累計受講者2万2000人、2200人超の講師が利用。“学び好き”の日本で伸びるC2C型教育サービス「ストリートアカデミー」が、更なる成長を目指して法人向けサービスを投入

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執筆者: ドリームゲート事務局

C2C型サービスとして成長してきたストリートアカデミーが、年間4790億円の企業研修市場に進出した理由
新たに狙う市場、その背景

20150721-1日本人は学び好きである。お稽古事の教室をはじめ、英会話やさまざまな資格学校も多く、その市場規模は大きい。矢野経済研究所によれば、日本国内の教育産業市場は全体で2兆4668億円。そのうち学習塾や予備校が9360億円、英会話・語学学校が3029億円、企業向け研修が4790億円、資格取得学校が2030億円、資格検定市場が404億円、通信教育が2728億円、eラーニングが1077億円となっている。
http://www.yano.co.jp/press/pdf/1306.pdf

今回紹介する「ストリートアカデミー」は、個人が主催している教室・ワークショップ・セミナーと受講者をマッチングさせるサービスを行っていることで知られるベンチャーだが、2015年6月18日に「ストアカ for Biz」という法人向けサービスを開始した。

これは企業向けにロジカルシンキングやWebデザイン、プログラミング、英会話など、2500件以上の講座ラインナップより、従来の企業研修に代わり個人が好きな講座を選んで受講できるようにしたものだ。

社員教育というと、どうしても押しつけ型で受講モチベーションの上がらないものが多かったが、強制ではなく自発的に受けたい講座が選べられれば、学ぶ意欲は格段に高まるだろう。「ストアカ for Biz」は、すでにNECやガイアックス、ラクスルといった大企業・有名スタートアップ企業の採用が決まっており、直近で100社への導入を目指している。

同サービスを運営するストリートアカデミー株式会社の代表である藤本崇氏によれば、企業内に内包されているスキル・人材を、ストリートアカデミーのマーケットプレイスに乗せていくことが大きな狙いとしてあるが、まずは年間4790億円になる企業研修市場に打って出ることで、確実な成長を狙う。「ストアカ for Biz」では、まずは年間1億円の売上を目指す。

ちなみに同社は、2013年6月にサイバーエージェント・ベンチャーズ、Genuine Startups Ltdから総額4000万円、さらに2014年8月にモバイル・インターネットキャピタルから1億3000万円の資金調達を行っている。それぞれの資金調達と今後の戦略について藤本氏伺ったところ、最初の資金調達はC2Cプラットフォームの基礎を固めるための開発費に、2回目の資金調達は規模を拡大するために投資し「ストアカ for Biz」などに帰結。今後はプロモーションなども積極的に行っていくために三回目の調達も年内には検討したいと意気込む。

もともと学び好きの日本人。リリース3年間で50倍に成長
展開している事業の内容・特徴

ストリートアカデミーは2012年7月のローンチ後、約3年間で3万8000人超のユーザー会員登録、累計受講者2万2000人、全国で2200人超の講師を抱えるまでに成長している。

C2C型のスキル共有サイト・教育サービスのマーケットプレイスとして、個人が主催する教室・セミナーなどの情報を同サイトに簡単に掲載でき、ジャンル分けや口コミなどで検索しやすくし、受講者側も簡単にオンラインで申し込めるようにした事で成長してきた。

従来、ネット検索では、大手資格学校やカルチャースクールが上位を占め、スクール系雑誌なども大手の情報しか掲載されていなかった。しかし、「ストリートアカデミー」によって、個人の開催する教室や講座が、インターネットで簡単に探せて受講できるようになったのだ。

スタートした当初は、月間50名ほどの受講申し込み数だったが、2015年7月時点では50倍となる月間2500件前後の申し込み数へと急増している。

同サービスが成長している理由の1つが、講師の品質だ。講師の登録は審査制をとることで品質担保を徹底し、さらに講師への口コミ情報も公開しているため、質の悪い講師は自然と人気が落ちていく。ユーザーが安心して利用できる仕組みを構築しているのだ。また、1週間のクーリングオフ期間を設定しているため、万が一、講座が開催されない、講師が不在などの問題があった場合は返金対応してくれることも、受講者にとっては嬉しいポイントだろう。

講師側のメリットも大きい。例えば、同サイトが集客支援をしてくれるほか、会場斡旋も行っているため、自分で会場を見つけたり、高い会議室などを借りる必要もない。同社ではそうした会場やスペースを約200ほど用意しており、特にシェアオフィスなど一席数百円という単価で借りられるものも。数名で開く小規模講座などがリーズナブルに開催できると好評だ。もちろん、広い会場が必要な場合は、それようのスペースも借りられる。

開催されている講座のジャンルは、ピアノやフィットネス、ヨガ教室などから、ビジネス系、Web・IT系、語学系など100種類以上と多岐に渡る。

お稽古事のレッスンの場合、女性が多い印象があるが、同サービスでは男性ユーザーが55%を占めているそうだ。講座は単発、ないしは短期コースのみ。いわゆる月謝コースはなく、客単価は3000円前後が多いという。

