもモノ作りの1つであり、技術者として製品を仕上げて出荷するという、同社の理念が込められているそうだ。

「Impulse(インパルス)」の開発にあたっては80社ほどのクライアント企業をまわり、企業のニーズに徹底的に向き合った結果、それにこたえられる製品を目指して開発したという。

IoTによって爆発的に増えるデータがビジネスチャンス。 将来への展望

齋藤氏に今後の展望を伺ったところ、あくまで技術を中心として面白さを追求していく会社でありたいと語ってくれた。目指すのはGoogleやFacebookなどソフトウェア技術をベースに独自にサービスを展開しているような事業体。現在はエンタープライズ向けに特化しているが、いずれは中小企業にも広く使われるサービスを作り出すのが目標だ。

同社の現在の事業領域に焦点をあてれば、IoTはバズワードや一時的なブームにとどまらず、普段身に着けているデバイスから、自動車や街中など、いたるところにセンサーが設置され、そのデータがネットを通じて膨大に収集される時代になりつつある。そうした膨大のデータを分析し、そこからさまざまなサービスを開発するという点では、この市場はまだまだこれからという段階だろう。

齋藤氏によれば、いまのところ国内では大きな競合はいないと見ている。米国にRocana(ロカナ)という、ほぼ同様のサービスを展開するベンチャーがあるそうが、最近になるまでRocana社の存在は知らなかったという。しかし、サービスの内容や利用している技術、アプローチ方法が酷似してびっくりしたという。日本でも米国でも、この分野においての最適解は期せずして同じだったという事だろう。

同社は第3回ILSにも参加し13社の大手企業と商談を行っているが、既に日本を代表する有名企業といくつものプロジェクトを組んでおり、システム障害の予兆検知や、生産設備の予防保全、またロボティクスやドローンといったテーマでも研究開発を進めているという。

近い将来、ブレインズテクノロジー社のサービスが我々の生活に欠かせない、インフラのような存在になるかもしれない。今後の同社の発展に注目していただきたい。

ブレインズテクノロジー株式会社
代表者:齋藤 佐和子 設立:2008年8月
URL:http://www.brains-tech.co.jp/ スタッフ数:12名
事業内容:
・機械学習を活用したデータ検索、およびデータ分析製品・サービスの開発、提供

当記事の内容は 2015/11/24 時点のもので、該当のサービス内容が変わっていたり、サービス自体が停止している場合もございますので、あらかじめご了承ください。