同社の収益源は、手数料モデル。講座の申し込み時の決済はストリートアカデミーが行い、1週間のクーリングオフ期間後、問題がなければ5~15%の手数料を引いた分を、講師側に支払うというスタイルをとっている。

ステーブ・ジョブズが語ったスピーチに感銘を受けて起業。ビジネスのヒントは妻のケーキ教室にあった
ビジネスアイディア発想のきっかけ

20150721-2同サービスを運営する、ストリートアカデミー株式会社の創業者である藤本崇氏は、中学から大学までをアメリカで過ごしている。コーネル大学を卒業し、スタンフォード大でMBAを修了。その後、ユニバーサルスタジオの機械設計エンジニアを経て、投資ファンドのカーライルグループで企業買収に携わり、2012年に同社を起業した。

ちなみにスタンフォード大学に在籍していた頃、ステーブ・ジョブズの有名なスピーチ「ハングリーであれ。愚か者であれ」を聞いて感銘を受け、いつかは自分も起業したいと思うようになったという。

そもそも、藤本氏は学ぶことが大好き。大学院には2度通い、料理教室や映画学校、DJスクールにも通っていたことがあるという。

また、妻がアメリカで開いていたケーキ教室が大人気だったことも起業のヒントになった。仕事の都合で日本に帰国したのち、妻が再びケーキ教室を開いたものの、日本ではまったくうまくいかなかった。日本では個人が学びの場を提供すること自体が難しく、支援サービスなども整備されていないことに気づいた。そこにビジネスチャンスを見出した藤本氏は、「まなびを自由に!」をビジョンに、「教える」と「学ぶ」をつなぐスキル共有サイト「ストリートアカデミー」の構想を固め、2012年7月に創業、サービスを開始した。

しかし、当初はまったくうまくいかず苦労の連続だったという。まずシステム開発でつまづいた。ITに強い大学生を集めてシステム開発を始めたが、これがうまくいかなかったため、結局は自分で勉強して最初のシステムをつくり上げた。しかし、システムができても肝心のコンテンツ=講師が集まらない……その後は、地道に講師を集める日々が続いた。

スタートから1年ほどが経ち、ようやく数名の人気講師が生まれ、その講師の講座を受けた生徒からの口コミで集客の輪が広がるという成功パターンが回り始めた。また、現CTOの岩田氏との出会いが、システム面の強化を実現した。

そうやって、ストリートアカデミーのビジョンに共感してくれる人たちとのネットワークが広がり、また、「ストリートアカデミーで成功した」というサクセスストーリーを持つ講師が出てきたことで、ビジネスとしての好循環が始まった。そもそも、最初から完璧な講師などはいない。誰しも実践で鍛えられて売れっ子講師になっていく。そうした経験値を短期間で積み上げられる場として、世の個人講師たちにストリートアカデミーが認知されたことが、急成長を後押しする大きなきっかけとなった。

日本の“非稼働講師層”を活性化し、新しい教育サービス市場を確立していく
将来の展望

日本は資格大国である。大企業の中に優秀な人材が大量に抱え込まれているが、難関資格を保有していたり、稀有なビジネス経験を持っていても、それを個人ベースのビジネスにつなげることができていない。藤本氏によれば、“非稼働講師層”ともいうべき潜在市場が眠ったままの状態で、今後はそうした個人が自立して、ビジネスを行うようになると見ている。

家計の足しにと、主婦がピアノ教室や着付け教室を開いていたケースは多い。しかし今後は、例えば大企業で経験を積んだマーケティングやITのスペシャリストが、若いビジネスパーソン向けにスキルを教える、そうした個人間ビジネスがたくさん生まれるようになるかもしれない。

ストリートアカデミーの今後について、藤本氏に伺ったところ、「当面は月間の受講申し込み数を1万件、登録講師数を1万人以上にすることを目標にしている」と言う。さらに5年以内には、それぞれ10万人に拡大することが中期的な目標だ。

また、今後取り組んでいくテーマとして、“地方”というキーワードを挙げてくれた。地方は、地方市場の開拓。現在のストリートアカデミーの顧客は8割が東京圏で、地方の利用者がとても少ないという課題がある。ベンチャーとの連携に積極的な福岡市などと組んで、地方都市での利用を活性化していく構えだ。

「人に何かを教える」ことは、個人の豊かさが背景になければ成立しない。確かに、その日の暮らしに困窮するようでは、人に何かを教えることはできない。巨大な教育マーケットの存在は、社会の豊かさと成熟度を示している。日本はこれから成熟社会に向かい、教育市場はこれからもっと伸びていく可能性が高い。日本発の新しい教育の仕組み、スキルのマーケットプレイスが、ゆくゆくはグローバルに展開していく、そんな未来を期待したい。

ストリートアカデミー株式会社
代表者:藤本 崇氏 設立:2012年7月
URL:
https://www.street-academy.com/
スタッフ数:12名
事業内容:
・スキル共有サイト「ストリートアカデミー」サービスの企画、制作、運営

当記事の内容は 2015/7/23 時点のもので、該当のサービス内容が変わっていたり、サービス自体が停止している場合もございますので、あらかじめご了承ください。

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